本日投稿2話目です
今回は隣国の(身勝手極まる)思惑、そしてあのキャラクターたちがとうとう本編に登場します
それでは、本編スタート!
(自称)中華人民共和国 北京
中南海内部 国家主席執務室
「特地か……何故『門』は、よりによって日本などに……」
執務机で一人の男が口にする。
「仮に『門』が
その男──部屋の主で中国国家首席の
「特地が必要なのは
「おっしゃる通りです、董首席!日本の独占……いえ、
董とその側近である首席補佐官は、自身の価値観と解釈から身勝手な物言いで会話を続ける。世界の全てが自分たちのものだと勘違いしている
「うむ、日本政府に対しては表向き友好な外交をしつつ、その行動に制約を課すように工作したまえ」
「その事なのですが……実は日本国内に潜伏している
「……“アオギリの樹”か……散々我々の手を焼かせ、我々に無視できない損害を出させた挙げ句、日本に逃げた奴らを受け入れた連中だな?」
「ええ……本土にいた頃、“
董も補佐官も苦虫を噛み潰したような顔で語る。かつて日本に(居丈高な態度と言動で)赤舌連の引き渡し要求をして、すげなく断られた事を未だに根に持っているのである。
もっとも、日本側には「亡命を受け入れた者ならともかく、身柄を確保しているわけでもない犯罪集団など渡しようがない」という至極真っ当な言い分があった。
ならば中国警察を日本国内に滞在させて調査に協力するよう政府に
「(意訳)バカも休み休み言え!いるかどうかもわからねぇ連中のために、テメェらの都合でテメェらがウチに居座っていい理由なんてあるか!仮にそいつらがウチで騒ぎを起こしたら俺らがシメるからテメェらはすっ込んでろ!元々テメェらの不始末なんだから慰謝料は貰うがな!」
──と、当然のごとく断っていた。
しかも本土では、たまたま日本から訪れていた自衛官によって赤舌連の首領が討ち取られた──しかも、現場に居合わせていた外国人観光客の1人が生中継動画を投稿サイトにアップしていた。そのため全世界にその事実がバレてしまい自分たちの手柄に出来なかったばかりか、自分たちの無能さを世界中に晒すハメになった──ためにその後の被害が抑えられた上、日本では警察と自衛隊の手によりアオギリが多大な被害を受けているという事実が彼らをますます不快にさせる。
自分たちで対処した時は何ら有効な対策を取れず、被害だけ出してまんまと逃げられていたというのにだ。
「その連中が、今さら何の用だ?」
「実は──────」
補佐官はアオギリからリークされた情報と提案を董に伝える。
「……それは、確かなのか?」
「念のため日本に潜伏中の
「……そうか判った。では、その情報をダシにして世論操作で日本に圧力をかけさせたまえ」
「承知しました……ですが懸念があります」
「
「はい……3年前に愚かにもアオギリは我が国以外の複数の有力国にもSAAの情報をリークして潰し合いをさせようとしていました。愚劣で卑小な奴らの事です、今回も同じ事を企んでいたとしても、何ら不思議ではありません」
「フン!仮に他国の連中にも情報が流れて動いていたとしても、最終的に我々が特地を確保すれば済む話だ。アオギリも他国も、せいぜい我々のために働いてもらうとしよう」
董たちは自分たちの言う「愚劣で卑小な連中」に煮え湯を飲まされ続けていた事実を棚にあげ、自分たちに都合のいい事実のみを元に指針を立てる。
「我々にとって、もはや十三億の人民は重荷でしかない。半数は特地に送り込みたいところだ」
「まったくです。ロクに我々の役に立たないクセに、ヒステリックに喚き立てるしか能がない。そのくせ無駄に気位が高く、数だけはやたらと多い。そんな連中を特地へ放り出して、我々の手で『門』を封鎖してしまえば少しは静かになって風通しも良くなるでしょう」
国の要職に身を置く者でありながら、本来守るべき対象である筈の国民を切り捨てる計画を平然と口にする。しかも何の根拠も無く、『門』を自分たちの管理下に置く事が既に決定事項であるかの様に話を進めている。
この有様からして、この国の政治家のみならず国家運営全体に携わる連中──主に一人っ子政策の影響で甘やかされて育った(国内限定の)高学歴エリートたち──の程度の低さが見て取れた。
「特地に第二の中国を作るのですね?」
「そうなったら、喜ばしい事だな」
こうして全てが自分たちにとって都合よく物事が動く事を確信している口調で、董たちは勝手に話を進めていくのであった。
全くもって、頭のおめでたい連中だ……
日本標準時 09:27頃
アルヌス駐屯地 特地派遣部隊司令部
第五戦闘団隷下 深部偵察隊オフィス
「おっ!いつの間にか更新されてる!」
そこでは伊丹が勤務中にも関わらず、スマホ片手に堂々と事務机でネットサーフィンをしていた。周囲から刺すような視線……どころかわざとらしい咳払いすら聞こえるも、本人はどこ吹く風である。
最近になってようやく携帯電話の中継用アンテナが設置され、特地でも携帯が使える様になっていた。そのため伊丹はさっそく、その恩恵にあずかっているのだ。
「二尉」
「Web小説は知らない間に消えてる事があるからな~。保存、保存……」
何やら雑音が聞こえるが、伊丹は無視。
「あ~…二尉?」
「いや~、ようやく特地でもネットが使える様になってよかったよかった!」
どうやら
「あの~…伊丹二尉?」
「今までフツーに携帯使うだけでも、『門』を越える必要があったんで何かとメンドーだったからな~」
その声の主に呼ばれている相手は『伊丹』という名前の様だが、聞こえていないのかやっぱり無視。
「……隊長!聞こえてます!?」
「隊長さん!呼ばれてますよ?」
別の声が『隊長』に呼びかけるも返事が無いので、仕方なく伊丹は部屋内の『隊長』に呼びかける。
「隊長!!」
ゴスッ!!
「ぐおっ!」
声の主は呼び声と一緒に、伊丹の腿の裏側へ勢いよくつま先を叩き込む。筋肉を締めて防御できない場所なのでメチャクチャ痛い。しかも安全靴──つま先と
「おおおおおぉぉぉぉぉ~~……」
「……話を聞いて下さいませんか?」
声の主の片割れ──黒川が、悶えている伊丹に構わずしれっとそんな事を言う。
痛みを堪えつつ伊丹がしぶしぶ背後を振り向くと、先ほど蹴りを叩き込んだ下手人でもう1人の声の主である栗林と、声をかけ続けているのに無視されていた黒川の2人が揃って胡乱な目付きで自分の上官を見ていた。
「
伊丹はそうぼやきながら机の引出しにスマホをしまい込み、黒川たちに用件を聞く。
「実は、テュカの件なのですが────」
そう言って、黒川は事情を話し始めた。
「テュカの様子が……おかしい?」
「はい。毎日頼む食事の量は、1日あたり2人分。しかも、そのうち1人分は毎日破棄されています」
自分で食べる訳ではないのに、それは確かに妙な話である。伊丹はその話を聞いて、何故か理由も無く胸の奥でチリチリしたものを感じ始めた。
「他には?」
「衣類も居室も同様に2人分頼んでいて……そのうち1人分の衣類は男性用です」
ピクッ…………
(………まさか……な………)
伊丹はそれを聞いて、眉をひそめる。それと同時に脳裏に過去の記憶が甦り始めるが、反射的に記憶の底へと押し込めた。
「………
その内心をおくびにも出さず、伊丹は黒川へそう尋ねる。
「レレイちゃんを通じて尋ねたのですが……「わからない」「食事時に」「いない」としか聞き出せませんでした。彼女もまだ日本語が十分ではなくて……」
黒川は困った顔でそう返答する。その表情を見るに、本当に心苦しそうである。
「………ひょっとして、脳内彼氏を飼っている……とか?」
重苦しい空気を変えるため、伊丹は敢えておちゃらけた口調でそう言ってみたが、黒川たちは戸惑った表情をするだけであった。
「……それならば、いいのですが……あるいは「亡くなった家族を、一定期間生きているかの様に扱う」という葬送の習慣なのかもしれませんし……」
「カトー先生には?」
「先生にも、よくわからないそうです。彼女はエルフの中でも希少な種族の様で……」
「やっぱ、妖精種のエルフか~~……」
興味が先立ち伊丹からそんなセリフが出てくる。
「よく話し合ってみるしかないんじゃない?」
「はい……ですが、彼女はあまり打ち解けてくれなくて……」
「え?人気者の
伊丹の言うように、黒川は避難民の子供たちに大人気だった。あと同様に子供に懐かれているのは、頻繁に顔を出しているハイセと古田の2人だ。
そんな黒川にすら打ち明けていない、となればお手上げである。
「う~ん、それは困ったな~……クロちゃん相手でもダメとなると……クリは拳で語り合うタイプの体育会系だし……」
「んなッ!?」
栗林は顔を真っ赤にして素っ頓狂な声を上げるも、自覚はあるためか反論はしない。
とにかく現状では根気よくテュカと会話を重ねるしかない、という結論に至った。何より彼女が保護された経緯が経緯である。テュカ自身に身内が死んでいる事を自覚しているか否かで対応が大幅に変わるため、迂闊な事はできなかった。
「隊長!そろそろ出発時間です!」
「え?もう?」
そこへ個人装備で身を固めた桑原が、部屋の入口から声をかけてきた。
「まぁ、これから偵察ついでに彼女たちを街まで護衛して行くから、時間があったら俺からも話してみるよ」
そう言って、伊丹は自分の荷物を持って外へ出る。黒川たちも、各々の荷物を持って後に続いた。
伊丹の言うようにこれから3偵は偵察任務の傍ら、レレイたちの護衛と特地における商取引の調査のため街まで同行する。
現状において自衛隊が特地側で接触を持ったコミュニティは、せいぜい人口が数百人規模の集落ばかりであり、現地の交易都市規模の街というのは未知の領域だ。特地における都市クラスの街や現地の商取引の実態は、特地の社会情勢などを知るためにもいずれは調査する必要があったので、レレイたちが自衛隊に持ち込んで来た護衛依頼はまさに渡りに船だった。
またアルヌスでの戦闘後、武装勢力の騎兵が使っていたと思われる馬が周辺で大量にたむろしていたので、自衛隊が保護していた。遺棄されていた物資に飼い葉があったので現在はそれを与えているものの、いつまでもそのままという訳にはいかない。そのため、馬の引き取り先も同時に探す予定である。
「あれ?富田はまだ来てないのか?珍しいな……」
「ああ、富田さんなら佐々木二尉と一緒に、格納庫までSAAを取りに行ってるっスよ。もうすぐ戻るんじゃないっスかね?」
外の集合場所に富田の姿が見えない事に伊丹が訝しんでる所に倉田が答えた。
ガシュン!ガシュン!キュイン!
そこへ、SAAの足音と駆動音が聞こえて来る。伊丹がその音に振り向くと──
「おっ!それは銀座で使ってたやつか?」
「ええ、先日ようやく調整が終わった所です」
「……そいつの肩は赤く塗らないのか?」
「……塗りたいんですか、伊丹さん?」
「まさか、冗談だよ」
某アニメネタで冗談を飛ばす伊丹に、XAA-008《鬼神》を着装しているハイセは胡乱な目を向ける。先ほどからそんな目を向けられてばかりいる伊丹である。
「富田の機体はずいぶんとゴツいな」
「ええ、まあ……今回はSAAの重武装ユニットの実戦テストも兼ねているそうですので……」
伊丹の言う通り、富田のSAA──AAM-007JS《獄卒·弐式 野戦重武装仕様》は機体のあちこちにゴテゴテと武装を取り付けられており、ハイセの《鬼神》に比べるとえらくゴツく見えた。元々ガタイの大きい富田の風貌と相まって威圧感がある。
他の隊員たちも各々武器庫から武器弾薬を取り出して入念にチェックを行う。一際目を引くのは携行数の増えた
「ヒデ、それは一体何だ?」
「無線操作の遠隔攻撃端末っス。これも上から実戦テストを言い渡されたものっスよ」
「……頭の堅い日本政府が、よく開発にGOサインを出したな」
伊丹の言うように、日本政府──主に外務省の役人たちと防衛省の上層部は遠隔操作型の装備の開発には消極的であった。遠隔操作で相手を一方的に攻撃できる武器→
しかし偵察用として細々と開発が続けられていた最中に“銀座事件”が起こり、相手側の民間人に対する問答無用の殺戮によって抵抗が薄くなり、偵察用装備を改造する形で開発が始められたのである。
「隊長、準備できました!」
「よーし、弾込め!安全装置!」
桑原の報告を聞き、伊丹が号令をかける。それに合わせて、隊員たちは横一列に整列した。
「ここで海自では「開戦よ~い!」とか言うらしいけど……」
「もしかして、それもアニメネタですか?」
「……………………」
伊丹の言葉が終わる前に、誰とは言わないが女声で突っ込みが入る。
「……とにかく、営門を出たら戦闘地域って事になっている。各員、それなりに気を張ってくれ。それじゃあ、出発!」
訓示の後、伊丹の号令を合図に各々に割り振られた車両に搭乗して、まずは避難民キャンプへと向かう。
「隊長、竜の鱗ってやっぱいい値が付くんスか?」
「そりゃ倉田、
などと雑談をしつつ伊丹たちは移動する。
車両群がプレハブ小屋の前に到着すると、群がってきた子供たちを相手しつつ、まずは避難民向けの救援物資を一緒に下ろす。そして、入れ替わりに帆布製の大振りな袋を2つ積み込んでいく。それが終わると、子供たちは名残惜しそうにしながらも自分たちの仕事に戻っていった。
それから荷物をまとめたレレイ·テュカ·ロゥリィの3人が、高機動車の方へとやって来る。傍らには見送りに来たカトーがいる。
(ジエイカンたちがいれば、イタリカまで安全)
「ん?どうした?」
「何でもない」
レレイの視線に気付いた伊丹が尋ねるも、レレイはそう答える。
「ねぇ、レレイ。そのリュドーって人の店があるイタリカの街って遠いの?」
「少し。テッサリア街道の先、ロマリア山麓」
そうやってレレイとテュカはおしゃべりをしながら、ロゥリィは鼻歌を歌いながら高機動車の後部座席へと乗り込む。全員が車両に乗り込んだ事を確認して、伊丹たちは出発した。
目的地はアルヌスより北北西約百数十㎞地点。帝国の穀倉地帯で陸路における物流の要所である交易都市、イタリカだ。
東京都内 ??????
アオギリアジト内部
「タタラさん、どうだった?」
「予想通り、食い付いた。後は放っておいても、奴らは我々の思惑通りに動くだろう」
「お疲れ様。
「餌をぶら下げておけば、一も二もなく飛びついて来る様な奴らだ。何ら問題ない」
「世界は自分を中心に回っている、と勘違いしている連中は扱いが楽でいいよ。
「アメリカとロシアは?」
「反応自体は似たようなものだったよ。思惑は別ベクトルだったけど。その意味では
「自分
「……
「……昔の話だ」
「……それにしても、いつになく急な注文してくるよね
「3年経ってようやく『奴』の手掛かりを掴んだんだ。気が逸るのも無理はない」
「……それじゃあ、私は『アレ』の様子を見てくるよ。
「そうだな。今回の作戦は迅速さがカギになるから、動かせる戦力はどうしても少数になる。
「あ、それと。ナキ君は絶対作戦に参加させないでね?黙って付いてくる様なら、縄で縛り付けてでも」
「……あいつが居るだけで、作戦が破綻しかねんからな。了解した」
次回は4/17に投稿予定です
ご意見、ご感想をお待ちしております