ゲートSAA彼の地にて斯く戦えり   作:素面ライダー

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 俺たちゃしがないサラリーマン!
 万年☓のダメリーマン!

 という訳で(どういう訳なんだか………)
 後編スタート!!


過去編 ~SAA登場(後編)~

 「篠原君、彼ら(テロリスト)に半端な同情を抱くのはやめたまえ。でなければ自分の命を守ることすら儘ならなくなる。」

 

 真戸一尉はとても上官に向かったそれとは言い難い慇懃無礼な口調で篠原一佐を嗜めた。

 

 「………わかってますよ………。」

 

 しかし篠原は特にそれを咎めること無く返答した。

 

 真戸と篠原の付き合いは長い。

 

 今でこそ階級は篠原の方が上だが任官歴で言えば真戸の方が先任であり、彼は篠原が新任だった頃自衛官としての心構えやノウハウを伝授していた師に当たるのである。ちなみに先述した亜門一尉も新任の頃に真戸に教えを受けている。

 

 篠原も亜門も真戸とは任務で何度もバディを組んでおり背中を預けあった事が何度もあった。そんな彼らは単なる上官と部下以上の信頼で結ばれている。

 

 「彼らの出自に思うところがあるのは事実です。」

 

 複雑な表情で篠原は語る。

 その脳裏に浮かぶのはアオギリの拠点で押収した記録映像やカルテなどと言った資料………

 

 『ふざけるな!俺をこんな体にしやがって!!』

 

 ………記録映像の中でそう叫ぶ男も居たが、それでもその男はまだマシな方で自我の無いただの肉塊と成り果てた者も多い。

 

 そして同時に浮かんだものは拠点の襲撃者と思しき青年の科白(セリフ)である。

 

 『こんな体でも人間として普通に生きていたい………そう思って生きる事すら罪なのですか?』

 

 押収した資料により判明した事実と対峙した青年の言葉(セリフ)が篠原の中に重くのし掛かる………それでも己の決意を曲げる事は無い。彼は決然と語った。

 

 「しかし私の中で大事な物事には優先順位がありますから。」

 

 「わかっているならいい。それに君に深手を負わせた『奴』の思惑はどうあれ、脅威であることに変わりは無いからね。」

 

 「『眼帯』か………。私も報告書は読んだ。」

 

 彼らが話題に上げている剥き出しの歯茎と眼帯を模したレザーマスクを着けた青年………『眼帯』と呼ばれるテロリストの物と思しきカルテも押収した資料の中に含まれていた。その内容を信じるなら彼はある意味被害者であり、アオギリと敵対している理由も理解出来た。

 

 「(眼帯)に同情すべき点が無いわけではないし、確認出来た限りでは人死(ひとじ)にを出していないが………」

 

 その時、伊庭達の会話を断ち切る様にスピーカーから演習場内に放送が流れる。

 

 『大変長らくお待たせしました。会見の用意が整いましたので報道関係者の方は記者会見場へお集まり下さい。』

 

 「お、どうやら始まる様ですよ。」

 

 待機スペースには小型の液晶モニターが設置されており、そこには演説台を中心に記者会見場の様子が映し出されている。篠原の言う通り、総理大臣を中心に防衛族の国会議員と防衛省の背広組のトップが勢揃いしていた。

 

 「あ~~~………ったく疲れたぜ~。政治家の連中ってのはどうしてこう物分りが悪い上に頭が堅ぇんだ!」

 

 そう言って、一人の自衛官が待機スペースに入って来た。口調が嫌味臭い上に随分と遠慮が無い。幹部自衛官にしてはかなりの変わり種だ。

 

 「丸手(まるで)、お疲れ。済まなかったね、面倒な役を押し付けて。」

 

 総理を始めとして政治家達への説明と説得に随分骨を折ったのだろう。そんな彼………丸手 (いつき)二等陸佐(一等陸佐への昇進及び防衛省本部二課課長就任内定済み)を篠原が労う。

 

 「ああ全くだ!お前ぇらがドジ踏んだ挙げ句、主犯を取り逃がしたせいで尻拭いに走り回るハメになったからな!」

 

 「はは………それは………。」

 

 丸手の態度は上官に対するそれではなかった。真戸のそれとは別の意味で遠慮が無い。もっとも、篠原の方は慣れたもので丸手の態度をさして気にも止めなかったが………。

 

 「その上、他国(ヨソ)紐付き(腰巾着)国会議員(バカ)共が何を思ったのかアホなメールをバラ撒くせいで機密を明かすハメになった上、時間が無ぇせいで調整にも走り回るハメになったからな!ったく………怪文書バラ撒いたバカをブッ飛ばさねぇと気が済まねぇぜ………。」

 

 ………もはや口調がチンピラのそれである。まあ彼は今の今まで文字通り「死ぬ程忙しかった」ため、そんな愚痴を溢すのも無理は無かったが………。

 

 『え~まずは報道各所の皆さま方、本日はお集まりいただき………』

 

 「!?あれは………」

 

 モニターに映っている報道陣を見て、篠原は驚愕に目を見開く。それを見て黒磐も有事に備えて即座に動こうとする。

 

 「ああ………他国の工作員(厄介な客)が複数報道陣に混じってるってんだろ?」

 

 対して、さして動じること無く丸手は答える。しかし彼には他国のそんな思惑は最初からお見通しであった。

 

 「心配要らねぇ。今ちょうど“零番隊”が周囲の掃除をしてる所だ。」

 

 「“零番隊”を?彼らを動かすなんてまた思いきったな丸手。」

 

 「………俺の提案じゃねぇ。吉時さんの推薦だ。」

 

 防衛省直属·特殊作戦群·零番隊………その存在は一部の者しか知らず、書類上には「存在しない事」になっている非公式部隊である。

 

 「………正直、あまり感心出来んな………。()()()()()()()()というじゃないか………。」

 

 「………本音を言うと俺もですよ伊庭さん。」

 

 それに………と丸手は続ける。

 

 「今回主に動くのは有馬と平子の2人だけですから、伊庭さんが心配する様な事は起きませんよ。」

 

 「………だと良いがな………。」

 

 会話の間に記者会見は続き、演説台の脇にアルミバンタイプの中型トラックが荷台の方を向けてやってくる。

 

 記者達は訝しむ。彼らはてっきり自衛隊がまた新型のパワーローダーのお披露目をするものだとばかり思っていたが、それにしては搬送に使うトラックが小さすぎるのである。

 

 記者達の動揺を他所に荷室の後部扉が開き、中から出て来た物を見て記者達は驚愕に目を見開く。

 

 ガシュン!ガシュン!ズン!と足音を響かせそこから出て来たのは、例えるならSF作品に登場する外骨格式パワードスーツを身に纏った2名の自衛官だったのである。

 

 『これこそ陸上自衛隊での採用·配備が決定した最新装備。その名も機動重装甲冑。英名はSpecial Assault Armor、通称SAAと呼ばれます。機体コードは先に出て来た機体がAAM-006JR、後に出て来た機体がAAM-006JSと呼ばれる物です。』

 

 「自慢気によく言うぜ………。俺が最初説明した時は半分も理解出来なかった癖に………。」

 

 「まあまあ………。」

 

 先日まで説明に骨を折っていた為か、呆れ気味にこぼす丸手を篠原が宥めていた。

 

 そして総理大臣の解説が続く中、演説台にマスコミが注目しているのを尻目にその場から音もなく離れて行った複数の人影があった事に気づいた人間はその場には居なかった。

 


 

 演習場の森の中を戦闘服を着た男………体格とバラクバ帽の目元から覗く眼の色から外国人だろう………が必死に逃げ回っていた。

 

 無線に応答が無い事から恐らく自分以外は全滅した可能性が高い。だが銃声が全く聞こえない事に不気味さを感じる。自分も一刻も早くこの場から離脱しなければ仲間と同じ末路を辿るだろう。

 

 男はそう考え作戦地域から一刻も早く離れる為、死に物狂いで走る………が、突如眼前に眼鏡を掛けた戦闘服姿の優男が行く手を遮る。

 

 バラクバ帽の男は慌てて立ち止まった。

 

 「待機。」

 

 優男が感情を感じさせない声で短く言い放つ。

 

 バラクバ帽の男は一瞬自分に向かって言ったのかと思っていたが、よく見れば優男の背後に数人の人影が確認出来た。恐らく部下である彼等に命令したのだろう。

 

 状況から考えて、眼前の男達が自分以外の仲間を殺ったのだと推測出来た。

 

 (あんな連中が自分以外を全員殺ったというのか?しかも………)

 

 仲間の仇が眼前に平然と佇んでいる事に(はらわた)が煮えくり返る。だがそれ以上に眼前の男が持つ獲物を見て驚愕する。

 

 (日本刀(サムライソード)だと?あんな獲物で我々(工作チーム)を全滅させられたのか?)

 

 確かにそれなら銃声が無かった事には納得出来るが、自分を含めた工作員は全員銃火器………作戦の都合上派手な音がする物はさすがに使えないので消音器(サイレンサー)付き………で武装している。無線を入れる暇も無いどころか一発の銃声も無く仲間が全員殺られた事にはどうしても信じ難かった。

 

 それに、眼前の男とは日本刀を使うには距離が開き過ぎている。距離を詰められる前に手に持った銃でこいつらを殺れば生き残れると考えて、必死にタイミングを図る。

 

 そして手元の銃を眼前の優男に向けて引き金を引こうとした瞬間………

 

 「え?消え………」

 

 優男は一瞬で眼前から居なくなり、気づいた時には男の両腕は前腕部の半ばから無くなっていた。更に………

 

 (あれ?何で急に地面が近く………)

 

 その数瞬後、バラクバ帽の男は首と胴が泣き別れとなって意識を永遠に失った。

 

 演習場内部に侵入していた工作員はこれで全員である。複数の国の工作員が侵入していたものの、どの国の工作員もわずか数人の特殊部隊を相手に全員仲良く全滅したのであった。

 


 

 一人のアジア系の男が人目を忍んで会見場から離れて行く。彼は内心かなり苛立っていた。

 

 (クソッ!なぜ何も起こらない!工作チームは何をやっている!!)

 

 そこへ隠し持っていた無線機から通信が入る。男は苛立たしげに回線を開く。念のため言語はロシア語で行っている。

 

 「私だ!貴様ら一体何を………」

 

 『この無線機を持っていた男の指揮官だな?』

 

 男の質問を無視して感情を感じさせない低い声が無線機から一方的に響いた。「お前の正体などお見通しだ!」と言わんばかりに言語は北京語を使う。

 

 「………貴様、何者だ?」

 

 往生際悪く、男はロシア語で誰何する。

 

 『警告する。この国で余計な真似をするな。次は命の保証は無い。』

 

 無線の向こうでは相変わらず北京語で男の質問を無視して一方的に通告した後、無線を切る。

 

 会見場から離れた場所のあちこちで同じやり取りが様々な言語で行われていた。

 

 この会見に集まっていた全ての工作員は作戦の失敗を悟り、次々に撤収していったのである。

 


 

 『こちらHQ(作戦司令部)。リーパー1、状況を報告されたし。送レ。』

 

 手元の無線機………工作員から回収したものではなく元から持っていた物である………から通信が入り、リーパー1………有馬(ありま) 貴将(きしょう)三等陸佐は回線を開く。

 

 「こちらリーパー1。侵入していた工作員は全員駆逐。作戦通り『警告』を行った。送レ。」

 

 『こちらHQ、了解。後始末はこちらが行う。リーパー各員は当初の予定通り所定の位置まで後退せよ。送レ。』

 

 「こちらリーパー1、了解。終わり。」

 

 そして無線を切り、平子(ひらこ) (たけ)一等陸尉を始めとした部下達を引き連れて待機予定地へと後退していった。

 


 

 「真戸さん。さっきから一体何を書いてるんだ?」

 

 記者会見をモニターで見ていた篠原が尋ねた。

 

 「ああ今回の件で亜門君の昇進が確実だろうから、今度新設される教導隊の隊長に推挙する上で一筆添えようと思ってね。」

 

 「特機普通科教導隊か………あの泣きベソかいてたイガグリ坊主が隊長で教官ねぇ………。」

 

 篠原が感慨深げに語る。

 

 この後、新たにSAAの戦技研究と装着者(クラダー)の育成の為の教導部隊「特機普通科教導隊」が設立され、初代隊長に亜門 鋼太郎三等陸佐(この後一等陸尉より昇進)が就任する事となる。

 

 そして各国との日本の技術を巡る情報戦も、更に激化していく事となる………しかし、それはまた別の話である。




 
 前話の前書きにも書いてますが、SAAの………特に出自に関しては作者の独自設定です

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