始まりは交換日記   作:アシュリー2400

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第3話

月夜視点

以前から聞いていた竹細工工房を営むお父様と月咲ちゃんの家。

こうして足を運んで目の当たりにすると、いよいよかと全身が硬直しそうになりました。

談笑の中のほんのきっかけから始まった今回の計画。

何度も重ねてきた練習を本番に移す瞬間の緊張は演奏会のそれに引けを取りません。

いえ、演奏会以上かもしれません。

 

「練習通りに…練習通りに…ウチは月咲、ウチは月咲」

 

自分に言い聞かせて歩みを進めつつ、口調を月咲ちゃんモードへ。

いよいよお店の入り口をくぐると最初の一声をあげました。

 

「……お…父ちゃん、ただいま!」

 

お父様と言いかけたところを慌てて訂正。

間違えそうになったせいで心臓の鼓動が早くなり、深呼吸を繰り返しました。

落ち着いたところで中に上がろうとすると、奥から一人の人影が。

―――写真の中でしか見たことがなかった男性の姿がそこにありました。

 

「お帰り月咲。もうじきみんな仕事上がるから夕飯を頼むぞ」

「うん。荷物を置いたら台所に入るね」

 

まずは問題なく家に上がることが出来ました。

緊張を抑えつつ中に入れば、そこに広がるのは私の見知らぬ世界。

 

竹を加工する音に交じって竹独特の匂いが香る。

工房には何名ものお弟子さんがおり、各々仕事をされている。

熱気溢れる工房からは職人の仕事場という雰囲気が伝わってきます。

お父様は既に中に戻ってお弟子様方の指導にあたっておりました。

特にタケ様という男性には、指導に力が入っているご様子でした。

月咲ちゃんのお話では最も若いお弟子様で年が近いそうです。

 

しかし、竹細工工房にタケというお名前の方というのは何かの縁でしょうか。

 

台所を横目に月咲ちゃんの部屋へ入ると、まずは無事に部屋に到着したことに一安心。

竹細工工房に入るのは初めてですが、月咲ちゃんの部屋に入るのも同じく初めて。

ここで普段、月咲ちゃんは家での時間を過ごし、日記を書いていてくださったのでしょう。

私がここにいるのは三時間程度ですが、私はその間、月咲ちゃんを演じ切らねばなりません。

これからの予定を確認して行動をシミュレートしているとメールの着信音。

月咲ちゃんからのメールで無事に部屋に到着した旨の報告です。

 

最初の関門を乗り越えたことを二人で喜び合ったのも束の間。

私に次に待ち受けているのは、お夕飯の支度でした。

料理自体は普段はお母様が用意してくださっていますが、私も台所に立つことがあります。

月咲ちゃんから事前にいただいた献立通りに料理を作るだけです。

味付けにはお父様やお弟子様で好みがあるとのことですが、問題にならない範囲。

着換えて部屋を出て、第二の関門へ出発です。

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