ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 あ~…ッたく……毎日毎日ネチネチネチネチとあンのクッソ上司がああァァァァあ!!

 ………しばらくお待ち下さい………

 ハァハァハァハァ……失礼、取り乱しました……

 今回は、いよいよ嘉納が登場。

 今さらだけど、格闘戦の描写は上手く伝わっているのだろうか………?(ドキドキ…)

 それでは!本編スタート!!
 


~眼帯マスクの青年~ (3)

 亜門(あもん)一尉(当時)の報告書より抜粋

 

 その情報に基づき件の物件を調査したところ、数年前に前の所有者が惨殺されて以降は空家のままだったが、半年ほど前にその屋敷を買い取られていたという。

 

 しかし外側から様子を伺ってみれば、情報提供者が言う様に人が住んでいる様な形跡はおろか、気配すら感じないのである。

 

 通報があったのは調査が始まる一週間ほど前の事。屋敷が買い取られたのは半年ほど前。改装に手間取っているにしては不自然過ぎる。

 


 

 青年はアオギリの構成員達を月山達に任せて、一人奥へと急ぐ。だが……

 

 「……行き止まり……」

 

 ……青年の言う様に、進んだ先は行き止まりであった。ここまで一本道だったので、道を間違えたなどというはずが無い。ということは……

 

 「また、隠し通路か………」

 

 ……周りを見据えて、青年はそう判断する。

 

 「待ってろ…すぐに見つけ出してや……」

 

 青年が言い終わる前に、彼はその場に圧倒的な気配が現れるのを感じた。

 

 「……!?…なんだ…?」

 

 「……(フン)……」

 

 「…!」

 

 その声は青年の頭上………更に言えば、天井の近くから聞こえた。しかも、その声には聞き覚えがある。

 

 青年が見上げると、先日の大男が天井の配管に足を掛け、逆さ吊りの状態で腕を組み青年を見据えていた。

 

 「また、会ったな…!眼帯の(わっぱ)!!」

 

 トン……ジャッ!

 

 そう言って天井から降り立ち、身構える。

 

 「蛇意(ジャイ)ッ!!」

 

 ゴォッッ!!

 

 そして一瞬で間合いを詰め、青年に手刀を繰り出す。

 

 首を狙ったそれを、青年はスウェーバックで躱す。

 

 大男はその勢いを殺さず、右足を軸にして左足を高く振り上げ……

 

 「(フム)ッ!!」

 

 ドゴォォッ!!

 

 ……隕石の落下と見紛わんばかりの踵落としが繰り出された。

 

 青年はバックステップで距離を取りつつそれを躱す。

 

 大男の左足が突き刺さった地面には、先日と同様に巨大なクレーターが出来上がっていた。相変わらずデタラメな威力である。

 

 大男は更に息もつかせぬほどの早さで、続けざまに次々と攻撃を繰り出す。

 

 (………集中しろ…奴の身体に触れない様に…攻撃の文脈(ながれ)を読んで…二行先まで予想しながら………)

 

 青年は大男の攻撃を全て避けられる様に、必要最少限の動きで躱していた。

 

 その攻撃は(かす)っただけで致命傷になり得る。

 

 青年は先日の苦い敗北の経験から、その攻撃に触らせもしない様に、必死に複数の格闘書を読んでその内容を全て頭に叩き込み、その動きを完璧に再現出来る様に鍛練を積んでいた。

 

 そして青年は攻撃の間の僅かな隙を突き、大男へ目突きを繰り出したが……

 

 バキッ!!

 

 ……大男はその軌道上に頭突きを差し込んで攻撃を阻止した。

 

 「ッ!!……ほんっとに…やっかいなおじさんですね……!!」

 

 ゴキンッ!!

 

 折れた指を元の状態へ強引に戻し……

 

 「あなたを倒すには……あなたをもっと読み込む必要がありそうだ……」

 

 ……大男を見据えながら青年はそう語った。

 


 

 一方その頃………

 

 月山は白と黒の少女達と、イチミ·ジロ·サンテの3人は他のアオギリの構成員を相手に交戦していた。

 

 バンジョーは参戦出来ずにいる。

 

 実はその見た目に反して、バンジョーの戦闘能力は青年達の中で最も低い………どころか戦闘では完全に足手まといであった。

 

 彼はその見た目によらず平和主義者でケンカ嫌いだ。

 

 にも関わらずイチミ達がその下についていたのは、ひとえに彼のその人柄故である。

 

 彼は不器用な男ではあるが不器用なりに周囲を思いやる懐の深さがあり、ケンカ嫌いではあっても必要な時は仲間のために真っ先に危険な所へ飛び込んで行く勇敢さもあった………もっとも、その戦闘能力の低さ故に返り討ちにあってしまうのが常であったが………イチミ達はその「無力を言い訳にせず行動を起こせる強さ」に惹かれて彼の下についているのである。

 

 バンジョーは逡巡していた。

 

 (確かに俺は戦闘では足手まといだ………かと言って、ここでこのまま戦闘を見ているだけでいいのか?)

 

 彼の脳裏に過ぎるのはアオギリのアジトから脱出した後、青年と同行する事を決意した時に掛けた言葉だ。

 

 『………俺も協力したい…盾でもパシリでも何でもいいんだ………要らねえ…かもしんねぇけど………』

 

 その時、青年は快くバンジョーの協力を受け入れてくれたのである。

 

 青年への返しきれない恩義を返すには、どうすればいいのか………そう考えていたとき……

 

 ギャリッッ!!

 

 ……月山達の戦闘の中で動きがあった。

 

 突如現れた小柄な男が、特殊警棒で月山に殴りかかって来たのだ。そのため、不意を突かれた月山は咄嗟にそれを剣で受け止めざるを得なかった。

 

 先ほどまで、月山達の戦闘は完全に膠着していた。

 

 踏み込んで来た月山に少女達がカウンターを放ち、月山がそれを左腕の円盾でいなして右腕の剣で反撃しようとすると、少女の片割れがその攻撃を妨害して互いに距離を取る………という事を先ほどから何度も繰り返していた。

 

 そこへアオギリの構成員の一人が、空気を読まずに特殊警棒を片手にその戦闘へ割って入ったのである。先ほどまでは見なかった顔であるため、恐らくは新手であろう。他にも2人の巨漢の構成員が、イチミ達の戦闘に乱入している。

 

 新手として乱入して来た構成員達は、アオギリの中で“白スーツ”と呼ばれている武闘派である。その名の通り、彼らは皆一様に純白のスーツを纏っている。

 

 特に月山達に割って入った小柄な男はかなりの手練れで、リーチで劣る警棒1本で月山と渡り合っていた。

 

 「チッ!アニキのカタキの眼帯ヤローはいねえのか!」

 

 小柄な男………ナキと呼ばれているその男は、そう吐き捨てた。

 

 “白スーツ”はナキがアニキと呼んでいる男………ヤモリこと大守(おおもり) 八雲(やくも)という男が首領を務めていたアオギリの一派である。

 

 そのヤモリは青年をアオギリのアジトへ拉致した際、彼を思うがままに拷問していたのだが、堪忍袋の緒が切れた青年に完膚無きまでに叩きのめされ、自衛隊と警察の混成部隊がアジトへ突入して来る中、青年にトドメを刺されずに放置されたのである。

 

 最終的にトドメを刺したのはその時に突入して来た自衛隊員か警察官ではあるのだが、ヤモリを動けなくなるまで叩きのめして、そのままでは衰弱して死ぬか、自衛官達に殺される事を承知の上で放置していたので“青年に殺された”とも言えなくもない。

 

 そのため青年は“ヤモリを殺したカタキ”として、白スーツの連中に狙われているのだ。

 

 少女達はナキ一人で月山を抑えられると見るや、青年を追って施設の奥へと走って行った。

 

 (ッ!俺はアイツの“盾”だ!!……アイツの役に立たねぇと!!)

 

 バンジョーはそれを見て、彼女達の後を追って行った。

 


 

 その頃、青年は今回の大男の戦いぶりに疑問を抱いていた。

 

 (どういう事だ?コイツの実力は、こんなものではないはずだ………この男が()()()()()()の通りならば………)

 

 その言葉の通り、実は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 青年のドナーとなった少女………「神代(かみしろ) 利世(りぜ)」の事を調べている内に、この男の事も浮かび上がったのである。

 

 その男の事が書かれた資料だけでも、その並々ならぬ実力が伺えた。

 

 この男の実力が資料の通りであるならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 先ほどの攻防でもそうであった。

 

 青年が一気に間合いを詰めて、左右のミドルキックを連続で放ち、大男がそれを躱して体勢を崩した所で……

 

 「喰らえッ……!!」

 

 ドガァッ!!

 

 ……青年がサマーソルトキックを放ち、大男はそれをマトモに喰らった。

 

 (アンタの技だ…!)

 

 「()ゥッ!!小癪(こしゃく)!!」

 

 「ウオォォォォオオ!!」

 

 ジャリッ!ドゴオォォッ!!

 

 青年はそのまま大男へローリングソバットを叩き込む。大男は両腕でガードするも、そのまま壁に叩きつけられその向こうまで蹴り飛ばされた。

 

 (おかしい……以前の戦いといい今回の戦いといい、この男の実力はこの程度ではないはずだ……)

 

 青年の推測通り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「……何でですか?」

 

 青年の声は、体と共に屈辱に震えていた。

 

 「()()()()()()()()!“神代 叉栄(またさか)”!!」

 

 大男………名を神代 叉栄と言い、とある亜人種達のグループのリーダー格だった男で仲間内からは“(シャチ)”と呼ばれている………に歩み寄りながら青年は尋ねる。

 

 「僕にあなたを倒す力がないと思っているんですか……?僕を……舐めるなッ!!」

 

 ドゴォッ!!ドガガガガ……!!

 

 そう言って青年は間合いを詰めて右のミドルキックを叩き込み、踏み込みつつ鯱へ怒涛のラッシュを叩き込んだ。

 

 (鯱がアオギリにいる理由なんてどうでもいい!……アンタの狙いなんて知らない!……でも、僕の前に立ちはだかるなら誰だって一緒だ!……摘んでやる!)

 

 ガガガガガガガガッ……!!

 

 「邪魔ッ……なんだよッ!!」

 

 青年は鯱へ反撃する隙を与えず、そのまま攻撃を叩き込み続けた。

 


 

 一方、青年を追っていた少女達は……

 

 「クスクス……」

 

 「「ッ!?」」

 

 ……自分たちを揶揄する様な笑い声に、思わず立ち止まった。

 

 声が聞こえる方へ振り向けば……

 

 「あんよがじょーず、あんよがじょーず…」

 

 ……全身に包帯を巻き、その上から外套を羽織った少女と思しき亜人種の姿があった。

 

 アオギリの幹部の一人で“エト”と呼ばれる少女である。

 

 少女達は彼女を………というより、アオギリのメンバーを快く思っていなかった。

 

 嘉納(かのう)がアオギリに協力する様になってから我が物顔で屋敷の中へ出入りする様になり、部下になった覚えは無いにも関わらず、時に偉そうな口調で少女達に命令までする様になったのである。

 

 嘉納が宥めていなければ、全員力ずくで叩き出したいとすら考えているのだ。

 

 一刻も早く青年に追い付かねばならない時に眼前へ現れたエトに、少女達は殺意すらこもった目で彼女を見据えていた。

 

 そんな少女達の視線を気にも留めず、エトは2人へと語り掛けた。

 

 「………………………」

 

 「ッ!!うるさい!!」

 

 「………………………」

 

 「うるさい!!うるさい!!」

 

 その内容は、少女達にとって聞くに耐えない……彼女達が目を逸らし続けていた現実であった。

 


 

 「ハァ……ハァ……」

 

 息の続く限り打撃を叩き込んだ青年は、床へ座り込んでいる鯱の前で息をつきながら仁王立ちしていた。

 

 鯱は青年の問いに一切答えなかったので、アオギリに協力している理由は判らずじまいだったが、青年はそのまま彼にトドメを刺すために近づいて行く。

 

 彼の思惑は何であれ、また自分に立ち塞がる可能性がある以上、放っておく訳にもいかないからだ。

 

 だが……

 

 ガシッ!

 

 「ッ!?」

 

 「…仕舞いか?」

 

 ……なんと鯱は何事も無かったかの様に、右手で青年の顔を鷲掴(わしづか)みにしていた。

 

 「身躱(みかわ)しだけは一人前か…ちょこまかと五月蝿(うるさ)小鼠(こねずみ)めが…」

 

 そしてそのまま立ち上がり、右手一本で青年を吊り上げ……

 

 「おとなしく……(せい)ッ!!!」

 

 ドゴオォォォオンッ!!!

 

 ……壁に叩きつけてそのまま壁面をぶち抜き、青年は壁の向こうの部屋へと放り込まれる。

 

 「…ぅが……」

 

 ガァン!ドサッ!

 

 「…がっは……うっぐ……」

 

 青年はそのまま壁をぶち抜いた先の壁面へ叩きつけられ、床へ倒れ伏した。その衝撃で一瞬意識が途切れる。

 

 ストッ!!

 

 鯱は部屋へと飛び降りて、何事も無かったかの様に首を振る。

 

 (あれだけ攻撃を喰らって……ほぼダメージ無しなのかッ……!?なんて……ふざけた肉体なんだ……!!)

 

 青年の攻撃は決して軽いものではない。

 

 先にも述べたが、青年の攻撃は蹴りひとつを取っても、サンドバッグや人体を両断するほどの威力がある。他の攻撃も同様に、おおよそ常識では図れない破壊力を秘めている。

 

 にも関わらず、鯱はその攻撃を何度も喰らっていながら、堪えた様子がまるで見えなかった。

 

 青年が考えている様に、あまりにも冗談じみたタフさである。

 

 「……ぐ…が…ッぐ……」

 

 青年はふらつきながらも、辛うじて立ち上がる。

 

 「…………」

 

 だが鯱は青年ではなく、別の方向を見据えていた。

 

 「……!?なにをよそ見………ッ!!」

 

 その様子に、青年は鯱に食って掛かろうとして……ようやく周囲の異様さに気付く。

 

 今、青年達がいる部屋は広大なラボと思しき場所で、周囲には人ひとりが入れる大きさのカプセルが無数に並んでいる。

 

 カプセルの窓からは中に入れられている“人と思しきもの”が見えた。

 

 “人”と断言できないのは、そのシルエットが常人とは思えないほど肥大化していたからだ。

 

 窓から見える範囲だけでそれである。全体像がどうなっているかは想像に難くない。

 

 青年は先ほど遭遇した、実験体を連想させた。

 

 そして、鯱の視線の先……そこには白衣を纏った初老の男が佇んでいた。

 

 「出来れば…ゆっくりと話したかったよ……」

 

 そこにいたのは青年がここ半年ほどの間、行方を追っていた人物……

 

 「…お薬はちゃんと飲んでるかな……?」

 

 ……嘉納 明博(あきひろ)の姿があった。

 

 「嘉納……先生………」

 

 部屋の中央にあるカプセルに繋がっている、周囲のそれと比べて一際大きな装置の上に立つその男を見据えながら、青年は呆然としながら呟いた。

 

 そして嘉納の足元にあるカプセルには、拘束された状態で少女が入れられていた。

 

 青年は彼女に見覚えがある。

 

 「……リゼ……さん?」

 

 その少女は全ての始まりの日………10ヶ月ほど前の鉄骨落下事故の際に死んだと聞かされていた神代 利世であった。

 

 カプセルの中の彼女は、とても10ヶ月も前に死んだとは思えないほど瑞々しい姿である。

 

 しかも青年の声に反応したのか、彼女はのろのろと顔を上げた。

 

 (生き……てる……?)

 

 彼女は虚ろな表情で、血涙を流しながら青年を見据えていた。

 


 

 兵器解説 

 

・月山 習専用武装

 特殊手甲 Bras(ブラ) du(デュ) gardien(ガルディアン)(守護者の両腕)

 

 月山の実家がSAAの開発に出資した見返りに、その研究成果(主に機体構造や装甲素材の製法)を用いて、御曹司である彼の為に独自開発された物。

 

 右腕の手甲にショートソードが格納されており、ギミックを作動させる事でジャマハダルの様に展開させる事が出来る。

 

 左腕には円盾と予備のダガーナイフが装着されており、円盾はアベ◯ジャーズのキャ◯テン・ア◯リカの様に投擲武器としても使用可能。

 

 両腕の内側には左右2本ずつ計4本のスローイングナイフが収納されており、両拳にはナックルダスターが取り付けられている。

 

 見た目が厳つく堂々と持ち歩ける代物ではないので、屋敷に到着するまで月山は大きめのスポーツバッグに分解した状態で入れて持ち歩いていた。

 

 名前の由来は月山が青年に同行する事を申し出た際、バンジョーが自身を青年の“盾”と自称したのに対し、月山が自身を青年の“剣”と自称して自分たちを青年の“守護者”と位置づけた事から。

 

・デュランダル(ver.1)

 

 ブラ·デュ·ガルディアンの右腕に格納されているショートソード。

 

 最新の素材に日本刀と同じ製法を用いて製作されたため、強度と切れ味は折り紙付き。

 

 また手甲から取り外して、普通の剣としても使用可能。

 

 名前の由来はフランスの叙事詩「ローランの歌」に登場する英雄ローランの聖剣から。




 
 本作品のサマーソルトキックは、プロレス技のそれではなくスト◯ートファ◯ターIIのガ◯ル少佐のそれです………プロレス技の方は踏み台にしているだけでダメージ無しだし………。

 それにしても東京喰種の本編を見てると、鯱の技は日本武道のものよりプロレス技が多く見られるのは気のせいなんだろうか?

 ……気のせいだと思いたい……

 次回は翌日の深夜0時に投稿予定です。

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