GW中に免許の更新へ行ってきたのですが……深視力検査でハネられてしまい出直す羽目に……チクショウ……
今日もう一度、更新センターへ行ってきますが……また同じとこでハネられたら、どうしよう……
ま、それはそれとして、本編スタートです……
はぁ……
日本標準時 16:47頃
アルヌスより北北西 約百数十㎞地点
交易都市イタリカ フォルマル伯爵邸 応接室
「では、我々に協力すると言うのだな?」
「こんな状況では、商売どころではありませんからね。それに、民間人を守るのも我々の任務の内ですから」
ピニャの疑問に、通訳兼護衛として同行しているハイセが答えていた。
「とりあえず、現状を確認しましょう。ヒデ、UAVの映像をこちらに送ってくれ 」
『了解!』
伊丹はそう言うと、ハイセが荷物の中からタブレットPCを取り出して、スイッチを入れる。すると──
ヴォン!
「むっ?」
「おおっ!」
「何と…」
──画面全体に映し出される精密な地図と、画面の向かって左下に映し出される盗賊たちの様子に、ピニャたちは驚愕する。
「ここがイタリカ。そして、この辺りに盗賊が陣地を張ってます。陣地内の盗賊たちの様子を見る限り、まだしばらく……少なくとも日没までは仕掛けてくる事は無いと思います」
ハイセが地図上のイタリカと、その程近くにマーキングされている場所を指差しながら説明した。
(何と精密な地図だ……しかも、かなり離れた位置にいるにも関わらず、盗賊どもの動向が筒抜けとなっている!どうやってかは分からぬが、つまり我々の動向をも、奴らには筒抜けになる。これでは、奇襲など不可能ではないか!)
自衛隊の能力の一端に触れ、ピニャは震え上がる。
(なるほど……事前に我々の動きが分かっていれば、対策など幾らでも立てられる。アルヌスの敵の数は我々に比べ少数だと聞いていたが、帝国軍がアルヌスで敗れた理由の一端は、このあたりにあるようだな)
現時点で自衛隊の能力を、ピニャはそう分析していた。斥候による情報収集能力が、自分たちが考えるそれより遥かに高い、と。
「盗賊の数は約600。イタリカを包囲するには少なすぎます。この事を踏まえると、相手には戦力を1ヵ所に集中して、いずれかの門を突破する作戦しか取れない、と考えます」
「同感ですな。我々もそう考え、川のある北門を除く東門·西門·南門の3ヵ所を固めております」
ハイセの説明を聞き、グレイも現状を補足する。
「籠城戦を選択しているという事は、そちらにも援軍の当てがあるという事ですね?到着までは、どれくらいかかりますか?」
「3日だ」
「……次の戦闘に、間に合いそうにありませんね。こちらからも、救援要請を出しましょう。今から連絡すれば、半日後ぐらいにはイタリカへ着くと思います」
「なッ?」
(半日後だと?奴らは伝令も含めて、それほど速く軍勢を動かせるのか?)
「半日でイタリカへ着く」というハイセの言葉に、ピニャやグレイのみならず、傍らに控えていたミュイやメイド長まで耳を疑う。
「差し当たっては、こんなところですね。柵などの防御施設の再構築は、僕たちが口を挟むより、あなた方の主導で進めた方がいいでしょう。後は僕たちの配置ですが……」
「うむ、ではお主たちには、南門の守備に衝いて貰う」
「南門……ですか?」
「そうだ。南門は先ほどの戦闘で破られており、現在はかき集めた木材等で塞いでいるだけの状態だ。ここは言わばこの街の弱点となっている。炎龍をも追い払った「緑の人」たるお主たちに、ここを守って貰いたい」
「……了解しました」
伊丹もハイセもピニャの目論見に気付いていたが、敢えて口にせず引き受けるのであった。
「イタミ、ひょっとして私たちの言葉をハッキリと聞き取れる?」
「……ああ、顎を打ったせいかな?あれから、こっちの言葉がスッと頭に入る様になったんだよな……」
フォルマル邸の廊下を歩きながら、レレイの質問に伊丹は顎を擦りつつ答える。
「だったら、僕の通訳はもう要らないんじゃないですか?」
「いやいやいや……この状況で、万が一翻訳ミスしたら不味いだろ?ある意味、敵だらけのこんなところで自衛官がオイラ1人じゃ心細いしさぁ~」
「SAAクラダーのライセンス持ってる癖に、何言ってんですか……」
「いや、あれは無理矢理取らされた物なんだって!」
「いやいや…
「……好きで
「……
伊丹のヘタレ発言にハイセは呆れ返る。
「……で?先ほどから、僕に何か用でもあるんですか?」
そして、ハイセは唐突に背後へと声をかける。
「いやいや、特に何も。気に障ったのであれば、謝罪いたしますぞ」
すると、廊下の影からグレイが顔を出してくる。
「いえ、お気になさらず。少し気になっただけですから」
それじゃ失礼します、とハイセは外に向かって歩いていった。
「ふう……」
ハイセの姿が見えなくなったのを確認し、グレイは息を付く。表面上は平静を装っていたが、内心では相当冷や汗をかいている。
「どうだ、グレイ?」
傍らでハイセたちの力量評価を命じたピニャが訊ねる。
「あのササキという御仁、恐ろしいほどの手練ですぞ。少なくとも、戦場では1対1で小官は戦いたくはないですな」
「貴様にそこまで言わせるほどか?」
「はい。小官が殺気を向ける度に、首を跳ねられたと錯覚するほどの殺気を返しておりました。恐らくですが、姫様が近くに控えていた事も、見抜かれておられますぞ」
「ッ!」
ひとつ間違えれば部下共々首を跳ねられていた、という事実にピニャは肝を冷やす。
その事に心胆寒からしめると共に、現状でハイセが味方である事に安堵する気持ちがない交ぜになって、ピニャは複雑な気分になるのであった。
日本標準時 18:02頃
イタリカ南門 市街地側
ブロロロ……キッ!
ガチャッ!
「総員下車!陣地構築かかれ! 」
「「「「「「了! 」」」」」」
車両でイタリカの南門側にまでやって来た3偵は、桑原の号令で各々防衛戦の準備にかかる。
「いいのですか、姫さま?あの様な者たちを味方に引き入れて……」
「……この際だ、贅沢は言えん。利用出来るものは利用せんとな」
高台からその様子を眺めていたハミルトンの疑問に、先ほどの動揺を悟られぬ様にピニャは冷静に答える。
ガチャ……
ガシュンガシュンガシュン……
「ッ!あれが噂の重装歩兵か……見た限りでは、我々の知るそれとそう変わりはないな」
「でも見たところ、盾も槍も持ってません。あれで一体どうやって戦うのでしょう?」
中トラ改の後部扉から出てきた2機のSAAを見て、ピニャもハミルトンも疑問を抱く。
そうこうしている内に、伊丹たちは住民に手伝ってもらいながら土嚢を作り防御陣地を形成していく。その様子を見ていたピニャは、伊丹たちの陣地作りの方法に内心で感心していた。
(なるほど……麻袋に大量の土を詰め込み、それを積み重ねる事で壁を形成して即席の陣地にするわけか。確かにこの方法ならば形を整え易い上に、予めその土袋を用意しておけば陣地を作る手間が大幅に省ける。しかもこれならば、水害の時に水をせき止める用途にも使えるぞ)
ピニャは指揮官としての視点から、それらの利点と応用性にいち早く気付いた。
とりあえず南門は任せても大丈夫だと判断したピニャは、東門の状況確認と戦力配備のためにその場を離れて行った。
『今日は帰れないだとぉ~~ッ!?どういう事だぁ!?いぃ~たぁ~みぃ~~~ッ!!!』
「いやぁ~それが……どーも戦闘に巻き込まれちゃったみたいで……」
『何、呑気な事言ってるんだッ!!参考人招致はどうするッ!?』
伊丹が無線で本部へ状況報告すると予想通り、返ってきたのは檜垣三佐の怒声であった。だが、相変わらず伊丹の声色はマイペースかつ呑気なものである。無線の向こうで檜垣が青筋を立てている所が容易に想像出来る。
「いやぁ~そうなんですよねぇ~……この状況を見過ごす訳には行かないので、僕も困っちゃって……」
『はあぁ~~~……』
恐らく無線の向こうでは、檜垣が周囲から同情の視線を向けられつつ頭を抱えている事であろう。もっとも事情が事情な上、伊丹に非が無い事は檜垣も理解出来るので、それ以上の追及はしなかった。
「あ~……それで申し訳ないんですが、三佐にちょっとお願いがありまして……」
『…………何だ?』
いかにも「これ以上まだ何かあるのか?」と言いたげな声色で檜垣が聞き返す。
「──────」
『……判った。その要請も含め、狭間陸将に報告しておく』
だが、伊丹の要求は状況から考えて、至極真っ当なものであった。事態を早期に終息させるためにも、伊丹の要請は最善手であるため、檜垣は了承した。
「はい、それじゃあお願いします」
『いいな?戦闘が終わったら、余計な道草食ってないで真っ直ぐ
ブツッ!
「いやいや……小学生じゃないんだから……」
人、それをフラグと云う──と、伊丹は不吉な事を口にするのであった。
「ねぇ~ササキぃ~」
「?……何だい、ロゥリィ?」
ロゥリィはSAAの動作をチェックしていたハイセに声をかける。
「何で敵国のお姫様の言う通りに戦う訳ぇ~?あの娘、いけ好かないわぁ~」
「何故って……街の人たちを守るためだよ?」
「本気で言ってるのぉ~?」
「そういうことになってる、はずだけど?」
「ふ~~~ん?」
ロゥリィは意味あり気に微笑を浮かべながらハイセの顔を見上げる。その目は「お為ごかしはいいから、本音を話せ」と雄弁に物語っていた。
「……街の人たちを守るため、それ自体は嘘じゃない。だけど、それ以上にこれは僕自身のためなんだよ」
「……へえぇ~~?」
興味深げにロゥリィは笑みを浮かべる。
「……何も出来ないまま、「仕方ない」と目と耳を塞いで、都合の悪い事をやり過ごす卑怯者になるのは嫌なんだ。例え
自嘲気味にハイセは説明した。
失望したかい?とロゥリィに目を向けると──
「いいえぇ~?むしろ「正義のため」だの「人を助けるのは当たり前」だのと薄っぺらい性善説を謳う輩より、よほど好感を持てるわぁ~~」
──花が開く様な笑顔をロゥリィは向ける。
「そういうことなら、私も是非協力させて貰うわぁ~。弟子の成長具合も確かめられそうだし、私も久々に狂えそうで楽しみぃ~」
「そうか、久々に狂……え?」
ハイセはロゥリィから物騒なセリフが聞こえたよーに思えたが、彼女はダンスの相手に挨拶するかのよーな優雅な振る舞いを見せるのみであった。
「………ジョーダンだよね?」
ハイセは友人女性たちの残念さの数々を頭に浮かべて、そこはかとなく不安になるのであった。
日本標準時 00:34頃
アルヌス駐屯地 総監専用執務室
さて……この頃アルヌスでは佐官級幹部が狭間のデスクの前に集まり、怒号にも似た激論が繰り広げられていた。その有様は、今にも掴み合いが起こりそうな勢いである。
「陸将!101中隊、既に編成完了しております!是非、我々第一戦闘団に出撃命令を!」
「ダメだ!地面をチンタラ走っていては移動に時間がかかりすぎる!陸将、ここは我々第四戦闘団に!401中隊も既に編成完了しており、ご命令さえあればすぐにでも出られます!」
──と、この様に第一戦闘団(陸上戦力中心·機甲部隊)団長である
先ほどから立場を入れ換えては、この議論の繰り返しだ。
(はぁ……こいつら、よっぽど溜まってたんだな)
加茂と健軍たちの抗議を聞きつつ、狭間は内心で嘆息していた。
事の始まりは、現在イタリカにいる伊丹二尉からの救援要請である。その内容は以下のようなものだ。
・イタリカを含む周辺一帯が敵武装勢力の指揮系統を外れた集団によって、ここ1ヶ月ほど略奪·暴行·放火等の被害に会っている。
現在第3偵察隊が訪問中のイタリカも同様であり、先だって現地警備担当者及び市民により撃退したものの、同市の被害は甚大。大規模な第二次攻勢も間近である。
第3偵察隊は現地指揮官であるピニャ·コ·ラーダ氏より、武装勢力撃退の協力依頼を受けた。よって、支援を要請するものである。
・敵武装勢力の指揮系統を外れた集団、通称『盗賊』は、特地においては高度な武装を有し、騎馬·歩兵·弓兵等の兵種が確認され数も600を越える。『魔導師』と呼ばれる特殊能力者については不明。
・『盗賊』を取り締まる事が可能な官憲組織は現地には無い。現地行政代表フォルマル伯爵家が上位機関に援軍要請を行っているものの、到着には最低3日を要するとのこと。
この事を小耳に挟んだ加茂や健軍を始めとした第一、第四の幹部たちは色めき立った。それはもう、上を下への大騒ぎになったのである。
何せ、特地で実戦を体験しているのは陣地防衛を担当する第五戦闘団のみであり、打撃部隊として編成された第一、第四には未だに実戦の機会に恵まれていないのだ。自分たちは最前線で戦うために編成された筈なのに訓練以外にやる事は無く、実戦での緊張感を熱く語る第五の隊員たちの話を耳にする度に、忸怩たる思いを抱いていた。
そこへ降って湧いてきた救援要請である。
これは無辜の民を救う、という大義名分の下にテロリストをスカッと叩きのめして、欲求不満の解消……もとい、思う存分実弾を叩き込んで実戦経験を積む、千載一遇のチャンス!
「この機会を逃してなるか!」と言わんばかりに、加茂と健軍たちが狭間の執務室に駆け込んできて、今に至るのである。
んでもって──
「イタリカへの救援には、第四戦闘団に向かってもらう。今回は速さが重要で、これが現実的な理由だからだ」
「ハッ!」
「くうぅぅぅ~~~~~ッ!!」
──狭間の判断に健軍は喜色満面で応え、加茂はこれ以上無いほど悔しがる。その悔しがり様に、今にも地団駄を踏みかねない。
「健軍一佐」
そこへ、執務室の片隅で抗議に参加していなかった
「我々もSAAで同行したいので
「亜門一佐?しかし……」
「第3偵察隊には
狭間と健軍は亜門の言葉を聞いてハッとなる。特地へ派遣されるにあたり、狭間を始め師団長クラスの幹部に統合幕僚長自ら伝えられた話を思い出す。
「……確かに話は聞いているが、普段の勤務態度を見る限り、
「フム、確かに……それに、
健軍も狭間も、亜門の意見具申に難色を示す。
「私も
「……わかった、許可する。だが、なるべく
「……最善を尽くします」
こうして第四戦闘団と共に、亜門は
日本標準時 03:00頃
交易都市イタリカ 東門
ここではピニャの側近であるノーマが率いる警備兵と民兵の混成部隊が襲撃を警戒していた。とはいえ、彼らは既に門を破られた上に、少数の戦力しか配備されてない南門が主戦場になるであろう、と高を括っていた。
その上、長時間の警戒で疲労がピークに達していた事もあって、歩哨たちの緊張が無意識に緩む。中には疲労から、うたた寝する者までいた。
戦争のプロはその瞬間を見逃さない
ヒュンヒュンヒュンヒュン………
ザアァァァァァァァァァア………
「ぐッ!?」
「がッ!?」
「アッ!?」
城壁上で歩哨に立っていた者たちに、次々と火矢が降り注ぐ。この奇襲で幾人かの民兵は射貫かれてしまったが、残りの者は壁際に退避しこの攻撃を凌ぐ。
「敵襲ッ!!」
「ピニャ殿下に伝令!東門に敵襲だ!弓兵!!」
ビッ!
ガヒュッ!
ヒュンッ!
ノーマの号令で城壁上の弓兵が撃ち返す。だが練度に差があるせいか、こちらの矢がなかなか当たらない。……そう、
「これは……精霊魔法か?」
ノーマの言う通り盗賊の中に精霊使いがおり、風の精霊を使役して盗賊側への矢を逸らしているのである。
そうこうしている内に、盗賊たちは楯を掲げて城壁に接近して取り付き、梯子を掛けて街への侵入を試みる。それぞれの楯に身を隠しながら梯子を登る盗賊たちに、イタリカ側も弓のみならず適当な大きさの石やレンガ、あるいは溶けた鉛や熱湯などをぶちまけ、必死に防戦する。命中を期待出来ない弓矢よりも、こちらの方がよほど効果的だからだ。
城壁上から梯子で登ってくる盗賊を、槍やピッチフォークで突き落とし、焼けた鉛や熱湯をぶちまけ梯子から落とす。中には矢を受けながらも斧で梯子を叩き折る者もいた。
「農夫ながら、お見事!」
カヒュッ!
バキバキバキ……ガッシャァァアン!
梯子の最上段にいた盗賊は、乗っていた梯子を叩き折った男を称賛し、敬意を持って射殺す。そして自ら殺した男が地面へ落下していく横で、同じ梯子に登っていた盗賊共々、自らも落下していく……自らの死に満足感を抱きながら。
盗賊たちは狂った様に、もしくは何かに取り憑かれたかの様に、前へ前へと進んで行く。矢で射貫かれようが、焼けた鉛でのたうち回ろうが、岩石が直撃して昏倒しようがお構い無しだ。それは、まるで……いや、まさしく死兵の行軍であった。
そう……もはや彼らにとって、略奪などは
彼らにとって、アルヌスでの戦いは「戦い」とは言えなかった。敵の姿すら見えない所で、訳のわからないまま味方だけが一方的にやられていった。まるで目についた邪魔な虫を叩き潰すかの様に一方的に。
あんなもの、戦争などではない!
これこそが戦い、これこそが戦争!
敗残して身を落とせども、我らは戦士!
弓で射て、剣で斬り、槍を突き、相手を殺し、敵の血を浴び、自らも剣で斬られ、槍で突かれ、矢で射貫かれ、血を流しながら死ぬ!
わかりやすい殺戮!
わかりやすい自分の死!
これこそが我らの戦争!
エムロイへの賛歌!
盗賊たちは楯を叩き、足を踏み鳴らし、それぞれの得物を掲げ、それぞれの言葉で歓声を上げる……まるで祭りである。彼らは異常に興奮し、アルヌスで味わえなかった贅沢な手応えを存分に味わい、「戦争」の熱に酔いしれる。
その熱に誘われるかの様に、盗賊たちはがむしゃらに東門へと攻め寄せるのであった。
次回は5/29に更新予定です
ご意見、ご感想をお待ちしております