「撃って倒す」
その言葉を嘆いたのは、本来飛べるはずの無い重爆兵装ガルーダをその身に纏い飛ぶ立石志摩であった。タマの攻撃によってビーム発射直前にビーム発射口を破壊されたネウロイは攻撃を中断しそのボディを修復していく。それと同時に大量の子機がタマへと放たれた。
タマへと向かってくる子機にタマはガルーダの右側に取り付けられている50mm砲の照準を合わせる。照準を合わせるとネウロイの子機に50mm砲を撃ち込む
「ヒーハー、ラムゥゥ」
ドゥゥン
その威力に見合った砲撃音を鳴らすと50mm砲から砲弾が放たれる。
放たれたそれは向かってきたネウロイの先頭にぶつかるとその後ろにいたネウロイをも、貫きそれを何回も繰り返し一番後ろにいたネウロイをも破壊した。
タマはなんと今日初めて撃った50mm砲で、しかも1発で、大量の子機を端から端まで撃ち抜いたのだ。子機を破壊してすぐにまた別の子機の大群がタマへと向かうがまた同じように端から端まで撃ち抜く、その光景を見ていたバルクホルン達は唖然としていた。
「なんで立石がガルーダを使えている!あいつのユニットは通常のユニットだぞ」
「そんなのわかんないよトゥルーデ、取りあえず援護に行こうよ、数が多すぎるよ」
「そうだな、理由は後で考えるか、エイラ、サーニャ、西崎、本体に攻撃して注意を逸らしておいてくれ」
「了解」
「わかりました」
「とにかく撃ちまくればいいんだね、よっしゃあ」
「野間、私達は立石の援護だ!行くぞ」
「了解した」
「でしたら私達も向かいますわ」
バルクホルンの指示に返事をした野間の言葉の後に一人の言葉が聞こえた。
万里小路楓の声だ。あたりを軽く見渡すと下の方からストライカーユニットを履いた万里小路とペリーヌがやってきた。
「遅れてしまい申し訳ありません」
「遅いぞ二人とも」
「すいませんでした。私達と一緒にいた光さん達を守りながらユニットを取りに向かっていたのですが、倒壊などで道が崩れていて時間がかかってしまいましたわ」
万里小路が遅れた理由を説明する、それを聞いた野間が光達の心配をする
「光達は大丈夫なのか」
「えぇ皆さま、お怪我はされておりませんわ、今はシャーマンさんに乗って宿舎に向かっていると思いますわ」
「シャーマンさん?」
野間は万里小路が言ったシャーマンさんという言葉の意味が分からなかった。
人の名前だろうか、だがさっきシャーマンさんに乗ってといった。
光達砲雷科は万里小路達と一緒に出掛けていたはず、一人の人間が光達全員を背負えるわけがない、さっき万里小路が言ったシャーマンさんとは何なのか
それを語るには立石志摩がガルーダを纏って現れる10分前に話を戻さなければならない
ポーツマス海軍基地にネウロイ襲来のサイレンが鳴ったとき万里小路やペリーヌは、光達と共に基地防衛用に配備されている多連装ロケット砲装備のリベリオン製戦車シャーマンの格納庫にいた。
「ネウロイの襲撃ですって、万里小路さんすぐに戻りますわよ」
「承知しております、光さん達は避難を」
「分かってるよ、何とかネウロイに見つからないように隠れながら宿舎の方に戻るわ」
万里小路が光達に避難するよう伝えているとそこに割り込む声が入ってきた。
「ペリーヌ中尉30秒待ってください、シャーマンでハンガーまで送ります。ついでにこの子達も宿舎に避難させます」
戦車部隊の操縦士ブリッドがシャーマンでハンガーまで送ってくれると申し出てきてくれた。それだけではなく一緒に光達も避難させてくれるらしい、その提案はかなりありがたい
実のところ今いるこの場所はストライカーユニットを保管しているハンガーからかなり遠く徒歩で15分ほどかかる距離なのだ。すぐに出撃しなければいけないこの状況では拒む理由は無い
「感謝しますわ、万里小路さんと私は戦車の外でシールドを張って守りに入りますわよ、光さん達は戦車の中へ」
「わかりましたわ」
「わかったわ、それじゃあ取りあえずお邪魔します」
「入りまーす」
「まさか戦車に乗る日が来るなんて・・・」
光、順子、美千留が戦車に乗り込むとブリッドが残りの二人、理都子、果代子に声をかける
「済まない定員オーバーだ、ロケット砲の固定パーツにでもしがみ付いてくれ」
「うわっ、ついてない取りあえず気を付けるねぇ」
「安全運転でお願いしますね」
二人がブリッドにそういうと操縦士のブリッドは自信満々に言い切る
「任せてください、リベリオン陸軍の操縦技術を見せてあげますよ、安全に素早く目的地に向かって見せます」
そういうと操縦士のブリットは戦車に乗り込み最後にペリーヌと万里小路が理都子達と同じようにシャーマンの外に乗る、全員乗るとブリッドは戦車を発進させペリーヌ達のストライカーユニットが置かれているハンガーを目指す。途中で道が崩れているところが何か所かあったがブリッドの土地勘と技術により2分ほどのロスで済み、ストライカーユニットが保管されているハンガーへと無事についたのである。
ペリーヌと万里小路はストライカーユニットを取りに向かうため光達をシャーマン戦車に任せ光達と別れた。
「では私達はお先に失礼します、光さん達をお願いします」
「お願いしますわ、万里小路さんすぐに出ますわよ」
「心得ております」
「では私もこれで失礼します。どうかご武運を」
光達を乗せたシャーマンは一時的避難所の宿舎へと向かう
これがペリーヌと万里小路がこちらに合流するまでの出来事である
話は戻り、二人が合流したことによりこちらの戦力が増えた。
バルクホルンは新たに指示を出す
「よし、取りあえず立石に向かっている子機を殲滅するぞ、万里小路は立石の射線外にいる子機を倒せ、接近戦で近づいた状態では立石の邪魔になるかもしれないからな」
「了解いたしました」
「他は子機を殲滅しつつ立石を本体への有効射程距離まで誘導するぞ、50mm砲で奴を砲撃する」
「了解、でももう煙幕を出して姿を隠しているよ、どうするの?」
「サーニャの固有魔法で大体の位置を聞いて撃ってもらうしかないな、ミーナか宗谷の固有魔法があればより正確に撃てるんだが、まだ合流できていないしな」
「わかりましたわ、その方向で行きましょう、行きますわよ万里小路さん」
「承知しております」
「では行くぞ!ハルトマン、野間」
「オッケー、さっさとやろうか」
「了解した。」
バルクホルン達が立石志摩の援護に動いたころ、タマは子機を着実に破壊していっていた
50mm砲でネウロイの群れを撃ち抜いていく、散開した子機にはガルーダの左側に取り付けられている30mmガトリング砲をお見舞いする。子機の一機たりともタマには近づけないでいた。タマは一端攻撃をやめ上昇を始める。上昇したタマを追い子機も上へと上がる、タマはある程度上昇すると50mm砲と30mmガトリング砲を下からやってくる子機へと向ける、照準を合わせるとタマの両側についている武装が一斉に放たれた。
「ズドドドドーン」
タマのその気の抜ける声と共に50mm砲と30mmガトリング砲が火を噴いた
放たれた砲弾と弾丸は次々に子機を破壊していく、タマはそれをしながら向きを変え違う方向からくる子機をも破壊する。そして驚くことにタマが放った50mm砲はすべて地上にある建造物には当たらず道路の端や人気のない路地裏に着弾していた。
そうタマは50mm砲の着弾地点も考慮して攻撃を行っていた。この乱戦ともいえる状況で正確に撃ちこんでいた。タマがある程度、子機を殲滅するとバルクホルン達が援護に来てくれた。タマはバルクホルン達と協力し子機を再び殲滅していく、その様子を地上から見ている者が二人いた。一人は重爆兵装ガルーダについて説明してくれたウルスラ、もう一人は晴風を見に来ていたパットン将軍だった。
「重爆兵装ガルーダ、だったか使えるじゃねぇか、あのウィッチの腕も大したもんじゃねぇか」
「はい、私も驚愕しています。ジェット前提の設計なのに、それもただ一人でガルーダを運用するなんて、可能性があるとしたら彼女の固有魔法でしょうか、恐らく2つ以上の」
「その根拠は」
「50mm砲の砲撃試験の時に観測された反動による振動が見られない事ですね、この現象が起きる固有魔法に心あたりがあります」
「どんな固有魔法なんだよ、早く教えろ」
「前にカールスラント軍に在籍していたウィッチの固有魔法を調べていた時に偶然見つけた固有魔法で名を反動消去、その名の通り反動を完全になくす固有魔法ですね、30年以上前に従軍してたウィッチの固有魔法で反動の大きい重火器の使い手だったらしいです。ただ彼女しか確認されていないので詳しい詳細は不明です」
「なるほどな、っであいつの武装であのネウロイのクソ野郎を破壊できるか」
「さっきまでの戦闘を見ると少し厳しいです。恐らくネウロイから20メートル以内から砲撃すれば破壊できると思いますが」
「ってオイオイもう煙幕はネウロイの周り100メートルは広がってるんだぞ、あの艦長の嬢ちゃんが考えた作戦に賭けるしかねぇか」
パットンがウルスラの報告を聞いて岬明乃が発案した作戦に賭けるしかないと言ったときブラッドレー将軍がパットンのもとにやってきた
「パットン、彼女らの準備が終了した。それと地上攻撃部隊の展開が完了したと報告が上がった。」
「本当か、嬢ちゃんの作戦と同時に攻撃が出来そうだな、よしわかった地上部隊はワシが指揮をとる、ブラッドレーは嬢ちゃんに作戦の開始タイミングを指示しろ」
「そういうと思ったよ、なら早く指令室に向かえ早ければ5分後には開始出来るんだ」
「そういうのは早く言えって言うんだ、ウルスラ中尉ワシはこれで失礼する」
パットン将軍が指令室に向かうのを見届けるとウルスラは立石志摩の二個目の固有魔法を推測していた
「反動消去の固有魔法にガルーダを飛ばす能力は無かったはず、だとしたら二つ目以降の固有魔法の能力のはず・・・バルクホルン少佐のような身体強化だけじゃ精々持ち上げるのがやっとのはず、ジェット前提で設計されたガルーダが通常ユニットで飛んでいることを考えるとユニットの出力を上げる力?いやだとしたら魔法力が足りなくなるはず、だとすれば固有魔法が影響しているのは彼女ではなくガルーダや武装に影響を、そう例えば彼女が触れている物が軽くなるとか」
ウルスラの予測は的中していた。立石志摩に発現した固有魔法は2つあり一つはウルスラが偶然見つけたという反動消去の固有魔法ともう一つ、ウルスラの予想通り物を軽くする固有魔法、超軽量化、だった。この固有魔法は発動者の魔法力が流れた物が発動者が持とうとすると軽くなるものだった。ただ立石志摩のそれは超の名前が付くように凄まじいもので実際の重さの300分の一まで軽くするものだった
立石志摩がバルクホルン達の援護により子機を殲滅すると残る大物
煙幕を発生させているネウロイへの攻撃準備に入った。
サーニャ達と合流して煙幕に入らないように距離を取りながら攻撃準備をする
サーニャの固有魔法で敵の位置を割り出しサーニャが口頭でそれを伝える
「距離180、高度85メートル、そこに煙幕を放出しながら佇んでいるわ」
「うぃ」
それを聞いたタマは返事をしてすぐに照準を合わせ50mm砲を撃ち込む
放たれた砲弾はサーニャの言う場所に着弾し着弾音が響く、やったかと思われたがすぐにネウロイの反撃のビームが襲ってきた。
「クソ、流石にここからじゃ貫通は無理か」
「煙幕のせいで野間の魔眼でコアの特定も出来ないしどうする?」
「あの大きさでしたら近づけさえすれば私の刀身形成で貫通出来る長さの刃を作って切り裂けるのですが」
「ハルトマンさんのシュトゥルムで吹き飛ばせませんの?」
「煙幕の外からじゃ30メートルが限界だよ、インゲノールと一緒にやってもよくて70くらいだろうし」
「じゃあどうすんだ私の予知だと3分後にまた10メートルくらい広がるぞ」
「やっぱり爆撃機で煙幕を晴らしてからじゃないと・・・あれって」
ふとサーニャが下の方を見るとシールド6枚で正方形の立方体を作った明乃が黒木洋美と共にやってきた。黒木は鎖で縛られた巨大な物を持ってこっちに来るがスピードがかなり遅い、彼女はバルクホルンと同じ身体強化系で怪力もかなりのものなのだが飛ぶのに集中して顔の表情が険しかった。黒木が持っている物を見て芽依が反応した
「クロちゃんが持っているの晴風の魚雷発射管じゃん、一本だけみたいだけど、もいだのか、なぜもいだ、理由言えー、こんちくしょぉぉー」
晴風の水雷長 西崎芽依 激おこである
芽依が怒っていると艦長の明乃がやってきた
「皆、遅れてごめん、準備に時間が掛かっちゃって」
「何の準備をしてたんだ」
「というか艦長、なんでクロちゃんが発射管持ってきてるの、艦長の指示なの?怒るよ」
バルクホルンが明乃に聞くがそこに水雷長の西崎芽依が割って入るやっぱり怒りが収まらない
「ゴメン、メイちゃんあの煙幕を吹き飛ばそうと思ってクロちゃんに手伝って貰ったんだ」
「何か策があるのか」
「はい、落とす場所さえうまくいけば煙幕を晴らしてネウロイに近づけるはずです」
「落とす?何を落とすんだ」
「これです」
そう言って明乃はシールドで作った立方体を指さした。その内部にはぎっしりとドラム缶らしきものが詰まれていた。その正体に万里小路が気づく
「これってもしかして爆雷ですか」
「うん、晴風とドックにあったほかの艦に積まれる予定だった爆雷40個、これを上から落とすから煙幕の中に入ったら撃って爆発させてもらいたいんだ、ネウロイの所まで道が開けたら私が煙幕が入ってこない様にシールドで壁を作るからその隙にタマちゃんが近づいて近くで撃ち抜いてもらっていいかな」
「うぃ」
タマが明乃の作戦を了承する、そして隣にいた芽依が明乃に問いただす
「でっ、艦長、クロちゃんが持ってるもがれた魚雷発射管付きの魚雷は何」
「あぁうん、本当は魚雷だけ持ってこようと思ったんだけどブラッドレー将軍が早く作戦を始めないといけないって言ってたから発射管に入れられた奴を無理やりとって持ってきたんだ。火力は少しでも多い方がいいと思って、ゴメンねメイちゃん」
「無茶苦茶な作戦を思いついたな、全く」
芽依に謝る明乃を見てバルクホルンが驚く、水中で使う物を空にいる敵に使うなんて普通は思いつかない、バルクホルンはその奇想天外な作戦を試すことにした。
「よしそれをやってみよう、一度に40個破壊すると最後の方が晴れない可能性があるから5、6メートルごとに私が2,3個煙幕に向かって爆雷を投げよう、その間の防御はペリーヌと万里小路に頼む」
「了解しましたわ」
「かしこまりました」
「最初は黒木の魚雷で行く、西崎、煙幕より下に落ちる前にフリーガーハマーで爆破しろ」
「はーい、爆風が大きくなるよういっぱい撃って爆発させるね」
「黒木、魚雷を投げ飛ばす力は残っているか」
「大丈夫よ、これくらいなら」
「よし、では作戦開始だ」
「それじゃあ行くわよ、おりゃあぁぁぁ」
まず最初に黒木が投げた魚雷を芽依がフリーガーハマーで煙幕内で爆発させる
その後明乃とバルクホルンの爆雷投下組が爆雷を落としていく、落とされた爆雷は野間やタマが煙幕内で撃ち抜き爆破させていく、時々エイラも爆雷の破壊を担当しネウロイへの道を開いていく、出来た道に明乃が両端にシールドを展開し煙幕がまた入ってこないように壁を作る、それを繰り返しついにネウロイの本体が見えた。それを確認したタマがネウロイへと突っ込む、30mmガトリング砲の弾幕の雨をネウロイに浴びせながら
ネウロイが向かってくるタマを攻撃しようとしたとき地上から無数のロケット砲弾がネウロイの後ろから飛んできた。パットン将軍が指揮してる地上攻撃部隊である
「撃ちまくれぇー、注意を逸らさせろ」
パットン将軍の指示が飛ぶ、ネウロイはタマへの攻撃をやめ地上攻撃部隊へ狙いを定めた
それに気づいた将軍はすぐに指示を出す
「よし、こっちを向いた、全機散開、回避に全力を尽くせ」
パットン将軍が指示を出すと同時にパットン将軍にビームが放たれる
「クソがぁー」
パットン将軍が死を覚悟したとき目の前にシールド展開されビームを防ぎきった。
そのシールドを張ったのは二人のウィッチだった
「大丈夫ですか、将軍」
「何とかぎりセーフじゃ」
「お前らは晴風の、すまねぇ助かったぜ」
シールドを張ったのは宗谷ましろとシュペー副長のミーナだった。二人が将軍を守ってすぐにミーナ中佐も駆けつけた
「将軍、お怪我は」
「大丈夫だ、こいつらに助けられたぜ、これだけ時間を稼げば大丈夫だろう」
パットン将軍がネウロイを睨みつけるとネウロイはその訳に気付いたのかすぐにタマへと攻撃をしようとしたがタマは既に懐とでもいう距離まで近づいていた。
タマは最初に50mm砲を距離3メートルという至近距離で撃ち込みネウロイのボディを貫通させる、だが運が悪くコアは破壊できなかった。タマは貫通してできた空洞に30mmガトリング砲を突っこみゼロ距離でガトリング砲を撃ち込む、内部から発射された弾丸が凄まじいスピードでネウロイを破壊していく、やがてコアに直撃しネウロイは消滅した
「・・・快感!」
ポーツマス海軍基地を襲った脅威は晴風、砲術長、立石志摩と重爆兵装ガルーダによって無事去った。これで晴風ウィッチ組全員の固有魔法が判明した。
作中で爆雷を撃ち抜いて爆破させてましたが機関銃で爆雷を撃ち抜き爆発させることが出来るかは分かっていません。もし出来ないようだったら魔法力で強化されて撃ち抜けるようになったとでも思ってください。あと魚雷発射管ももいだ描写がありますがもしそれをやったら魚雷が爆発するとかだったらうまく爆発しないように細工をしてもいだと思ってください。発射管をもいだら起こるトラブルなんて分からないので
タマの固有魔法は反動を完全に消す 反動消去
自身の魔法力が流れた物を持つときそれを300分の一まで軽くする超軽量化です