ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 今回は、箱根への出発直前に新宿へ集合した伊丹たちのあれこれです。 
 
 途中、アニデレの名物キャラクターも登場します。 
 
 それでは、本編スタート! 
 
 


箱根への出発、そして(うごめ)く悪意

 

 

 日本標準時 13:54頃

 

 東京新宿区 アルタ前広場

 

「はぁぁ~~~~……」

 

 用事を済ませ集合場所であるアルタ前にやって来た伊丹は、心底呆れ返った表情で嘆息する。 

 その眼前には、本日の()()()を両手いっぱいに抱えた女性陣の姿があった。

 

 そんな彼女たちの有様を見て、伊丹は頭を抱えたくなる。

 

「ついね……同人誌即売会まで、保てばいいのよ」

 

 そう言い放つ梨紗の両手にはさまざまな店の紙袋がぶら下がっている。 

 この様子では、伊丹からの援助のほぼ全てを使い切ってしまっているようだ。

 

「こっちのこんぱうんどぼうって弓、すごいのよ?威力もあるし、よく当たるし……」

 

 言い訳じみた事を口にしつつ、テュカは手に持っている取っ手の付きの大きな包みを掲げて見せる。 

 

 スポーツ用品店や山岳用品店のロゴが多く見える手荷物からは、地球のアウトドア用品に強い関心を寄せる、森の精霊らしさがうかがえた。

 

「……本は、必要なもの」

 

 そう言うレレイの手には書籍の数々が入った袋がぶら下がり、胸元にはノートパソコンの箱が抱かれていた。知的好奇心が旺盛な、彼女らしいチョイスだ。 

 

 ちなみに電源に関しては、ハイセに指摘された事もあり足踏み式とソーラーパネル式の発電機と変圧器を一緒に購入している。それらはさすがにかさばるため、アルヌスにある彼女のプレハブ小屋まで郵送済だ。

 

「向こうじゃ、(あつら)えるのも大変なのよぉ」

 

 バカでかいハルバードを持っているためか、ロゥリィの手荷物は他の二人よりはいくぶん少な目だ。 

 

 しかし、その紙袋の中には黒のフリルやレースなどの装飾品に加え、アクセサリーがぎっしり詰め込まれている。彼女も彼女で、しっかりと買い物を満喫したらしい。

 

 その一方で、ハイセの両手には大量の荷物がぶら下がっていた。どうやら荷物持ちとして、きっちりこき使われていたようである。彼の表情には、隠しきれない疲労の色が濃くにじんでいた。

 

 次いでピニャたちの方へ目を向けると、彼女たちも複数の紙袋を手にホクホク顔だ。見慣れた同人ショップのロゴが見えることから、お目当ての品はしっかり手に入ったらしい。 

 

 その一方で、同行していた富田はといえば、背後に暗雲が漂うほどひどく落ち込んでいた。

 

「ヒデ……一体、何があったんだ?」

 

「……聞かないでやってくれ」

 

 苦笑まじりにそう答えるヒデの態度から、ハイセは大方の事情を察する。同時に、富田への同情の念が自然とわき上がった。

 

「よーし、それじゃ全員揃った事だし…… 

 俺たちはこれから箱根へ行くけど、君たち、帰りは大丈夫かい?」

 

「「あ、ちょっと待ってください」」

 

 伊丹の言葉を遮る形で、ハイセとヒデが同時に声を上げた。ヒデに「先に言え」と促され、ハイセが説明する。

 

「実はここに来る途中、彼女たちの迎えを頼んであるんです。 

 その人が来るまで待って貰えませんか?別に電車が一〜二本遅れても問題ないですよね?」

 

「え、そんなこと頼んでたの? 

 別に心配しなくても、アタシたち子供じゃないんだから……」

 

「いや…最近は何かと物騒だしね」

 

 含みを持たせた言い方で、ハイセはさらに補足する。 

 

 美嘉たちには意味が分からなかったが、伊丹たちはその一言で理由を察した。

 

「いえ……ですから、私はここへ人を迎えに──」

 

「後ろめたい人間は、皆そう言うんだ。 

 いいから、署まで来てもらおうか?」

 

 ちょうどそのとき、近くで何者かが押し問答している声が聞こえた。 

 

 声のする方に目を向けると、スーツ姿の大柄な男性が警官に絡まれ、任意同行を求められているところだった。

 

「あー…関わると面倒だし。 

 他人のフリ、他人のフリ……っておい!」

 

 伊丹は関わらずにやり過ごそうと他人のフリを決め込むが、ハイセは迷うことなくその方へ歩き出した。伊丹が止める間もなく、彼は押し問答の渦中へ飛び込んでいく。

 

「すいません。その人、僕の連れなんです」

 

「なんだね君は? 

 身内のフリをして邪魔をするつもりなら、君も公務執行妨害で──ッ!?」

 

 どうやら、点数稼ぎのために因縁を付けていた不良警官らしい。ことさら国家権力を振りかざすその相手に対し、ハイセは自身のIDカードを見せて黙らせた。

 

「失礼、私は佐々木 琲世二等陸尉。 

 現在、特地派遣部隊から特務で日本に戻って来ているところです。 

 彼には、私の任務に協力して頂くため、こちらへ来てもらっていました」

 

「にっ……二尉殿!? 

 …………あー、失礼しました」

 

 不良警官はハイセのIDを見て一瞬驚いたものの、別組織の者だと分かるとすぐに落ち着きを取り戻す。 

 

 自分の職域に余所者が口を出してきたことに内心イラ立ちながらも、彼は相変わらず横柄な口ぶりでハイセに質問をぶつけた。

 

「しかし……二尉の任務は私の職務に割って入る程、重要なものなのでしょうかねぇ?」

 

「機密に触れない範囲ではありますが、どうしても彼に協力してもらう必要があります」

 

「ではその特務とは、一体どういうもんなんですかい?」

 

「防衛機密に関わる事なので、お答えいたしかねます」

 

「ケッ!答えられる事が何もねえんじゃねぇのか?」

 

 不良警官の慇懃無礼な問いかけに対し、ハイセの返答は取り付く島もない。その態度に、男はあからさまに不機嫌さをあらわにした。

 

「任務の内容はお答えできませんが、防衛省情報本部と警視庁公安部、そして特地派遣部隊による合同の極秘任務──とだけお伝えしておきます」

 

 そう言って、ハイセは不良警官に折り畳まれた革のケースを見せる。

 

「なッ!?…………テメェいつの間に!?」

 

 不良警官は、ハイセが取り出した自分の警察手帳を見て、あわてて胸ポケットを探る。

 

 中身と不良警官のバッジを確認したうえで、ハイセは続けた。

 

「それでもなお、この人を連行するというのであれば…… 

 渋谷署へ「そちらの警官に、新宿で不当に任務を妨害された」と、公安を通じて抗議させてもらいますが?所轄外での越権行為……タダで済むとは思えませんがね」

 

「くッ!」

 

 

 バッ!

 

 

「テメェこそ、警官にこんな舐めたマネしてタダで済むと思うなよ?」

 

「防衛省と公安、そして新宿所轄の警察官。そのすべてと事を構える覚悟がおありなら、どうぞご自由に」

 

「…………チッ!」

 

 不良警官は手帳を乱暴に引ったくって捨て台詞を残し、舌打ちしながらその場を後にした。

 

「……申し訳ありません」

 

「気にしなくていいですよ。 

 ただ、あなたが見た目のせいで警官に絡まれるのは日常茶飯事なんですけど、今回はずいぶんタチの悪い相手に当たりましたね」

 

「…………はぁ」

 

 男性は所作や物腰から礼節を弁えた人物だと分かるが、見た目は筋肉質で大柄なうえに三白眼で目付きも鋭い。ハイセの言うとおり、気の弱い子どもや女性ならば間違いなく怯えてしまうタイプの容姿だった。

 

 返答に困った彼は、首の後ろに手を回しながら生返事を返すしかなかった。

 

「Pくん? 

 ハイセくんが呼んだ迎えって、Pくんだったの?」

 

「っていうか、アンタまた警察に絡まれてたの? 

 相変わらずね~」

 

「あ……え?知り合い?」

 

 ハイセと共に男性が伊丹たちのもとへやって来ると、警戒していた栗林は、彼に親しげに声をかける莉嘉たちを見てそう尋ねた。

 

「失礼……私、こういう者です」

 

 そう言って男性は、懐から名刺を取り出し、お手本の様な所作で栗林に差し出した。

 

 

 346プロダクション

 アイドル部門プロデューサー兼主任統括

 武内(たけうち) 駿輔(しゅんすけ)

 

 

 ──名刺には、そう記されていた。

 

「芸能プロダクションの人?」

 

「はい。ところで、アイドルに興味はありませんか?」

 

 武内Pは栗林の問いにこくりと頷くと、そのまま自然な流れでスカウトを切り出した。

 

「え?あ、いやいやいやいや…… 

 アイドルとか、そういうのには興味ないので」

 

「まあ、歌とかダンスより、素手で人を叩きのめすほうが得意な人だから……ッ!」

 

 

 ドスッ!

 

 

 栗林が慌ててスカウトを断るかたわらで、ハイセは容赦なく毒を吐く。その余計な一言を遮るように、栗林は無言でエルボーを叩き込み、彼の口を封じた。

 

「そう言やあ…ヒデ、お前も何か言いかけてなかったか?」

 

「ああ、はい。 

 昨日のことを聞きつけて、補給物資を持って来るって言う人がいて。集合場所と時間を伝えてあるので少し待ってもらえませんか?」

 

 悶絶しているハイセを横目に、伊丹の問いにヒデが答える。

 

「補給物資?誰が持って来るんだ?」

 

「あ、ちょうど着いたみたいですよ」

 

 ヒデの視線を追った伊丹は、その直後に驚愕した表情を浮かべた。

 

「すまない、少し遅れた」

 

「いえ、時間ピッタリです」

 

 そこには、隙の無い雰囲気をまとった眼鏡の長身の男が立っていた。右手には大ぶりなチェロケースを掲げ、背中にはディパックを背負っている。

 

「あ……有馬一佐!?」

 

 富田と栗林も伊丹の声でその長身の男──有馬の姿に気づき、あわてて姿勢を正した。悶絶していたハイセも、それにならってどうにか背筋を伸ばす。

 

「永近三曹に話は聞いた。昨日、襲撃を受けたそうだな」

 

(有馬一佐ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?)

 

 到着早々、有馬は伊丹たちの苦心を一瞬で台無しにする天然発言をぶち上げた。

 

「ちょっ、Pくん何するの?これじゃ聞こえないよ~」

 

 一行が揃って驚愕しているその横で、武内Pはとっさに莉嘉の耳をふさいでいた。何気に有能である。

 

「有馬さん! 

 昨日の戦闘は、一般にはまだ知られていないんですよ!」

 

「む?そうか、すまない」

 

 小声でハイセに注意されると、有馬はすぐさま素直に謝罪した。

 

「その話を聞いて、補給物資を持って来た。このケースの中には──」

 

「ここで中身を見せないでください! 

 周りには民間人も大勢いるんですから!」

 

 有馬が持って来た荷物を開けようとするのを、ハイセはあわてて制した。

 

「……聞きしに勝る天然ぶりね」

 

 栗林のひと言が、この場にいる全員の気持ちを雄弁に物語っていた。

 

 とりあえず近場のベンチまで移動し(その際KYの若者数人がナンパして来たので、ハイセと栗林が問答無用でぶっ飛ばし即退散させた)、富田たちが周囲に立って壁になってからチェロケースの中身を確認した。 

 武内Pと美嘉たちは、空気を読んで明後日の方を向いている。

 

 ケースの中には、蓋と本体にそれぞれ洋弓──テュカの弓とは違い、競技用として一般的なリカーブボウと呼ばれるタイプだ──一挺ずつと、リリーサーグローブ等のアーチェリー用品一式が二セット。 

 それと傘が二本入っていた。

 

「これは……弓は判るが、何故傘を?」

 

「柄を握って左に回し、引き抜いてみろ」

 

 ヒデの通訳を通して説明を聞いたピニャは、訝しみながらも言うとおりにする。

 

 

 カチッ スウゥ……

 

 

「日本企業が開発した、弓と仕込み杖だ。 

 部下から聞いた状況から必要と考え、護身用の武器を用意した。 

 扱い慣れていない銃より、こちらの方がいいと判断してな」

 

「なるほど……かたじけない、アリマ殿」

 

「こっちは追加の弾薬と…… 

 後はCBJ-MSの6.5㎜弾用の銃身とリターンスプリング、それと交換作業用の工具だ。 

 昨日渡した9㎜弾仕様では心許ないだろうからな」

 

 更に有馬は背中のディパックを下ろし、説明を続けた。 

 

 中から次々と出てくる荷物の内容に、伊丹たちは顔を引き攣らせる。

 

「あのー……有馬一佐? 

 これから俺たち、温泉行くんですよ? 

 別に戦争しに行くわけじゃあ……」

 

「確かに、逗留先の温泉旅館には特殊作戦群(SFGp)が護衛に就いているがな。それでも万全というわけではない。

 それに、別行動中の駒門警部から「昨夜大量の銃火器が上越の沿岸部から密輸された」という情報も入っている。 

 深夜に三方向へ分かれて搬出された後、その行き先は今も不明のままだ」

 

「しれっと、トンデモ情報が出てきた!」

 

 有馬が何気なく口にした情報に、伊丹はただ仰天するしかなかった。

 

「有馬さ…いえ、有馬一佐。 

 大量の銃火器って、具体的には?」

 

個人防衛火器(PDW)を中心に、おおよそ二個小隊分だ」

 

「……日本で戦争でも仕出かすつもりか、その連中は」

 

 その話を聞いて、富田は思わずぼやいた。他の面々も、驚くやら呆れるやらで複雑な表情を浮かべる。

 

「そもそも、護衛の部隊も政治的圧力で無力化されればどうしようもない。 

 だが、自前で護身用の武器を持っていれば、仮にそういう事態なっても困らないだろう?」

 

「警察に見つかったら、確実に困ることになりますよね!?」

 

「……とりあえず、今後は警戒を強めましょう。 

 どのみち、他に出来ることはありませんし」

 

 富田のツッコミもそこそこに、ハイセはそう結論づけ、各々出発の準備を始めるのだった。 

 

 有馬はそのまま銀座駐屯地へ戻り、美嘉たちは武内Pの車で家路に就くことになった。

 

「バイバーイ!また遊ぼうね~!」

 

「うん、時間が合ったらまた」

 

 こうして、ハイセたちは美嘉たちに見送られながら地下鉄への階段を下りていく。その途中、再び地下へ下りていくことに難色を示していたロゥリィを、伊丹は半ば強引に階段へ押し込んでいった。 

 

 

 そろ~り そろ~り……

 

 

「あのー…」

 

「ヒッ!?」

 

 

 ビクッ!

 

 

 そこへ人知れずこっそりと離脱しようとするりあむ(実は原宿からずっと一緒に居た)に対し、武内Pがおもむろに声をかけてきた。

 

「わー、待って待って! 

 ぼくの家に連絡すればお金は出てくるから! 

 ぼくのおっぱい目当てにホテルに連れ込むとか、ソープに沈めるとか、中東に売り飛ばすとかはカンベンしてー!

 うう…ぼく程度が行方不明になっても、心配する人なんて何処にもいないだろうケド…… 

 いい事なんて、ほとんど無い人生だったなぁ……」

 

「いや、さっきの話聞いてた? 

 自己評価高いのか低いのか、分からないセリフね……」

 

 りあむのビミョーに自惚れが強いセリフに、美嘉はあきれながらもツッコミを入れる。

 

 武内Pはりあむのセリフに困ったよーに首の後ろへ手を当ててから、気を取り直して改めて声をかけた。

 

「……アイドルに興味はありませんか?」

 

「へ?」

 

 ──それから数ヶ月後。

 

 りあむは、そのキャラクター性を買われてファッヘラアイドルとして、同時期にスカウトされた二人の少女と共にアイドルデビューを果たすことになる。

 

 


 

 

「スノーボールよりシックス。 

 レッドトラウトはスローターハウスへ向かった」

 

了解(Copy)。監視を続行し、ハコネで合流せよ』

 

了解(Yes,sir)、ただ……」

 

『何だ?』

 

「シンジュクステーションで別れた、関係者らしき連中はどうする?」

 

『……有馬一佐(カーネル・アリマ)は、来賓(VIP)に同行しているのか?』

 

「いや……奴は、別行動だ」

 

『ならば問題無い。 

 白い死神(ホワイト・リーパー)さえ居なければ、護衛の戦力は高が知れている。 

 それに、不確定要素に戦力を割く余裕も我々には無い』

 

「……確かに、そいつらにも護衛と思しき大男が一名同行している」

 

『なら、決まりだ。 

 それに我々の現有戦力だけでも、護衛の制圧は容易い。 

 予定通り、ハコネで合流する』

 

了解、通信終わる(Roger that,over)

 

 


 

 

 同時刻

 

 東京某所 アオギリの樹アジト

 

 伊丹たちが新宿アルタ前で、有馬から荷物を受け取っていた頃。

 

 そこには、アジトを発つ直前の少女──エトを呼び止め作戦の変更を頼む加納の姿があった。

 

「メインターゲットの変更? 

 加納(かのう)先生……出発直前に言うことじゃないでしょ?」

 

「急にすまないね。 

 昨日になって、絶好の研究素材が見つかったからな。 

 彼女が元々のターゲットと行動しているとなれば、大きな変更も必要ないだろう?」

 

「はぁ…… 

 まあ、先生には色々世話になってるからいいけど。 

 で、一体誰を連れて来ればいいの?」

 

「ああ、この娘だよ」

 

 そう言って、加納は一枚の写真を見せる。 

 

 そこに写っていたのは、複数のマイクが置かれた台の前に立つ黒ゴス姿の少女──ロゥリィであった。

 

 

 


 

 

 兵器解説

 

・試作合成弓《タメトモ》

 

 SAA、普通科隊員両用のリカーブボウ型試作武装。

 

 特地派遣部隊において、万一弾薬の補充が望めない状況になった場合に備えて開発された。 

 設計・開発はクロサキ・インダストリーが担当している。

 

 本体にあたる中央部分と両端のリム*¹で構成されたテイクダウンボウ*²で、リムを交換してドロウウエイトを調整する事で、SAAと生身の普通科隊員の双方に対応可能としている。

 

 ただし弾薬の補充なしで使用できるということは、特地で本武装が鹵獲されてた場合に敵へ容易に転用されてしまう危険性も意味している。

 そのため、本装備の持ち出し管理は、ある意味では銃火器以上に厳重に行われている。今回有馬が持ち出そうとした件も、狭間陸将は難色を示していた(最終的には、ピニャたちが他国に連れ去られるリスクを天秤にかけた結果、黙認しているが)。

 

 なお、作中に登場した個体は、女性の力でも扱えるようドロウウエイトが調整されている。

 

 名前の由来は、強弓の使い手として知られる平安末期の武将・源 為朝(みなもとためとも)から。

 後に本武装のデータをもとに、量産型の《ミツヨシ》(名前は戦国武将の大島(おおしま) 光義(みつよし))が開発されることになる。

 

 なお、某ベトナム帰還兵が扱う映画の弓のように、装甲ヘリを撃墜できるほどのデタラメな威力はない。

 

*¹ 矢を撃ち出す力の元となる板バネ部分。

 

*² 組み立てられた複数のパーツで構成されるタイプの弓。

 他には、ハンドルとリムが一体化した『ワンピースボウ』と呼ばれるタイプもある

 

・傘型仕込み杖

 

 文字通り、傘に偽装している仕込み杖。

 

 内部の刀身は反りの少ない忍者刀タイプで、開発および生産はクロサキ・インダストリーが担当している。 

 有馬は私物として本武装を複数本所有しており、今回登場したものはその内の二本である。

 

 なお余談だが、かつて有馬は普通の傘を本武装と勘違いして持ち歩いていた際、偶然テロリストと遭遇し、そのまま傘で応戦して確保したという珍事があったとの噂がある。ただし、その真偽のほどは定かではない……。

 

 

 用語解説

 

・クロサキ・インダストリー

 

 月山重工とともに「自衛隊ガンダム計画」に名乗りを上げた二大企業の一つ。

 

 その起源は、規模こそ小さいものの平安時代から続く由緒正しい武家にさかのぼる(当時の貴族とのつながりがあったという噂も囁かれている)。 

 その末裔である旗本が、太平の世で「用済み」となった忍びたちを密かに召し抱え、彼らの特殊な知識や技能を生かした道具や武器などの製造を秘密裏に始めたことに端を発する。 

 秘密裏に行っていたのは、表立って営めば幕府に「謀反の疑いあり」とみなされかねなかったためである。

 

 さらに、職を失った刀鍛冶や鉄砲鍛冶といった優秀な職人たちも積極的に抱え込み、その技術を継承・発展させてきた歴史を持つ。 

 表向きには生活用具などの製作を担わせ、刀剣類や鉄砲といった類いは前述の忍びたちと合流させ、旗本の所有する敷地内で技術の継承と発展を進めていた。 

 

 これらの事業は旗本にとって重要な資金源となっていき、幕末には、当時の徳川幕府や薩長同盟軍ですら無視出来ないものとなっていた。 

 両陣営からは、幾度か資金提供を(命令、恫喝に近い形で)求められたものの、中立の姿勢を貫いたという。(そのたびに刺客が送られていたという噂もあるが、真偽のほどは不明である)  

 そうした背景もあり、明治維新の激動を乗り越えた後も、この一族とその事業は一定の勢力を保ち続けている。

 

 明治以降、月山重工が欧米で銃火器生産の下請けとして技術を蓄積していったのと同様に、クロサキ・インダストリーもまた、国内外の銃火器メーカーや軍用装備品メーカー(軍用スコップ、軍用ナイフ、銃剣、マチェットやタクティカルアックスなどの近接戦闘用ツール)、さらには某有名キャンプ用品メーカーの下請けを長年にわたって請け負い、伝統と最先端を融合させた精密加工技術や高い耐久性など、幅広いノウハウを蓄積してきた。 

 

 その確かな技術基盤と、代々受け継がれてきた「隠密」「奇襲」「特殊作戦」の思想が融合し、現代のクロサキ・インダストリーは一貫してこれらの分野に特化した兵器や装備品の開発を得意としている。 

 その技術は「いかにして敵に気付かれずに任務を遂行するか」、あるいは「いかにして最小限の力で最大限の効果を得るか」という忍びの思想を具現化したものでもある。 

 

 現在では、防衛省の特殊部隊や情報機関からの依頼を受け、特定の状況下でのみ真価を発揮するような、ユニークかつ先鋭的な兵器・装備の開発を請け負っている。 

 

 主力製品はMM工業に代わって生産を担う各種拳銃や機関拳銃のほか、高周波ブレードや高周波ダガーといった近接戦闘用の特殊兵装。 

 試作合成弓《タメトモ》や傘型仕込み杖、そして後に特地派遣部隊において使用者が急増していった近接戦闘用ツールはその代表例であり、現代における「忍具」とも言える製品群を生み出し続けている。 

 

 

 

 




 
 
 以上、新宿アルタ前のエピソードでした! 
 
 途中の武内P登場シーンですが、彼が警官に絡まれるのはお約束なので(笑)その形の登場を当初から考えてましたが、単に誤解を解いて終わりでは味気ないので、こんな形にまとめました。 
 
 なお、作中の歩兵小隊は、一個小隊で三十名として換算しています。 
 
 読者の皆様方、お楽しみいただけましたでしょうか? 
 
 次回は2026.6.21 00:00頃に、番外編を投稿予定です。
 
 なお、まことに申し訳ないのですが、その投稿のあとはしばらく休載に入らせていただきます。 
 
 オリジナルの短編や、他の二次創作の執筆に手を出しすぎて、こっちの執筆に手が回らなくなってしまってました。 
 楽しみにしている読者様方には、本当に申し訳なく思っております。
 
 ご意見、ご感想をお待ちしております。
 
 
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