ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 今回の番外編は、伊丹たちと分かれた後の裏側で起こった、駒門の「戦い」を描いています。 
 
 伊丹たちの戦闘の裏での駒門による「戦い」とは…… 
 
 それでは、番外編スタート! 
 
 


番外編 それぞれの戦い 2 

 

 

 駒門(こまかど) 英世(ひでよ)の場合 

 

 

 参考人招致終了後の夜

 

 日本標準時 20:16頃

 

 東京某所 とある商店街の大通り

 

 残業帰りのサラリーマンや、帰宅前に一杯引っかけてきた酔っ払いで溢れる商店街の大通り。 

 そこを杖を突いた1人の中年男が歩いていた。 

 

 その男は見た目こそ周囲の酔客たちと大差無いものの、身に纏っている雰囲気は完全に別物で、周囲からは浮きまくっている。

 

 任務の最中にギックリ腰を患ってしまい、意図せず護衛対象と別行動を取る羽目になった中年男──駒門 英世は病院での治療もそこそこに、とある店を目指していた。 

 

 病院での治療の直後、護衛対象である伊丹たちの居る市ケ谷会館へ戻ろうとした際に部下から報告を受けたためだ。

 

「しかし、悪い事は重なるもんだ。ちょっかいかけられて警戒を強めた直後に、あんな報告が入って来るとは……」

 

 1人ぼやきつつ通りを歩いていると、目的の店が見えてきた。

 

 その店は通りの外れにある住居一体型の店舗で、ひっそりとした佇まいだ。 

 だが、それが知る人ぞ知る隠れ家的な名店の様な雰囲気を醸し出していた。 

 

 藍色の暖簾(のれん)には、白抜きの文字で「しんでれら」と書かれている。

 

 駒門は迷う事無く暖簾を潜り、店内へ入って行った。

 

 


 

 

『ゴチャゴチャうるせえんだよ!』

 

「おーおー。珍しくキレてやがんな、佐々木の奴」

 

「そりゃあ、あれだけ好き勝手言われたら、誰だってキレるでしょ?」

 

「いや、あいつはどっちかっつーと、大人しいタイプなんだが……」

 

「そんな子をブチキレさせるほどの事を、あのオバハンは言ってたって事じゃない?」

 

「ん、おかわり」

 

「はいはい」

 

 さして広くはない居酒屋の店内。 

 

 そこではこの店の店長とカウンター客が、店内に設置されたTVで今日組まれた緊急特番を見ていた。

 

 現在、店内に居る客は少ない。 

 

 カウンターに座る2人と、その後ろに直立不動の女性が1人。 

 あとは数人の女性客が、TV特番を肴に座敷でどんちゃん騒ぎをしていた。 

 

 カウンターに居る客は、全員日本人ではない。

 

 1人は白髪ロングの白人女性。 

 少し前まで、店内の女将相手のおしゃべりを肴にチビチビ呑んでいたためか、少し顔が赤い。 

 

 その後ろで立っているのは、護衛と思しき目付きが鋭く体格のいい、北欧系の黒髪美女だ。 

 怪我をしているのかその右目には、医療用の眼帯がある。 

 

 最後の1人は、褐色肌を持つ銀髪の少年だった。 

 彼はTVには目もくれず、ひたすら飯を掻き込んだ後、女将へ茶碗を差し出し2杯目のおかわりをリクエストしていた。

 

 

 ガララッ!

 

 

「いらっしゃ……何だ、珍しい客だな」

 

 引き戸が開く音に反応して、店長──塩見(しおみ) 周介(しゅうすけ)が目を向けた先には、杖を突いたスーツ姿の中年男──駒門が立っていた。

 

「いえいえ。今回はアンタではなく、そこに居るお客に用があるんですよ」 

 

 そう言って、駒門はカウンターの白人女性へ目掛けて、真っ直ぐ歩いて行く。 

 彼女は、即座に立ち塞がろうとする黒髪美女を目で制して、駒門が来るに任せる。

 

 一方で駒門は、受け取った報告に関わっていると思しき人物が予測通りの場所へ居た事に、内心で安堵していた。 

 

 彼女は、日本での仕事の後は高確率でこの店へ立ち寄るので、行動を予測しやすい。 

 だが外れると情報の伝手が無くなるので、お手上げになるところだからだ。

 

「フフーフ、緊急のご注文でしょうか? 

 すいませんが、見ての通り、今オフでして」

 

「いえ、そうではありません。 

 実は今日行われた取引について、お聞きしたい事がありましてね。 

 ココ・ヘクマティアルさん?」

 

 その言葉に、白人女性──HCLI社幹部 ココ・ヘクマティアルは一瞬その碧眼を眇め、直後に張り付けた様な営業スマイルを浮かべた。

 

「ああ、あの取引ね? 

 まさか、わざわざそんなケチな出来事で私たちを逮捕するために出張って来るほど、公安は暇なんでしょうか?」

 

「それこそ、まさかですよ。その事に関しては、私の任務と直接関係ある訳ではありませんし。 

 大体その件は、所轄の県警と海上保安庁(海保)の管轄ですからね」 

 

 

 そう言って駒門は「よっこらしょっ…と」と、ココの隣のカウンター席へ無遠慮に座る。

 

「では、ミスター・コマカドの用件は、一体何なのでしょうか?」

 

「実は、今回の取引内容について、いくつか確認したい事がありまして……」

 

「先に言っておきますけど、クライアントの事なら守秘義務がありますから、お話し致しかねますよ」

 

「ご心配無く。そちらに関しては大方予測出来ますし、例え誰であろうと対処は変わりません。 

 今回お聞きしたいのは、あなた方が取引した商品に関してです」

 

「………………」

 

「バルメ」

 

「ッ!……失礼しました」

 

「おかわり」

 

「はいはい」

 

 駒門とココが腹の探り合いをしている横で、黒髪美女──バルメが駒門を睨み付けるのをココは嗜め、それらを尻目に少年が3杯目のおかわりを女将に要求している。

 

我々の商品をご存知なのでしたら、わざわざここまで確認しに来る必要は無いんじゃないですか?」

 

「そうとも、言えません。 

 そちらのお客さんが何を買い付けたかによっては、我々の対処も変わって来ます。 

 商品の品目を知っておく事は、我々にとっては非常に重要なんですよ」

 

「…………なるほど」

 

 そう言うとココは、足元に置いてあったアタッシュケースを持ち出した。

 

「ココッ!?」

 

「大丈夫だ、クライアントの情報を漏らす訳じゃない。 

 それに我々の取扱商品を教える分には、何ら問題は無いだろう?」

 

「そ…それはそうですが……」

 

 そう言いながらココはケースの中身を漁り、やがて3枚の紙をカウンターの上に置く。

 

「こいつは?」

 

今回のクライアント()()から受注した、商品のリストです。 

 申し訳ありませんが、メモもコピーもご遠慮頂きたいので、この場で覚えて貰えませんか?」

 

「構いません、概要さえ分かれば問題ありませんので」

 

 そう言って、駒門は差し出された紙に目を通していく。 

 そして読み進める中で、徐々に表情が険しくなっていった。

 

「こいつぁ、恐れ入った。 

 大物こそありませんが、数にしては相当なモンですぜ。 

 連中、日本でバカ騒ぎでも起こすつもりですかい?」

 

「さあ?我々は依頼された商品を取り寄せ、それを無事に届けるまでが仕事ですので。 

 クライアントがそれを使って何をするかまでは、我々の関与するところではありませんよ」

 

「……(ちげ)()ぇ」

 

「おかわり」

 

「はいはい」

 

 駒門たちのやり取りを尻目に、少年は我関せずで4杯目のおかわりを女将へ要求する。

 

「知りたい情報は、おおよそ掴めました。 

 それでは……」

 

「おいおい、せっかく来たんだ。 

 飯ぐらい食ってけよ」

 

「……そうですな。飯屋に来て、何も注文せず帰るのは失礼でしたな」 

 

 周介に勧められて、「そう言や、晩飯まだだったし」と腰を上げかけた駒門は座り直した。

 

「では何かあっさりした料理を、定食でお願い出来ますかな? 

 最近油っこい物を食うと、胃が(もた)れるもんで……」

 

「あいよ」

 

 注文を受け、周介は料理を始める。

 

「……ああ、そうだ。奴さんたちがPDWで武装して、旅館を襲撃して来る事がほぼ確実になった。 

 旅館の護衛に特戦群()を投入して、最大限警戒する様に手配してくれ」

 

 駒門はその間にスマホを取り出し、関係各所に連絡を入れていった。

 

「へい、お待ち。スペシャルミックスフライDX定食だよ。 

 サービスで、飯をてんこ盛りにしてやったぜ!」

 

「…………何ですかい、これは?」

 

 周介が差し出したトレー上の料理一式を見て、駒門は思わずたずねる。

 

「何って…どう見てもお疲れのようだから、俺様特製のスタミナメニューを用意してやったんだ。 

 いやー、俺ってサービス精神旺盛だよな〜」

 

「いや、人の話聞いてたんですかい!?」

 

 周介は駒門のリクエストを無視して、ボリュームたっぷりの揚げ物をこれでもかと乗せた定食を用意していた。

 

「おいおい、これぐらい俺も妹もペロリだぞ?」

 

「アンタら、一体どういう胃袋してるんですかい!?」

 

「こういう胃袋だが?」

 

「ん、おかわり」

 

 そう言って周介が指差すのは、5杯目をおかわりする少年だ。

 

 周介たちとはそれなりに長い付き合いなので、もう駒門はこれ以上の問答は無駄だと悟り、箸を手に取る。

 そして駒門は、ドカ盛りチャレンジグルメを前にした大食いタレントの様な心持ちで、目の前の料理に挑み始めるのであった。

 


 

 それから3時間後──

 

 ガラッ!

 

「……はぁ…えれぇ目に遭った」

 

 ──服も髪も乱れまくった赤ら顔の駒門が、ぼやきながらフラフラとした足取りで店から出てきた。 

 一見すると深酒し過ぎて泥酔している様に見えるが、実際には一滴もアルコールは飲んでいない。

 

 駒門はあれから出された定食に手を着け始めたが、案の定半分ほど食べ終わった時点で胸焼けがしてきた。 

 

 そして一緒のカウンターに居た少年が物欲しそうな目で見てきたので、これ幸いに残ったオカズを差し出すと、仔犬の様に懐かれてしまったのだ。

 

 更にそれを見ていたココが脇固めを仕掛けてきたり(酔っ払って気付いていないのかタップしても技を解かなかった)、それを見ていたバルメに親の仇を見る様な目で睨み付けられたり、ギックリ腰に目敏く気付いた周介に痛む腰をツンツンされたり、座敷に居た女性客(酔っ払い)たちに絡まれたり散々だった。 

 

 おまけに少年とバルメを除いた店内の客全員が、これでもかと店中に撒き散らしていた酒気に、駒門は当てられていた。 

 

 そのためか、普段は呑まない酒がまわったかのような赤ら顔になり、フラフラと店を出るハメになっていた。

 

「やれやれ……少し腹ごなししてから、帰ろうかね」

 

 そう言って、商店街を歩き始めると──

 

 ヴーッ!ヴーッ!

 

 ──懐のスマホから、バイブレーターコールが響く。

 駒門の経験上、こういう時の連絡は、大抵ロクなものではない。

 

「もしもし?」

 

『あっ、駒門さん?大変です、市ケ谷会館で火災が起こりました!放火と思われます! 

 その混乱で、来賓が行方不明に……』

 

「何だと!?」

 

 案の定、ロクな報告ではなかった。

 

『更に火災現場から1㎞弱離れた場所で、銃撃戦があったとの未確認情報もあり、それらしき現場では実際に2台の車両が炎上しておりました!』

 

「解った、すぐに情報本部へ戻る!」

 

 ピッ

 

「ったく……私のいない所で、一体何を仕出かしてくれてるんですかね?あの人たちは……」

 

 呆れてぼやきながら、駒門は急いで大通りまで出てタクシーを捕まえる。 

 

 そして、そのまま防衛省の情報本部へ直行し、マスメディアへの対処や事態の揉み消しなどといった伊丹たちの尻拭いに、一晩中奔走する事となった。

 

 彼の多忙を極める夜は、まだまだ始まったばかりだ。

 

 




 
 
 以上、駒門の「情報戦」という「戦い」(と、それに付随するドタバタ劇)でした! 
 
 読者の皆様方、お楽しみいただけましたでしょうか? 
 
 次回は2026.4.12 00:00に本編を投稿予定です。 
 
 ご意見、ご感想をお待ちしております。 
 
 
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