ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 最近は気分が落ち込んだ後に元に戻るの繰り返しで、全く安定しません

 落ち込んだままでいる方が大問題なのですが……

 これだから、うつ病は嫌いなんだ………

 今回はピニャたち(+1名)が久々に登場!

 それでは!本編、スタートです!
 


緑の人の噂 (前編)

 

 前回までの経緯

 

 3偵、炎龍の注意を避難民から引き離すために戦闘に突入

    ↓

 ハイセ、炎龍にレールガンを放つも回避される

 続けて3偵の残りの面々も攻撃に加わるも、50口径以下の弾丸では有効打を認められず

 炎龍、苛立ち紛れに火炎(ブレス)を放つも回避される

    ↓

 3偵、エルフの少女(テュカ·ルナ·マルソー)の助言に従い炎龍の目に向け集中砲火

 炎龍が堪らず顔を庇って動きを止めた隙にLAMを発射するも、ガク引きして狙いが外れる

    ↓

 ハイセ、炎龍がLAMに気を取られている隙に軸足を狙ってレールガンを放ち、回避を妨害

 炎龍、倒れた拍子にLAMに被弾

 負け犬の遠吠えを放ちつつ、惨めに敗走する

 最終的にコダ村避難民の四分の一が犠牲となる

    ↓

 3偵、炎龍の被害者を埋葬して弔う

 コダ村避難民、それぞれの避難先に移動を開始

 伊丹、残された行き場の無い避難民達を引き連れてアルヌスへ帰還←今ココ

 


 

 アルヌスより北北東約200㎞地点

 イタリカより東方約100㎞にある宿場町

 

「「「「「炎龍を追い払った!?」」」」」

 

 ざわ……

 

「そーだよ!?私はこの目で一部始終ちゃーんと見たんだから!!」

 

 町にある酒場でコダ村出身という臨時雇いの女給が自慢気に話していた。

 

 ざわざわ……

 

「本当に炎龍だったのか?亜龍や新生龍の見間違いだったんじゃないか?」

 

「なにさ!私が嘘ついてるとでも言うのかい?」

 

「そうは言わねえけどよ……炎龍って言うのがどうにも信じられねえんだよ……」

 

 ざわざわ……

 

「まあ、実際に見た私も自分の目を疑ったものさ……最初は気でも触れたのかと思ったよ。私達は逃げるのに必死だってのに、あいつらは炎龍相手に逃げるどころか、立ち向かって行ったんだからね……」

 

「それだよ!相手が炎龍だと分かってて、立ち向かったってのが信じられねえ!」

 

「だな。炎龍に見た目が似た亜龍だと知ってたから立ち向かったんだろ?で、そいつを追い払ったもんだから、その連中が「炎龍を追い払った」ってフカシてんじゃねぇか?」

 

「あーもう、そんなに信じないってんなら、もういいよ!」

 

 事実を話しているにも関わらず、酔っ払い共は全く信じないので女給はヘソを曲げてしまった。

 

 ざわざわ……

 

「いや…まあ、あんたが事実を話していたとしてもだよ?常識的に考えると信じられねえってか、想像出来ねえんだよ……」

 

「そりゃあたしだって、この目で見てなきゃ想像もできなかったさ!」

 

「けどよ、龍って言ってもいろいろだぜ?亜龍も年齢を重ねると古代龍並みにデカくなるし、新生龍だって翼竜とは比べ物にならないぐらい危険だからよ……」

 

「だが、襲われたコダ村の連中は四分の一の被害ですんだって言うぜ?亜龍や新生龍に襲われたにしては被害がデカいし、炎龍相手だと少なすぎるぞ?」

 

「じゃあ、やっぱり相手は炎龍だったのか?」

 

「だから最初からそう言ってるじゃないのさ!」

 

「だとしたら、一体何者だ?そいつらは……」

 

 ざわざわ……

 

 ……と言った具合に、コダ村キャラバンを襲った炎龍が異国の傭兵集団に撃退されたという話は、生き残った避難民達の口から瞬く間に広まった。

 

 先ほど酔っ払い共が話していた様に、最初はその話を頭から疑っていた。特地の人間達にとって炎龍に挑むなど自殺行為であり、災害と同義に見られているためだ。

 

 魔法の武器防具を身に付けた騎士の一団に、1000人規模のエルフや大魔導師の援護があってなお、炎龍に挑む事は無謀と言われているほどなのである。

 

 それをろくに武具を身に付けていない、それもたった10人ちょっとの傭兵が「炎龍を倒す事こそできなかったが追い払う事に成功した」などと言われても、にわかには信じる事ができなかったのだ。

 

 だが複数の場所でコダ村の避難民が同じ事を話している事に加え、先ほど言っていた様に犠牲者が四分の一で済んだ事実から真実味が増して、どうにか信じる事が出来るようになっていった。

 

 彼らは本業の吟遊詩人ではないので語彙力は十分ではない上に描写も下手くそ。彼らも事実をありのままに話しているが、それが要領を得ない表現のためにかえって想像力を掻き立てられる。

 

 その話題に関しては、噂の尾鰭の付きやすさも相まって種々様々な憶測が飛び交い、浮かんでは消えていく。

 

 そうしてコダ村避難民を中心に、まだら緑の服を着た傭兵集団「緑の人」の噂が広がっていったのである。

 


 

 ワイワイ……ガヤガヤ……

 

「まだら緑の服を着た正体不明の傭兵団……騎士ノーマ、どう思われます?」

 

 興味深げに帝国准騎士ハミルトン·ウノ·ローが同席している男性騎士……帝国騎士ノーマ·コ·イグルーに尋ねる。

 

「どう、と言われても……汚い酒場に、マズい酒としか……」

 

 ノーマは濁った葡萄酒(ワイン)を口に含んで顔をしかめつつ、素っ気ない口調で答える。

 

「ノーマ…我々はアルヌスへの強行偵察行の途中なのだ」

 

 隣で麦酒(エール)のジョッキを傾けてノーマを咎めているのは帝国騎士補のグレイ·コ·アルドだ。その口調には、暗に「真面目に答えろ」と言ったニュアンスが含まれていた。

 

「シッ!声が大きいぞ!」

 

 そう言って小声で同じ(テーブル)に着いている()()()を叱責しているのは帝国第三皇女のピニャ·コ·ラーダである。現在彼女達はグレイの言うように、アルヌスへの偵察に向かうため途中にある宿場町を訪れていた。

 

 数日前……ピニャは皇帝(モルト)の勅命を受け、配下の薔薇騎士団(ばらきしだん)を引き連れて準備を整えた上でアルヌスへ移動を開始した……が、その途中で彼女は自ら斥候に出るため少数の供だけを付けて先行し、騎士団本隊を有事の際にあまり日を置かずに合流できる程度の距離を空けて後方に待機させていた。

 

 あまり大人数で移動していると、目立ちすぎて偵察に向かないためだ。

 

 同じ理由で現在彼女は身分を隠すために薄汚い騎士の身なりをしており、部下達もそれに合わせて前線へ出向く騎士とその従者といった格好で同行し、現在はこの宿場町の酒場の一画を占有している。

 

 ここへ来たのはどんな些細なものでもいいから、アルヌスの敵に関する情報が来ていないかを確かめるためである。些細な噂話でもそれが重要な情報に繋がっている可能性がある。酒場に来ればそういった情報を集めやすいと踏んでいたのだ。

 

 ところが飛び交っていたのは“炎龍が現れ「緑の人」がそれを撃退した”という噂話で酒場はその話題で持ち切りだったのである。

 

 炎龍の話……全くのデタラメでは性質(タチ)が悪すぎるし、ホラ話にしては出来過ぎているので恐らく事実であろうと考えている……ということもあって、彼女らはとりあえず耳を傾けていた。

 

 そして話を聞き終えた後、ハミルトンがノーマに尋ねていた、という訳である。

 

「……これだけ大勢の避難民が口にしているのだから、恐らく事実だろう……全員で口裏を合わせているとは考えにくいしな。だが、やはり相手が炎龍だったとは信じられんな」

 

 ノーマはグレイに咎められた事もあり、とりあえずは正直に答える。話を聞いた大半の人間は大体同じ感想であり、ノーマもそう考えていた。

 

「私はここまで口をそろえて言っているのならば、信じてもいいと思います」

 

「本当だよ、騎士さんたち」

 

 そう言って、先ほどの女給が葡萄酒(ワイン)麦酒(エール)を載せた盆を片手に卓に近づいて来た。

 

「炎龍だったよ、あれは。間違いなくね」

 

「ハッハッハ…私は騙されんぞ、女!」

 

 ノーマが頭から信じてない顔でそう言うので、女給はムッとした顔になる。

 

「まあまあ……私は信じるから、その話を詳しく教えてくれない?」

 

 ハミルトンはそう言って不服顔の女給を宥めつつ、チップとして金貨を一枚差し出す。

 

「ありがとう、若い騎士さん」

 

 途端に女給は上機嫌となり、横からチップをひったくった。

 

「これだけしてもらったんだ。とっておきの話をしないとね」

 

 シィ……ン……

 

 そう言ってコホンと咳払いすると、周囲は水を打ったように静かになった。どうやらこれからする話は、周囲も初めて聞くようである。

 

「私達が炎龍から逃げるのを手伝ってくれた緑の人は、全部で十四人。女が二人いたよ」

 

「女はどんな姿だった?」

 

「フン、男ってのはみんなそれだねぇ……」

 

 半ば以上予測していたノーマの質問に、女給は呆れ気味に鼻を鳴らす。

 

「まぁいいや……一人は背の高い女だったよ……」

 

 そう言って女給……メリザは炎龍から逃亡していた時の事を話していった。

 


 

『あれは、コダ村を出て2日目ぐらいの夜だったかねぇ……』

 

 メリザは所用(紳士諸君は追及しない事をオススメする)で旦那と息子のいる場所から離れていて戻ろうとしたが、篝火(かがりび)があるとはいえ周囲が暗く、かなり広い範囲で避難民が夜営していたので、旦那たちが馬車を止めていた場所を見失っていた。

 

「参ったねぇ……」

 

『そう言って、私は立ちつくしてたんだけど……』

 

「どうかしましたか?」

 

 その声に振り向くと、そこにいたのは普通科装備に身を固めて、小銃を手に歩哨をしていたハイセと黒川であった。

 

『そこに声をかけてくれた奴の片割れがその女だったんだよ。直接声をかけたのは男の方だけどね……』

 

「ああアンタは……確かササキって言ったっけ?」

 

 そう言って、メリザは親しげに返す。

 

『そいつは最初に村へ来て、息子がヤンチャした時ずいぶん世話になってねぇ。比較的言葉が通じる事もあって、わりと親しくさせてもらってたよ』

 

『おいおい、今は女の話をしてるんじゃなかったか?』

 

『しょうがないだろ?そいつとはあまり言葉が通じなかったんだから…話は最後まで聞きな!』

 

 見知った顔を見て安堵したメリザは事情を話すと、ハイセが旦那たちを見た場所を覚えていたので送ってもらった。

 

「すまないねぇ…」

 

「いえ、ちょうどそっちへ戻るところでしたから……」

 

 そうして、話をしながら歩いていたが……

 

「フン!人の荷物に火をかけておきながら、いけしゃあしゃあと……」

 

「ちょっと、アンタ!」

 

 ……そんな声が聞こえてきた。振り向くと恨めしげな目を向けた男と、止めようとしているその妻らしき女がいた。

 

『……だけど、避難民の中には早々に馬車が壊れて荷物を捨てざるを得ない奴もいてね……まあ、私らも何日か後に馬車が使えなくなったんで、その時に荷物を捨てたんだけど、中には捨てる荷物の側で未練がましく突っ立ってる奴もいて……業を煮やした緑の人が荷物に火をかける様に言ったんだよ。そうすれば、いくら荷物に未練があっても前に進むしかないからね……』

 

 そうして荷物を失った避難民たち(の一部)がハイセを睨み付けていた。

 

「お前たちが荷物を燃やしてくれたお陰で、俺たちゃ明日も知れないその日暮らしだ!」

 

「「「「「そうだそうだ!」」」」」

 

「アンタ!」

 

「だから、やめなって!」

 

 側にいる一部の者が止めようとするも、彼らは止まらない。

 

『主だってそれをさせていたのはその男じゃなく別の奴らだったけど、比較的大人しそうなその男と女の組み合わせだったからね……そいつらが反論して来なさそうだったから、ここぞとばかりに不満をぶちまけて来てね……』

 

「大体、もっと早くお前らが……」

 

「いいかげんにしなッ!!」

 

 ビクッ!!

 

 とうとうメリザは、たまりかねて大声で一喝した。

 

「ったく……いつまでも過ぎた事をグダグダと!大体こいつらが炎龍の事を知らせて来なけりゃ、下手すれば今ごろ逃げる間もなく喰われてたかもしれないんだよ!?その後も、今この時も私らが逃げるのを手伝ってくれてるじゃないのさ!」

 

 そのセリフで、ハイセを責めていた者たちは言葉に詰まる。

 

「それだけじゃなく、水も食料も薬も分けてくれてるし、動けなくなった怪我人や年寄りや子供も自分たちの荷車に乗せて連れていってくれてるじゃないのさ!」

 

「「「「「……………………」」」」」

 

「そりゃ、やり方は過激だったかもしれないけどね!あのまま荷物と一緒に立ち止まっていたら、盗賊か怪異か……下手すれば炎龍に襲われてたかもしれないんだよ!感謝しろとまでは言わないよ!だけどね、こいつらを恨むのはさすがに筋違いってもんさ!」

 

 メリザがそう言うと、その男たちはすごすごと引き下がって行った。

 

「……すいません……」

 

「ったく……負い目があるのはわかるけどね、少しは反論したらどうなんだい?」

 

「……あの人たちの不安もわからなくはないですからね……どんな形であれ、不満をぶつけずにはいられないんですよ」

 

「だからって、されるがままになることはないだろ?八つ当たりのためのカカシじゃないんだから……」

 

 ガッ!

 

『こちら、伊丹(アヴェンジャー)!ハイセ、さっきの騒ぎは何だ?送レ!』

 

「ちょっと失礼、『こちら、ハイセ(オーガ6)!先ほど、昼間に荷物を燃やされた避難民たちがいきり立ってましたが、現地住民がその場を納めてくれたので大事には到っていません!送レ!』」

 

『こちら、アヴェンジャー!了解した、対応策はこちらで考える。そろそろ交代時間だから、切り上げて戻ってこい!送レ!』

 

『オーガ6、了解!終わり!』

 

 ハイセが通信を切ると、メリザがじっとハイセを……正確には彼の持つ無線機を注視していた。

 

「な…何です?」

 

「いや、さっきから気になってたんだけど、それってやっぱり遠くにいる奴と話をするための魔導具かい?」

 

「え…ええ、大体そんなものです」

 

 はぁ~便利な道具だねぇ、などと話し込みながら移動している内に目的地までたどり着いていた。

 

「母ちゃん!」

 

「メリザ!心配したぞ!」

 

 そこへ、メリザの夫と息子が迎えに立っていた。どうやら、先ほどの騒ぎを聞いて心配していた様である。

 

「じゃあ、僕たちはこれで」

 

「ああ、わざわざありがとうね」

 

『ちょうど、すぐ近くにアイツらの荷車が停めてあってね。その後、そいつらはそっちへ戻って行ったんだけど……』

 

 メリザと別れた後、ハイセたちは夜営中の伊丹たちの近くに行き、敬礼する。

 

『交代時間です!』

 

『了解!』

 

『おっ、次俺たちか……』

 

 ハイセたちが戻ったのを確認して、仁科(にしな) 哲也(てつや)一等陸曹と戸津(とづ) 大輔(だいすけ)陸士長が立ち上がり、歩哨を交代する。

 

『ご苦労さん、装備を解いて休んでいいよ』

 

 そう言って、戻ってきたハイセたちを伊丹は労った。

 

 仁科たちに歩哨を引き継いだ後、ハイセと黒川はそれぞれ身に付けていた装備を解く。

 

 シュルッ……ファサッ……

 

 黒川も小銃の安全装置を懸け、装具を一通り外した後に鉄帽を脱いで纏めていた髪を解いていた。

 

 「ほぇぇ……」

 

 メリザはその様子に魅入られて、目を離す事が出来ずにいた。

 




 
 呆けているメリザをそのままに、後半へ続く!
            (CV.キートン山田)

 今回は長くなってしまったので分割します

 後半は本日12:00に投稿予定です

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