ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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前話の続きかつ帝国軍サイドです

今回登場する兵卒クン(か◯あげクンみたいな呼び方だな………)は作者の完全オリジナルです………一応モデルはありますが………

彼が今後も登場するかは未定です


第二次アルヌス攻防戦 ~帝国軍サイド~

 

 「チクショウ!!一体何がどうなってやがるんだ!!」

 

 アルヌスの丘においてたまたま深めの窪地に落ちたアントニオ………今回が初陣の兵卒で早く大手柄を挙げて成り上がってやる!と息巻いていた………は窪地の底で涙目になりながら頭を抱えて(うずくま)っていた。

 

 三ヶ月前に異世界に進攻した帝国軍がわずか数日で現地軍に返り討ちにあって壊滅的な被害を受けた挙げ句、何ら戦果を挙げられないまま這々の体で逃げ帰って来た………と言った話は瞬く間に帝国臣民と軍内部に広がっていった。

 

 当然、帝国の上層部は頑なにその事実を認めなかった。帝国上層部は当事者の軍人全てに箝口令まで敷いていたが、人の口に戸は立たないものである。

 

 だが、人々の大半はその話を聞いて尚も楽観的であった。

 

 帝国が今までずっと戦争に勝ち続けていた………その事実が人々から現実的な価値観を根こそぎ奪い取っていたのである。

 

 「帝国軍が手も足も出ずに負けたなんてどうせ何かの間違いに決まってる。」

 

 「どうせ今回の指揮官が貴族のボンボンで見当違いの判断をしてドジを踏んだんだろう。」

 

 「自分がその指揮官だったら絶対にその逆の結果に出来ていたさ………。」

 

 帝国人の大部分は何ら疑いもなく本気でそう信じていた。アントニオもその中の一人であったのである。

 

 だが、よく言われる様に理想と現実は違うという事実をアントニオは現実の戦場で骨の髄まで思い知らされた………あまりにも現実の方がぶっ飛びすぎていて今までの価値観が人格もろとも崩れ落ちてしまう様なレベルではあったが………

 

 「チクショウ!!一体何なんだよ!!あんな魔法、見た事も聞いた事もないぞ!!!」

 

 アントニオは窪地の端から僅かに顔を出し、眼前に写るあまりにも非現実的な光景を見て思わず大声で吐き捨てる。彼の言う通りその光景はこの世界の誰もが見た事はおろか想像した事すら無かったものである。

 

 パパパ!と言った音がしたと同時に光が走ったかと思えば前に立っていた兵士が身体の何処かを弾き飛ばされた挙げ句息絶えている。死体が原型を留めていないものも珍しくない。

 

 更にはドン!………ヒュルルルルル………ズドォォォォォン!!と音がしたかと思えば、指揮官と思しき貴族を中心に亀甲隊型を敷いていた集団がまとめて吹き飛んでいた。後には大穴とその周辺に貴族とその兵士だったものと思しき肉片が無数に広がっていただけであった。

 

 実はアントニオが所属していた剣士隊の分隊は大量の敵の光弾………他に適当な表現が無いためそう呼んでいる………によって彼を残して全滅していた。アントニオ自身は先に述べていた集団が吹き飛んだ時に巻き込まれて今の窪地に転がり落ちた為に難を逃れていた。

 

 その光景………質にしては大陸屈指の精強さを誇り数にして十万に達しようかという帝国軍を相手にわずか千にも満たない数百程度の敵国の軍勢が接敵すら許さず苦もなく蹴散らして行く有り様………を目の当たりしたアントニオは相手の兵の質どころか戦い方、戦争の性質そのものが遥かに高い次元にある事を嫌でも思い知らされる。

 

 そして確信する………帝国は自分より遥かに強い大国を相手にケンカを売った上、相手を本気で怒らせてしまったのだ………という事を。

 

 「………わかったな兵どもよ!貴様らは私が援軍を呼んでくるまでの間はその身を以て敵軍を足止めしておくのだ!私が戻って来るまで死んでもこの場から退くことは許さん!いいな!!」

 

 少し離れた場所からそんなヒステリックな声が聞こえた。声がする方へ目を向けてみれば馬に乗っている貴族と思しき指揮官が部下の歩兵達を置いて今にも逃げ出そうとしている所だった。察するに帝国軍相手に戦って消耗した今ならば楽に勝てるだろうと踏んで今回の戦に参加したものの相手の圧倒的な力に恐れをなして慌てて逃げを打とうとしているのだろう………今回の敗戦の責任を死んだ部下の誰かに擦り付けた上で。

 

 (ったく………ハンパな貴族って奴ぁどこまで身勝手でおめでたい頭ン中してやがんだか………。)

 

 そんな品性のカケラも感じさせないハイエナの如き根性と己の保身しか頭にない発想にアントニオは現在の状況も忘れて呆れ返っていた。

 

 そして言うが早いか、その貴族は馬を駆って一目散に戦場から離脱して行った………かと思った次の瞬間………

 

 ………ヒュルルルルル………ズドォォォォォン!!

 

 先程の集団をまとめて吹き飛ばした攻撃が逃げ出した貴族を直撃していた。後には大穴だけが残っている。貴族(とその男が乗ってた馬)は肉片すら残っていなかった。

 

 逃げた主君の末路を見て部下達も我先にと逃げ始めたが、敵が放った光弾に次々と倒されていく。

 

 アントニオの周囲では同じ光景がそこかしこで繰り広げられていた。

 

 何処を見ていても目に入ってくるのは地獄の光景。その中で彼はどうやって生き延びるか必死に頭を巡らせていた。もはや、手柄を挙げて成り上がると言った発想は眼前の光景を見て跡形もなく吹き飛んでいる。そして周囲を見てあることに気づく。

 

 「………目立った奴から攻撃されている?」

 

 帝国軍………というよりファルマート大陸の常識では己の武勲を強調するため敢えて目立った格好で己を強そうに見せることが普通である。力がモノを言う世界では虚仮威(こけおど)しというものも案外馬鹿にならない効果があるからである。

 

 だが、この戦場ではその常識が裏目に出ていた。アントニオ自身は知らない事だが脅威度の高い存在を優先的に排除する事は現在の軍事常識に当てはめれば至極当然だからである。

 

 そしてアントニオは己の人生を振り返った。人よりも身体が小さく力も強くなかった彼は人並み以上の要領の良さと口八丁で、時には木に登り猿の真似事までして厄介事をやり過ごして来たのである。自分が今まで積み重ねて来た………己の恥とすら思っていた事が今自身の命を繋いでいた事実に思わず失笑してしまう。

 

 「うぅ………誰か………誰か居らぬのか………?」

 

 不意にそんな声が聞こえた。慌てて周囲を見渡せば、いかにも位の高さを示す質の高い軍服を着ている老人が倒れ付していた。アントニオは急いで窪地の中にその老人を引き込む………助け起こして連れ出そうものならたちまち敵の標的になるからだ。

 

 「おい!大丈夫か!しっかりしろ爺さん!!」

 

 「ウ……ウム。すまぬな。」

 

 アントニオの口振りに老人は一瞬顔を歪めたものの恩人に違いはないため素直に礼を言う………まあ生死が掛かっている状況だったので彼が余裕の無い態度になるのも無理は無いのだが………。

 

 「助けてくれた事には感謝する。あ~お主は………」

 

 「ハッ!兵卒アントニオと申します!」

 

 「ウム。ワシは元老院議員ゴダセンと申す。」

 

 その名前を聞いてアントニオは内心驚く。彼も名前ぐらいなら聞いたことのある帝国の重鎮だからだ。

 

 「兵卒アントニオ。すまぬがワシを後方の本陣まで連れ出して貰えぬか?今一度軍の態勢を建て直し……」

 

 「いえゴダセン閣下!私は今すぐに全軍撤退するべきであると具申致します!」

 

 アントニオはゴダセンに最後まで言わせず、有無を言わせぬ強い口調で意見具申する。

 

 「………しかし………」

 

 「敵に一矢も報いずに撤退する事に忸怩たる思いがあるのは私とて同じです!しかし敵の事を何一つ解らないまま、単に数を集めて戦ったとしてもこの敵が相手ではなす術無く犬死にするだけです!」

 

 この戦場でアントニオの中の夢見がちな帝国人的な考えは完膚なきまでに破壊された。代わりに彼の中には実に現実的かつ合理的な考えと価値観が急速に育まれていった。元々彼には愛国心というモノは希薄であった。この状況でどうすれば自分にとってベストなのかを冷徹かつ合理的な計算の上で導き出し、今のセリフを引き出したのである。

 

 「ここは恥を晒してでも生存者をまとめて撤退し、生還した上でこの敵の情報を本国に伝えるべきです!この敵の情報を本国に持ち帰り、帝国の未曾有の大敗北を防ぐ事は大勝利に導く事に等しい大手柄であると小官は愚考致します!」とアントニオは熱弁を振るう。

 

 ゴダセンも彼の内心はともかく言っていること自体は正論のため、逡巡の末その意見に合意した。直後にゴダセンは上空に向かって断続的に複数の光弾を放つ。恐らくは撤退の合図だろうとアントニオは当たりを付ける。

 

 気付けば周囲が薄暗くなって来ており、そろそろ日没前の時間帯である事に気付かされる。アントニオは敵軍の攻撃が弱まっている事に気付き、ふと敵のいる方向に目を向ける。そこには遠目ではあるが見た事もない重鎧を身に付けた人影が見えた。更にはその目に当たる部分が紅く光っていた事に度肝を抜かされる。それに………

 

 「紅眼の悪鬼の群れ…………」

 

 その通り、その人影は一つではなかったのである。アントニオが見る限り数十体もの同じ様な人影がある事が確認出来た。

 

 この事実はウワサという形で帝国軍の中に瞬く間に広がり、この日に戦った敵軍の恐怖の代名詞となっていった。ギンザという街において帝国軍が交戦したという『常識はずれな速さと動きをする重装歩兵』の戦場伝説と共に………。

 

 この戦闘で参加戦力の七割近くを失い、最終的に帝国軍は総戦力の六割を失うこととなった。それでもこの損害はゴダセンとアントニオの尽力により最小限まで減らす事が出来た上でのものである。この事実により帝国は軍備の再編と軍事改革を余儀なくされることとなる。

 

 そしてこの戦場で情報の重要性を学んだアントニオは後にゴダセン議員の従卒となり、帝国の諜報部の強化に尽力する事となるのはまた別の話である。

 

 また撤退する際に夜になるのを待ち、闇夜に紛れて死体の山の間を地面を這いずりながら戦場を離れる事にブツブツ文句を言っていたゴダセンに「命あってのモノダネです!」とアントニオが説得していた事もまた別の話である。




とりあえずは以上です

本業はサラリーマンなので時間がある時に気が向いたらコツコツ続きを執筆しようと思ってます

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