思いのほか手間取った!
バカ上司の小学生レベルのイヤガラセにウンザリしていたせいでなかなか執筆が進まないし……
んじゃ、本編スタートっス……
はぁ~……あのバカどうしてくれようか……
前回までの経緯
コダ村村民、大慌てで夜逃げの準備
↓
カトー·エル·アルテスタン、レレイ·ラ·レレーナ両名、師弟揃ってすったもんだの末に荷物をまとめて住居から出発
↓
カトー師弟、村の中央通りにて渋滞に遭遇
村人の証言から事故による渋滞と発覚
レレイ、避難の支援任務に就く自衛隊員を目撃
好奇心に惹かれ、事故現場へ
↓
レレイ、事故現場に到着
桑原の警告を振り切り怪我人を観察
直後、事故車両を引いていた馬が暴れてあわや二次災害の危機に
ハイセ、被災者と周辺住民の安全確保のため、やむなく馬を射殺
↓
コダ村村民、自衛隊の支援の下コダ村を出発
↑
今ココ
アルヌスにおいて10万にも達する帝国軍が異世界の軍勢の手により
それによって僻地の地方貴族の諸侯がその戦力ごとほとんど帝国に駆り出され、アルヌスにおいて残らず磨り潰されてしまったので帝都とその周辺を除き治安維持を担当する者が居なくなってしまった。
更に規模においては帝国の総軍に匹敵する連合諸王国軍もアルヌスにて同じ末路をたどった。
彼らの残党はほとんどが祖国への帰還の途についたものの、彼ら全体を見ても祖国まで帰りついた者はアルヌスに比較的近い国から参戦したごくごく少数であり、それ以外のほとんどの者達は帰還の途中で食料が尽きる。
そうなってしまえば彼らの取り得る選択肢は三つしかない。
うち一つはそのまま餓死する事。
当事者にしてみれば論外である………他に選択する
もう一つは近隣の集落へと赴き、食料を分けてもらう事。
穏便に事を済ませたい者にしてみれば、これが一番の解決法であろう………相手側にこちらへ分けるほどの食料の余裕があれば…の話であるが。
最後の一つは………この方法が一番手っとり早く確実であろう…幸か不幸か彼らにはそれを為すだけの力があった。
その方法とは………
「炎龍が出て来て逃げ出してる村がある?」
「へえ、コダ村だそうですぜ。お頭」
彼らは焚火を囲み、今日仕留めたばかりの
「しかし、村一つ襲うとなれば手が足りねえぞ」
「集めりゃいい。最近はこの辺りの領主どもがほとんど居なくなって
傍らに何体かの死体が転がっているのを気にも留めず、そのような会話を平然と続けている。
その様子と会話の内容から分かるように彼らはカタギではない。この近隣を根城にしている盗賊集団である。
ほとんどの領主の興味は自領の支配に向けられており、自分に不利益が生じない限り積極的に盗賊を討伐しようとは考えない。
盗賊側もその事は弁えており、少々窮屈ながらも
先に述べた帝国による地方貴族の戦力徴発によって治安維持を担当する者が居なくなってしまい、その弊害として盗賊の跋扈という結果をもたらしたのである。
邪魔者が居なくなった事で
そう………先に述べた食料の尽きた諸王国軍残党に残された最後の選択肢………それは野盗に身を落とす事であった。
生き残った彼らは敗走での行く先々で農家の戸を叩き、食料を分けてもらえばそのまま立ち去り、断られればその場で強奪する……といった事が頻発し、そのまま盗賊化していったのである。
これは
皇帝に限らず統治者が本来最も恐れるべきものは、外敵でも政敵でもなく統治する民衆である。
国力の根幹を支えている彼らの
地球でも特地でも民衆を軽視したが故に滅亡した国など枚挙に暇がない。
国の体制や政治形態は言うなれば「如何なる形で民衆を思うように動かすか」の違いでしかない。形は違えども、要は「力で相手を押さえつける」か「相手を宥めて説得するか」のおおよそ、この2種類である。
帝国は「力で押さえつける」事を選択した上、民衆を軽視する政策を行い、行き詰まったら戦争で解決するという事を繰り返し、いつしか勝つことが当たり前になってしまったので今まで問題にならなかったが、先日の敗戦でその問題が一気に顕在化したのである。
例え民衆から反抗する力を奪ったとしても、そんな国は徐々に末端から力を失って行くものだ。
地球側の国でその傾向が顕著な代表的国家が
軍事力·経済力を背景に強圧的な外交と一方的な資源の搾取、国際社会における上から目線の身勝手極まる強弁と近隣諸国の他民族の弾圧など批判的要素に事欠かない
自国以外の全世界からはおろか自国民にすら裏で白眼視されており、ここまで世界的に嫌われている国というのもある意味珍しい。
そんな国がいくら悪あがきしたところで、そう遠くない内に自滅するであろう事は目に見えていた。
ハッ!聞いて呆れるね!
………おっと……つい本音がポロッと………
………ゴホンッ!……
その事実を踏まえた上で、盗賊達は強気な発言を繰り返す。
ちなみに帝国軍が異世界へ出兵した際、ハイエナよろしく帝国軍のおこぼれにあずかろうとした盗賊も少数ながら居たものの、遠目にアルヌスでの戦闘を見て自分達では到底勝ち目なしと踏んでいた。
後にその情報が盗賊の間に広がり、アルヌスの軍勢に手出ししないというのは盗賊達の間において不文律と化したのだ。
良く言えば
「頭数を揃えりゃ、今まで出来なかった大仕事もできやすぜ!」
「………そうすりゃ、それこそ領主を追い出して自分が領主になる事も夢じゃねえ……か」
その日暮らしの盗賊の頭領から辺境とはいえ領主……つまり一国の支配者である。
それは魅力的な話だし、その意味では彼にとって今はチャンスであった。
「盗賊の頭から領主か……悪くねぇな……」
だがそのすぐ後、彼の一時の夢は永遠に叶わぬ夢と化した。
ザシュンッ!
そんな音が頭領の耳に聞こえたかと思えば……
(……?何で、そんな目で俺を……あれ?何で急に地面が横に……え?あそこにあるのは俺の身体?)
……彼は首と胴が泣き別れになり、本人は何が起こったかわからないまま意識を永遠に失った。
その背後には……
「クスクスクス……」
……1人の少女が嗤いながら立っていた。
年の頃は12~3歳
その身に纏っているのは黒を基調とした地球側で言うところのゴスロリ衣装である。少女の美貌に長い黒髪と相まって非常に様になっている。
その右手にはその容姿には非常にミスマッチなものが握られている。
少女の握力で持つことが出来るのか怪しい太さの長柄に分厚い片刃の斧、先端に槍の穂先があり斧頭のつけ根から穂先部分にかけて柄に巻き付いた蛇の意匠が施されている。
一般に
もっとも少女の持つそれは大の男であっても振り回すことはおろか、持ち上げる事すら困難に思えるほどの代物ではあったが………。
突然の事に盗賊達は浮き足立つ。
「クスクス……オジサマ方ぁ~、今宵は命をもっての
頬に返り血を浴びているにも関わらず、少女は嗤い続ける。焚火の灯りに照らされた笑顔は、なまじ美しいだけに頬に浴びた返り血を意に介さない事も合わせて却って不気味に感じ、盗賊達の恐怖心を煽る。
「主神があなた達を、大層ぉ~気に入られてぇ~、お召しになるって仰られてるのぉ~」
「だ…誰だテメェはッ!?」
なけなしの勇気を振り絞って……もしくは恐怖心を誤魔化すためか、盗賊の1人が少女に詰問する。
「私ぃ~?クスクスクス……」
少女はあっさり答える。
「私はロゥリィ·マーキュリー。暗黒神エムロイの使徒よぉ~」
「ッ!!……エムロイ神殿の神官服にバカでかいハルバードとその名前……テメェが“死神ロゥリィ”かッ!!?」
「“死神ロゥリィ”って……
「あらぁ~…私の事をご存知なのぉ~?」
盗賊には先にも述べた兵隊崩れや食い詰め者の傭兵なども多い。かつて戦場に身を置いていた者達には、彼女の名は有名であった。
先ほどロゥリィが主神を「暗黒神」と呼んでいたが、実のところエムロイという神が司っているものは「
そのため兵士や傭兵といった戦争を生業としている者達にはエムロイを信仰している者も多く、暗黒神の名が示すような邪悪な神などではない………というよりは、神々の間では人間でいう正邪や善悪といった価値観に囚われる事はない。
「因果応報」や「悪の栄えた試し無し」、「憎まれっ子世にはばかる」などという考えは神仏の概念を利用して人間が都合よくつくったものである。
少なくとも特地の神々は人間の善行を讃える事がなければ悪行を咎める事もない。善悪問わず、それこそあらゆる犠牲を厭わず「命懸けで」自らの道を全うして「生き抜いた」者を愛する。
そして、自らの司るものに身を捧げた者に「祝福を与える」のである。しかし、それは「相手の意思や価値観を無視した彼らの目線での祝福」であるため、必ずしも「本人にとっての祝福」とはなり得ない。
人間の価値観で彼らの行動を計る事が出来ないため、神官達の中には神々の行いを「神の気まぐれ」と呼んで自分たちの悪行や裏工作を隠蔽する者もいる。
これは地球側でも特地側でも共通である。
それは地球側で「神の言葉」の解釈権を独占し、信者を奴隷扱いした挙げ句「御布施」と称して財産を巻き上げ、贅の限りを尽くした高位神官がいた事を考えれば容易に想像がつくであろう。
エムロイに仕える亜神であるロゥリィは、その武闘派ぶりと悪徳神官を断罪したという伝説から、エムロイ信者達に「死神」の異名と共に畏怖と敬意を抱かれているのである。
そして、普段「力ずくで他者から奪って生きている」彼らにロゥリィから施される「祝福」は……彼女が「お召しになる」と言っている事を考えれば言わずもがなだ。
「「「「「うわあぁぁぁあッ!!」」」」」
「じ…冗談じゃねぇッ!使徒なんかとマトモにやりあえるかッ!」
「に…逃げろぉッ!」
「ひいぃぃぃッ!」
盗賊達は荷物も何もかも打ち捨てて、一斉に逃げ出した。
だが……
「駄目よぉ、逃げちゃぁ~」
「ッ!?」
ヒュンッ!ドゴォッ!
……超重量のハルバードを持っているにもかかわらず、凄まじい速さで盗賊達の内1人の前方へ回り込み、その一撃を頭部へ叩き込む。
刀剣類に比べ切れ味が鈍いのか、ハルバードを食らった盗賊の頭の上半分は、悲鳴を上げる間も無く原型を留めないほどコナゴナになった。
「あ…ひ…ひぃ……」
傍らにいた盗賊は、恐怖のあまり片手に剣を持ったまま腰を抜かす。
「神様は仰られたわぁ。人は必ず死ぬってぇ~」
「ひっ……あわわ……」
ロゥリィは腰を抜かした盗賊の1人に悠然と歩み寄る。
「クスクス……だ·か·ら…決して、その運命からは逃れる事は出来ないのよぉ~」
そう言って彼女は、へたり込んだ盗賊の頭へ愛を持ってハルバードを振り下ろした。
それからロゥリィは、超重量のハルバードを持っているとは思えない速さで盗賊達を追い回し、1時間と掛からず全滅させた。
その翌日から丸一日、その周辺でカラスの姿が絶えることは無かった。
オマケ
コダ村との
時間は10分ほど前まで遡る……
伊丹達と村人達が村の入口で話し込んでいた頃、子供達は「秘密基地」と称した村はずれの掘っ立て小屋を拠点に遊んでいた。
村の大人の目に付きにくい場所にある、誰も使っていない手頃な大きさの小屋は子供達にとっては絶好の遊び場所であり、隠れ家でもある。
そんな
子供というのは何処の世界でも好奇心旺盛である。そんな彼らの現在の
「なあ……今日、村に来たおじさん達……何の用だったと思う?」
「さあ……?見たことのない格好だったし、どう見ても帝国の兵隊じゃないと思うけど……」
「じゃあ、最近父ちゃん達が言ってた、帝国の戦争相手?」
「バカ言え!あんな格好した兵隊がいるかよ!」
「だよな……いたとしたら完全に蛮族だけど、あのおじさん達って野蛮って感じじゃないし……」
「そうだよね……それに、あのおじさんも白髪の兄ちゃんも強そうに見えないからなぁ」
「それ言えてる!あの兄ちゃん相手だったら、俺でも勝てそう!」
「それに、帝国の兵隊と違って威張り散らしたりしないし……いい人そうだよね」
「確かに…まあ、いい人を通り越してお人好しっぽいケド……」
……といった具合に、村にやって来た風変わりな一行の事を話題にあげていた。
疑心に駆られている大人達と違い、伊丹達は子供達に好意的に見られていた。村の大人達もそれを察してか、子供達に村の中に入る様に促していた。
大人達にしてみれば、好意的な態度の裏に打算を隠している恐れのある相手から子供を遠ざけようとしているだけで、保護者としては至極真っ当な対応であったが、子供側にしてみれば不満であった。
彼らの不満は有り体に言えば「自分たちを見くびるな!」といった所である。
子供に相手の裏を見ることが出来ない……というのは、言うなれば大人側の傲慢である。
確かに相手の見る目のない子供もいるかもしれないが、子供というのは自分の意思を伝える事や相手を見る手段が未熟な分、むしろ必死に言葉を伝えたり相手を観察しているのだ。
故に、時として大人以上に鋭い見識を持つことすらあるのである。
それは赤ん坊ですら同様だ。言葉を伝えられない、周りもよく見えないが故に、必死に周囲の空気を探ろうとする。そして、生まれたばかりの経験の浅さ故に不安になり泣き出してしまうのである………泣く以外に相手へ訴える手段が無い、というのも理由の一つだが………。
子供達は興味の対象である伊丹達の話題を上げる事で、彼らから引き離された不満を解消していた。
ミシ…
その時、子供達が気付かないほどの小さな異音が小屋の中で鳴り始めた。
「だから、未開の地から来た傭兵じゃない?」
「でも、武器は何も持ってなかっただろ?」
ミシミシミシ……
その異音は子供達が気付かないまま、徐々に大きくなっていく。
「じゃあ、俺たちの知らない国から来た魔導師とか?」
「あ~確かに、馬なしで動く荷車なんか魔道具っぽいし…………ッ!?」
ミシミシミシミシミシ……
そして話に夢中になっていた子供達も、ここに至ってようやく異常に気付いた。
「な…何?この音?」
「な…なあ、この小屋揺れてないか?」
ミシミシミシミシミシ……
メキメキメキメキ……
「や…ヤバい……逃げよう!」
「ま、待って!」
彼らは危険を察して逃げようとしたが……
メキメキメキメキメキメキ……
ドガッシャァァァァアン!
「「「「「うわあぁぁぁぁぁあ!」」」」」
……全員が逃げ終える前に無情にも小屋が倒壊した。
「な…何じゃ?一体何が……?」
伊丹達と村長達が揃って音がした方向へ顔を向け、呆然としていると……
「「父ちゃーん!」」
……朝方、伊丹達が会った子供のうち2人が慌てて駆け寄って来た。
「どうした!?一体何があった!?」
子供の父親が聞いてみるも、よほど慌てているのか言っている事が要領を得ない。
「落ち着いて!慌てなくていいから、自分のペースでゆっくり説明してくれるかい?」
ハイセは先ほどの轟音と合わせて只事ではないのを察して、子供達の目線を合わせて落ち着かせた上で説明を促す。
「う…うん、僕たち…村はずれにある、使ってない小屋で遊んでて……」
「何だと!お前たち…あそこへは行ってはいかんと何度言ったら……!」
「すいません!怒るのは後で!……ゴメン、続けて」
ハイセは父親が怒鳴るのを遮り、続きを促す。
「うん…それで中で話し込んでいたら、急に小屋が崩れだして……」
「まさか……崩れた小屋に閉じ込められたの?」
子供達はコクリと頷いてそれを肯定した。
「こ…これはいかん!皆の者!すぐに村中に触れ回って、人手を集めるのじゃ!」
村長はそれを聞いて、即座に周りヘ指示を出す。
「村長!」
そこへ、伊丹が声をかける。
見ると側にはヒデの姿もあった。どうやら、先ほどの話を通訳していた様である。
『スマン、ハイセ!緊急事態だから、お前が通訳してくれ!「我々も力を貸したいが、訳あって例え救助の手伝いであっても勝手に動く事は出来ない。だが、そちらから要請があったら手伝う事が出来る。必要なら力を貸すから、救助要請を出してほしい」と』
それを聞いたハイセは、伊丹の言葉を出来るだけ噛み砕いて村長に伝える。
村長は逡巡するも、最終的に要請を出す。
「村長!余所者の力を借りなくても俺たちだけでやれますよ!それに、後でコイツらに何を要求されるか……」
「じゃが……命には変えられん。それに事は一刻を争う」
村長はそう言って、他の村人達を宥めた。
一方……
『傾聴!村内で家屋倒壊事故が発生し、現地住民から救助要請が出た!これより要請に従って村民の救助活動に入る!仁科は現地住民の案内の下、黒川と笹川を連れて現地ヘ先行して状況確認!無線機を忘れるな!』
『了解!』
「君…悪いけど、あのおじさんをその小屋がある場所まで案内してくれる?」
ハイセは子供の1人にそう頼み、その子供は頷く。
そして、仁科達と村の奥まで走って行った。
『俺とハイセ、富田と栗林に勝本とヒデは必要な資材を中トラ改に積んでから現地ヘ急行!ハイセは車内でSAAを着装の上で待機!』
『了解です!』
「僕は必要な道具を集めてからこの車でそっちヘ行くから、そっちの君はその時の案内を頼める?」
ハイセはもう1人の子供にそう頼み、その子は力強く頷く。
『
『わかりました!』
そうして、伊丹達によるコダ村での災害救助活動が始まった。
次回の更新は未定です
相も変わらず、超が付くほどのスローペース……
外伝まで執筆するのに一体何年かかるのやら……
ご意見、ご感想をお待ちしております