ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 いや~、暑い暑い………

 この時期になると一言目には「暑い」二言目には「ダルい」ばかりになりますね………

 ……え?前回の後書きで何処かに拉致られたんじゃなかったかって?

 イヤイヤイヤ、イッタイナニヲイッテルデヤンスカ?ワタシハチャントココニイルデヤンスヨ、HAHAHA!

 ……あれ?今、私何か言いましたっけ?

 ……まあ、いいか……

 今回は避難民キャンプでの1日です

 ソレデハ、ホンペンスタートデヤンス!

 ……あれ?
 


アルヌスでの日常 (1)

 パッパパッパ♪パッパパッパ♪パッパパッパ♪パッパパー♪

 

 パッパパッパ♪パッパパッパ♪パッパパッパ♪パッパパー♪

 

 地球時間 日本標準時 06:00

 

 アルヌス駐屯地から起床ラッパが鳴る。

 

 毎日同じ時間に規則正しくラッパが鳴るので、避難民たちも起床と活動開始の合図としていた。

 

 自衛官たちも同じ時間に活動を始めているので、誰が決めた訳でもないが避難民たちも自然とラッパを合図に活動を始める。

 

 これは終業ラッパの時も同様である。

 

 起床や昼食、仕事終わり等にちょうどいい時間にラッパが鳴っているので、避難民たちも生活リズムの合図として利用していた。

 


 

 レレイたちの一日の始まりは、まず水を汲むことであった。

 

  当然のことながら特地には水道やシンク、ましてや洗面台などといった便利なものは無い。 したがって 、近くの水源から水を汲んでくる必要があるのだ。蛇口をひねっただけで、いつでも必要な水を用意できる現代日本とは違い、何に使うにせよ水を汲んで来なければ、顔を洗う事も食事を作る事もままならないのである。

 

 幸いにも飲料水は現在ジエイタイが支給してくれているので、飲み水に困るという事はまず無い。だがそれにも限りがあるので、生活に必要な水は可能な限り自分たちで調達していた。

 

 水源に着いた避難民たちは、水を汲んで顔を洗う。その際に便利な道具をジエイタイは用意してくれていた。「センメンキ」という小振りのタライである。

 

 洗濯に使う大きなタライと違って、1人で水を汲む事ができ、そのまま顔を洗う事もできる。何でできているのか、軽い上に丈夫な素材でできていた。よく難民キャンプに来るササキに聞いてみたところ「ぷらすちっく」というものでできているらしい。

 

 詳しく聞きたいところだったが、彼は現理(現代で言うところの物理学)にはあまり明るくないらしく、セキユという地下資源の油からできているという事しか知らず、詳しい製法までは知らないとの事であった。

 

 顔を洗い終え水瓶に水を汲んで仮設住宅まで戻り、キャンプの片隅に置いてある大瓶に汲んできた水を入れて蓋をする。これで必要に応じて、大瓶から水を汲み出して使用するのである。

 

 それが済んだら、避難民たちが総出で朝食の準備に取りかかる。仮設住宅ができるまではジエイタイが保存食を用意し、仮設住宅ができて少し経つまではフルタが朝食()作ってくれていたが、次第に自分たちで用意する様になっていった。

 

 イタミが言うには、あまりジエイタイが手を出しすぎると自立心……つまり、自ら生活を成り立たせようという意識まで奪ってしまうため、手助けはするが自分たちでできる事は自分たちでやってもらう、という事らしい。

 

 レレイ自身もギブアンドテイクを基本理念としているため、その理屈は理解できた。

 

 それに、子供たちを含め大勢で集まってワイワイ騒ぎながら食事の用意をするのは、なんだかんだで楽しいものである。

 

 とはいえ最初はフルタにいろいろと教えて貰っていたが、やはり彼の作った料理に比べれば自分たちで用意したものは何かと物足りなく感じる。

 

 聞けば元はフルタはニホンの一流料理店で包丁を振るっていた料理人で、自分の店を開くためにジエイタイに入隊したというのだ。

 

 つまり元とはいえ彼はプロの料理人であるため、自分たちの料理が物足りなく感じるのも当然と言える。

 

 更に言えば、地球側でも日本の料理は全般的に世界トップクラスの質を誇る。味においても衛生面においても。

 

 日本は料理に対して器一つ、包丁技一つ、手順一つ、材料一つ、味付け一つ、火加減一つなどを取っても神経質なほど徹底的にこだわる。

 

 衛生面においても同じ事が言え、「本当にここまでやる必要があるのか?」と言われかねないほど徹底している。それこそ蟻の這い出る隙も無いほどに。

 

 故に、日本へ来る観光客の目的(というより楽しみ)は「日本の美味しいものを食べる」というものがほとんどなのである。しかも「日本の食べ物は安全」という認識が世界に共通してあるため、安心して食べる事ができる。

 

 世界の半分以上の人間が「食」に対して関心が薄い中で、ここまで「食」にこだわる民族がいる国というのはある意味異常である。

 

 非常事態だったとはいえ、そんな国の食べ物を毎日食べ続けていては舌が肥えるのも当然と言えた。

 

 レレイはコダ村に戻ったら、その時の食事に満足できるのであろうか、という不安を密かに抱えるのであった。

 


 

 パッパパパッパ♪パッパパパッパ♪

 

 パッパパパッパパ♪パパパパパー♪

 

 地球時間 日本標準時 08:00

 

 アルヌス駐屯地から課業開始のラッパが鳴る。

 

 朝食の後に食器を洗って一息ついていた避難民たちは、そのラッパを合図にして動き始める。

 

 次は彼らの当面の仕事である鱗の剥ぎ取り作業である。皆、自衛隊から借りた防護服を身に付け、翼竜の死体置き場に向かう。その手には自衛隊から借りたヘラとバケツが握られている。

 

 大人の中には、骨折を含む怪我をしている者が半数を占める上、老人もいる。そのため、これらの作業は子供たちが中心に行う。生活がかかっているためか、皆その表情は真剣である。

 

 ガッ!ガッ!コツッ!

 

 不意に穴の空いた鱗の部分にヘラが当たると、何か引っ掛かる感触がした。最初は驚いたものの、こういった事が何度もあればもう慣れっこである。

 

(ッ!これはひょっとして……)

 

 穴の周囲をほじくり返していくと予想通り、先端部分が潰れた鉛の(やじり)が出てきた。

 

(……やはり、彼らの攻撃は魔法ではなく……)

 

 この他にも、レレイは何度か駐屯地の周辺一帯で金属製の細い筒……空薬莢を拾っていたので、独学で自衛隊の攻撃の秘密をほぼ把握していた。

 

(……もはや、戦い方が根本的に違う。帝国軍も連合諸王国軍も敗れたのは必然……)

 

 このまま戦争を続ければ、帝国は自らの傲慢さ故に滅びの道をたどるだろう……と、レレイは冷静に予測するのであった。

 


 

 パッパパパッパ♪パッパッパッパッ♪パーパパッパッ♪パッパッパー♪

 

 パッパパパッパ♪パッパッパッパッ♪パーパッパパー♪

 

 地球時間 日本標準時 12:00

 

 アルヌス駐屯地から昼食ラッパが鳴る。

 

 これを合図に避難民は作業を一旦中断する。

 

 本来なら先に何人かが仮設住宅に戻って昼食の準備を進めるのだが、今のところはその必要がなかった。現時点での彼らの昼食は自衛隊が支給してくれている携帯糧食Ⅱ型(通称パック飯)である。

 

 これは調理済みの料理を予め袋詰めにしている物なので、そのまま暖めて器に盛るだけでできる便利な代物だ。そのため彼らは比較的時間を取られる事なく、すぐに食事を取れる。

 

「美味っ!」

 

「うん!やっぱ、おいしー!」

 

 前述した様に、日本の食事はレベルが高い。

 

 そのため娯楽の少ない避難民たちにとって、毎回の食事はこの上ない楽しみとなっていた。

 

 レレイもその事実は疑いようが無いし、そもそも文句を言うつもりも無い。しかし……

 

 ブロロロロロ……キッ!

 

 その時、一台の高機動車が近くに止まる。

 

 ガチャッ!

 

「お疲れ様でーす!」

 

「お疲れ様ぁ~!」

 

「ありがとー、助かったわ!」

 

 そこから降りて来たのは、ロウリィとテュカの2人である。

 

 高機動車を運転しているのは倉田だ。

 

「聖下!テュカ姉ちゃん!おかえりー!」

 

 2人は自衛隊側から「是非、やっていただきたい仕事がある」と言われ、朝からアルヌス駐屯地に出向いていた。

 

「おかえり、2人とも!ごはんはどうする?」

 

「大丈夫よ!アルヌス駐屯地(上の砦の中)の食堂で食べて来たから」

 

「あー、美味しいもの食べて来たんだー!」

 

「ふっふーん!あっちでお仕事して来た者の特権よ!」

 

「まあ美味しいと言えばぁ~、美味しいんだけどぉ~味付けが濃いのよねぇ~」

 

 どうやらロウリィも、日本の食べ物にレレイと同じ感想を抱いている様である。

 

 自衛隊員の食事は、業務に身体を動かすものが多いせいか濃い目に味付けられる傾向がある。身体を動かし消耗する機会が他業務に比べて多いため、毎回の食事は高カロリーに設定されているのだ。

 

 そのため、調味料が塩か高価な香辛料ぐらいしかない特地での食事に慣れていたレレイやロウリィには、日本の料理は味付けが濃いと感じるのである。

 

「それで2人とも、仕事はどうなったの?」

 

「うん!私もロウリィも自分の知識を生かせる仕事に就く事ができたわよ!」

 

 テュカの言う様に彼女は環境アドバイザーとして、ロウリィは宗教·祭祀アドバイザーとして自衛隊に雇われる事になった。

 

 これはハイセが「この世界の自然や宗教に対して無知なまま、これ以上施設を広げるのは不味い」と進言して、その双方に詳しいであろう2人に仕事の話を持ちかけた事がきっかけであった。

 

 上層部も、自然破壊や宗教が原因で現地民や自然保護団体と余計な摩擦は生みたくない、との考えに至り2人を雇う事に合意した。

 

「あ、それとレレイにも仕事の話があったわよ!」

 

「……私に?」

 

 それまで黙々と食事を進めていたレレイに、話題が振られる。

 

「うん!こちらの言葉がわかる人間がまだ少ないから、通訳をやってくれないかって」

 

 現在でも彼らを始め、こちら側の人間と会話できる人間は偵察隊の者を含めても少ない。かといって、実際にこちら側で交流する機会の少ない幹部自衛官たちでは、会話が成り立つほど特地語を覚えるのにまだ時間がかかる。

 

 ならば自衛隊側と面識があり、会話が可能なほど日本語に通じて、なおかつ比較的こちらの意図が伝わりやすいレレイに通訳をして貰おう、という話になったのである。

 

「……わかった。引き受ける」

 

「え?まだ詳しい話は何もしてないのに?」

 

 レレイがあまりにもあっさり引き受けるので、テュカは面食らう。

 

「私も彼らには興味がある。彼らを知るには言葉を覚えるだけでなく、彼らと触れる機会が多い方がいい」

 

 こうしてレレイも後日に自衛隊側と交渉の末、通訳として雇われる事となった。

 


 

 パッパパパッパ♪パッパパパッパ♪

 

 パッパパパッパパ♪パパパパパー♪

 

 地球時間 日本標準時 13:00

 

 午後の課業開始のラッパである。

 

 避難民たちも昼休憩を終え、作業を再開する。

 

 とはいえ、現在の特地は夏の様な気候である。日差しが強くなる前の午前中にバケツいっぱいの鱗などを集め、午後からは帆布で日差しを遮った場所のテーブルの上で、収穫物の仕分けと洗浄を行う。

 

 水の張ったタライの中に収穫物を入れ、取り出した後に別のバケツに入れた水ですすいだ後、水気を拭き取ってテーブルの上に置き、カトーとレレイが仕分けする。

 

 そして仕分けの終わったものから、日なたに出して乾燥させる。前日から出してあって、乾燥し終えたものは大きさや種類別に袋へと入れる。

 

 売り物にならない欠けたものや小さなものは使い道が見つかるまで保管され、街へ売り出す予定のものはカトーの部屋へ移動させて、売り出す時までカトーが管理する。

 

 後に「アルヌス協同生活組合」と呼ばれる避難民たちの集団はこうして黎明期の商品の在庫を確保していった。

 


 

 パーパパーパ♪パーパパーパ♪

 

 パパパパパパパーーーーーー♪

 

 地球時間 日本標準時 17:00

 

 課業終了ラッパとともに、自衛官たちはその日の業務を終える。

 

 だが避難民たちにとっては、一日で最も楽しみな時間が近い事を意味していた。

 

 ブロロロロロ……キッ!

 

 昼間と同じ様に、高機動車がやって来る。

 

 ガチャッ!

 

「よぉ、元気してるか?チビども」

 

「あっ、フルタのおじさん!お疲れ様ー!」

 

 降りて来るのは明日の朝の食材と昼食、そしてこれから作る夕食の食材とともにやって来た古田である。彼は現在も避難民たちに夕食を作っている。

 

 それは3偵の任務として以上に、彼自身にも理由がある。彼は将来自分の店を持つ事を踏まえて、異世界の住民たちに自分の料理とその腕がどこまで通用するのか試したい、という意図があった。

 

 更に日本の料亭にいた頃は厨房に籠りっきりで、客の顔を見る事がなかったので、今の様に食べる人間が「美味しい、美味しい」と言ってくれると作り甲斐がある、といった理由もある。

 

 ちなみに彼がまだ料亭で新米だった頃、腕は立つが性格が最悪で同僚からも「清々しいほどの下衆」「京都が生んだアックマン」「悪い方向にどこまでも進化するゲッ○ーロボ」と称される銀髪の先輩が、自分の教育係だった事もあってその妹と2人がかりで自分をオモチャにしていた記憶も一緒に甦りかけたが、どうにか押し留める。

 

 ガチャッ!

 

「みんな、お疲れ様ー!」

 

 そしてやって来たのは古田だけではなく、高機動車にはハイセも同乗していた。

 

 最近ハイセは課業終了後に難民キャンプに通いつめている。それは避難民たちの様子を確認しに来ているという意味もあったが……

 

「あっ、ハイセ兄ちゃん!()()聖下に叩きのめされに来たの?」

 

「こらこら!そういう事言わない!」

 

「……ハイセは「兄ちゃん」なのに、俺は「おじさん」なのか……」

 

 ……ハイセの本来の目的は、ロウリィに実戦形式で稽古をつけてもらうためだ。その左手には袋に包まれた木刀がある。

 

 難民キャンプにも、ロウリィが使うための木製ハルバード(ハイセのお手製)が置かれている。

 

「本当によく来るわねぇ~。向上心があってぇ~稽古熱心なのは結構だけどぉ~、下手したらぁ~怪我じゃ済まないわよぉ~」

 

「……無力を言い訳にして、何もできないのは嫌なんですよ……少なくとも僕自身が力を身に付けて、できる事が増えるのならば、それだけでもやる価値はあります」

 

「……わかったわぁ~、相手してあげるぅ~」

 

 ロウリィ自身も向上心のある()()を鍛える事にやり甲斐を感じるので、喜んで稽古相手を務めていた。

 

 ガンッ!バキッ!ゴスッ!

 

 ドカッ!ガスッ!ゴンッ!

 

 ボコッ!ドゴッ!ベキッ!

 

 もっとも避難民の少年が言う様に、その内容は()()()()()()()ハイセがロウリィに一方的にボコられるているだけ、というものであったが。

 

 ロウリィが言うには……

 

「確かに傍目にはぁ~私が一方的に叩きのめしている様に見えるけどぉ~、彼には見込みがあるしぃ~着実に地力は上がってるわぁ~」

 

 ……との事であった。

 

 そして稽古の後にハイセが地面に大の字で倒れている光景は、今や避難民たちの間では日常茶飯事と化していた。

 


 

「よーし!できたぞー!順に運んでくれ!」

 

 古田の号令で、器に盛られた料理を子供たちが中心になってテーブルへと運ばれて行く。

 

「わぁ~、いい匂~い!」

 

 器からは食欲をそそられる匂いが漂ってくる。

 

 やがて、料理が配り終えて避難民たちが全員テーブルにつく。

 

「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」

 

 今では避難民たちは、食事の前にそう言う様になっていた。

 

 最初はハイセたちが食事の前にそう言っているのを子供が真似ていただけだったが、ハイセにその意味を聞いたところ……

 

「『いただきます』というのは、『あなたの命をいただきます』『育てた命をいただきます』って意味が含まれてるんだ。人間に限らず、生き物は他の生き物を食べていかないと生きて行けないからね。日本人は食事の前に、犠牲になった生き物に対して感謝と敬意を込めて『いただきます』って言ってるんだ」

 

 ……といった話を聞かされたので、宗教的な意味合いも含めて今では避難民全員が食前にそう言う様になっていた。

 

「う~ん、やっぱりおいしー!自分で作ったものとは天と地だよ!」

 

 なんだかんだで件の先輩にオモチャにされつつも行動を共にする事が多かったせいなのか、その数年後には古田もその男に比肩するほどの板前に成長していたので、彼としては内心複雑である。

 

 ♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪~♪~♪~……

 

 その時、古田の懐から着信音が鳴る。

 

「はい、もしもし…ああ、檜垣三佐ですか……」

 

 現在、駐屯地では試験的に特地内(アルヌス)限定で携帯電話の中継アンテナが立てられている。有線電話だけでは連絡に不備が出る上、記録の残る無線を基地内で使うのは躊躇われるからである。

 

 取り敢えず基地内で隊員の個人携帯のみが繋がる様にしておき、後に日本側からの電話も発着信出来る様にする予定である。

 

 元々は地球側ヘ電話するためには外出許可を貰った後『門』を通って銀座側に出て外出手続きを踏み、日本側で電話をした後に再び入場手続きを踏んで特地側に戻る必要があるので手間がかかりすぎるという声が上がり、現在地球側に繋がるケーブルとアンテナを設置している最中なのである。

 

「いえ、こちらではまだ……はい…はい…わかりました、見つけたら連絡します」

 

 ピッ!

 

「Last Kiss……三船(みふね)さんの曲ですね……」

 

 着メロがアイドルソングとは意外です……と、ハイセは述べる。

 

「……ああ、昔から彼女のファンでな……それよりハイセ、隊長を見なかったか?」

 

「伊丹さんですか?……いえ、見てませんが?」

 

「……また仕事をほっぽり出して、姿を眩ましたらしい……たった今、見かけたら連絡をくれと檜垣三佐から連絡があった」

 

「……ホント毎回懲りませんね……もういっそのこと、抜き打ちの追跡訓練(フォックスハンティング)に組み込んでしまった方がいいんじゃないですか?」

 

「おいおい……頼むから、恐ろしい事言わないでくれよハイセ……」

 

「「うわっ!びっくりした……」」

 

 突然近くから声が聞こえて振り向けば、伊丹が避難民にしれっと混じって食事をしていた。

 

「伊丹さん!いつからここに居たんですか?」

 

「ああメシを配られていた時から、ずっとここにいたよ……」

 

 そーいえば、器を出す手の中に迷彩服の袖があったな……と、考えつつ古田は携帯を取り出そうとする。

 

「まったく……塩見(しおみ)さんと同レベルの神出鬼没ぶりですね……」

 

 ピクッ!

 

「ちょっと待て、ハイセ……今、塩見って言ったか?」

 

 突然古田が手を止めて、ハイセに詰問する。

 

「え、ええ……言いましたが?」

 

「……そいつのフルネームは?」

 

「塩見 周介(しゅうすけ)さんですが……?」

 

「……何故、その名前を知っている?そいつとは何処で会った?」

 

「え…えーと……友達に346プロダクションの関係者がいて、その人によく引き摺り込まれる居酒屋の店長さんなんですよ……」

 

「……そういや、さっき「三船さん」と親しげに呼んでたが、その関係での知り合いなのか?」

 

「というか、その店長さんは三船さんの旦那さんです」

 

 ピキッ!

 

「…………今、何と?」

 

「え?いや、だから塩見さんが三船さんの……」

 

 ピクピクピクッ!

 

「ふ…古田さん?一体どうしたんですか?」

 

 ハイセは古田の豹変ぶりに戸惑う。

 

(どぅわぁれ)ぇがぁ~!?(どぅわぁれ)ぇのぉ~!!?旦那だってぇ~~~!!!??」

 

 ハイセの言葉が耳に入った途端、古田の脳裏に自分をオモチャにしていた先輩……塩見 周介とその妹……塩見 周子(しゅうこ)、そして「三船 美優(みゆ)電撃入籍!」という数年前の新聞記事が浮かんでいた。

 

「ちょっ……お…落ち着いてください!」

 

 この後暴走する古田を、ハイセは1時間かけて何とか宥めたのであった。

 

 ちなみに伊丹は、この騒ぎの傍らちゃっかり姿を眩ましていたとか……

 


 

 こうして、避難民キャンプでは騒がしくも楽しい毎日が送られていた。

 

 ……それこそ、炎龍による悲劇に哀しむ暇など無いほどに……

 




 お気付きの方もいるでしょうが、今回登場した「塩見 周介」はハーメルンSSで(TADA)先生が連載されている「俺が美優にプロポーズするまで」の主人公です

 本作では古田が料亭で修行していた頃の先輩という設定にしています

 (TADA)先生!キャラクターの採用を許可していただき本当にありがとうございます!この場を借りて、お礼を言わせていただきます!

 本当にありがとうございました!

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