ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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プロローグ
第二次アルヌス攻防戦 ~自衛隊サイド~


 

 一寸先も見えない闇の中。

 

 その闇を強烈な光………ヘッドライトで切り裂きつつ進んで行く車両の列(コンボイ)の姿があった。

 

 その車両は現在では旧式に分類される戦車を先頭に各種装甲車両·大型SUV·トラックといった構成で全てOD(オリーブドラブ)色に塗装されている。

 

 軍用車両の集団である。

 

 当然それらに搭乗しているのは、車両を所有している軍事組織の構成員……軍人もしくは兵士と呼ばれる人間である。その戦闘服に刺繍されている所属国を示す国旗は白地に赤丸………日本国であり、彼らはあくまで『軍人』ではなく『自衛官』と呼ばれる。

 

 彼らは皆、一様に緊張した面持ちで車内で待機していた。彼らを送り出した総司令官……狭間陸将に「『門』を抜ければ即戦闘になるつもりで心掛けていてほしい」とつい先ほど訓示を受けたばかりである。

 それでなくとも()()()()()()()で少なくない犠牲者………それもほとんど罪の無い民間人が犠牲になっている………が出ているので(いや)が上にも緊張感が増す。無辜(むこ)の民間人を虐殺された憤怒をこの先に起こりうる戦闘にぶつけようと考えている隊員も少なくはないだろう………自衛官としては決してほめられたものではないが………。

 

 その車内に待機している隊員達の中にあって異様な風貌の一団がいた。

 

 彼らは現代戦ではまずお目にかかれない………それでいて現代的なデザインの重鎧をその身に纏っており、目元に暗視ゴーグルを彷彿させるセンサーカメラを備えた鉄帽(ヘルメット)を身に着けていた。その手には各々の得物………カービンライフルやバトルライフルを持つ者、片手にそれぞれショートカービンと複合装甲の盾を持つ者、三脚の付いた重機関銃やガトリングガンを持つ者もいた………を持ち、迫り来るであろう出撃の時を待ち構えている。

 

 その中の一人、佐々木(ささき) 琲世(はいせ)二等陸尉に通信が入る。

 

 敵影を発見したという報告は無いし目的地に到着するにしては早すぎるので雑談の類だろう。しかもそんな目的でわざわざ自分に通信を入れる様な人間には1人しか心当たりが無い。

 

 無線封鎖をしているわけでは無いし、作戦行動中の雑談にわざわざ目くじらを立てられる事も無いが困ったものだ………と内心苦笑しながら回線を開く。

 

 『こちらロッド5。もうずっと真っ暗闇の代わり映えの無い風景にいいかげん飽きてきたぜ~。話し相手してくれよハイセ~。送レ。』

 

 「こちらオーガ6。作戦中に雑談で無線を使うなよ………またアキラさん(オーガ2)にカミナリを落とされるぞ………。一緒になって怒られる僕の身にもなってくれよ………。送レ。」

 

 『こちらロッド5。固いこと言うなよハイセ~。戦闘前のリラックスタイムだって!緊張しっぱなしだと疲れるだろ?大体このままじゃ退屈で死にそうなんだよ~。送レ。』

 

 「こちらオーガ6。そんなに退屈ならクルマに同乗してる草場さん(ロッド3)にでも相手してもらえよ………。わざわざ無線を使うから怒られるんだろ?送レ。」

 

 『こちらロッド5。草場さん(ロッド3)は作戦中になるとダンマリになるんだよ~。話しかけても全く反応無いしさ~。送レ。』

 

 (だからって無線を使ってまで僕に水を向けるなよ………)内心でロッド5………永近(ながちか) 英良(ひでよし)三等陸曹(通称ヒデ)に呆れるハイセ。

 

 『こちらオーガ2。ずいぶん退屈をもて余してる様じゃないか2人とも。』

 

 そこへオーガ2………真戸(まど) (あきら)三等陸佐から2人の会話に割って入るように………それはもう地獄の底から響くような押し殺した声が無線に入る。

 

 もっとも、声とは裏腹にそれほど怒っているわけではない。()()()()()()声が低いためそう聞こえるだけで雑談に目くじらを立てるつもりはないが、それに無線を使っている事に立場上咎めないわけにはいかないだけである。

 

 『退屈しのぎもいいがほどほどにしておけ。そろそろ作戦目標に着く。装備品の点検は怠るなよ。送レ。』

 

 その声に2人とも気を引き締め直す。決して気を抜いていた訳ではないのだ。

 

 ハイセは手に持っている銃火器………64式小銃改と新型の9㎜機関拳銃、そして自身が纏っている重鎧………機動重装甲冑(SAA)と備え付けのセンサーカメラの動作を入念にチェックする。このチェックを十全にするかしないかで生死を分けるということを()()()()()()()()嫌というほど思い知らされているのである。

 

 装備品のチェックをしている間にも真戸三佐(オーガ2)永近三曹(ロッド5)の無線を介した会話は続いていた。会話の流れからまたしても一緒になって怒られる事が確定したらしい。トホホ………と肩を落としてチェックを続けるハイセ。

 

 それからしばらくして、コンボイの先頭を走る旧式戦車………74式戦車改から部隊全体に通信が入る。

 

 『出口が見えたぞ!』

 

 その通信を皮切りに部隊全体へこれまで以上の緊張が走る。

 

 「「「「「「「「「「いよいよか!!」」」」」」」」」」

 

 車内に待機している隊員達はこの後に迎えるであろう戦闘を今か今かと待ち構える。何人かの隊員は緊張から手に汗が滲んでいくことを実感していたがそれを止められる者はいなかった。

 

 『こちらオーガ1。』

 

 そこへオーガ1………ハイセの所属している部隊の指揮官で今回派遣された幹部自衛官の一人の亜門(あもん) 鋼太郎(こうたろう)一等陸佐から無線で訓示が行われる。

 

 『狭間陸将も仰られたが、相手にこちらを撃退出来る方法が無いという保証は無い。()()()()()()使()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!いくらSAAの重装甲があるといっても身体全体をカバーしている訳では無いし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()。俺の部下から殉職者など出したくはない!各自決して油断すること無く確実に任務を遂行してくれ!終わり。』

 

 その言葉に特機隊員………SAAを装備した普通科隊員を指す………達は手に持っている銃火器を一層強く握りしめた。

 

 そのしばらく後に先頭を走っていた74式改が光に包まれる。更に後続の車両も同様に次々と光に包まれていった。部隊内で『門』と呼ばれている空間を抜けたのだ。

 

 それから数分も経たない内に無線から緊張感を孕んだ報告が入る。

 

 『敵影発見!』

 『全員降車!降車!』

 

 部隊全体へ発せられた号令に各車両から普通科隊員と特機隊員達は次々と弾かれたように降りて行き、あらかじめ決められたポジションへ配置に就いていった。

 

 ハイセも乗っていた車両から素早く降りて、自分に割り当てられたポジションに就く。

 

 その視線の先には緩やかな下り斜面があり、更にその先………自分のポイントから2㎞弱程離れた位置に松明の物と思しき明かりが見える。

 

 その明かりの元には中世ヨーロッパの騎士や兵士を彷彿させる人影がある。更にその前方に弾除けに使う為なのか成人の半分程の異形の人影、豚の頭に丸まった体型のゴリラの様な異形の人影、目算で全高3m近くある大型の人影が見えた。他にも種々様々な異形の人影が確認出来る。

 

 読書を趣味に持つハイセはその知識を多分に持ち合わせていたため、一目でそれらの正体を看破していた。

 

 (ここから見える限り、ゴブリンにオークにジャイアントオーガ………コボルトやトロルまでいる?改めて思うけど本当にファンタジーだな………。)

 

 これから戦う相手の非常識さ加減に感心するやら呆れるやら………複雑な気分になるハイセ。

 

 そんな奇妙な心情を抱えつつ、遠からず下されるであろう攻撃命令を静かに待ち続けていた。




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