ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

19 / 64
 
 なかなか執筆が進まない……

 平日は仕事の後は疲れて寝てしまうし、マトモに執筆できるのが休みの日だけなのはキツイ……

 んじゃ、本編スタートっス……

 休暇が欲しい…………
 


コダ村からの逃避行

 

 前回までの経緯

 

 コダ村村民

 三偵の支援の下、コダ村から脱出

    ↓

 アルヌス付近の盗賊団

 コダ村村民が炎龍から逃げている情報を入手

 逃亡中のコダ村村民襲撃を計画

    ↓

 ロウリィ·マーキュリー登場

 エムロイの名の下、盗賊達に“祝福”を(もたら)

    ↓

 コダ村キャラバン、果て無き逃避行←今ココ

 


 

 アルヌスより東北東約百数十㎞地点 

 

 コアンの森で保護された少女………テュカは高機動車の荷台で目を覚ました。

 

 テュカの視界の端では荷物を背負って歩いている人影が複数見受けられた。ぼやけているため表情は見えないが、その人影は皆一様に疲れている事がその纏っている空気から察する事が出来る。

 

 ガチャ……

 

 そこへ突如、テュカの視界が光に包まれる。

 

 思わず目を細めていると、光の中から女性のものと思しき人影が現れた。そして、その人影がテュカの額に手を当てる。どうやら熱がないか確認している様だ。

 

 テュカはその手の感触に心地良さを感じ、されるがままに大人しくしていた。

 


 

「どう?黒川(クロ)ちゃん、女の子の様子は?」

 

 後部ドアからテュカの容態を確認している黒川に、伊丹が訊ねる。

 

生命兆候(バイタル)は安定して、意識も回復しつつあります。今、うっすらと開眼も……」

 

 黒川の報告に伊丹は安堵するも……

 

「……はー……しかし、まいったな……」

 

 ……そう言って外の様子を見て嘆息する。

 

「……遅々として進まない避難民の列……」

 

 街道とは言っても日本とは違って道路が舗装されている訳ではなく、剥き出しの地面を人や馬車が通り易い様に(なら)しているだけの代物である。

 

 その上、先日までの雨が原因で路面の状況は最悪であり、歩きづらい事この上なくそれが避難民の足を鈍らせる。

 

「……次から次へと起こる問題……」

 

 昼間にほぼ休みなく移動して消耗している上、いつ炎龍が襲って来るかわからない状況で避難民はピリピリしており、ストレスは溜まる一方である。

 

 そのため避難民同士の喧嘩沙汰が頻繁して、その度に自衛官達は仲裁に奔走する。

 

「……増える一方の傷病者と落伍者……」

 

 問題はそれだけでなく、先の路面状況の悪化で馬車がスタックして立ち往生したり、馬車が転倒したり炎天下で消耗したりで怪我人や病人が出てくる度に自衛官達は駆けつけて行く。

 

 だが、たった4両の車と10人そこそこの人数では優に600人を越える村人達の全てをフォロー出来るはずもなく、体力を使い果たしたり馬車が転倒してしまったりして動けなくなり、そのまま逃亡を諦める者が出始める。

 

 中には「せめて我が子だけでも……」と赤子を荷馬車に捧げる親までいた。

 

 しかし避難民達に他人を助ける余裕など無く、見捨てて行くしかないため無情にも人々はそのまま通り過ぎて行く。

 

「……逃避行って言うのは、なかなかに消耗するものだねぇ……」

 

 伊丹の言う様にコダ村村民の逃避行は順調とは言い難く、彼は愚痴をこぼさずにはいられなかった。

 


 

 1台の馬車がスタックして立ち往生している。

 

 一家の主と思しき男とその子供と思しき少年が、馬車を後ろから押して母親と思しき女性が手綱を取って脱出を図っていた。

 

「メリザ!行くぞ!……そーれ……」

 

「ハイッ!」

 

 ピシッ!

 

 だが馬車に載せている荷物の重みと不安定な路面のぬかるみで車輪が深く嵌まり込んでおり、動く気配は全くない。

 

「ハイッ!…ハイヤッ!」

 

 ピシッ!…ピシッ!

 

 女性は必死に馬に鞭を当て脱出しようとするも、馬の方も足場が悪く思うように馬車を引く事が出来ない。

 

 馬に言わせれば「ただでさえ荷物がクソ重てえのに、こんなグチャグチャな足場で馬車を引くなんて出来んがな!」と愚痴をこぼしたくなるであろう。

 

 傍らの村人達には他者を助ける余裕など無く、無情にも横を通り過ぎて行くばかりである。

 

 このままでは餓えと渇きで倒れるか、盗賊か野生の動物や怪異に襲われるか……いずれにしても待っているのは「死」だ。

 

(神なんて……“在る”だけでは何の力にもなりゃしないよ……誰か助けて……誰か……)

 

 絶望感から女性が“神ではない何か”に縋る様に祈っていると……

 

『嵌まっているだけだ!押すぞ!』

 

 そんな聞いた事のない言葉の声が聞こえたかと思えば、まだら緑の服を着た男達が馬車の後ろへと集まってくる。

 

『力の限り押せ!根性見せてみろ!』

 

 そう言って、馬車を押すのを手伝う。

 

『1・2・3……そーーれ!!』

 

 グググ……ガラガラガラガラ……

 

「ヒヒヒィィイン……ブルルル……」

 

 その甲斐あって、馬車はぬかるみから脱出して再び動きだす。

 

『よーし!次だ!』

 

「え…ちょっと、あんたたち……」

 

 そのまま男達は走り去って行く。

 

 女性は突然の事に戸惑って、男達に礼を言いそびれていた。

 

「何者だい?あの連中は……」

 

「さあ……帝国兵には見えないけど……」

 

 突然ふらりとやって来て炎龍の事を知らせたかと思えば、見返りを求めるでもなくああやって避難を助けている奇妙な格好をした連中に避難民達は奇異の目を向けるのであった。

 


 

 だが、彼らは馬車が動けないとわかった時は冷酷であった。

 

『駄目です、隊長。車軸が折れてます』

 

『……しょうがない、村長呼んできて』

 

 そして、彼らは壊れた馬車の前で呆然としている村人に、村長を通して説得する。

 

「そんな!荷を捨てて、これからどうやって生きて行けと言うんです!」

 

「……ここで歩みを止めても死を待つだけじゃ。ここは背負える分だけの荷を持って逃げるんじゃ」

 

「……わかり…ました……」

 

 そうして荷物をまとめさせた後、残りの荷物と馬車に火をかけさせる。そうなれば、いくら残りの荷物に未練があっても前へ進むしかないのだ。

 

「隊長、何故火をかけさせるのですか?」

 

「しょうがないでしょ?荷物を前に動こうとしないんだもの……」

 

 黒川の責める様な口調での質問に伊丹は事も無げに答える。

 

「車両の増援を頼めないのですか?」

 

「黒川ちゃん、ここはもう端っことはいえ敵の勢力圏内なんだよ?」

 

 なおも食って掛かる黒川に伊丹が説明する。

 

「そりゃ、力ずくで突破できなくもないよ。でも俺たちみたいな少数は見逃しても、相当数が自分の勢力圏に向けて移動すれば敵さんも動かざるを得ないでしょ?偶発的な戦闘、無計画な戦線の拡大、戦力の逐次投入、拡大する戦禍に巻き込まれる現地住民。考えるだけでゾッとする()()()……」

 

 その口ぶりから、既に上へ伺いを立てていた事を黒川も察する。

 

「だから俺たちが手を貸す……それだけしか出来ないんだよ」

 

 そう言われれば、黒川も納得せざるを得なかった。

 


 

 コダ村を出発してから数日……

 

 強烈な陽射しが降り注ぐ中、高機動車を先頭にコダ村の避難民達が列をなして移動する。

 

 しかしその歩みは遅く、歩くのと大差ない。

 

「こんな遅く車を走らせるの教習所の第一段階以来ッスよ……」

 

 アクセルを踏まず、クリープ現象だけで高機動車を進ませている倉田がそう愚痴る。

 

「しょうがないでしょ?村人達の移動手段は馬車に徒歩、その上疲れきってるし……」

 

 倉田は伊丹の言葉を聞きながらバックミラーにチラリと目を向ける。

 

 そこには、バックレストにしがみついて物珍しそうにフロントガラスを覗き込む子供の姿があった。更にその後ろには疲れきって動けない他の子供や怪我人、老人などの姿がある。

 

 すぐ後ろを進んでいる73式小型トラック(パジェロ)共々、高機動車の荷台にはそういった者達でいっぱいになっていた。食料や武器弾薬等の他の荷物は後続の軽装甲機動車(LAV)と中トラ改に積込んでいる。

 

 そうしてゆったりペースで進んで行くことしばし、太陽が中天に差し掛かって来た頃、伊丹が周囲の地形と手元の地図とをにらめっこして、おおよその現在地と当面の目的地までの大雑把な距離を測っていた。

 

「隊長、やけにカラスが多くないっスか?」

 

「そうだな……ん?」

 

 伊丹が倉田の言葉に生返事を返しながら双眼鏡で周囲を見回すと、その言葉の通りカラスが集まっており地面の方へ目を向けると……

 

「ゴスロリ少女!?」

 

「えっ!?」

 

 ……伊丹の言葉に反応し、倉田も双眼鏡で前方を確認する。

 

「うおっ!等身大の球体関節人形かよ?」

 

 倉田の言うように、見た目十代前半の人形の様な美貌を持つ少女が道の先の真ん中にしゃがみ込んでおり、その周りにカラスが群がっていた。

 

「あー…勝本、東、徒歩で先行して話しかけて。銀座事件で連れ去られた娘かもしれない」

 

 伊丹はそう言って、部下2人を先行させる。

 

「~~~~~~~」

 

「~~~~~~~」

 

 だが先行した勝本達の様子を見るに、コミュニケーションが上手くいっている様に見えない。

 

「……何か家出少女に職質している新人警官みたいっスね」

 

 その光景は、まさにそんな印象であった。

 

 そして先頭の高機動車が少女のすぐ近くまでくると、彼女はスカートの埃を払いつつ立ち上がる。

 

『ねえ~、あなた達は何処から来てぇ~何処へ向かってるのぉ~?』

 

『コダ村からだよ!お姉ちゃん!』

 

「……こっちの人か」

 

 特地語でのやり取りを聞いて勝本達は納得する。

 

「勝本達は後ろに戻って。後は俺が!」

 

「「了解!」」

 

 伊丹はそう言って勝本達を村人達のフォローに戻す。

 

『この変な格好の人達はぁ~?』

 

『よく知らないけど、逃げるのを手伝ってくれるんだ。いい人達だよ!』

 

『嫌々連れて行かれている訳じゃないのねぇ~?』

 

『うん、炎龍が出てきて逃げているんだ!』

 

「えーと……何を言ってるんだ?」

 

『伊丹さん……間違っても、僕を頼ろうとしないで下さいよ?』

 

 慌てて手帳を広げる伊丹に、ハイセは無線越しに釘を刺した。

 

『この荷車はどうやって動いているのぉ~?』

 

『わかんない、けど乗り心地は馬車よりもずっといいよ!』

 

『へえぇ~~~?私ぃも味わってみたいわぁ~~、その乗り心地……』

 

 そう言って少女はその見た目の年齢に似合わぬ淫靡な笑みを見せ、高機動車へにじり寄って来た。

 

 声だけを聞けば一発で通報·摘発ものの危険な台詞である……主に伊丹と倉田にとって。

 

『ちょっと詰めてぇ~』

 

「コラコラコラ!」

 

『ちょっ…狭いよ、お姉ちゃん』

 

「あぁ!羨ましいっス!」

 

『わぁっ!何持ち込んでるの!?』

 

「あっコラ!小銃に触るな!」

 

『………一体、何騒いでるんです?』

 

 ハイセが無線越しに呆れた声を出す。

 

 ゴトンッ!

 

 少女は荷台にハルバードを下ろし、周囲の迷惑そーな視線を他所に周りを見回す。どうやら座る場所を探しているよーだ。そして何かを思い付いたよーにポンと手を打ち、伊丹の膝の上にちょこんと座る。

 

「……ちょっと待て……」

 

 流石に伊丹も黙ってされるがままになるわけにはいかず、少女を膝から下ろした事をきっかけに伊丹と少女の大人げない助手席陣取り合戦が開幕した。

 

「~~~~~~~~」

 

『~~~~~~~~』

 

 そして最終的に伊丹が尻をずらして、助手席の右半分を少女に譲る事で決着がついたのであった。

 


 

 更に逃避行を続けること数日……

 

 馬車で移動している者の数は日に日に減っていき、徒歩で移動している避難民の比率が多くなった。

 

 炎天下を大荷物を背負いながら歩いているので、彼らの顔には疲労が色濃く映る。

 

 そんな中、中トラ改のガンナー用ハッチから身体を出して対空警戒を続けていたハイセは、不意に嫌な予感を覚える。それこそ得体の知れない“何か”が近づいて来ている様な……

 

「……ヒデ、対空レーダーに何か反応は?」

 

「?……いや、何も……」

 

 ヒデはそう答えるも、ハイセは嫌な予感を拭う事が出来ない。

 

『どうした、ハイセ?何かあったのか?』

 

「いえ……上手く言えないのですが……」

 

『……ひょっとして霊魂(ゴースト)の囁きか?』

 

「そんな…漫画じゃあるまいし……」

 

 伊丹の冗談を聞き流しつつ、ハイセは双眼鏡で監視を続ける。そして太陽の方へ目を向けると……

 

「……ん?」

 

 ……太陽の光の中に影が見えたかと思えば、急激に大きくなっていく。そして、気が付いた時にはその影は避難民達の列の後方へと飛んでいく。

 

「ッ!レーダーに反応ッ!」

 

 ヒデがそう叫んだ時には影……炎龍が既に避難民のすぐ近くまで近づいて来ていた。どうやら炎龍……正確にはその鱗にはレーダー波に対し、ある程度のステルス性能があるようだった。

 

「炎龍出現!避難民の後方が襲われています!」

 

 それから程なくして伊丹にそんな報告が入る。

 

「クソッ、こんな開けた場所で!総員、戦闘準備!」

 

 伊丹の号令に従い、それぞれの手に持つ銃に初弾を装填する。

 

『伊丹さん!念のために()()の使用許可を!』

 

 ハイセは中トラ改の中で無線に叫ぶ。

 

「アレって……まさか()()を使う気か!?いくら日本でテストされてたって言っても、ほぼぶっつけ本番だぞ!?」

 

『3偵に配備されたパンツァーファウスト3(LAM)は1発だけです!ワイバーンとの戦闘データを考えても他に3偵で奴に通用しそうな武器は()()しかありません!』

 

「……わかった!許可する!」

 

 そう言った後、隣の少女に語りかける。

 

「君、荷台に移ってくれないか?」

 

 だが少女に日本語がわかる筈もなく、キョトンとした顔で首を傾げる。伊丹は諦めて、3偵の指揮に戻る。

 

「総員!炎龍の注意を避難民から引き離すぞ!」

 

 そして伊丹の号令で3偵の車両は炎龍に突撃して行く。

 

「攻撃開始!」

 


 

 オマケ

 

 コダ村との第一次接触(ファーストコンタクト)(後編)

 

 小屋の中にいた悪ガキのリーダー格の少年は意識が朦朧としていた。彼は側近(の様な感じでつるんでいる幼なじみ)の子分2人共々、小屋の奥にふんぞり返って座っていたので逃げ遅れて気絶していたのだ。

 

(……ッ!ここは…そうか!確か小屋の中でしゃべっていたら……)

 

 徐々に気絶する前の記憶が鮮明になっていく。

 

「……ッ!……く……誰か……誰かいないか?」

 

「うう…ん……」

 

「痛ぅ……痛てててて……」

 

 その声を聞いてガキ大将の少年は安堵する。少なくともここにいるのは自分だけでは無いようだ。

 

 立ち上がって周囲を見回そうと思ったが……

 

「痛ッ!」

 

 左足と右肩に痛みを感じ、動きが止まる。

 

(こりゃ動けそうにないな……)

 

 少年は上体だけでも起き上がらせるため、左腕だけで器用に上体を持ち上げる。

 

「入口が……」

 

 見ると、入口の戸口が半ば塞がっていた。

 

 普段の自分ならば通れなくはないが、片腕と片足を痛めた今の自分は通れそうにない。

 

 他に周りを見てみると、自分以外に気絶しているのは近くにいた子分が2人だけの様である。他に人影は見えない。

 

「他の連中は……外に逃げたか、助けを呼びに行ったのか?」

 

 何にせよ、助けが来るまで待つしかないな……と、考えていると……

 

 カチッ…ガッ!

 

『~~~~~~~~~~』

 

「?」

 

 ……小屋の外から妙な音が聞こえたかと思えば、聞いたことのない言葉での話し声が聞こえた。

 


 

「隊長!仁科以下3名、現着しました!送レ!」

 

 仁科達3人は村の少年の案内の下、小屋の崩落現場へ到着した。

 

『現場の状況はどうだ?送レ!』

 

「小屋の外で負傷者2名を発見!現在彼らを保護した上、黒川二曹が治療中!幸いこの2人は命に別状はありませんが、他に3名が現在も崩落した小屋内に取り残されている模様!小屋内の状況は未だ不明!送レ!」

 

『現状で小屋の中に入れそうか?送レ!』

 

「屋根が入口側に崩れる形で出入口が塞がっています!完全に塞がれている訳ではありませんが、大人が出入りできる大きさではありません!送レ!」

 

『壁に穴を開けられそうか?送レ!』

 

「柱と壁でかろうじて屋根を支えているので得策ではありません!油圧ジャッキを使用して屋根を固定し、入口を広げる事を具申します!送レ!」

 

『了解した!道具を集めて中トラ改でそちらに向かう!仁科達は現場に待機!状況が変わったら連絡を寄越してくれ!送レ!』

 

「了解!終わり!」

 

 仁科が伊丹と無線でやり取りしている横で……

 

「あの男……さっきから1人で何をブツブツ言ってるんだ?」

 

「さあ……?」

 

 ……少し遅れて到着した村人達には無線の存在を知らないため、その光景は奇異に映っていた。

 


 

 それから10分ほど後……

 

 ブロロロ……キッ!

 

 中トラ改が現場に到着した。

 

「全員降車!救助作業かかれ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 伊丹の号令の下、3偵の隊員達が作業にかかる。

 

 ガチャ…ガシュン ガシュン……

 

「いいッ!?」

 

「わぁっ!何だ何だ?」

 

 そして、後部扉から“獄卒·弐式”特地仕様を着装したハイセも出てきて、スロープから地面に降り立つ。

 

 村人達が浮き足立っている間に、他の隊員達は屋根の下に油圧ジャッキを差し込み、ジャッキアップして屋根を固定する。

 

「佐々木二尉!頼みます!」

 

 入口近くで待機していた仁科がそう叫ぶと、ハイセがそちらに歩いて行く。

 

 一体何をするつもりだ?……と、村人達が固唾を飲んで見守っていると……

 

「よっ……と……」

 

 ヒョイ!

 

「「「「「………ッ!!?」」」」」

 

 ……彼らの常識ではとても信じ難い光景に村人達は目を剥く。

 

 大人が数人がかりでも持ち上がりそうにない屋根をたった1人で軽々と持ち上げていたのである。しかも、それを為しているのは、体格に恵まれているとは言い難い重鎧を纏った白髪の青年である。

 

 何故わざわざ重鎧を纏っているのか?何故重鎧を纏ったままあんな規格外の膂力を発揮できるのか?……と、村人達が疑問を抱くのを他所に、仁科がハイセの持ち上げた屋根の下に油圧ジャッキを差し込み、ジャッキアップして固定する。

 

「出入口確保!」

 

「富田!準備はいいか?」

 

「準備よし!いつでもいけます!」

 

 見ると、ACIES(エーシス)のモノクル型カメラ付ヘルメットを身に付けた富田が入口近くにいる。

 

「よし!富田二曹、小屋へ突入!救助にかかれ!」

 

「了解!」

 

 そして言うが早いか、富田は第五匍匐で小屋の入口を潜り抜け、中に入って行った。

 

「は…早い……あっという間に中に入っちまった」

 

 村人には体格のいい男が地面に這いつくばったかと思えば、そのままの姿勢であっという間に小屋の中に入って行った様に見えたのだった。

 


 

「……外で何が起きてるんだ?」

 

 小屋の外で人の気配や話し声が増えてきたので、人が集まって来ている事は理解できた。

 

 それからしばらくして……

 

『~~~~~~~~~~~』

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~』

 

『~~~』

 

 ……外で話し声が聞こえたかと思えば……

 

 ズルズルズルズリズリズリズリ……

 

 ……出入口が影に遮られた直後、小屋内に強烈な光が差し込んできたかと思えば何かが地面を這いずって中に入って来た。

 

「ヒッ!」

 

 いきなりの事態に少年は恐怖する。

 

『要救助者3名確認!』

 

「大丈夫?怪我はない?」

 

「ッ!?白髪の兄ちゃん!?」

 

 後者の声が聞き覚えがあったため、少年はようやく外の騒ぎの原因が自分達の救助に来たためだと悟ったのであった。

 


 

 富田が小屋に入った後、ハイセが中へ声をかけて中にいる子供達の無事を確認し、富田の手により3人とも無事に救助された。3人とも怪我をしていたものの、幸いにも命に別状はなく数日で治るとの事だ。

 

 そして悪ガキ集団は1ヵ所に集められ、それぞれの親にこっぴどく説教を受ける事になった。自業自得とはいえ、少年達が涙目になっていたのを見てハイセは同情を禁じ得なかった。

 

 救助作業に使用していた道具を片付けた頃には日が暮れかかっており、村人達が救助の礼をしたいという事もあり3偵はコダ村で一泊する事となった。

 

 翌朝出発する頃には救助作業の事もあり、最初に村人達が抱いていた疑念や疑心はかなり緩和されていた。そのため、最初の想定以上の現地の周辺情報や社会情勢を集める事ができたのである。

 

 そして村人達が見送る中、3偵はコアンの森へ出発した。3偵が炎龍を目撃して慌てて戻って来るのはその翌日の事である。

 


 

 この時は誰も気づかなかったであろう……

 

 この事件が()()()3()()()()()()()()()()()()()()()()()などと……

 


 

 兵器解説

 

・先進個人装備システム(ACIES) ver.5

 

 防衛装備庁によって開発された普通科隊員用の装備。複合センサーカメラ付ヘルメット、パワーアシストスーツ、ボディアーマー、携帯式情報処理端末及びそれらの動力源の小型バッテリーのセット。

 

 日本の防衛装備庁にて開発中だったACIESだったが、SAAの研究·開発開始により一気に開発が進み予想以上に早く実戦配備が行われた。

 

 SAAより安価で数も揃えやすく、ライセンスも必要としないことから隊内で広く普及されている。

 

 現場での運用によって運用データ及び問題·改善点が続々と集められ、年々ブラッシュアップが行われており劇中に登場したものは自衛隊で採用されている最新バージョンである。

 




 
 最近気温の変化が激しくて、うつ病の事を差し引いてもあっという間に疲れる……。

 暑い時は暑いから汗もダラダラ出てきてあっという間にのどが渇く……。

 コロナの事もありますから、皆さんも体調には注意してくださいね。

 ご意見、ご感想をお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。