ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 神堂潤先生が講談社のWebサイト上で新連載を始めて、redEyesの新刊の発売日が更に伸びるであろう事に気を揉んでいる今日この頃……

 下手したら新刊出るのが10年後って事はないよな……

 ま、それはさておき本編スタートです
 


フォルマル邸にて

 

 日本標準時 00:18頃

 

 フォルマル伯爵邸 貴賓室

 

「──────と、ゆーワケ」

 

「……なるほど。それで伊丹さんも、ここにいるわけですか」

 

 伊丹からの説明で、ハイセはこれまでの経緯を凡そ理解した。先ほどのメイド服姿の女性は、ハイセが目を覚ましてから少し後に席を外している。

 

 ちなみに「連行中に暴行を受け、ここに着いた頃にはヘロヘロになっていた」と聞かされた辺りで、彼の脳裏に「ヘ~イ、ヤ○キ~」と呟きながらヘロヘロのシャドーボクシングをしたり、蝶々を追いかけたりするパンチドランカーの某ベネズエラ人が浮かんでいたりする。何かとネタに走る伊丹の事だから、そんな有様になっていたのではないかと予測していたのだ。

 

 それを頭に浮かべた途端、ハイセは「毒されて来たなぁ……」と内心嘆息する。ついでに悪魔のごとき邪悪な笑顔を浮かべつつ、「おいでおいで」と手招きしている銀髪の兄妹を幻視していた。

 

「ある程度予想していましたが……貴族からしてこんな有様では、この世界では全体的に人権意識が希薄な様ですね」

 

「まあ彼女らだけで、それを判断出来る訳じゃないけどな」

 

 そう言って、伊丹とハイセは特地の人間の意識について語り合う。

 

 誤解の無い様に言っておくと、これはあくまで価値観の問題であって、特地の人間が人格的に劣っているというわけではない。

 

 地球においても、現在の様な人権意識が世界的に広く共有され始めたのは、第2次世界大戦が終了してからかなり後で、意外と最近の事なのである。

 

 日本においても、戦時中には国内外の怪しい人間や捕虜を捕えては拷問を繰り返しており、「自由の国」と銘打っているアメリカでさえ、かつては黒人に対する人種差別が公然とあった程である。

 

 更に言えば、現在においても某元大統領を筆頭にしたアメリカ白人至上主義者、「かつての栄光を取り戻す事こそ正義」と信じて疑わない東側某国の秘密警察出身の大統領、「自国の上級国民こそが世界で最も優秀な人間だ」と信じて疑わない(日本を除く)東アジアの国々の国家元首など、端から見ればバカとしか言いようが無い価値観を持つ者が一定数存在している。それらを(かんが)みれば地球側もある意味、一切進歩していないのかも知れない。

 

 閑話休題(まあ、それはさておき)

 

「こうなると地球と特地(こちら)の価値観の違いから、実務者交渉に入っても泥沼化しかねませんね……」

 

「そこらへんは外務省の仕事だ。自衛官(俺たち)が気にする事じゃない」

 

 コンコン

 

「どうぞ」

 

 ガチャ

 

「失礼します」

 

 話の途中でノックが聞こえハイセが入室を促すと、初老の女性がメイド服姿の部下と思しき者を、先ほどの若い女性を含め4名引き連れ入室する。

 

「お目覚めになられた様ですね、ササキ様?」

 

「あなたは……確かメイド長のカイネさんでしたね?」

 

「覚えていただき、光栄でございます」

 

 初老の女性──カイネが僅かに笑みを浮かべそう答える。

 

「ご気分はいかがでしょう?」

 

「ええ…ぐっすり眠れたおかげで、今はずいぶんスッキリしてます」

 

「そうでしたか……それは良うございました」

 

 部下から報告を受けてはいたが、ハイセから直接その事を聞いて、カイネはようやくほっとした顔になる。

 

「イタミ様、ササキ様。この度はイタリカをお救い下さり、まことにありがとうございました」

 

 ハイセの状態を確認した後、カイネはそう言うと部下共々ハイセたちに向き合い、揃って深々と頭を下げていた。

 

「ど、どうも……」

 

「この街をお救い下さったのがイタミ様とその御一党であるのは、街の住民である皆が承知している事。そのイタミ様に対し、この仕打ち……到底赦される事ではございません」

 

 カイネは心底申し訳なさそうな表情を浮かべ、そう詫びる。

 

「もしイタミ様たちの怒りが収まらず、制裁にこの街を攻め滅ぼすというのであれば、我等一同 力を貸す所存。ただ当家のミュイ様にだけは その矛先を向けぬ様、伏してお願い申し上げます」

 

「だ…大丈夫ですよ、そんな事するつもりありませんから」

 

 伊丹が慌ててそう答える横で、ハイセは彼女らの忠誠心が帝国ではなくミュイ個人に向けられている事を実感する。

 

 実際、彼女らがハイセを一時フォルマル家で預かる事を自衛隊に申し出た理由も、恩人だからという事も確かにあるが、彼女たちにも「ハイセと伊丹たちを通して自衛隊との繋がりを維持しつつ、あわよくばハイセ個人をフォルマル家ヘ引き込む」といった下心があったためだ。ミュイ本人は()()()()()()()()()()()()、純粋にハイセの身を案じての事であったが……。

 

 帝国と自衛隊とを両天秤に掛ける風見鶏のようなやり方だが、乱世においてはむしろ当然の対応である。

 

 戦国時代の日本を例に上げるまでもなく、中小規模の有力者は自分以上の権力を持つ者にすり寄るか、波風立てないように対応して自分たちの命脈を保つものだ。それが2つ以上いる場合は、その両方に繋がりを持って自分たちの生き残りをかけるのである。戦国期の長宗我部家が最終的に滅んだのも、織田家ヘのパイプを明智光秀()()に頼っていた事を始め、自家の命運を左右する重要な選択をするにあたり保険を用意していなかった事も理由の1つであろう(あくまで作者(わたし)の個人的な見解です)。

 

 閑話休題(まあ、それはそれとして)

 

「ピニャ殿下からも、貴方方を賓客として(もてな)すよう仰せつかっております。モーム、アウレア、ペルシア、マミーナ、この4人を御二人のお付けといたします。何なりと、お申し付け下さい」

 

 カイネの紹介に合わせて、上品な仕草でメイド4人がハイセたちヘお辞儀をした。

 

「な…何でも……」

 

 伊丹が妙な妄想を浮かべるのを横目に見て呆れつつ、ハイセがメイドたちに目を向けると──

 

「……あれ?」

 

()()?…どうかしましたか()()?」

 

「ああ、いえ……僕たちの世界では人間──そちらではヒト種でしたっけ?それ以外の人種が居ないから、珍しくて……」

 

 ──ペルシアと呼ばれた女性の頭部にネコミミがあるのを見つけ、慌ててそう弁明した。そのネコミミは生き物の如くピコピコ動いており、その顔を注意深く見てみると鼻筋から口許までが猫を思わせる造形している。

 

 他のメイドに目を向けると、モームと呼ばれた女性は自分たちと変わらないが、マミーナと呼ばれた女性は頭部にウサミミがあり、アウレアと呼ばれた少女は頭髪が無数のヘビとなっており、瞳孔はヘビのそれである。

 

 異世界に来ているという事実を実感させられるその光景に「倉田くん、泣いて喜ぶだろうなぁ……」と、ハイセは日本語で独りごちるのであった。

 


 

 日本標準時 01:04頃

 

 イタリカ市街地 フォルマル邸付近

 

 その頃、富田たちは足音を立てないよう、フォルマル邸に向けイタリカの街中を注意深く進んでいた……が、街中の警備は呆れる程ザルであった。

 

 入口付近に立っていた者たち以外にも歩哨役の民兵が複数人居たのだが、起きていた者以外はものの見事に大の字に寝転がって鼻提灯(ちょうちん)を膨らませていた。更に、入口に10人ほどの歩哨が居る事(役には立っていないが……)に慢心しているのか、街中に巡回の兵士をほとんど見かけなかったため、ほぼ最短距離でフォルマル邸に向かう事ができていた。

 

 …………ザッザッザッザッ

 

 さすがにフォルマル邸の敷地内では、そこそこの数の巡回が居たが、レレイたち3人を除く潜入チームの全員がACIESの複合センサーカメラ付きヘルメットを着用していたので、事前に察知して光学迷彩マントで身を隠してやり過ごす。

 

 ザッザッザッザッ…………

 

 ……ススス……

 

 巡回が通り過ぎた事を確認し、富田たちは邸宅の窓の一つに取り付く。

 

「二階の窓から明かりが……」

 

「裏口は避けて、ここから侵入しよう」

 

 栗林が窓に明かりが灯っているのを見て、富田はまだ住人が起きていると考え窓からの侵入を促す。チームの全員に否やは無い。

 

 そして窓の合わせ目の隙間に、ナイフを差し込んだ。

 

 バキッ!

 


 

 ピクンッ!

 

 唐突にマミーナが表情を硬くして、ウサミミを忙しなく動かし始めた。

 

「…………………」

 

「どうしました、マミーナ?」

 

「……何者かが一階の窓の鎧戸をこじ開け、侵入しようとしています」

 

 カイネがその様子を不審に思い尋ねると、マミーナが硬い表情をそのままに答える。

 

「おそらくイタミ様たちの手の者でしょう、ご案内を」

 

「他の者でしたら?」

 

「いつも通りです、ペルシア」

 

「かしこまりました」

 

 スッ

 

 カツカツカツ……

 

 パタン

 

 カイネの命を受け、マミーナとペルシアの2人が表情のみならず身に纏う空気までもを使用人のものから戦闘者のそれに変え、静かに退室していった。

 

「……あの2人は?」

 

「マミーナは首狩りウサギ(ヴォーリアバニー)、ペルシアは猫系獣人(キャットピープル)でございます。こちらのアウレアはメデュサ、モームはヒトです」

 

「そー言えば、捕虜の中に頭や手足に羽根の生えた女の子が……」

 

「その者はセイレーンでございましょう」

 

 カイネはハイセと伊丹の質問の意図を即座に汲み取り、淀み無く答える。

 

「……この世界では、多種多様の種族が一緒に働く事が当たり前なのでしょうか?」

 

「……いいえ、滅多にございません」

 

 亜門からハイセの事情を聞いていたためか、彼の質問にカイネは複雑な表情で答えた。

 

「先代さまは非常に開明的なお方で「種族間の摩擦の根本的な原因は貧困にある」と、信じておられました。それ故に、フォルマル家ではヒト以外の者も 積極的に雇い入れておられたのです」

 

「……どこの世界でも、人種差別はあるものなんですね。ある程度の権力があるとはいえ、そんな差別がある中で そのような事は なかなか出来るものではありませんよ」

 

「……まあ、「ご趣味」でもありましたので……」

 

「ハハ……こちらにも、そういう方がおられましたか」

 

 ハイセが先代フォルマル伯に素直に感心している所で、カイネは言いにくそうに補足する。その事実にハイセはずっこけ、伊丹は苦笑するのであった。

 


 

 一方、富田たちはフォルマル邸内で伊丹たちの捜索のために、後方にいるヒデに連絡を取っていた。

 

「ヒデ、隊長たちが監禁されている部屋は解るか?送レ」

 

『……すいません、正確な位置までは……ドローンを接近させて探るにしても、建物の外からだけでは限界が……送レ』

 

「……仕方がない、しらみ潰しに探すしかないな」

 

 カツカツカツ……

 

 と、そこへ廊下から複数人の足音が聞こえてくる。

 

「誰か来ます!」

 

「人が来たから一旦切るぞ、終わり!」

 

「全員、光学迷彩で身を隠せ!」

 

 カチッ!

 

 ヴゥゥゥゥ…………ン

 

 仁科の号令でレレイたちを含む全員が光学迷彩マントを起動させ、念入りに暗闇ヘと身を潜める。富田も無線を切りつつ、光学迷彩を起動させた。

 

 ガチャ

 

 キィィ……

 

「「……お待ちしておりました」」

 

 ペルシアたちは一瞬()()()()()()()()()()()()に内心では驚愕するも、その事をおくびにも出さずそう告げた。

 

「「「「「………………」」」」」

 

「……どういう魔法かは存じ上げませんが、ヒト種の目は誤魔化せても私たちには解ります。私たちは夜目が利きますので」

 

 マミーナの補足に富田たちは驚愕する。

 

 確かに彼らの使用しているマントは「光学迷彩」と銘打っているものの、目の周囲の部分は剥き出しの上、他の部分も攻○機動隊の様にその姿を完全に透明化出来る代物ではない。彼らもそれを弁えた上で、肌の露出している部分をドーランで塗り潰して覆い隠し、更に周囲の闇に溶け込みやすい迷彩服を着用し、それらに紛れて身を潜める事で補っていたのだ。

 

 だがペルシアたちの目には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、奇妙な光景に見えたのである。

 

「私たちについて来て下さい。イタミ様たちの元へご案内致します」

 

 完全に見破られていると悟った富田たちは、彼女たちを警戒しつつもとりあえず案内に従ってついて行った。

 


 

 兵器解説

 

・光学迷彩マント

 

 テストを兼ね、深部偵察隊に支給された試作装備。

 

 口元を隠すマスクとフードの付いた丈の長いポンチョの様な形をしており、最新型の電磁メタマテリアルが使用されている。本装備を作動させれば着用者の姿がほぼ見えなくなる。

 

 ただしマントの内側から外を見ることが出来ないため、目元は剥き出しにならざるを得ない上、ACIESのバッテリーを電源としているため、作動中はそれの機能が使用出来なくなる。更に作動中の本装備の透明度は、せいぜい半透明と言った程度(昼間では着用者の輪郭が浮かび上がって見える)である。

 

 作中で3偵は本装備を使用するのは夜間に限定した上、周囲の闇を利用する事でそれらの欠点を補っている。

 

 なお作中でのレレイたち3人は桑原の許可を得て、ACIESの予備バッテリーと本装備を持ち出し光学迷彩を機動させている。

 




 
 次回は7月16日の0:00に投稿予定です

 なお前回から引き続き、アンケートを募集中

 内容は「本作の自衛隊の制服は?」で選択肢は以下の3つ

・16式制服

「創隊以来の大改革に断固たる決意を示す」などとタワゴトほざいて更新された新しい制服。基本色を今までの緑色から紫紺系に変更、幹部のものは袖口とズボンに金色のライン入り。

 知名度が無いのか人気が無いのか
 現時点で投票数は0
 (2023年7月1日時点)

・16式制服改

 上記の制服のデザインをそのままに、基本色を緑色に変更した架空の制服。採用されれば本作オリジナルに。

 現時点での投票数は2位
 (といっても、たったの3票)

・91式制服

 みんなご存知、緑の制服。国内での生産力の問題で新制服が行き渡っておらず、自衛官の半数近くは未だにこの旧制服。「そもそも一度に全員へ行き渡らないなら衣替えするなよ……」などと言った声もチラホラ。

「陸自の制服と言えばコレ」といったイメージが根強く、知名度も高いせいか
 現時点で投票数トップ
 (6票……)

 7月末までアンケートは続けますので、どしどし ご応募ください!(プレゼントはありませんが……)

 ご意見、ご感想と共にアンケートもお待ちしております
 

本作の自衛官の制服はどれ?

  • 16式制服(紫紺系カラー)
  • 16式制服改(緑色カラー)
  • 91式制服(原作のやつ)
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