皆さん、お待たせして申し訳ありません!
うつ病の療養の傍らコツコツと執筆を続けてようやく投稿できる状態にまでなりました!
それでは、本編スタートです!
翌朝 07:15時頃
アルヌス駐屯地 課員食堂
「あ~、とうとう知られちまったか……」
「え?皆さんご存知だったんですか?」
「まーな、できるだけ古田には知られない様に立ち回っていたが……」
現在ハイセは3偵の面子と朝食を取っている。
そこで、彼は昨日の騒ぎについて話していた。そして返ってきたのが冒頭のセリフである。
勝本たちが言うには……古田と同一の駐屯地から来た隊員に話を聞いたところ、古田が料亭での修行時代に自分のオモチャにしていた先輩の事をよく愚痴っており、話に聞いていたその男の非常識な言動と行為、経歴から件の先輩の正体が「塩見 周介」である事を察していた。
その男は一般人であるにもかかわらず、そのブッ飛んだキャラクターにより一部でカルト的な人気を誇り、下手なタレントよりよほど有名だったのである。その上、数年前のクリスマスライブで(罰ゲームじみた形ではあったが)公開プロポーズまでやっている。
一部の者たち……346プロダクション制作の「346どうでしょう」というネット番組を見ていた者を初め三船 美優の周囲に詳しい者たちには周知の事実だったが、古田自身は自衛隊員の多忙さ故それらに目を向ける余裕も無く、またその関係の報道から意図的に目を逸らしていた。そのため、2人の結婚披露宴の件も知り得なかったので、結果的に相手が「一般男性」である以上の事は知らなかったのだそうだ。
件の同僚によると、古田は普段は温厚そのものではあるが、事「塩見 周介」の事となるとその時にはもう呪詛めいた言動を放つ様になっており、今もなおその事実を話せずにいたという。
「ハイセも昨日の古田の有り様を見たろ?相手が
「……僕が話の流れで、結果的にバラしてしまった訳ですね……」
「気にするな、ハイセが
そうしてハイセたちがテーブルを囲んで話し込んでいる横を、若干やつれた顔をした伊丹が通りかかる。
「あっ、伊丹さん!おはようございます!」
「おはようございます、隊長!……って、なんか顔色悪いっスね」
「ああ、朝っぱらから檜垣三佐に大目玉食らってな……」
何でも起きた早々に檜垣が伊丹の下にやって来て、昨日の件で今の今まで
「起床ラッパの直後に檜垣三佐がやって来るもんだから堪えること堪えること……」
「隊長が真面目に仕事してれば済むことじゃないですか?」
「
「そうですよ、栗林さん……隊長に真面目さを求める事自体、無理というものですわ」
「
3偵の女性陣2人のあんまりな言い様に、さすがの伊丹も突っ込む。
俺は何時だって真剣だぞ!……と、全く説得力のないセリフを隊員一同が聞き流していると……
「ハイセ~~………」
「わっ!?……び…びっくりした、古田さんですか……」
……ハイセが背後からの声に振り向けば、幽霊の様な顔色をしている古田が立っていた。
事情を知っている面子が声をかけるのを躊躇っている中、ヒデが声をかける。
「あっ、古田先輩!おはようございます!昨日は衝撃の事実を聞いて、ずいぶん取り乱していたそうで……」
(((((何やってんだ、ヒデェェェェェッ!?いきなり傷口に塩を擦り込む様なマネをォォォォォッ!!)))))
3偵の面々が内心でヒデに突っ込んでると……
「ああ、その件か……料亭で修行していた頃に何度かアイツと一緒にいる所を見ていたから、全く予想してなかった訳じゃないさ……それより、ハイセ……」
「は…はい?何でしょうか?」
古田の様子に腰が引けているハイセに、古田が据わった目をして訊ねる。
「SAAのクラダーライセンスを取るにはどうしたらいい?」
「ヘ?」
(((((古田ァァァァァッ!?お前一体SAAで何をするつもりだァァァァァッ!?)))))
これより後、古田がAAM-007-02JSγ「獄卒·弐式改·重駆逐仕様」で「居酒屋しんでれら」にカチコミをかけに行くのは、今より1年以上後「閉門騒動」の2週間ほど後の事である。
同日 09:48時
アルヌス駐屯地敷地内 SAA用野外演習場
(やれやれ……困ったときに、何でもかんでも僕にお鉢を回してこないでほしいよ……)
朝の騒ぎと先ほどのミーティングを思い返し、SAAを着装した状態のまま演習場で実験開始時間を待ちながらハイセは内心ため息をつく。
現在ハイセはAAM-007JS「獄卒·弐式·重武装仕様」の試作型ミサイルランドセル·ユニットの稼働試験前の待機中である。
この試験は試作品が完成した後に何度もテストプランを上層部へ提出していたが、SAA単体にそこまで火力は必要無いだの、銀座事件での教訓から対人制圧力の方が重要だからだのと何かと理由を付けて今まで延期されていた。
だがドラゴンとの遭遇戦の報告を受けて、現状の装備のままではそのような危険生物と相対したときに太刀打ち出来ないとの結論に至り、急遽他の試験予定を差し置いて重武装ユニットの試験を優先して行う事となったのだ。
この試験には防衛省のスーツ組や政治家たちも特地までわざわざ立会いに来ており、現場で実際に試験をするテストクラダーや政治家たちに対応している者たちはひどく気を遣う。そんな中、上官たちが実技担当テストクラダーの押し付け合いをやらかした挙げ句、ハイセにお鉢が回ってきたのである。
『ハイセ、間もなく試験開始時刻だ』
アキラから無線が入り、ハイセは思考を中断する。
『先ほどミーティングで言った通り、ユニットのフル装備状態で機動性のテストを行った後、ミサイル及び
無線を通して、アキラの口から淡々と試験スケジュールが告げられる。
無人機で何度かテストは行われているものの、有人機でのテストはこれが初めてである。ハイセは何が起こるかわからない緊張感から若干身を強ばらせる。
『再三言っている事だが、少しでも危険を感じたら即座にテストを中断しろ。機体の替えは効いても、貴様に替えは効かん。テストの成否よりもテストクラダーである自身の生存を優先するんだ』
「了解です」
アキラの指示に返答しつつ、ハイセはこれから始まるテストに意識を向ける。
『開始10分前!』
『走行ルートを送信!』
『了解!』
ピピッ!
即座にハイセのSAAへ機動性テストの走行ルートが送信され、
(……これは相当、上下左右に揺さぶられるな……もっとも、そうでなければ機動テストの意味は無いけど……)
ハイセはルートを確認して、そう考えた。
脚部のクローラーがかなり幅広のものを採用されていると言っても、これでは身体のバランスを保つのに相当苦労させられそうである。
(背面ブースターでバランスを取るにも、限界があるしな……クローラー付スタビライザーの採用を、検討した方がいいかもしれない……)
テストの始まる前から、そんな考えが浮かぶ。
しばらくあれこれ考えながら、ハイセは試験走行のルートを頭に叩き込む。
『開始10秒前!…9…8…』
テスト開始のカウントダウンが始まり、ハイセは身構えた。
『…4…3…2…1…試験スタート!』
キイィィィ………ィィイン………
(……やっぱりランチャーをランドセルに収納する形になるよう進言していて正解だったな。ランドセルか肩の上に設置していたら、重心が上に偏り過ぎて走行の勢いで転倒してたところだよ……)
試験走行ルートをSAAで走破しつつ、ハイセは自分の進言の正しさを実感する。
『機動走行試験クリア!続けて、ランチャーとFCSの稼働テストに入ってください!』
「了解!FCS起動!ランチャー展開!」
ピピッ!ガコ……ン……
SAAにオペレーターからの無線が入り、直後にハイセはFCSを起動させミサイルランチャーを肩の上に展開させる。
「FCS、動作及びSAAとのリンクに支障なし!ミサイルランチャー、展開終了!」
『了解しました!ターゲットドローンを起動させます!』
ビイィィィ……ン……
オペレーターの宣告後、演習場の空に標的用のドローンが飛び立ち、ハイセのHMDに3D映像の炎龍がドローンに重ねて映し出される。
ピッ!ピピッ!
「
バシュバシュバシュッ!
そしてSAAに搭載されているミサイルが発射される。そのミサイルは狙い違わずドローンへと飛んでいき……
ズドドドォォン!
『命中!命中!命中!全弾命中!特地甲種害獣〈ドラゴン〉に撃墜判定!』
……ドローンにミサイルが命中してデータ上の炎龍に撃墜判定が出る。その判定結果にハイセは……
(やれやれ…何て、おめでたい連中なんだ。この程度で炎龍に撃墜判定を出すなんて……僕の報告書をちゃんと読んでいなかったのか?)
……上層部の認識の甘さに、内心でため息をつく。その甘さのツケを払う形でヤバい目に会うのは、現場で戦う隊員たちなのである。
『気持ちは解るが、腐るなハイセ。これもSAAの開発を続ける上で必要な事だ』
アキラが秘匿通信でハイセを宥める。わざわざ秘匿通信を使ったということは、アキラも内心ウンザリしているのであろう事をハイセも察する。
今でこそ寛容になってきているが、かつて政界では太田区の“アオギリの樹”の殲滅前までSAA開発に懐疑的な意見が主流を占めていた。未だに他国の紐付き議員の間では、それが根強く残っている。特に自衛隊嫌いの
今回の様に防衛省のお偉方と試験に立会って来ている者はまだマシな方で、酷い場合は試験結果はおろか資料すら目を通さず反発ばかり繰り返す議員すらいるのである。
彼らは何かにつけて表向きはSAAの開発中止と配備の撤廃、裏では開発予算の差止めや開発データの海外各国への差し出しを迫る等の様々な横槍を入れてくる。そのためSAA開発の必要性と有用性(と
そのため(日本が脅威であることを相手に実感させる事も含め)気持ち評価が大袈裟にならざるを得ず、かつ中核技術は秘匿する必要がある……もっとも、それら各国との丁々発止のやりとりは外務省の役人の役目なのだが。
先ほどの会話で、ハイセはその事を察した。
バシュバシュバシュッ!!
ズドドドォォォォオン!!
(ひょっとしたら、僕が出した
敵戦車に見立てたスクラップにミサイルを撃ち込みつつ、ハイセは懸念を抱く。
今後任務中に炎龍に類似した甲殻生物と遭遇した時に備え、前回の任務で火力が圧倒的に不足していた事から、ハイセは装備の追加申請を行っていた。が、この有様を見るに、書類が通っているどころかマトモに目を通していない可能性すらある。最悪、現状よりも更に火力を封じられた状態で任務に駆り出される事も想定する必要が出てきた。
その事実にハイセは気が重くなるのであった。
その後、ランドセルユニットをパージして機動走行試験をつつがなく進めてから試験は終了した。試験終了してから帰り際まで政府のお偉方が見当違いの懸念やらイヤミやらを投げ掛け、応対している篠原陸将補や亜門一佐をウンザリさせていたのを見ていたハイセは「ご苦労様です」と内心で手を合わせるのであった。
ちなみにハイセの懸念に反して装備追加の申請は、現場に対して理解のある狭間陸将の尽力によってしっかり通っていた。その事を知ったハイセは心底安堵していたとか……
この試験の後、SAAの重武装ユニットの有用性に一定の理解が得られ、開発続行の許可が得られた。そして、種々様々な増加武装ユニットが試作されていくこととなる。
しかしその僅か数週間後、特地にてその破壊力と猛威を印象付ける大規模戦闘が起こるとは、この時は誰も予想し得なかったのである。
兵器解説
・AAM-007-02J 獄卒·弐式改
現在の主力SAA「獄卒·弐式」にブラッシュアップを重ねた末に完成し、後に自衛隊の主力SAAとなる機体。
次世代量産型の試作機として
そこで、現主力機の「獄卒·弐式」を基本スペック·量産性·整備性·現場での稼働率を向上させる方向に改修する計画が立案され、実行される流れとなる。
特地における「獄卒·弐式」の仕様変更と一般隊員による特地でのSAA運用データ、更に3偵で運用されていた同一の機体でリミッターをカットした状態と再搭載した状態で運用したという事実から改修の方向性が決定。
スペック面では一般隊員では扱えないほどピーキーにした上で
これによりクラダーの力量に合わせてリミッターを調整する事でライセンスを取得して間もない新人からハイスペックな機体を好むベテランまで幅広いニーズに応える安定した運用を可能とする機体が完成し、パーツのユニット化で前線での運用効率·稼働率共に向上したため現場の隊員たちにも好評であった。
後にこの形がSAAの機体構造のスタンダードとなり、この機体が主力SAAとして自衛隊に採用される事となる。
・AAM-007-02JSγ 獄卒·弐式改 重駆逐仕様
獄卒·弐式改の装備バリエーションの1つで「単騎で中隊規模の敵を殲滅する」というコンセプトから採用された強襲用重武装SAA。
背部ランドセルに多数のミサイルランチャーが搭載され、左前腕部にグレネードマシンガン、右前腕部に12.7㎜重機関銃が装備され、全身に爆発反応装甲が増設されている。そのためSAA単騎で部隊規模を殲滅する火力と多少の攻撃にはびくともしない重装甲を誇る。
また外付け式のクローラーユニットを下駄の様に両足ヘ取り付ける事で、短時間かつ直線的ながら高速移動を可能としている。
その火力により局地における強襲·殲滅戦で圧倒的な力を発揮するが、従来の機体より大容量のバッテリーを採用しているにもかかわらず、その重武装を運用するための機体出力と多数の武器を有する故の煩雑な火器管制にリソースの大部分を割いているために稼働時間は極めて短い。
・SAA用増設型ミサイルランドセルユニット
SAA用重武装ユニットの試作型の1つで、最初に完成したもの。
破壊力を減ずること無く小型化したミサイルを多数搭載し、なおかつ機動性を損ねないように可能な限り軽量化とブースターの高性能化を実現させた。
開発当初はランチャーを展開するタイプか、そのままランドセルや肩の上に搭載するタイプか、
他にも近距離戦闘用の広範囲殲滅のための連装型ミニガンユニット、中遠距離支援用の無反動砲ユニットなども現在開発中である。
長い間お待たせさせてしまったお詫びと言うわけではありませんが、本日は2話投稿させていただきます
次の話は本日12:00に投稿予定です
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