ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 本日2話目です

 今回は、東京喰種:reのキャラクターが新たに登場します

 今後も当該キャラを徐々に増やしていく予定です

 それでは本編スタートです!
 


伊丹、捕虜になる (後編)

  

 日本標準時 13:10頃

 

 アルヌス駐屯地 司令部オフィス

 

「佐々木二尉が、イタリカの戦闘で()()やらかしたそうですな」

 

 司令部のデスクで仕事していた富良(ふら) 大志(たいし)一等陸尉へ、不意に声がかけられる。

 

 声の方へ顔を向けると、下口(しもくち) (のぶ)一等陸尉が、その特徴的なタラコ唇を歪めている。

 

「いっそ伊丹二尉共々、現地のテロリスト相手に殉職してくれれば、面倒な連中が居なくなってスッキリするというのに……なまじ連中に実力があって生き延びているものだから、本当に始末に負えん」

 

 そう言って、彼は更に表情を嫌らしく歪める。

 

 周囲に居る彼の取り巻きたちも、その言葉に「まったくだ」と言わんばかりにニヤニヤと顔を歪めていた。その表情には「気に入らない奴らを責める材料が出来た事が嬉しくて堪らない」といった感情が、ありありと浮かび上がっている。

 

 実は特地派遣部隊の構成人員に関しては、()()()どもにおもねる防衛省上層部の思惑が大いに反映されていた。派遣された人員は、一部を除き大半が優秀ではあるが彼らにとっての厄介者、または「目の上のたんこぶ」とも言える邪魔者で占められているのだ。

 

 また、国民に対しては「派遣された隊員の人命を尊重している」というアピールのために、緊急時には銀座側への脱出を優先するようにマニュアルで指定されていた。

 

 しかし、実際には「状況が許すならば、派遣させた人員は特地に取り残されてくれた方が都合がいい」と言うのが政治屋どもと防衛省上層部の本音でなのである……一部の理解のある政治家たちにとっては、その限りではないが。

 

 下口たちはそういった上層部の密命を受けている、言わば部隊のお目付け役であった。本省から司令部人事で彼らが強引にねじ込まれた事実から、その事はもはや暗黙の了解となっている。

 

「目障りなあの男には、いい加減に……」

 

「下口一尉、陰口とは感心出来んな」

 

 無視を決め込む富良に、下口が更に言葉を重ねようとする所へ、突如横槍が入る。

 

「特地で何度も戦果を上げているにもかかわらず、私の部下に何かご不満でも?」

 

 2人がその声に振り向くと、イタリカから帰還していたアキラが立っている。

 

「現状戦闘が無いとはいえ、今も司令部要員は基地設営と物資の手配に忙しいはずだが……本省直属の隊員は、他所の噂話が出来るほど暇なのか?」

 

「……チッ!」

 

(小娘が!)

 

 下口は忌々しそうに舌打ちしつつ、取り巻き共々その場から離れて行った。

 

真戸(まど)三佐。陸将への報告なら、先ほど亜門一佐と済ませたはずですが……」

 

「実は、ついさっき檜垣(ひがき)三佐から報告があってな。富良一尉、今やっている準備は少々先送りになるかもしれん」

 

 アキラの言葉に、富良は怪訝な顔になる。

 

「…………何があった?」

 

 彼は周りに人が居ない事を確認し、声を潜めつつ 素の口調に戻ってアキラに尋ねた。

 

「帰還途中の第3偵察隊が「帝国」と呼ばれる現地国家の騎士団と接触し、隊長の伊丹二尉が捕虜にされたらしい。現在、残りの隊員が捕虜奪還のため、イタリカ付近まで引き返している最中との事だ」

 

「……一体何やってんだ、伊丹の奴……」

 

 息をする様にトラブルに巻き込まれている伊丹に、富良は呆れて溜め息を吐くのであった。

 


 

 ──時間は3偵のイタリカ出発直前まで遡る

 

 日本標準時 09:00頃

 

 交易都市イタリカ 城壁外 東門付近

 

「あのコとあのコにあのコ、それから……」

 

「隊長、女の子ばかり選んでません?」

 

「んな事無いって、気のせいだよ」

 

「……まあ、彼女たちの今後を考えると、わからなくは無いですが……」

 

「んじゃ、男も1人。そいつで」

 

 現在、伊丹は拘束した盗賊の中から、自衛隊が捕虜として連れ出す者を選別していた。黒川がそのテキトーな判断基準に呆れ顔になる。

 

「伊丹二尉!撤収準備が終わりました……って、あれ?レレイちゃんたちは?」

 

「ああ、本来の用事の商談中」

 

 報告に来たヒデに伊丹が答える横で、彼が選んだ数名をヘリに連行した後、第四の隊員たちと亜門たちが各々のヘリに乗り込んでいく。

 

 ヒイィィィィィィィイン……

 

 バララララララララララ……

 

「ありがとうー!」

 

「達者でなー!」

 

「今度、遊びに来いよー!」

 

 ワアァァァァァァア!

 

 そして隊員たちを乗せたヘリが、イタリカから次々と飛び立って行った。それに気付いたイタリカ市民が、手や帽子を振り歓声を上げて見送ったのであった。

 

 レレイたちが戻って来たのは、第四のヘリ部隊が飛び立って、しばらくしてからであった。レレイの様子を見るに、どうやら商談は納得いく形で終わった様だ。彼女らの手には、中身の詰まっている重そうな袋がさげられていた。

 

 そして、行きと同じくそれらを高機動車の荷台に載せ、座席に着く。

 

「それじゃ、ここらをぐるっと回って帰りましょ……あらら、寝ちゃったのか」

 

 伊丹の言うように、レレイたち3人は高機動車の座席に座ってからほどなく寝息を立てていた。

 

「無理ありませんわ、徹夜でしたし」

 

「俺たちもな……フワァ……眠い……」

 

 伊丹は盛大に欠伸をしつつ、今ごろ柔らかいベッドでぐっすりと眠っているであろうハイセを 恨めしく思うのであった。

 


 

 日本標準時 10:15頃

 

 イタリカ東方 約10㎞地点

 

「んん?」

 

 3偵の車両がアルヌスヘ帰還するため街道を走っている途上で、倉田は前方の異常にいち早く気付き目を凝らした。

 

「隊長!前方に煙!」

 

「んぁ!?またか!?」

 

 助手席でうたた寝していた伊丹は、倉田共々慌てて双眼鏡で前方を確認する。すると──

 

 ドドドドド……

 

 ──前方から土煙を上げて、こちらに向かって爆走して来る騎馬集団が見えてきた。

 

「宝塚かベルばらか……姫様が言ってた騎士団か?」

 

 伊丹の言う通り騎乗している者は全て女性で、向かって来る方向と武装の質から、ピニャが援軍として呼んでいた騎士団だと推測出来た。

 

「まー、揃いも揃って美人ばっか。ホント、ベルばらまんまだな」

 

「……俺、縦巻きロールの実物見るの初めてっスよ」

 

 それを聞いて探してみれば倉田の言う通り、先頭にショートカットの騎士鎧姿の女性と並び金髪の縦巻きロールの髪型の騎士鎧姿の女性の姿があった。どうやら、指揮官の様である。

 

「縦巻きは黄バラ、ショートは白バラってところかな。旗章からすると、赤はあの姫様か」

 

 騎馬集団の中には所属部隊を示すであろう赤・黄・白の薔薇が刺繍された旗があり、伊丹は刺繍の柄と色からそう推察した。

 

「総員、警戒!」

 

「おやっさん、待った!全員、敵対行動と取られる動きは控えろ、協定違反になるぞ!特に栗林(クリ)!」

 

 桑原が隊員に警戒を促すが、伊丹が即座に指示を出して控えさせる。

 

 3偵は彼女らをそのままやり過ごそうとするも、手前の2騎が前へ出てこちらを止める様な仕草をしていたので、素直に手前で停車した。

 

 ショートカットの女性──パナシュ·フレ·カルギーが騎乗したまま近づく。

 

「奇怪な荷車だな……貴様たち、どこから来た?」

 

 どうやら、向こうはこちらを臨検するつもりの様である。馬上から居丈高な態度と口調で訊ねた。

 

「えーと……私達、イタリカから帰る」

 

 先頭のパジェロの運転席に座る富田は、協定の事もあり素直に答える。彼もハイセたちほどではないが、最低限のコミュニケーションを取れる程度には特地語を話す事ができる。

 

「どこへ?」

 

 だが、パナシュは富田の言葉の不自由さを小馬鹿にしたような態度で重ねて訊ねた。

 

「アルヌス・ウルゥ」

 

 富田がそう答えた途端──

 

「何だと!?」

 

「異世界の敵か!!」

 

 ザザッ!

 

 ジャキジャキッ!

 

 ──2人の後ろに控えていた女性騎士たちが一様に殺気立ち、一斉に突撃槍を構える。

 

 ザッザッザッ……

 

 グイッ!

 

「もう一度、言ってごらんなさい」

 

「イ、イタリカから来て、アルヌス・ウルゥに向かう」

 

 縦巻きロールの女性──ボーゼス·コ·パレスティーが下馬してパジェロへ歩み寄り、富田の胸ぐらをつかみ上げて詰問した。富田は顔を赤くしながらも、それに片言で答える。

 

「まずいな。おやっさん、絶対にこっちから、手を出させないでよ」

 

 伊丹は相手が殺気立っているのを見て、武器と見なされる様な装備を解きつつ桑原に念押しし、仲介に向かう。

 

「まーまー、落ち着いて。部下が、何か失礼を?」

 

 相手を刺激しない様に注意しつつ、伊丹はそう言って間に入るが──

 

 チャキッ!

 

「降伏なさい」

 

 ──パナシュは手に持ったレイピアを伊丹の首へ突き付け、一方的に宣告する。

 

「あー、落ち着いて。こちらの話、聞いてくれます?」

 

 伊丹は抵抗の意思が無い事を示すかの様に、両手を上げつつ相手を宥める。

 

「聞く耳持たぬ!」

 

「話せばわかりますから。話せばわかってもらえますから、ね?」

 

「くどい!」

 

 パナシュは頑なに会話を拒むが、なおも伊丹は粘り強く説得を続けていた。伊丹のその態度に──と言うよりこちらの()()を無視して言い逃れをしている(よーに見える)事に、ボーゼスは徐々に苛立ちを募らせていく。

 

「ええい!お黙りなさい!!」

 

 バチィンッ!

 

 業を煮やした彼女は、伊丹を平手で張り飛ばした。

 

 ジャカッ!

 

 ジャキジャキッ!

 

「待て!」

 

 途端に緊張が走り、咄嗟に各車両のガンナーたちが銃口を向けるが、桑原は即座にそれを制止させる。

 

「逃げろ!今は逃げろ!行け!!」

 

 ヒリつく頬を押さえつつ、伊丹は部下にそう命じた。

 

 ガコッ!

 

 キュルルルル……

 

 グオン!ブロロロロ……

 

 その声を聞いて、3偵の車両は即座にその場を離脱する。

 

「ヒヒイィィィン!ブルルル……」

 

「きゃっ!」

 

「どう!どう!」

 

 突如荷車が動き出した事と、そのエンジン音に驚いて乗っていた馬が暴れ始め、騎兵たちがそれを必死に宥める。馬が落ち着いた頃には、その場には土煙と(わだち)(あと)を残して何も居なくなっていた。

 

 キッ!

 

 ただ1人、彼女らが睨み付けている男──その場で部下に離脱を命じた伊丹を除いて……。

 

 ジャキジャキッ!

 

「ハハ……」

 

 結果的にその場へ取り残される形となった伊丹は、騎士たちに睨まれ得物を突き付けられる中、両手を上げたまま引き攣った表情で笑みを浮かべるほかなかった。

 


 

 伊丹を捕虜としたボーゼスは、意気揚々とイタリカへと()()した(つもりであった)。救援には遅れたものの、その失態も自分の功績でお釣りがくる、と考えていたのだ。

 

 事実、ピニャは救援が遅れた事については咎める事は無かった。そして敵兵を捕虜に取ったと聞き、上機嫌であった(よーに見えた)。

 

 だが──

 

「なんて事をしてくれたんだ!」

 

 ブンッ!

 

 ゴッ!

 

 ──ピニャは()()を目の当たりにしたとたん、いきなりボーゼスに罵声を浴びせ、酒杯を投げつけていた。その表情は鬼の形相のそれである。

 

「え?」

 

 ツー……

 

 ガシャッ

 

 ボーゼスは いきなり罵声を浴びせられ、その挙げ句に酒杯まで投げつけられて崩れ落ちた。当然ピニャから称賛されると思っていたボーゼスは、訳もわからず ただただ呆然とするばかりであった。

 


 

 兵器解説

 

・多用途ヘリコプター UH-1J(ヒューイ)

 

 陸上自衛隊で長年使用されている多用途ヘリUH-1Jを近代化改修した機体。UH-2のパーツを用いて退役寸前のUH-1Jに改修を施されている。

 

 特地派遣部隊の規則上、最悪の場合は装備品を投棄して日本側に撤退する可能性もある。そのため、最新鋭機であるUH-2をそのまま特地に持ち込む事は躊躇われたため、同部隊の主力多用途ヘリにはこちらが採用された。

 

・観測ヘリコプター OH-6D(オスカー)

 

 自衛隊において2020年に全機退役したOH-6Dを近代化改修した機体。

 

 アメリカから同機の民生仕様であるMD 530Fを10数機提供されたため、退役していた機体のほとんどを格納庫から引っ張り出し、提供された機体のパーツを用いて改修が施された。

 

 同国からはMRAPとM-ATV等と合わせて、更にAH-6G用の武装ユニットも提供されており、今後作戦に合わせて機体に武装が施される予定となっている。

 

・改良観測ヘリコプター OH-1(ニンジャ)

 

 イタリカ攻防戦にて、第四戦闘団の情報支援を行っていた観測ヘリコプター。本機は元々、AH-X計画の白紙となった案の1つでOH-1をベースとした攻撃ヘリコプターの試作機の1機。

 

 2023年2月当時、日本政府は攻撃ヘリ開発中止と、その代替戦力として空対地攻撃ドローンの採用を決定した。しかし現場を知る自衛官と技術者たちは、それらの有用性を認めつつも有人機の必要性が皆無になったとは考えていなかった。だが上記の決定が下された以上、海外製(主にアメリカ)の攻撃ヘリを購入、またはライセンス生産を行う事はほぼ不可能である。

 

 そこで彼らは日本独力で攻撃ヘリコプターを設計·生産する事を計画。予算獲得後 即座に製作に取りかかれる様、試作機の設計を秘かに行う事を決定した。そして機体設計の参考のため、過去に作られた試作機をデータ収集目的で密かに特地へと送り込んだ。

 

 彼らはOH-1の調達価格高騰の反省から、その機体設計を基に量産に適したコストダウンを模索しつつ、飛行性能を維持した攻撃ヘリコプターの母体となる機体の開発を当面の目標とし、OH-1改(この機体)と武装化したOH-6(オスカー)改の戦闘データをその設計に反映させる予定である。

 

 




 これより、すさまじい重圧の中でのピニャの苦難の数々が始まります(ゲス顔)

 次回は6月18日の0時に投稿予定です

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