ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 最近、急に暑くなってきましたね

 お陰で水分補給の頻度と量が増えて、その分汗を掻く量も増えたので気持ち悪いこと気持ち悪いこと……

 ま、それはそれとして…本編スタートっス!

 ……あ~、アイスキャンデーうまいっス……
 


ワルキューレの騎行

 

 日本標準時 05:20頃

 

 交易都市イタリカ 東門周辺

 

 ズドオォォォォォオン!!

 

『全弾、城門に命中!』

 

『コブラ全機、よくやった!後でビール奢ってやる!ワルキューレリーダーより全機、攻撃開始!』

 

 第四戦闘団の隊員たちは、健軍の攻撃命令を皮切りに「待ってました」とばかりに、各々が盗賊へと銃弾を叩き込む。

 

 バババババババ……

 

 ドココココココ……

 

「アッ!」

 

「ギャアッ!」

 

『ワルキューレ1より各機へ!市街地内部には味方がいる!先ずは外の敵のみを殲滅せよ!』

 

 用賀がヘリ各機に当面の攻撃目標を指示する。

 

 バラララララ……

 

 ズドドドドド……

 

 ドタタタタタ……

 

「ガッ!」

 

「イッ!」

 

「グゲッ!」

 

『Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!』

 

「な…何だあれは!?」

 

「ひ…人が乗っているのか!?」

 

「ヒッ!こ…こっちに来る!?」

 

 ボボボボボボボ……ッ!

 

 ドチュ!ドチュ!ドチュ!ドチュ!

 

 チュン!チュン!チュン!チュン!

 

「ギッ!」

 

「アッ!」

 

「ギャアッ!」

 

 ボトボトッ!

 

「?」

 

 ドッキュウウウウンッ!

 

「ガァッ!」

 

「アアッ!」

 

「ギィィッ!」

 

 盗賊たちへUH-1J(ヒューイ)改のドアガンから、同乗している他の隊員たちも手にした小銃で弾丸(タマ)雨霰(あめあられ)と撃ち込み、ついでとばかりに手榴弾を放り込む。

 

『Hei-a ha!Hei-a ha!Hei-a ha!Hei-a ha!Hei-a ha!Hei-a ha!Hei-a ha!』

 

 バタバタバタバタバタ……

 

 ババババババババババ……

 

(何だ、あれは?)

 

 戦場に突如として現れたヘリの数々に、ピニャは度肝を抜かされる──

 

 ドタタタタタタタタタ……

 

 ドコココココココココ……

 

(全てが……叩き壊されていく。何者も抗う事の出来ない圧倒的な力……)

 

 ──そして、それらが生み出す圧倒的な破壊力に目を奪われる──

 

「クソが!オメーら手を貸せ、アノヤロー撃ち落としてやる!」

 

 盗賊たち数名が、城壁上に放棄されていた大型の弩銃へ走り寄っていく。

 

『こちらバトラー1!城壁上に対空兵器、まだ装填前!ハンター1、破壊しろ!』

 

『ハンター1、了解!』

 

 上空で監視·警戒に徹しているOH-1(ニンジャ)改が警告し、近場にいたAH-1S(コブラ)改に命じる。

 

『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!』

 

 バババババババ……

 

「ヒッ!」

 

 バシュッ!

 

 ズドオォォオン!

 

「「「アアアッ!」」」

 

『こちらハンター1!対空兵器を破壊!』

 

 AH-1S改が城壁の高さに合わせホバリングで高度を下げた後、ハイドラロケット弾を放ち弩銃と盗賊たちをあっさりとまとめて吹き飛ばした。

 

(……禍々しい、凶暴な力。誇りも…名誉も…一瞬にして否定する)

 

 ──ピニャは目の前の存在の持つ力と、それが振り下ろされる事によって作り出される光景に、恐怖を感じつつも目を逸らす事が出来ず、それらが目に焼き付けられる。

 

『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!』

 

(これは……女神の嘲笑?)

 

 ピニャにはヘリのスピーカーから響いてくるその声が、自分の傲慢さと滑稽さを嘲笑している様に聞こえていた。

 


 

 弓も届かない遥か高みから一方的に振るわれる圧倒的な力を目の当たりにして、それまで盗賊たちを突き動かしていた熱に冷や水を浴びせられ、瞬く間に冷やされていく。狂躁(きょうそう)から冷めた後に残るのは、底知れぬ恐怖である。

 

「に…逃げろぉッ!」

 

「バ…バケモノだぁッ!」

 

 恐怖に駆られた盗賊たちが騎馬で、あるいは自らの足で死に物狂いにその場から逃げようとする。

 

『Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!Ho-jo to-ho!』

 

 バババババババ……

 

 だが、それを見逃すほど自衛隊は甘くない。1機のOH-6D(オスカー)改を先頭に、複数のUH-1J改が盗賊たちの後を追う。

 

「追い付かれる?」

 

「く…来るなぁ!」

 

 ドコココココココココ……

 

「ギッ!」

 

「アッ!」

 

 だが盗賊たちの願いは叶えられる事はなく、無慈悲に銃弾が叩き込まれる。

 

『ストーカー2-1よりワルキューレリーダー!城壁外の敵騎兵と歩兵が約200、東へ後退しつつあり!』

 

『ワルキューレリーダー、了解!ジョーカー1、3!コブラ2、3!後退する敵集団を攻撃せよ!』

 

 バララララララララ……

 

 ダタタタタタタタタ……

 

 ドココココココココ……

 

 その命令を受けると、数機のUH-1J改が盗賊たちの進行方向へと回り込み、ドアガンや小銃を放ち牽制する。

 

 進路を塞がれた盗賊たちはどうにか鉄の天馬(ヘリコプター)から逃れようとするも、まるでどちらへ逃げようとするのかが判ってるかのように、行く先々へと現れては進路を塞がれ、盗賊の半数以上は元来た方向へと戻らざるを得なくなった。

 

 バシュバシュバシュバシュ……

 

 ドガガガガァァァァァアン!!

 

「アッ!」

 

「ガァッ!」

 

「ギャアッ!」

 

 そして退路を断たれて1ヵ所へと固まった盗賊たちに、大量のハイドラロケット弾を容赦なく撃ち込まれる。

 

 だが、その殺戮劇から運良く逃れた者たちがその場から離れつつあった。

 

『こちらバトラー1!敵集団の一部、約70が包囲網から逃れ、そのまま逃走しつつあり!』

 

『ワルキューレリーダーよりオーガ、シックル、リーパー各員に協力要請!逃走した敵集団を追跡して包囲、殲滅されたし!』

 

『オーガ1、了解!』

 

『シックル1、了解です』

 

『リーパー2、了解』

 

 するとCH-47J(チヌーク)の1機が、逃走した盗賊の進行方向に高度を落としつつ回り込み、ドアガンで牽制する。同時に、後部ランプが開放されていく。

 

『こちらオーガ 1!これより降下する!』

 

 そして開かれた後部ランプから1機のSAAが降下し、着地寸前でバーニアスラスターを全開で吹かして衝撃を和らげる。

 

 怒涛の攻撃を免れて逃亡を図る盗賊たちの前に、XAA-007S《羅刹·弐式》を着装し、金棒型武装《ドウジマ ver.2》を手にした亜門が立ち塞がった。

 

「ジャマだぁ!退きやがれ!」

 

 先頭を騎馬で駆ける盗賊が叫び、眼前に降り立った重装歩兵をそのまま撥ね飛ばそうとしたが──

 

 ブオッ!ドゴオォォン!

 

「わあぁぁぁぁぁッ!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁッ!」

 

 ──重装歩兵(亜門)はタイミングを見計らって巨大な棍棒(ドウジマ)を横殴りになぎ払い、盗賊たちの先頭集団をまとめて吹っ飛ばす。

 

 殴り飛ばされた盗賊たちは、ある者は腕や脇腹の骨を粉砕骨折し、またある者は地面に叩きつけられ首の骨を折って即死した。中には刃物で両断された訳でもないのに、上半身と下半身がちぎれ飛んで泣き別れになった者もいる。倒れた馬の下敷きになった盗賊も少なくない。

 

 キイィィィィィィン!

 

「ッ!」

 

 サッ!

 

 幸運にも尻餅を着いただけで済んでいた盗賊は、眼前の重装歩兵(亜門)()()()()()()()地面を滑る様に近づいて来て、手に持った巨大な棍棒(ドウジマ)を振り下ろそうとしているのが見えた。咄嗟に楯を構えて防ごうとするも──

 

 ドガアァァァアン!

 

 グチャッ!

 

 ビシャッ、ビチャッ!!

 

 ──盗賊は構えた楯もろとも巨大な棍棒(ドウジマ)で叩き潰され、一瞬で原型を留めないほどコナゴナになった。《ドウジマ》が叩きつけられた地面には、巨大なクレーターが出来上がっている。

 

 ボトッ!

 

 ペリッ…………カララ…ン

 

 コナゴナにされた盗賊()()()()()を示すものは、たった今地面に落ちた楯からはみ出ていた剣を持ったままの腕。そして同じくたった今《ドウジマ》から剥がれ落ちた、盗賊の持つ楯の表面に貼り付けられていた鉄板だけであった。

 

「あっ…ひっ…ヒイィ!」

 

 自分の足で走って逃げていて、やや遅れ気味に付いてきていた盗賊たちは、すぐ近くで弾け飛んだ仲間の血肉を浴びる羽目になり、顔が恐怖に引き攣っている。

 

「な…何ビビってんだ!相手は1人だ!囲んで殺っちま──」

 

 シュパッ!

 

「──え?」

 

 ゴロン

 

 相手が1人と見るや、殺してこの場を離脱しようとした盗賊の1人が、即座に首を刎ねられていた。更に──

 

「なッ!?」

 

「い…一体何──」

 

 ザアァァァァァア……

 

 ドガッ!

 

 ザシュッ!

 

「──ガッ!」

 

「ギャアッ!」

 

 ──次の瞬間には、数本の細い糸の様なもので数珠繋ぎになった刃が、盗賊たちへ次々と襲いかかる。

 

 ザザザ……

 

 ヒュバッ!

 

 ザシュッ!

 

「ギッ!」

 

「アッ!」

 

 盗賊たちの正面で亜門が注意を惹いていた隙に、側面へ回り込んでいた鈴屋一佐(シックル1)(XAA-007R《修羅·弐式》を着装済)が、13,sジェイソンで次々に首を刎ね飛ばし──

 

 ジャラララララ……

 

 ズバッ!

 

 ドシュッ!

 

「グゲッ!」

 

「ギッ!」

 

 ──鈴屋とは反対方向から回り込んでいた真戸三佐(オーガ2)(AAM-007J《獄卒·弐式(アキラ機)》を着装済)が、蛇腹剣型試作武装《フエグチ》を振るって盗賊たちを薙ぎ倒す。

 

 ヒュオッ!

 

 シュパッ!

 

「ギャアッ!」

 

「アッ!」

 

 見れば後方にいた盗賊たちが次々と討ち取られている。

 

「…………」

 

 特にコレと言った特徴の無い、無表情な重装歩兵──獄卒·弐式(AAM-007J)を着装し、試作高周波ブレード《ナゴミ》を手に持った平子(ひらこ) (たけ)一等陸尉が、いつの間にか背後に回り込んでいた。

 

 ドシュッ!

 

 ズシュッ!

 

「…………」

 

「いやいや、タケさんも武臣(ブジン)も無口すぎでしょ?」

 

 同時に無言で試作高周波ブレード《ツナギ》を振るって盗賊を屠る黒磐(くろいわ) 武臣(たけおみ)二等陸曹と、そんな平子一尉(リーパー2)黒磐二曹(オーガ5)に思わずツッコミを入れつつ短槍型高周波ブレード《センザ》で時には切り裂き、時には叩きのめして盗賊を仕留ていく伊藤(いとう) 倉元(くらもと)二等陸尉が後方の逃げ道を塞いでいた。

 

 他にも周囲から続々と重装歩兵が現れ、盗賊たちはいつの間にか自分たちが取り囲まれている事に気付く。だが、よく見れば人数自体は10人とちょっとだ。

 

「退け!退かねぇと、ブッ殺す!」

 

 なので、1人殺せば囲みを抜けられると踏んだ一部の盗賊たちが、徒党を組んで襲いかかる。

 

「よっ!」

 

 ズサッ!

 

 ドシュッ!

 

「切断失礼」

 

 ザシュッ!

 

 ズシュッ!

 

「クソッ!バケモンばっかりか!」

 

 しかし、いずれの重装歩兵(SAA)も全てが常軌を逸した実力者のため、次々と返り討ちに会い瞬く間に数を減らしていく。標的を1人に集中する余り、他の重装歩兵(SAA)に背中を向ける形になるため、殲滅に余計拍車を掛ける。

 

 統率が取れた戦闘集団ならば、少人数で周囲の足止めをしつつ、1人に戦力を集中させて討ち取るところであろう(出来るかどーかは話が別だが)。

 

「ばっ…押すな!」

 

「うわぁぁあ!」

 

「ひっ!く…来るなぁ!」

 

 だが盗賊たちは元正規兵とはいえ、多国籍の寄せ集めの上に非常識な光景の数々を目の当たりにして惑乱していた烏合の衆なので、この時点で秩序だった思考の持ち主は皆無だった。

 

「ま…待て!止めてくれ!」

 

「こ…降参!降参する!」

 

 結局その場にいた盗賊たちは、半数以上が討ち取られた時点で揃って武器を放り出し、次々と降伏していった。

 


 

 一方、市街地側にいた盗賊たちは、揃って困惑していた。城門と自分たちのすぐ近くにいた仲間たちが、冗談みたいに吹っ飛ばされた事を気にかけることが出来ないほど、眼前の少女から目を離す事が出来ずにいる。

 

「何だ?あの小娘は……」

 

「エムロイの…神官?」

 

 自分たちのド真ん中へと降り立ったロゥリィの姿を見て、その特徴から盗賊の1人がそう呟く。

 

 盗賊たちは揃って「何故、こんな所に?」と言った疑問を抱いていた所に──

 

 チョイ、チョイ

 

 ──いかにもな表情で、ロゥリィは盗賊たちを指招きして挑発する。「ボサッとしてないで、かかって来たらどう?無力な市民は大勢相手に出来ても、神官の小娘1人には立ち向かう事も出来ないの?」と、言わんばかりに。

 

「ナメやがって、このガキ!ブッ殺──」

 

 ドガッ!

 

「──せ?」

 

 ロゥリィの挑発にいきり立って、一斉に襲いかかろうとした盗賊の1人が奇妙な声をあげる。ロゥリィに追い着いたハイセが、建物上から落下の勢いをそのままに盗賊の頭へラ○ダーキックを叩き込んだためだ。

 

 ブチッ!

 

 ボトッ!ゴロゴロ……

 

 盗賊の首はそのまま胴体から千切れ飛んで、ボールの様に転がって行った。ハイセはそのまま地面へと落下して──

 

 ゴオォォォオ……

 

 ズシャッ!

 

 ──墜落寸前でブースターを全開。着地の衝撃を和らげる。

 

「なッ!?」

 

 そしてハイセの着地点の右手側に居た盗賊が、驚愕で硬直している隙に──

 

 ガァン!

 

「ッ!?」

 

 ──未だに前後から白煙をなびかせている84㎜無反動砲(カールグスタフ)の砲身(先ほどライ○ーキックで降りて来る前にハイセが盗賊にブッ放していた)を、棍棒の様にその顔面へと叩きつける。

 

 パッ!

 

 パシッ!

 

 ブンッ!

 

 ハイセはそのままカールグスタフを手放し、盗賊の手から離れた手斧をキャッチ。そして正面にいた盗賊の1人に投げつける。

 

 ドカッ!

 

「ガッ!」

 

 投げた手斧は狙い違わず盗賊の顔面へと叩き込まれ、一瞬の悲鳴の後そのまま絶命する。

 

 ドサッ!

 

 砲身で殴られた盗賊は顔面の骨を砕かれ、ハイセが手斧を投げた直後に悲鳴すら上げられずに地面に倒れて、そのままピクリとも動かなくなる。

 

「なっ…なっ…」

 

 ヒュッ!

 

 更にハイセは右手のナックルダスターを展開し、左手側で棒立ちになってる盗賊に向き合い、その顔面に渾身の右ストレートを叩き込む。

 

 グワシャッ!

 

 すると、盗賊の頭は兜を残して一瞬で原型を留めないほどコナゴナになった。

 

 常人でもミドル級以上のプロボクサーであれば、頭蓋骨を容易く砕く事が出来ると言われている。ましてSAAのパワーアシストを受けたクラダーにとって、人間の頭など中身の詰まったスイカも同然である。

 

 もっとも並のクラダーであれば、せいぜい胴体から首を弾き飛ばすのが関の山だろう。コレはハイセ自身の技のキレとスピード、そして相手の頭部の重心を正確に見抜き、そこへ寸分の狂いも無く正確に拳を叩き込む技術があって、初めて為せる技である。

 

「あ…あ…」

 

 突如現れた重装歩兵に、一瞬で仲間が4人殺られて盗賊たちは恐怖する。その動きは、とても重装歩兵のそれには見えない。

 

 スラァァァァア……

 

 ハイセはその隙に、機体に懸架された高周波ブレード《ユキヒラ》を抜き放つ。

 

 驚愕の光景を連続で目の当たりにして、盗賊たちはしばし動きを止めていたが──

 

 ドガァッ!

 

 ズバァッ!

 

「グゲッ!」

 

「アァッ!」

 

 ──その隙に、ロゥリィは手に持ったハルバードで盗賊たちを次々と惨殺していく。

 

 結果として盗賊たちは、ロゥリィ相手に致命的な隙を晒し、その代償を命で払う事となった。

 


 

 ブロロロロロ……

 

 キッ!

 

「ロゥリィの奴、敵のド真ん中に突っ込んで行きやがった!」

 

 第四のヘリ部隊の攻撃が始まって少し経った頃に、伊丹たちは東門の陣地に到着した。見失う直前に、ロゥリィが建物上から盗賊のド真ん中へ飛び降りて行ったのを見て、伊丹は下車しながら悪態を吐く。

 

「着け剣!ロゥリィとハイセを援護する、離れるなよ!」

 

 64式小銃改に銃剣を着けつつ、伊丹は富田たちに注意を促す。

 

「うおおぉぉぉぉぉお!」

 

「あっ?」

 

 すると戦場の空気に当てられたのか、着剣した64式改を手に栗林が戦場へと突撃していった。

 

「ッ!あの突撃馬鹿!」

 

「退いてくれ!」

 

 そして、伊丹たちも人混みを掻き分けつつ、栗林を見失わない様にしながら後を追う。

 

「突撃にぃ、前へ!」

 

 パパァン!

 

 柵の外に出て、盗賊に向けて64式改を短連射。盗賊が血飛沫を上げて倒れ込む。富田も同様に、自機の左腕に懸架されたアームライフルを放ち、盗賊を撃ち倒す。

 

 そうして盗賊を撃ち倒しながら、戦場の中心部を見渡せる場所で伊丹たちが目にしたのは──

 

 ザンッ!

 

「アアッ!」

 

 ドゴォッ!

 

「ギャアッ!」

 

 ドスッ!

 

「ガッ!」

 

 ──ロゥリィが手に持っているハルバードで、次々と盗賊たちを屠っていく姿であった。その有様は彼女の可憐な容姿からは想像も付かないほどの凄惨さだ。

 

 彼女は盗賊の頭を兜もろともカチ割り、横並びになった盗賊たちをなぎ払い、後ろに回った盗賊を石突で突き殺す。

 

 伊丹は目の前で繰り広げられる光景が、とても信じられなかった。あまりにも現実離れし過ぎている。

 

 ハイセがロゥリィに稽古を付けて貰っていた事実から、彼女がとてつもなく強いと言う事を知ってはいた。しかし、伊丹の中の現実的な部分が、「本当にそうなのか?」と、訴えかけていたのだ。

 

 だが如何に現実離れしていても、辺りに漂う血の匂いと、ゴミの様に散らばっている元はヒトだった物の一部が、目の前の光景が現実である事を証明している。

 

 ヒュオッ!

 

 シュパッ!

 

 スパンッ!

 

 その近くでは、ハイセが目にも止まらぬ速さで《ユキヒラ》を振るっている。

 

「は?」

 

「え?」

 

「ああ?一体何を……」

 

 ズリ……

 

 ズズ……

 

 ズル……

 

「あ…あれ?」

 

「な…何だ?」

 

「じ…地面が上に?」

 

 ドサドサドサッ!

 

 盗賊たちは何が起こったのか分からないまま、鎧兜もろとも切り捨てられていた。

 

「クソッ!このバケモノ!」

 

 髭面の盗賊が、手に持った大剣をロゥリィ目掛けて大上段から振り下ろす。

 

 ブンッ!

 

 ヒョイッ!

 

 ガツン!

 

 だが、そんな大振りの攻撃が当たる筈もなく、軽々と避けられ虚しく空を切る。いたずらっ子よろしく舌を出すロゥリィに、盗賊はますますいきり立つ。

 

「うおおぉぉぉぉぉお!」

 

 ドスッ!

 

「ぐっ!」

 

 そこへ栗林が突撃の勢いをそのままに、盗賊の脇の下へ銃剣を突き立てる。

 

 パァン!

 

 そのまま64式改を発砲。銃撃の勢いで盗賊を吹っ飛ばし、銃剣を引っこ抜く。

 

 ザンッ!

 

「カハッ!」

 

 ドガッ!

 

「ガッ!」

 

 ドスッ!

 

「アッ!」

 

 そして栗林は銃剣格闘を駆使して周囲の盗賊たちを斬りつけ、64式改の銃床(ストック)で殴り倒し、再び銃剣を突き立てる。

 

「このおぉッ!」

 

「ッ!」

 

 ガキンッ!

 

 横合いから盗賊の1人が斬りかかり、栗林は64式改でそれを受け止める。

 

 ゴキンッ!

 

「~~~~~~ッ!?」

 

 その状態から、栗林は盗賊の股間を蹴り上げた。手加減無しだったので、蹴られた盗賊は自らの意識と男の矜持を保つので精一杯だ。彼はそのまま前のめりになる。

 

 ゴスッ!

 

「ぐっ!」

 

 そこへ盗賊の後頭部に銃床を落とし、そのまま顔面を地面へ叩きつけてサンドイッチにする。クソみてェな、汚ねェサンドイッチの出来上がりだ。

 

 パキンッ!

 

「あちゃー!」

 

 見ると、剣を叩きつけられた64式改の二脚(バイポッド)が脱落していた。

 

「あー、武器陸曹に怒られる……」

 

 パパパッ!

 

 装備管理を担当している、コワモテのベテラン隊員の顔を思い浮かべ栗林は憂鬱になるも、とりあえず頭の片隅に置いて、向かって来る盗賊に短連射を叩き込む。

 

「手榴弾!」

 

 ヒョイッ!

 

 小銃が弾切れになると、密集している盗賊たちのド真ん中に手榴弾を放り込む。

 

 ドウンッ!

 

「ギャアァッ!」

 

「アァァッ!」

 

 爆心地に居た盗賊たちは、飛散した金属片でズタズタにされて悲鳴を上げる。栗林自身は、盗賊たちの身体が壁になっているので無傷だ。

 

「な…何だ?魔法か?」

 

「目がぁ!」

 

「密集隊形だ!離れるな!」

 

 盗賊たちは密集して、それぞれの楯を構えて防御陣形を取る。威力の低い魔法か弓矢しか無い特地ならば、常識かつ有効な方法なのだが──

 

「ミサイル、全弾発射(フルファイア)!」

 

 バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!

 

 ──圧倒的な火力を持つSAAにしてみれば、単なる的でしかない。富田はここぞとばかりに、装備しているミサイルを全弾叩き込む。

 

「ッ!ち…散れッ!」

 

 ドガ!ドガ!ドガ!ズドドォオン!

 

「ガッ!」

 

「アァッ!」

 

「ギャアッ!」

 

 密集隊形を取っていた盗賊たちは、放たれたミサイルで次々と吹き飛ばされ、五体がバラバラになる。

 

「死ね、クソアマ!」

 

 一方、隙を見て栗林の背後から盗賊の1人が襲い掛かるも──

 

 ドガッ!

 

「アッ!」

 

 ──ロゥリィがハルバードを突き立てて、それを阻止していた。

 

 見ると栗林とロゥリィ、そしてハイセも、自然と互いの背後をカバーする形で背中合わせとなっている。

 

 ドウンッ!

 

「「「「「「アアアッ!」」」」」」

 

 パパパパパ……

 

「ギッ!」

 

「ガッ!」

 

「アァッ!」

 

 そして唐突に盗賊が密集している場所で爆発が起き、城壁上では銃声と悲鳴が聞こえ始める。どうやら爆装ドローンとUGVが東門に到着して、攻撃を始めた様である。

 

 見た事も無い奇妙な空飛ぶ蟲や、小さな荷車が自分たちへ致命的な攻撃をかけて来ている。そんな冗談みたいな状況に盗賊たちは右往左往していた。

 

「富田!3人の背中を守るぞ!」

 

「了解!」

 

 伊丹が号令を上げ、手に持つ64式改で短連射を繰り返す。富田もミサイルランチャーをパージして、アームライフルのみならず携行していた64式改を放つ。伊丹たちはロゥリィたちを包囲しようとする盗賊たちを牽制し、3人を援護していった。

 


 

「ぐっ……く……」

 

 門の上の城壁に居た盗賊の頭目は、突然起きた爆発──最初のAH-1S改から放たれたTOW(有線式対戦車ミサイル)による門の爆破──で城壁から落下し、気を失っていたところから目を覚ます。爆発の際の上昇気流が偶然にもクッションになり、城壁上から落下したにもかかわらず、軽傷で済んでいた。

 

「ッ!こ…これは」

 

 周囲を見ると、彼が気を失う前とは状況が一変していた。

 

 ドタタタタタタ……

 

 ドココココココ……

 

 城壁の外では弓も届かない高さから、鉄の天馬が未知の魔法を放ち、仲間を次々と撃ち倒している。

 

 パパパパパ……

 

 城壁上では奇妙な荷車が、やはり未知の魔法を放ち仲間を撃ち倒す。

 

 ドウンッ!

 

 ドガァン!

 

 更に市街地側では、奇妙な蟲が腹から箱の様な物を落とし、その箱が地面に落下すると同時に爆発を起こす。仲間はその爆発に巻き込まれ、冗談みたいに吹き飛ばされた。

 

「これは……アルヌスの時と同じ……」

 

 彼の脳裏に、アルヌスで起きた悪夢がフラッシュバックする。

 

 敵の姿すら全く確認出来ない状況で、訳の分からないまま、()()()()()()()一方的に撃ち倒された。自分の知っている戦術も陣形も全く役に立たず、無為な突撃を命じるだけだった上官に殺意すら抱いていた事を、今でもハッキリと覚えている。

 

 (いくさ)において、キレイ事など通用しない事は彼とて理解している。実際、公言する事を憚られる様な「汚れ仕事」を行ったのも、一度や二度ではない。

 

 だが戦である以上は自ら命を賭け、身体を張り、互いに殺される事を覚悟の上でキチンと戦ってきた。そんな彼にとって、アルヌスでの戦いは「戦い」などとは言えなかった。

 

 自衛隊()連合諸王国軍(自分たち)に向き合う事すらせず、邪魔な石を蹴り飛ばすかの如く、自分たちを蹴散らしていた。今でも奇妙な蟲や荷車を前に出し、自ら手を下す時すら、相手からは手の届かない所から一方的に撃ち倒している。

 

 その光景を見て、彼の内に言い様の無い憤りが膨れ上がっていく。

 

(……奴らにとって戦とは、安全な所から自ら手を汚すこと無く、邪魔となる害虫や石コロを取り除く「作業」に過ぎんと言うのか?)

 

「……認めん……」

 

(こんなものを……戦と認めてたまるか!)

 

「……認めん!」

 

 彼は立ち上がりながら、周囲の空を我が物顔で飛び回るヘリコプター(鉄の天馬)を、城壁上で未だに仲間を撃ち倒しているUGV(荷車)を、空から炸裂する箱を落とす爆装ドローン(奇妙な蟲)を睨み──

 

「認めんぞおォォォオッ!!」

 

「ッ!?」

 

 ──盗賊相手に斬り結んでいた重装歩兵(ハイセ)に向かって、剣を片手に突っ込んでくる。

 

 ギィンッ!

 

 ギャリッ!ギリリ……

 

 ハイセは咄嗟に相手の剣を《ユキヒラ》で受け止める。盗賊の頭は剣の刃を立てずに、剣の腹の部分を押し当てる形で鍔迫り合いを維持していた。

 

(俺たちは、路傍の石コロなどではない!)

 

 俺たちは……戦士だ!!

 

「……もはやイタリカ(この街)など、どうでもいい」

 

「?」

 

(俺たちが、戦士である事を証明するため……)

 

「俺は、一人の戦士として……貴様を殺す!!」

  


 

 兵器解説

 

・AAM-007J《獄卒·弐式 特地仕様(富田機)》

 

 今回使用している、富田の機体のベース機。

 

 元は前回の任務までハイセが使用していた機体で、同一の機体でどの程度のニーズに応える事が可能かを見極めるために、敢えてライセンスを取って日の浅い富田をテストクラダーに抜擢した。

 

 本機にはデチューンを施されている上、リミッターが再搭載されている。

 

 後にこの機体から得られたデータを元にして、AAM-007-02J《獄卒·弐式改》が量産される事となる。

 

・AAM-007JS《獄卒·弐式 野戦重武装仕様》

 

 上述の機体に重武装ユニットを装着させ、富田に合わせて調整を施されたもの。

 

 背面に展開式のミサイルランチャー(対軽装甲車両用小型ミサイル12発、中型多弾頭誘導ミサイル4発、対戦車用ミサイル2発、合計18発)を搭載。更にランドセルには、ハイセの発案でサスペンションとクローラー付きのバイポッド型スタビライザーが装着されており、必要に合わせ展開させて、機体のバランスを保てる様になっている。

 

 左腕には12.7㎜口径の試作アームライフル、右腕には06式小銃てき弾を射出可能なカバー付の連装擲弾射出器。両大腿部にはスモークディスチャージャーが搭載されている。

 

 多数の火器を搭載しているために火器管制が煩雑化した上、重量増で機体出力を上げざるを得なくなったので、従来の機体よりも稼働時間が短くなっている。

 




 
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