ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 今回の番外編は、有馬と〈スキーヤー〉の珍道中の最中に起こっていた、ハイセ側のドタバタ劇です。 
 
 有馬側のドタバタ劇は『天然有馬の珍道中』に載ってます! 
 興味のある方は、そちらを参照してください!
 
 それでは、番外編スタート! 
 
 


番外編 東京ぶらり歩き

 

 

 日本標準時 10:52頃

 

 東京渋谷区 都道305号線歩道上

 

「いや~、大漁大漁。 

 ついつい、買い込んじゃったわね~」

 

「で、その分のツケを今僕が払わされてる訳ですね?」

 

「あ……アハハハハ……」

 

 レレイたちを免罪符(ダシ)に思う存分買い物を楽しんで、ご満悦の(あおい) 梨紗(りさ)。 

 両手いっぱいに荷物を抱えているハイセは、そんな彼女に呆れたジト目を向けていた。

 

 梨紗は、ハイセの視線から逃げるように笑ってごまかし、そっと目を逸らす。

 

「アハハ……ゴメンね、ハイセくん。 

 莉嘉(りか)の荷物まで持ってもらっちゃって」

 

「そう思うんなら、自分の荷物ぐらい持ちな。 

 まったく……」

 

「え~?お姉ちゃんだって、ハイセくんに結構な荷物持ってもらってるくせに~」

 

「うっ…」

 

「ハハハ……」

 

 同じく荷物を持たされてはいるものの、仲の良い姉妹である城ヶ崎(じょうがさき) 美嘉(みか)と莉嘉のやり取りには、ハイセも苦笑するしかなかった。

 

「ねえ、なんか私に比べて、ずいぶん扱いが違わなくない?」

 

「イエ、ソンナコトアリマセンヨ?」

 

 その態度の差に梨紗はクレームを付けるが、ハイセは目を逸らしつつカタコトで否定する。

 

 すでに服に下着にアクセサリーなど、原宿の店でファッション関連の買い物を一通り終えた後。

 

 現在ハイセたち一行は、途中で買ったクレープを片手に、騒がしくおしゃべりしながら歩いている。 

 

 ちなみに両手がふさがっているハイセは、美嘉にクレープを食べさせてもらっていた。 

 その光景を梨紗は面白半分に冷やかし、二人を羞恥心で真っ赤にさせる。

 

 そんな彼らは、都道305号線を渋谷駅方面へ向かって移動していた。 

 テュカの欲しがっていたスポーツ用品(主にアウトドア関連)、そしてレレイがリクエストした書物とパソコンを見に行くためだ。

 

 特にレレイは、梨紗の部屋で実物のパソコンを目の当たりにしており、そのときから好奇心に満ちあふれた視線を向けていた。 

 そのため、地球独自の文明の利器たるパソコンに興味津々である。 

 彼女は無表情であるにもかかわらず、その胸の高鳴りは隠しきれていなかった。

 

「それにしても、実物見ても未だに信じられないわね。 

 異世界の住人って言われても、見た目は普通に外国の女の子だし……」

 

「テュカの耳は確認したんだよね?」

 

「うん……あれを見なかったら、とてもじゃないけど信じられなかった。 

 しかも見た目高校生ぐらいなのに、あれでアタシより十倍近く年上って……」

 

「それ聞いたら、川島さん辺りが羨ましがりそうだケドね」

 

「アハハハ、確かにね~☆」

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?……くちゅん!」

 

 

 

 

「あれ?川島さん、風邪っスか? 

 普段から体調管理しっかりしてんのに、珍しいスね?」

 

「う~ん…… 

 おかしいわね、誰か噂でもしてるのかしら?」

 

 珍しい光景に声をかけてきたTVスタッフへ「心配無い」と返しつつも、瑞樹は怪訝そうに呟いた。

 

 


 

 

「「「おおお~~~……」」」

 

 渋谷の大型スポーツ用品店に入ると、テュカたち三人は揃って感嘆の声を上げた。

 

 広いフロアに種々様々な品物が並べられているところは同じだが、原宿で見たそれとはまた違う(おもむき)に、三人は驚きを隠せずにいる。

 

「これって、天幕? 

 ジエイタイが建ててくれたものとは形も大きさも違うけど、結構な大きさね。 

 私の知ってる天幕より、機能的で使いやすそうだし……」

 

「すごい……棚いっぱいに提灯(カンテラ)が並べられている。 

 大きさも様々で、明るさが私の知っているものと比べ物にならない」

 

「これは、野営用のテーブルと椅子かしらぁ? 

 簡単に折り畳めて、持ち運びしやすくしてあるのねぇ。 

 考えられてるわぁ~」

 

 店内のアウトドアコーナーに出向くと、テュカたちは地球製のキャンプ用品の数々に、それぞれ驚嘆の声を上げていた。 

 陸自の任務で日常的に野外活動するハイセたちにとっては見慣れた光景だが、森の中を主な生活の場とする特地の人間、特にテュカにとっては、どれも目を見張る代物の数々なのだろう。

 

「あれ……ハイセくん、これって何かわかる? 

 何か、どこかで見たことあるような……」

 

 ハイセがそんな光景を眺めていると、莉嘉が脚の付いている側面に穴の空いた金属製の箱を指さして尋ねてきた。

 

「ああ、それは焚き火台だよ。 

 キャンプ場では地面に直接火を焚くと火事の原因になりかねないから、焚き火する時はこの中に薪とかを入れてやるんだ。 

 キャンプ場以外でも、日本の山だと直火がNGの場所がほとんどだから、アウトドア愛好家には結構な需要があるんだよ」

 

「ああ…… 

 そう言えば、奈緒(なお)ちゃんから借りたマンガで見たことがあったっけ」

 

 ハイセの返答に、美嘉は納得して頷く。

 

「あれ? 

 ササキ!ニホンでは武器を売り買いするのは違法だって言ってたわよね?」

 

「ああ、そうだけど?」

 

「じゃあ、なんでこのお店に弓が置いてあるの?」

 

 そう言ってテュカが指さした先は、アーチェリー用品のコーナーだ。

 

「ああ、それは競技用の弓だよ。 

 日本でも競技目的の弓なら販売が許可されてるんだ。 

 と言っても、それを買うときには身分証明と所持登録が義務付けられるし、犯罪に使ったら即お縄になる上に所有許可が取り消されるケドね」

 

「それでも、買うときにいくらでも誤魔化せるでしょ? 

 つくづく思うんだけど、ニホンって変わった国よね~」

 

 然もありなん(そりゃそーだ)。 

 

 日本では日常に溶け込み過ぎて不思議に思われない事でも、海外では奇異に映る日本の常識というのは往々にしてある。

 

 一つ例を挙げるとすれば、宗教観がそれに当たる。

 

 日本という国は「お盆になれば休んで、ハロウィンが来たらコスプレし、クリスマスに騒いで初詣は神社へ行って葬式には坊さんを呼んでくる」と揶揄されるほど雑多な宗教が日常に溶け込んでおり、当の日本人はその事に全く違和感を覚えていない。

 それどころか、仏教も神道もキリスト教もその他のあらゆる宗教を同列に扱い、「特定の宗教を信仰している訳では無い」と平然と宣っている有様だ。

 

 しかも、種々様々な宗教行事を節操なく取り込んでいるその光景には、神仏を畏れ敬う様子はまず見られない──どころか、それらを平然とネタにしていじり倒している始末である。

 一神教は言うに及ばず、多神教でも信仰する神に対して少なからぬ畏怖と敬意を抱いているにもかかわらず、日本人にはそういったものが全く感じられないのだ(少なくとも、来日した外国人の目にはそう見える)。

 

 もっとも「他の宗教の要素を取り込んでいる」という点で言えば、実は日本だけに限った話ではなかったりする。

 

 例えばキリスト教圏の国々で毎年行われているハロウィンも、元をたどれば紀元前のヨーロッパに住んでいた古代ケルト人の土着宗教であるドルイド教の祭事だった(かいつまんで言えば、日本のお盆の様なものだ)。

 だが、時代が進むにつれ、ヨーロッパにとどまらずアメリカにもアイルランド経由で伝わり、細かな変更が加えられながら世界各地で行われるようになって、現在では当たり前の光景となっている。

 

 結局のところ──懐の広さに差はあれど、他国(ヨソ)の宗教行事を違和感なく受け入れているあたり、どこの国の人間も根本的には似た者同士なのかもしれない。

 

 閑話休題(まあ、それはさておき)

 

「試し撃ちしてみるかい?」

 

「え?いいの?」

 

射撃場(シュスタント)があるから、大丈夫だよ。 

 あっ、すみませーん!」

 

 ハイセはそう言うと、近くの店員を呼び止めて事情を説明する。 

 

 そして試し撃ちの許可をもらった後、特徴的な構造が目を引いたのかテュカはいくつかのコンパウンドボウとリカーブボウを一緒に選び、射撃場へと移動して行った。

 

 

 クイクイ 

 

 

「ん?」

 

 ハイセが不意に袖を引かれて振り向いてみると、レレイが何かを聞きたげにじっと見つめている。

 

「レレイちゃん、どうしたの?」

 

「あの棍棒(コイレ)も競技用のもの?」

 

 そう言って指さした先にあるのは、野球用品のコーナーだった。 

 

 そこにあるのは、グリップに滑り止めを巻き付けた円筒状の金属棒──金属バットである。

 

「ああ、あれは野球という競技に使う道具だよ」

 

「ヤキュウ?」

 

 ハイセは訝しむレレイに、野球について、道具の用途なども含めて簡単に説明した。

 

「つまり、これは武器ではない?」

 

「いや、野球はそんな物騒な競技じゃないし……」

 

(人を殴る凶器として使われる事はあるケド……)

 

 もっとも野球自体を知らない──そもそも球技という概念が特地には無い──人間には、それらは棍棒にしか見えないだろう。

 

「それではヒトの投げる球を打つ、というのは?」

 

「あー……口で説明するだけじゃ、ピンと来ないか」

 

 そう言いながら頭を掻きつつ店内を見渡すと、近くにネットに覆われたスペースがあり、その中にバッティングケージと防球ネット付きのピッチングマシンがあった。

 

「実践して見せようか? 

 あっ、すいませーん!」

 

…………チッ。 

 はい、何でございましょう?」

 

(今舌打ちしなかった? 

 何か、態度も悪いし……)

 

 店員の接客態度の悪さに驚きつつ、設備の使用許可を求めると「マシンを調整するので、少々お待ちください」と返された。

 しばらくしてから準備ができたことを告げられ、備え付けのバットを持ってハイセはケージに入った。

 

(そう言えば、バットを持つのも久しぶりだな……)

 

 銀座事件が起こる前は、346プロ所属アイドルの姫川(ひめかわ) 友紀(ゆき)和久井(わくい) 留美(るみ)に度々有無を言わさずバッティングセンターへ連れ出され、ストレス発散に付き合わされたことを思い出し、若干ゲンナリする。

 

 そしてハイセが右バッターボックスに入る頃には、レレイの他にも、梨紗たちと射撃場から戻って来たテュカまでギャラリーに加わっていた。

 

 

 ブンッ!ブンッ!

 

 

 ケージ内で二、三回素振りした後、「どうぞ」と合図し、ボールが来るのを待つ。

 

「行きますよー」

 

 

 バシュッ!

 

 

「ぅおわっ!」

 

 

 グワガキン!

 

 

 いきなり放たれたボールが頭めがけて飛んできたものの、ハイセは体勢を崩しながらも打ち返した。

 

「あっ、スイマセーン。調整ミスってましたー(棒)

 ケッ……素直に当たってりゃいいものを

 

(何か、不穏なセリフが出て来てるんですけど!?)

 

 店員──三十二歳バツイチ。五年前に不倫がバレて離婚──は、頭へボールを飛ばしたことを(一応)謝罪する。

 

 

 キィン!キィン!カキィン!

 

 

 続けて放たれたボール──今度はさすがにストライクゾーンに飛んで来ている──も、ハイセは次々と打ち返していく。

 

 

 バシュッ!……ククンッ!

 

 

「ッ!?よっ……と」

 

 

 カッキィーン!

 

 

「「「おおお〜〜〜」」」

 

 最後にカーブ──それも左投手の──が来たものの、それも上手く捌いてヒットにした。

 試合ならばレフト線を抜ける長打になっている当たりだ。

 

 ハイセが見たことのない軌道で飛んで来るボールを見事に打ち返したのを見て、特地組の三人から歓声が上がったことに店員は渋面を作っていた。

 

「……チッ!スポーツも出来んのかよ糞リア充め」

 

(いや、聞こえてますからね?)

 

「ほほ〜…… 

 咄嗟にスタンスを広げつつ腕を畳んで、内角へ来る変化球を捌きましたか。 

 見事なバットコントロールですねェ〜、お客さまァ〜」

 

「て……店長?」

 

 そこへアンダーリムのメガネと横に広がる髪型(しかも広がった髪に片側三個づつ計六個の鈴がぶら下がっていた)、そして筋肉質な体躯が特徴的な男が声をかけて来た。 

 店員のセリフから、どうやらこの店の店長のようである。

 

「ここはもういい。 

 女連れで調子乗ってるヤローに恥かかせるのは俺がやる」

 

(とうとう、やっかみを隠さなくなってきた!)

 

「と言う訳で…… 

 この後もバッティング体験を続けますよねェ~、お客様ァ~?」

 

 そう言って、店長──四十八歳独身。彼女居ない歴=年齢を未だに更新中──は、ハイセの返事を待たずにピッチングマシンに陣取った。

 

「それでは行きますよォ〜、お客様ァ~?」

 

「いや、僕まだ何も言ってないんですケド!?」

 

 

 バシュバシュバシュッ!!

 

 

「どぅわッ!?……って、コレ硬球!? 

 殺意マシマシじゃないですか!!」

 

「うるせェ! 

 ショッピング中、女にクレープ食わせてもらうなんて羨ましい思いしやがって!! 

 くたばれ、リア充野郎!!非モテの恨み、思い知れ!!」

 

 

 バシュバシュバシュッ!!

 

 

 ハイセの言い分を聞く事なく、さらに店長は次々とボールを放つ。

 

「くっ!」

 

 

 ガキン!ゴワキン!グワラゴワガキンッ!

 

 

 ハイセは自分めがけて飛んで来るボールを、某伝説的野球漫画の葉っぱを咥えた巨漢を彷彿させる悪球打ちで、すべて打ち返す。

 

「ヒヒヒッ!いつまで打ち返していられるかねェ~? 

 ああァ〜!弱い者イジメ大ィィィー好きッ!! 

 俺って偉いねェ〜〜ッ!!」

 

 

 バシュバシュバシュバシュバシュッ……

 

 

 それでも店長は、お構いなしに次から次へと硬球を打ち出し続けていく。

 

「ヒヒヒ、絶望ォォォだねッ! 

 大きい声で言えねェーがな、俺は弱い者とか抵抗出来ねェ奴をイジメるとスカッとする性格なんだ! 

 フヘへへ……自分でも変態な性格かなァ~と思うんだがねェ~」

 

 彼は悪辣な笑みを隠そうともせずに宣い、悦に浸りながらさらに続ける。

 

「だが俺は自分が変だと理解してるんでなァ~。 

 よく言うだろ?自分で変だと思ってる人は変じゃないってな…… 

 だから俺は変じゃねェよなァ〜!!」

 

 

「いいえ〜?あなたは紛う事なき変態よぉ〜」

 

 

 ガシッ!!ギュウゥゥゥ……ッ!!

 

 

「ッ!? イデデデデ……なッ!?」

 

 唐突にかけられた声と、手首の痛みで我に返る。

 

 慌てて振り向いてみると、いつの間にか傍らまで来ていたロゥリィが、店長の手首を握り潰さんばかりの力で掴んで抑えつけていた。

 

「〜〜〜ッ!! 

 は……放せ!放せ、このガキ!!」

 

「いい加減になさぁい? 

 ()()()が過ぎるわよぉ?()()

 

「あァ? 

 ざけやがって、ガキに舐められてたまるか!」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 そう言ってロゥリィを睨みつけると、店長の身にまとっている空気が変わる。

 

「…………へえぇ〜〜?」

 

「……へ? 

 …………あ……あれ?」

 

 だが平然とした態度で何かに気づいた素振りを見せるロゥリィに対し、店長は素っ頓狂な声をあげたかと思えば、見る見る内に(やつ)れていき、とうとう膝をついてしまう。

 

「ば……バカな! 

 何で若返らねェんだ?」

 

若返ったわよぉ〜? 

 四百八十年ぐらいねぇ〜」

 

 

 ムンズッ!グイッ!

 

 

 よろけて膝をついている店長に、ロゥリィは髪を引っつかんで強引に目線を合わせた。

 

「さっき、私ぃに何をしたのかは分らなかったけどぉ、その力があなたの自信の源だったようねぇ~?」

 

「イデデデデデデデ! 

 ち……力?いったい何のことで……」

 

 

 ズルズルズル……

 

 

「ちょっ……どこ連れてく気だ!?」

 

「決まってるじゃなぁい? 

 ()()()の過ぎるコには、()()()()が必要でしょお〜?」

 

 狼狽える店長を無視して襟首を引っつかみ、ロゥリィはそのまま引っ張って行く。

 

(お……落ち着け、落ち着くんだ!こういう時こそ、冷静なヤツが勝利する。

 四百八十年も若返っているなんてハッタリだ! 

 これは、自分も知らない才能なり能力なりで凌いでいたに決まってる! 

 いつもやってるように……すっとぼけ通して、スキを衝いて攻撃してやる!)

 

「お……お嬢ちゃん、いったい何を言ってるんですかねェ~? 

 確かに、バッティング体験でうっかり間違えて、硬球を使ってしまった事は悪かったとは思いますが……」

 

「本当にぃ?」

 

「ほ……本当ですとも!」

 

「へえぇ?」

 

(ヒヒヒッ!よぉ~しよしよし、思った通り! 

 こいつは確かに大人顔負けの馬鹿力を持っているが、所詮はガキ。 

 ちょっと反省している素振りを見せれば、カンタンに言い包められる! 

 この調子で……)

 

「で……ですからねェ、お嬢ちゃん。

 いい子だから、この手を放してもらえませんかねェ~?」

 

「ダメよぉ?」

 

「へっ?何で?」

 

「当然でしょぉ? 

 ここまでの事をやらかしておいてぇ、このままで済ませられる訳無いじゃなぁい? 

 少なくとも、此処に居る私ぃたちが納得できると思う~? 

 こういうのってぇ、二ホン語では「オトシマエ」って言うのかしらぁ?」

 

「で……ですから、さっきの事は私も心から反省していると……」

 

「だったら、これから私ぃがする事も広い心で受け止められるわよねぇ?」

 

「ヒッ……ひィイイイイイイイイイイイイイーーッ!!」

 

 

 ズルズルズルズル……

 

 

 そう言ってロゥリィは、店長を力づくでバックヤードへと引き摺って行った。

 

「…………ね……ねえ、サッサン? 

 あのコ、倍近い体格の男の人を片手で引き摺って行かなかった?」

 

「仕事で疲れてたんでしょ? 

 引き摺られる前から、足元ふらついて膝ついてたし……」

 

 りあむの疑問に、ハイセはにべもなく返す。

 

 

 ボカボカボカボカボカッ!

 

 

「ギニァァーーッ!」

 

 

「ほらほらぁ? 

 まだまだ、気絶するには早いわよぉ?」

 

 

 ガスッ!ゲシッ!ドカッ!

 

 ボコボコボコッ!ベキッ!

 

 

「……何か鈍い音が聞こえて来てるんだケド」

 

「気のせいじゃない?」

 

 

 ゴスゴスゴスゴスゴスゴスッ!

 

 

「ウギャアアアーーッ!」

 

 

「……悲鳴が聞こえたよーな」

 

「空耳でしょ?」

 

「………………」

 

 平然と我関せずの態度を貫くハイセの様子に、栗林と特地組を除く面々はドン引きする。

 

「ちょっといい?」

 

「は……はい?何でしょうか?」

 

 それを尻目にレレイが近くにいた店員(マシンの操作を店長と入れ替わった後もずっといた)へ声を掛ける。

 

「この、きんぞくばっと?という棍棒(コイレ)。 

 私に合う物を見繕ってもらえる?」

 

「あ、はい判りました!少々お待ちください!」

 

 店員はそう言って、バットの置いてある一角へと走って行った。

 

「レレイちゃん、バットを買うつもりなの?」

 

 

 コクリ

 

 

「あれなら師匠の尻を叩くのに、丁度良さそう」

 

「あーいや…… 

 いくらカトー老師(せんせい)でも、あの年齢(トシ)でケツバットはキツいんじゃない?」

 

「大丈夫。師匠はゴキブリよりしぶとい」

 

「……さいですか」

 

 ここ一ヶ月で彼女とカトー老師のやり取りはさんざん目の当たりにしていたので、ハイセはこれ以上何も言えなかった。

 

 

 ヨロヨロ……

 

 

「ひいッ!ひいいィィッ! 

 えらくないッ!えらくないッ!全ッ然えらくないッ!」

 

 

 ムンズッ!

 

 

「何処にぃ行くのぉ? 

 まだ、おしおきは終わってないわよぉ?」

 

 

 ズルズルズルズルズル……

 

 

「いィィィィイイやぁァァァぁぁぁぁあッ!!」

 

 

 そんなやり取りの傍らで、怯えた表情の店長が這々の体でバックヤードから出て来るも、即座にロゥリィに襟首を掴まれて中へ引き戻されていく。 

 

 その姿は、モンスターパニック映画で怪物に捕食されようとしている憐れな犠牲者にも見えた。

 

 そんな()()を引き起こしている張本人であるロゥリィ(と、それを平然とした態度で流しているハイセたち)に、梨紗たちを始めとした日本在住組はドン引きした視線を送り続けるのであった。

 

 

「ギャァァァアアアアアアッ!!!!」

 

 


 

 

 こうしてハイセたち一行はちょっとした騒動の後、目当ての物を一通り購入し、店員たち(表情が引き攣っていたよーに見えたのだが気の所為だろう……たぶん)の見送りを受け外へ出た。

 この後購入したバットは郵送され、栗林に見せてもらったバラエティの動画の影響で、レレイがカトー老師へケツバットを強行する光景が、後のアルヌスの日常に加わることとなる。

 

 後にアルヌスへ語学留学に来た薔薇騎士団の団員や見習い少女たちの口から、この光景が帝国軍へと伝っていく事となる。 

 

 そして教官が生意気な新兵をシゴく際に、木で削って作った棍棒で尻を叩く風習が出来上がっていくのだが、それはまた別の話。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ……俺、()()何もやっちゃいねェよ!」

 

「犯罪者は、皆そう言うんだ。いいから、こっちへ来てもらおうか?」

 

「俺は無実だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」

 

 ──なお余談ではあるが、今回の件でロリかつペド更にはドMへと覚醒した店長が、それから程なく警察のお世話になったとかならなかったとか……。

 

 


 

 

 オマケで今回登場したキャラクターたちの設定を追記しておきます。

 

・スポーツショップ店員

 

 僻みっぽい性格の三十二歳バツイチ男。 

 

 本作で語られた通り、不倫がバレて結果、離婚となった。

 

 しかし離婚調停中に発覚した事だが、実は奥さんの方もパパ活を資金源にしてママ活や不倫を繰り返していた。(しかも旦那が不倫を始める前からやらかしていた)

 そのために「お互い様」という事で、金銭トラブルには発展しなかった。

 

 ちなみに『銀座事件』の時に、失禁しながら東京中を逃げ回っていたという噂もあるが、本人は否定している。

 

 キャラクターモデルはネズミ(彼岸島 48日後…)。

 

・スポーツショップ店長

 

 弱い者イジメが大好きな、四十八歳独身男。 

 

 こんな性格なので、当然ながら彼女ナシ。 

 その事が、性格の陰湿さに余計拍車をかけている。

 

『銀座事件』の際には、帝国兵がひしめき合う真っ只中で、なぜか無傷で生還したという噂もある。(その時、地球では馴染みのない言葉の子供の泣き声が聞こえたらしい)

 

 キャラクターモデルはジョジョ三部に登場するエジプト九栄神の1人、アレッシー。

 

 

 

 

 

 ………………え?本人じゃないかって?

 

 

 

 

 イヤイヤ、キノセイジャナイデスカ? 

 (目そらし&すっとぼけ)

 

 




 
 
 以上、渋谷のスポーツショップを舞台にした、ハイセたちのドタバタ劇でした! 
 
 読者の皆様方、お楽しみいただけましたでしょうか? 

 では、この場を借りて前エピソードに関する解説をさせていただきます。




 
 
 前回のエピソード(2026.6.7投稿分)投稿後にお送りいただいた感想に書かれていた、武内Pに絡んでいた不良警官の処遇に関してです。 
 
 感想返信にも書いた通り、ハイセたちが特地へ戻ったあと、『報告』という形で氏名と所属を含めて公安へ該当警官のことが伝わることになります。

 そして、後日── 
 
「(意訳)実はこんなことがあったのですが、お宅はこのこと知ってましたかぁ?」

 ──と公安のお偉方が、渋谷署の署長へ話を通しに行きます。 
 あくまで『抗議』ではなく、『事実確認』という体で。 
 
 その後、該当警官は渋谷署が『勝手に』処分した、という裏設定となっております。 
 
 件の警官がその後どうなったかは……読者様方の想像にお任せします。
 
 


 
 
 以下はお知らせです。
 
 前回の後書きでもお知らせいたしましたが、次回からはしばらく休載させていただきます。 

 お楽しみにされている読者様方には大変申し訳なく思っておりますが、気長にお待ちいただければ幸いです。 
 
 代わりといっては何ですが、このエピソードと同時にガンダムの二次創作を投稿しており、そちらは全三回(+設定解説一話分)の短期集中連載を予定しております。 
 
 タイトルは【機動戦士ガンダム異聞 蘇りし幻影】となっております。 
 興味のある方は、そちらも拝読いただけますよう、お願いします。 
 
 ご意見、ご感想をお待ちしております。 
 
 
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