年末は思いのほか忙しかったんだ。
次は少しだけ早く投稿する……かも
邂逅
意識が覚醒していく。
「……ここどこだ?」
目の前に広がる炎に包まれた町、その原型を留めていない建物は今にも崩れそうだ。そんな戦争後の様な悲惨な光景を前にして、ハッとしたかのように周りを見渡す。すると、この変な世界にくる前、自分の隣にいたソレが消えていた。
「あー!? あの可愛い子がいなくなってやがる!」
それはゲートを移動中、寄り道で来てしまった
それでも、巻き込まれた女の子はいないかと探しはしたが結局見つからず、ある程度探索したところで飽きてしまった頃、最後に入った部屋で偶然、白髪の女を見つけたのだ。生きているのが不思議なくらいの大怪我をしていたその子は、とある方法を使って一命を取り留めた……はずなのだが、まったく起きる気配がなかった。仕方ないから起きるまで暇を潰しそうとしたら、なにやら聞いた事もない単語の放送が聞こえてきて、気が付いたらこの世界にいた。──その女を置き去りにしたままだったが。
「ふざけんじゃねー! まだお礼もしてもらってないぞ!」
湧き上がる怒りに身を任せ叫ぶ。お礼云々はともかく、すぐに彼女を探し出さねばならなかった。瀕死の怪我を救う為にアレを取り込ませた彼女は、記念すべき第一号として色々やらせる予定なのだ。逃げられては堪ったものではない。
「むぅ……とりあえず探してみるか」
愚痴を吐いても仕方ない、と溜息をつき歩き出す。あちこちで燃える建物を観察しながら進んでいくと、そもそも、あの施設はなんだったんだと思ってしまう。ここにきた原因はあの時のアナウンスが関係しているのはなんとなく分かってはいたが、人を転移させる魔法など、元いた世界でもそうそうお目にかかれない代物で、そんな魔法がなぜ自分にかけられたのかは皆目検討もつかない。
そして、そんな事を考えながら、白髪なら目立つだろうと遠くを見渡していた時、二つの人影が映った。
「ん? 向こうの方にいるのは……」
それは遠くから見ても一目で女と分かるような素晴らしい体付きをしていて、思わず顔がにやけてしまう。しかし、どうもその様子がおかしい。目を凝らしてよく見ると、しゃがみこんでいるピンク髪の子は俯きながら必死に何かを訴えている、もう1人の橙髪の子は寝ていると思ったが、身に纏っている衣服は赤く染まっていて──―
「……ッッ!」
視線の先にある血に塗れた姿は、2年前のあの惨劇の様で。その脳裏にちらついた苦い記憶を振り払うように走り出す。
「そこの君! 大丈夫か!?」
慌てて声を掛けると、こちらに気付いたピンクの髪の子が驚いたように振り向く。その端整な顔はくしゃくしゃに歪み、助けてくれと懇願している様に見えた。見ているこっちがつらくなる表情をする為、普段なら助ける際にお礼を求めるのが常だったが、そんな事を言える訳もなく、ただ、倒れている子の状態を確認する。
「……ちっ、ひどいな、まだ死ぬんじゃないぞ!」
全身から出血しているその体は痛々しく、特に血溜まりの中心にある腹部の傷は、一目で致命傷だと分かってしまうものだった。だが、まだ死んではいない。その虚ろな目は閉じきってはいなかった。それでも、すぐに適切な処置をとらねばいけない事に変わりはなかったが。
「
手持ちから取り出したのは、血の色をした小さな球状の塊。取り込めばあらゆる生物を魔人に変質させ、驚異的な回復力で致命傷さえも癒す事ができる魔血魂。ただし、一つ問題があり、初期化したとはいえ魔血塊は魔王の力の一端。抗えぬ狂気に染まり、元の人格とはかけ離れた存在となってしまう可能性があった。
それを知っているゆえに、これを使う際は無理やりでは無く、ある程度、精神力のある子にだけと思っていたのだが、今は四の五の言っていられる状況ではない。
「安心しろ、今助けてやる」
できるだけ安心する笑みを浮かべ、薬を飲ませる様に魔血塊を水で流し込む。その瞬間、傷だらけの少女の体に異変が起こった。全身の至る所にみられた小さな傷は瞬く間に癒え、腹部に空いた穴も再生し始めていた。後は体力さえ戻れば起きるはずだ。
「まぁ、これで大丈夫だろ」
「あ、あの!」
「ん?」
とりあえず一安心した所にお礼の言葉を投げ掛けてきたのは、事の成り行きを見守っていたピンク髪の少女だ。出会った時の辛そうな表情は消え、その代わりに感謝と困惑が混じった様な複雑な表情をしている。
「え、えっと、先輩を助けて下さってありがとうございました」
「なぁに気にするな、俺様は世界中の美女の味方だ! 倒れている美女がいたら助けるのは当然の事だ」
「あ、そ、そうなんですね」
どこか納得していない様子の少女を前に、今、始めて面と向かって話したランスは、その格好に釘付けであった。体全体を覆う黒い鎧は、大胆にも肩と太もも、そして、へそが覆われておらず、真っ白な素肌が丸見えで扇情的と言わざるを得ない。そして、鎧に守られてはいるが、ラインがくっきりと出てしまっている二つの胸は、程よい大きさで大変素晴らしかった。
一方、ランスがそんなことを考えているとは露も知らず、少女―マシュ・キリエライトは、マスターの命の恩人である男性―ランスについて考えていた。
(やっぱりこんな人見た事が無いです……)
それは、初めて会った時から思っていた事。特徴的な大きな口に、自信に満ち溢れている声音、魔術師らしかなぬ緑と白の鎧は、まさに戦士と呼ぶに相応しい格好です。その姿は人目見たら忘れる方が難しいくらいなのに、カルデアで爆発が起きる前に行われた説明会、レイシフト適性のある48人のマスターが集まっていたあの場に、この人は居ませんでした。それは、この人がマスターでは無い事を意味していて。特異点に行ける48人のマスターではないのなら、この人は一体どうやってここに来たのでしょう?……ひょっとして謎の49人目のマスターなのでしょうか?
(それに、先輩を助ける時に使ったあのよく分からない物……)
致命傷を負っていた先輩の体を一瞬にして癒した赤い塊。あれほどのマジックアイテムを持っている人はカルデアにもいなかった……はずです。そんな物を見ず知らずの人に躊躇いもなく使うこの人は、もしかして、とても良い人なのでは?と思ってしまう。
(……駄目です。考えがうまく纏まりません)
さっきまで、先輩を助けられずに、ぐちゃぐちゃになっていた頭では、考えれば考えるほど、この人の事が分からなくなる。それでも、一つだけ確信が持てました。それは――
「……ぐへへへ」
この人、絶対すけべな人だな、と
そこに気付くとは……マシュは天才だな()