酒場でのお話、後半です
1話で終わらせるはずがとんでもねえ量に……
過去編を書いた時の反省が全く生かされてない
「まるで成長していない………」(by.安○先生)
……とりあえず、本編スタートッス……
………はぁ~~~~~~………
「……野宿の時に兜を脱いで、馬のしっぽみたいに束ねていた髪を解いたところを見た時は、あたいは女ながら見惚れたねぇ。カラスの濡れ羽色って言うのかい?艶の入った黒髪がとっても綺麗でさ。どうしたらあんな色艶になるのか、言葉が通じるんだったら是非教えてもらいたかったよ。体つきもほっそりしていてね、異国風の美女って言うのはああいうのを言うんだろうねぇ……」
オオオオオオオオォォォォ……
女の描写に男たちは色めき立つ。
「ほぅ、で、もう一人は?」
「ありゃあ、猫みたいな女だったね。小柄でさ。髪は栗色で、男みたいに短くしてたよ。元気な娘で、面倒見がよくって子供たちはなついてたね。それと、腕っぷしも凄くて男連中は結構怖がってたね。コダ村から出て3~4日ぐらいの道中でも……」
「何してくれやがんだ!テメェ!」
「うるせぇ!テメェがボサッとしてんのが
街道の道端で、避難民同士の喧嘩が始まっていた。
気を揉んでいるのは当事者の関係者だけで、他の者たちは我関せずと無視して横を通りすぎており、止める気配はない。
『……ウチの亭主が、モルの旦那と喧嘩をおっ始めてねぇ……え?喧嘩のきっかけは何かって?……ここで言うのも恥ずかしいぐらい些細な理由だよ。今思っても、くだらない話さ……』
メリザたちも、喧嘩を遠巻きに見ていたが……
「兄ちゃん!こっちだよ!」
……メリザの息子が、ハイセと栗林を連れて現場にやって来た。
「二人とも!何やってるんですか!?」
「うるせぇ!関係ねぇ奴はすっ込んでろ!」
ハイセは、中重量級のプロボクサーの打ち合いに割って入るレフェリーの様に、二人の喧嘩を止めに入る。
「落ち着いて!一体何があったんです!?」
「黙れ!お前にゃ関係ねぇ!」
ハイセは二人を宥めるも、当事者二人は興奮していて話を聞こうとしない。
ハイセはどうにか落ち着かせようと、二人を宥め続けていたが……
ガシッ!グイッ!
……栗林はハイセの首根っこを掴んで、二人から強引に引き離すと……
ヒュッ!ブォッ!
ガッ!ゴッ!
「ゥッ!!」
「ァッ!!」
……右足を一閃して、二人をハイキックでKOしてしまった。
『……その時、喧嘩している亭主とモルの旦那との間にやって来て、右足を目にも止まらない速さでビュンって振り回して、大の男二人をあっという間にのしちまったんだ……』
蹴りを叩き込まれた二人は完全に白眼を剥いている。
『ちょっ……栗林さん!やり過ぎですよ!』
『甘いよ、ハイセ!口で言っても聞かない奴は、実力行使で黙らせるのが一番手っとり早いのよ!』
ハイセの抗議に栗林はしれっと反論する。
『大体、アンタのやり方はぬるいのよ!下手に出て相手を説得するだけで、何でも解決出来る様なら世話ないわ!時には手を上げてでも、相手にガツン、と厳しく言ってやらないと!』
『いや栗林さんの場合は、口より先に手が出ているだけなんじゃ……』
『何か言った?』
『イイエ、ナニモ…』
栗林に凄まれ、ハイセは口ごもった。
『……そいつも、その娘に凄まれて腰が引けてたよ。まあ、本人の性格ってのもあったんだろうけどね……』
栗林は一度、その場を離れかけて……
『あ、それと、起きたら「次やったら、こんなものじゃ済まさない」って伝えておいて!』
『ア、ハイ』
……そう言って、今度こそ、その場から離れて行った。
「世話かけちまったねぇ……」
その後、入れ替わりでメリザがやって来る。いつの間にここへ来ていたのか、隣にヒデの姿もあった。
それを見て、ハイセは頭を下げようとしたが……
「ああ、気にしなくていいよ。こんな状況で、くだらない喧嘩しているウチの亭主どもが悪いんだから。アイツらにゃいい薬さ」
……メリザは苦笑しつつ、そう言った。
「そ…そんなものですか……?」
「アンタも相当なお人好しだねぇ……まあ性格からして、相手に強く言えないのもわかるけどさ……」
そして、倒れている男たちに目を向けると……
「……ま、とりあえず亭主どもを、馬車の荷台にでも放り込んどくれ。あの娘の伝言は、あたいが伝えておくよ」
……そう言って、息子と共に自分たちの馬車を引っ張りに行った。
「……てな感じで、並の男じゃ話にならないってほど腕の立つ女だったね」
シィ………ン………
周囲は、話が始まる前とは別の意味で静まり返っている。どこか白けた空気が漂っていた。どうにも彼女の話はお気に召さなかった様である。
もっとも更に言葉を続けると、態度を180度変えてしまう事をメリザは知っているのだが……。
「体つきは凄かったね。さっきも言ったように小柄なんだけど、胸が牛並みに突き出ていてね。そのくせ腰が細く引き締まっているってのが許せないね。顔は綺麗というより可愛いって感じでさ」
オオオッ!!
途端に男どもは歓声を上げた。
「ちっ、やっぱり……」
予想通りの反応で、メリザは思わず舌打ちする。客が喜ぶのはいいが、本人としては面白くない。
「ま、そう言うわけでいろいろあったけど、あたいらは何とか進んでいたのさ。だけどね、あいつがやって来たのさ……」
いよいよ話は核心に迫っていくので、酔っ払いたちは固唾を飲んで話に聞き入った。
コダ村から離れて数日。
持ち出した水も食料も底を着きかけ、避難民たちは満足に食事も取れない中、気力だけで進んでいた。
『……そんな中、動ける者は動くけど、動けなくなった者はその場に座り込んじまう。そうなっちまった者は、緑の人が自分たちの荷車に乗せてくれたけど、全員を乗せられる訳じゃない……』
せめて息子だけでも、とメリザが考えた時、それまで晴れていた空で急に日が陰った。
雨でも降るのか、と上を見上げると……
バサッ!バサッ!バサッ!
「ギャオォォォォオス!!」
……すぐ近くの空に、炎龍がやって来ていた。それを見た避難民たちが凍りつく。
『……赤い龍。腕と足が付いてて、背中にはコウモリの様な翼を広げたでっかい奴さ。それが空を覆っていたのさ……』
そして獲物を見つけた炎龍が急降下して来て、次の瞬間には目の前にいたモルの旦那とその女房がいなくなっていた。
一瞬の出来事で、その場に残っていたのは二人の下半身だけであった。
「「「「「「うわぁぁぁぁあッ!!」」」」」」
避難民たちは事態を理解する前に、本能的な恐怖から逃げ出した。子供のいる者は子供を抱えて、荷物を抱えた者は荷物を打ち捨て、死に物狂いでひたすら逃げる。
暴走した荷車が横転して、それに巻き込まれて死んだ者も多い。
炎龍は
『……ところがさ、緑の人たちがやって来たのさ……』
メリザはこれまでの強行軍に加えて、先ほどの全力疾走で足が限界に来ていた。
「メリザ!立つんだ!」
「もう駄目、足が……」
「母ちゃん、立って!逃げないと!」
ズシン!ズシン!ズシン!
炎龍がメリザたちに狙いを付けたのか、彼女たちをなぶるように歩いて近づいてくる。
彼女たちは恐怖から足がすくみ、絶望から死を覚悟したが……
ダタタタタタタ……
キンキンキン!チュンチュン……
……そこへ中トラ改がやって来て、車載機関銃で炎龍に攻撃を加える。
『……ものすごい速さで走る、馬の引かない荷車であっという間にやって来て、魔法で炎龍を攻め始めたんだ……』
しばらく攻撃を続けていると、コンテナの上面ハッチからハイセがレールガンを手に持って出てくる。
『……そいつが見たことのない大ぶりの杖を持って、荷車から体を出して杖を構えたんだよ。あたいが思うにありゃ特別な魔法で、撃つまでに時間がかかる代物だね……』
そして、レールガンを銃架にセットして射撃準備を整える。
『……え?どんな魔法だったかって?……確かに実際に見てたけど、あたいも見当がつかないねぇ。何せ「ジェネレェタァセツゾクカクニ!エネルギィチャァジカイシ!レェザァショウシャ!タァゲットロック!」って詠唱した後……』
ドギュウゥゥンッ!!
バキャンッ!!
『……炎龍に向かって光が走ったかと思えば、右頬の鱗が砕かれていたからねぇ』
『おいおい、炎龍の鱗って言えば伝説級の防具に使われるほどの代物だぞ?そんなものを、たった一発で打ち砕いたのか?』
『その通りさ。そん時あたいは思わず「惜しいっ!」って叫んでたよ。炎龍が首をひねって魔法を躱したから右頬を掠っただけだったけど、もし炎龍に躱されてなかったら、その魔法は頬じゃなくて脳天にぶち込まれてただろうからねぇ』
「グルゥアァァァァァアッ!!」
すると炎龍は無力な避難民ではなく、自分の鱗とプライドを砕いたハイセに狙いを変えて襲いかかろうとしたが……
ドタタタタタタ……
ダタタタタタタ……
キンキン!ガン!バキン!チュイン!
『……そん時には、遅れてやって来た残りの緑の人たちが攻撃に加わってたんだよ……』
グオンッ!!
ブロドドドドド……
ダタタタタタタ……
「メリザ、立て!今のうちに逃げるぞ!」
「立って!母ちゃん!」
「あ…うん、そうだね……」
メリザは炎龍がハイセたちに気を取られている隙に、夫の肩を借りて息子ともども炎龍から離れて行った。
『……そいつらの魔法は鱗を砕いたそれと違って、炎龍には効きやしない。だけど、緑の人たちは諦めなかった……』
ブオンッ!!
ドタタタタタタ……
グオンッ!!
ダタタタタタタ……
『……炎龍の周りを荷車で走り回って、避難民たちが少しでも逃げられる様にと、攻めるのをやめなかった。そのお陰で逃げ延びた者も少なからずいたよ。かく言うあたいもその一人さ……』
炎龍はハイセたちに襲いかかろうとするも、車両でちょこまかと逃げ回る彼らを捕えられずにいた。苛立ち紛れに
『……だけど、炎龍も緑の人たちのすばしっこさに少しずつ慣れていった。離れたところから魔法を浴びせるしかない彼らは次第に追い詰められていった……』
ドギュゥンッ!!
バキィンッ!!
『目だ!目を狙え!』
ドタタタタタタ……
ズドドドドドド……
ダタタタタタタ……
ギンギン!ガン!ギン!バキン!
「グロォォオ!オウゥゥゥゥゥウ!」
『よし!動きが止まった!勝本ぉ!パンツァーファウスト!』
伊丹の号令で炎龍の目に集中砲火を浴びせた後、勝本に命じる。
『……ところがさ……緑の人たちの頭目が何かを叫んだんだ。そしてついにアレが出た』
『アレとは?』
『最初に出したのとはまた別の特大の魔法の杖さ。あたいらは勝手に「鉄の
ドッ!!バシュウゥゥゥゥ……
『……炎龍は最初に放った魔法…あたいらは「光の
ドキュンッ!!
バスンッ!!
「ガアァァアッ!?」
『……炎龍が「鉄の逸物」に気を取られている隙に、「光の魔杖」で邪魔をして躱せないようにしていたんだ。そして……』
キュドオォォォォォォオン!!
「ギィアアァァァァァアッ!!」
『……とんでもない音と一緒に、炎龍の左腕が吹っ飛んだんだ……』
それこそが、無敵を誇っていた炎龍が敗退する瞬間であった。
「ガアァァァァァァァァァアッ!!」
『……炎龍はその事が認められないのか、雄叫びをあげて緑の人たちを威嚇してたんだけど……』
ドギュンッ!!
ギャン!!
「グルゥァアッ!!」
『……緑の人は怯むどころか、逆に炎龍に魔法を撃ち返したんだよ……』
「グルゥゥゥ……ガアァァアッ!!」
バッ!バサァッ!!
「ギャオォォォォォオスッ!!」
バサッ!バサッ!バサッ!
炎龍は傷を負い、大地を震わす大音声の悲鳴をあげ、無様に逃げ去って行った。
シィ………ン………
物語りが終わり、酔っ払いどもは余韻に沈黙していた。
「て…鉄の逸物……?」
ざわざわ……
メリザの例えに彼らは愕然としたものの……
「ま…まぁ、アンタが凄まじい経験をしてきたってのはわかったよ……」
ガヤガヤ……ざわざわ……
……酔客の一人がそう言うと、彼らは互いに感想を言い合い、酒場は次第に元の喧騒を取り戻していった。
「と…とにかく、立派な者たちです。異郷の傭兵団の様ですが、それほどの腕前と心映えならば是非とも味方に迎えたいと思いますよ」
「それはさすがに早計だと思います」
それまで黙っていた従者の一人がそう言った。
彼はアルヌス戦役の生き残りで敵をよく知っており、ゴダセン議員の推薦で薔薇騎士団の助言者として同行していた。
「?……それは、どういう……」
「お姉さん!ちょっといい?」
「何?追加の注文かい?」
「いや、ちょっとさっきの話で、確認したい事があって……」
従者の一人……アントニオがメリザに声をかける。
「さっきの話に出てた、緑の人が使ってた杖だけど……魔法を撃つ時、杖をこんな風に構えてなかった?」
アントニオは腰に提げていた剣を鞘ごと抜いて、構えて見せた。地球側の人間がそれを見れば、ライフルを構えている様に見えたであろう。
「そうそう!アンタ、よくわかったねぇ!」
「やっぱりか……」
アントニオはそれで「緑の人」の正体を察した。
「妾は無肢龍を撃退した連中の持つ武器に興味がある。女、お前の見たという連中が所持していた武器は、どのようなものであった?」
ピニャはメリザに対して、尊大な態度で質問する。
メリザはその態度と自分の呼び方が癪にさわったものの、チップを弾んでくれた騎士の顔を立てて素直に応じた。
「なるほど……で、無肢龍を撃退したという杖……鉄のイチモツだったか?それと同じ形であったか?何かに似た形状はあったか?出来るだけ見たままに言え」
「無肢龍じゃなくて炎龍だと言ったろ?」
メリザはそう言うと、周りの男連中を見回して嫌らしい笑みを浮かべて言った。
「イチモツは逸物だよ。あんたみたいなのをカマトトって言うのさ。まぁ、良家のお嬢様には想像つかないだろうね……だけど、男を知っている女に尋ねたら口を揃えて言うだろうね」
そう言ってメリザはキシシと笑う。
「ありゃ、男のナニにそっくりだったってね。ま、小脇に抱えられるほどのデカくて黒くてぶっといナニを持ってる男なんて、そこらにゃいないだろうけどね」
「おーい!エールもう一丁!」
「こっちはマ・ヌガ肉追加で!」
「はーい!ちょっと待っとくれ!」
それだけ言って、メリザは別の卓へと注文を受けに行った。
ピニャには何の事かわからず、部下の男連中を見回すが……
ササッ!プイッ!
……全員揃って顔を背け、酒杯を傾けたり皿に盛られた肉にかじりついている。
中には「あ~不味い…場末の安酒場じゃあ、こんなものか」などと、わざとらしく話題を逸らす者までいた。
そして、ピニャの視線は最後にハミルトンを捉えていた。
「ハミルトン…お主、確か婚約者がいたな?」
ブッ!!
まさか、自分にお鉢が回ってくるとは思ってなかったのか、ハミルトンは口に入れていたスープを盛大に吹き出してしまっていた。
「ひ…姫様!?確かに、私には婚約者がいますが……私は
「ほう……
「あっ……」
盛大に自爆するハミルトンであった。
ちなみにその後ピニャは結局、言葉の意味を知る事が出来なかったとか………。
次回の投稿は未定です
……すいません、気長に待っててください
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