大和の新型魔導徹甲弾のテストから帰還した次の日
ブリタニアから東に60キロの海上に一隻の艦が佇んでいた。
修理を終えた晴風である。壊れた魚雷発射管の一つを取り外し代わりにウィッチの発進用レーンを増設しさらに空いたスペースに新たに取り付けられた多連装ロケット砲を装備した新たな晴風である。昨日先行してブリタニアに帰還したましろから晴風の修理の完了を知らされた晴風一同は大喜びだった。やっと我が家が直ったと坂本少佐と一緒に今は離れている万里小路にも定時連絡の時に伝えた。万里小路も喜びの言葉をこぼした。
早速新しくなった晴風に慣れるため海上で訓練をすることになった。
普通の艦の改修ならそう問題は無いのだが晴風に新たに追加された装備は明乃達は使った事がない装備だったため早急に慣れる必要があった。一つはウィッチの発進レーン
これはその名の通り戦闘が始まった時、又はその前にウィッチの発進を補助する装置だ。
一応ストライカーユニットは垂直に上昇することもできるが、それだと加速するまでに多少の時間をくってしまう。ストライカーユニットはある程度直進してスピードを出してから上昇したほうが加速が僅かに速いのだ。
ただ、本来ウィッチの発進装置は駆逐艦に付けられることは少なく、大和の護衛艦隊にも駆逐艦に発進装置を付けた艦は存在していない
今回晴風に取り付けられた発進装置は全長15メートルで使用時以外は5等分に折りたたまれている。使用時は専用のハンドルを回すことで展開し折りたたまれていた発進レーンが1つ展開するごとに生じる僅かな隙間は前方に展開したレーンが後方に僅かに下がることで隙間を無くす、これを4回繰り返せば展開が完了する。事前の話し合いでこの展開作業はモモとヒメが担当することになった。
二つ目は発進レーンの発進位置を見下ろすところに設置された多連装ロケット砲である。
3×3の9つの砲身が台に設置されていて専用のハンドルを回せば仰角を変更できる
最大仰角は50度、設置されている台のハンドルを回せば360度、台を回すことが出来るため両舷どちらから来ても対処が可能である、ただし撃てるのは一方向のみなので両舷から同時に来た場合は主砲や機銃と連携し砲撃をしなければならない今回の訓練では松永理都子が多連装ロケット砲を担当する
「そろそろ始めようか、シロちゃん最初はどうする?発進訓練から始める?」
「そうですね、最初はそれでいいと思いますが、ネウロイ戦も想定して第三船速の状態で始めましょう、取りあえずまずは第三船速で発進レーンの展開と発進が出来るかを試しますか、スムーズに発進できるか確認したいので3人ほで発進してもらいますか、ロケット砲のテストは発進した人にシールドを展開してもらってネウロイ役をやってもらいましょう」
「あっ、じゃあネウロイ役は私がやるよ、私ならシールドだけ動かせるしサイズもネウロイに近づけさせることが出来るし」
「艦長が艦橋を離れるのは納得がいきませんが、艦長が一番出撃することになりそうなので今回は一様納得します、それじゃあネウロイ役お願いします」
「うん!」
「それじゃあ後の二人は野間さんとミーナさんが出てくれ、順番は任せる」
「よしわかった。早速野間に伝えてこよう、先に野間を連れて発進台にいっとるぞ」
ましろに、明乃と野間と一緒に発進してくれと頼まれたミーナは野間を呼びに行く
明乃も行こうとしたがましろに止められる
「艦長は待ってください、艦長は訓練が開始してから発進レーンに向かってください、ここから発進レーンまで向かって発進するのにどれくらいかかるか知りたいので」
「あっ、そうなんだ分かったよシロちゃん」
「取りあえずまずは艦の速度を上げましょう」
「うん、リンちゃんこの海域をぐるりと回るように進路をとって、第三船速まで上げて、今回は訓練だから機関科の子に無理させない様にゆっくり速度を第三船速まで持っていくような感じで」
「ヨーソロー」
艦長の岬明乃の指示を聞いた航海長はこの海域をぐるりと回る進路を取り速度を第三船速まで上げる、第三船速に達すると最初の訓練が開始された。
「これより訓練を開始する、モモちゃんヒメちゃん、発進レーン展開用意!」
「了解」
「了解っす」
伝声管から二人に指示が伝えられ二人は早速発進レーンの展開へ向かう
ちなみに二人が外に出た後の指示は事前に渡されたウィッチ用の通信インカムを通して行われる、なぜなら伝声管が無い外に指示を伝えるためにわざわざ艦橋を出るのはとても無駄が多いのだ、人数が十分いる扶桑艦隊なら問題ないがギリギリの人数で運用している晴風ではそれは厳しい、そのためウィッチが使ってる通信インカムを新たにミーナ中佐に発注してもらいそれを何人かに支給した。この案を思いついたのは副長の宗谷ましろであり、彼女はもし万が一晴風のウィッチが全員出撃することになった場合に備えて通信インカムを砲術員と水雷員、そして知床鈴の代わりに操舵を担当することになるだろう勝田聡子と両舷の見張員、発進レーンの展開を担当するモモとヒメに渡していた。
砲術員と水雷員にも渡したのは、ましろが飛んでいる最中でも直接指示できるようにするため、ましろの固有魔法を使えば飛行中でも晴風から敵への距離などを正確に把握できるため砲術員と水雷員にもインカムを渡した。今回の訓練でそれも試す予定だ。
発進レーンの展開に向かった二人が到着すると早速ハンドルを回し展開を開始する
折りたたまれていた発進レーンが一枚づつ展開していき200秒後展開が完了した
「展開完了に3分弱か、少し遅いが手動なら仕方ないか・・・次の段階に入る!事前に通達した通り発進手順を行っていく、まずは野間さんに出るように連絡、山下さん発進進路上の安全確認!」
ましろの指示に従い左舷見張員、山下秀子が双眼鏡を手に安全を確認する
勿論訓練なので敵などおらず安全だ。確認を終えるとインカムを通して発進レーンにいる媛萌に連絡する
「進路上に敵影なし!発進路クリア、出撃どうぞ」
左舷見張員の山下秀子の通信が媛萌に入ると、媛萌は手に持った赤い旗を振り下げ野間に発進の合図を告げる
赤い旗が振り下げられたのと同時に野間マチコがユニットを起動させ発進レーンを通り飛び立つ
「野間マチコ、出る!」
発進レーンから飛び立った野間マチコは50メートルほど海上を飛行すると上昇を始め晴風の上空70メートルに静止した
野間マチコは発進を終えるとすぐに晴風の艦橋にいるましろに連絡する
「こちら野間、発進は問題ない、ただ合図と同時にユニットを起動すると少しラグがでる、発進前はユニットを起動させて静止させた状態で待機してた方が良さそうだ」
「分かったミーナさんには私から伝えておく、そのままそこで待機していてくれ」
「了解した。」
ましろは最初に発進した野間の意見に納得し二番手のミーナにユニットを起動状態で待機しておくように伝える。ミーナの発進の時には起動させて待機していたおかげで野間より発進が12秒早かった。最後に艦長の岬明乃の番になった。明乃は艦橋から発進レーンに向かいストライカーユニットを装着し起動するがすでに発進指示が出た後で最初の野間の様にラグが出来てしまった
「やっぱりここからだと時間が掛かるか、時間はだいたい二分半といったところか」
ましろはその事実を確認すると頭の中にしまいこみ次の多連装ロケット砲のテストに移る
「次のテストに移る、艦長、最初は大型ネウロイを想定して縦、横15メートルの障壁を一枚お願いします」
「うん、わかったシロちゃん」
晴風の上空で待機していた明乃は言われた通りの巨大な障壁を展開しそれを晴風に向かわせる、すぐにましろが固有魔法を発動し座標位置を確認しロケット砲担当の松永理都子に指示を送る
「ロケット砲、左32度、仰角42度照準合わせ、発射用意」
「了解、照準合わせまーす、射撃用意完了したよ」
「撃てぇぇぇ」
バババッ バババッ バババッ
3×3の砲身からロケット砲が放たれる、放たれたロケット弾は目標のシールドに全弾命中する、流石にあの大きさなら命中するようだ。今度はましろの指示なしで松永理都子、個人の見解で発射させてみるがこれも命中した。次はサイズを小さくすることにした。
縦、横1メートルの小さなシールドを5枚を魚鱗の陣で晴風の周りを飛んでもらう
今度は明乃が5枚すべてをコントロールしロケット砲が当たりそうになったら避けてもらうよう、ましろが明乃に連絡する
先ほどど同じように最初はましろが固有魔法を発動し座標を確認し照準を指示し発射するが・・・
「私が確認して有効命中弾1か・・・小型タイプのネウロイに当てるのは至難だろうな、よほど密集しているか、遅いやつでやっとといったところか・・・」
明乃が操るシールドに当てることが出来たのは9発中1発、命中率が悪かった理由はましろがロケット弾の弾速を見や誤ったのと魚鱗の陣で移動していたシールドの中央に狙いを定め両端にあったシールドが簡単にはなれることが出来たのが原因だった。
ましろは少し考えると・・・
「艦長、もう一度お願いします、それと姫路さんを松永さんの所に向かわせてくれ、今度はロケット砲を動かしながら撃つ」
ましろが考えた方法はロケット砲を撃ちながら発射台を動かすものだった。
松永理都子と共に多連装ロケット砲の講習を受けた姫路を向かわせ準備を進める
「今度は発射前に照準の変更範囲をいうからそれに従って動かしてくれ」
『了解』
多連装ロケット砲についた松永と姫路がそれを了解する
早速先ほどと同じ5枚のシールドが魚鱗の陣で向かってきた。
艦橋にいるましろから発射指示が入る
「左27度、仰角38度、発射と同時に右12度まで動かせ、3秒後に発射!」
「了解」
バババッ バババッ バババッ
放たれた9つのロケット弾はやがて命中し爆発した。それを艦橋から見ていたましろは成果を確認する
「有効命中弾は4発かさっきよりアップしたが、やはり高度を変えられると当てるのは厳しいか・・・多連装ロケット砲の運用は今後の課題だな」
「副長、次はどうします?一様訓練項目は終わりましたけど」
書記の納沙幸子がましろに聞く、一様項目は終えたのでこれで終了してもいいのだが
「取りあえずもう少しやろう、使用できる武装は多い方がいい」
「分かりました。次は何を?」
「今度は主砲と機銃も使用してテストする、その後両舷から接近する敵を想定した訓練をする、各部署に連絡を頼む納沙さん」
「分かりました」
新たに生まれ変わった晴風はその後色々な課題が見つかり一つずつ対処方を考えてはそれを試し問題を解決していくが、それらが終わったのは結局夕方の時間帯になってしまった
だがそのおかげで出てきた問題点の8割は対処方が見つかった。晴風はブリタニアへの帰路に就くと久しぶりに船内に少女達の声が響いた。乗員達も久しぶりの晴風での食事、晴風の風呂を堪能した。生まれ変わった晴風の今日の機関はすこぶる調子が良かった。
晴風に意思があったとしたらきっと今は凄く喜んでいるだろう
戻ってきた乗員を乗せ晴風はブリタニアへの帰路に就く・・・
次は何を書くか・・・最近忙しいんだよなぁ・・・