投降が続くかもわかりませんが、よろしくお願いします。
異世界転生してアレコレと人生上手くやり通す、なんてことを自分自身が体験するとは思わなかった。
前世で何をやっていたかを少しずつ忘れていくなかで、転んで頭打って亡くなったことだけは鮮明に覚えている。特に何か特別なことがあったわけではなく、仕事中につるっと滑って頭打ってサヨナラ。
転生して最初に分かったことは自分が日本人ではなかったこと。どうやら外国人として生まれ変わったらしく母はどうみても日本人離れした美女だった。
二つ目に分かったことは、生まれ変わった世界は前世と同じような世界だということ。アメリカも日本もちゃんとある世界だ。そして、歴史においてもどこかでトンデモ設定が隠れていることもない。
三つ目に分かったことは、自分が女性として転生してしまったことだ。男の象徴がなくなってしまったことに受けたショックは大きく、そして成長していくにつれて自分が女であることに違和感が無くなっていくことに、安心すればいいのか恐れればいいのか。
女性として生まれ変わって十数年も経過すれば女としての生き方が当たり前となるけど、いまだに男に対して恋愛感情を抱いたことはない。なんだかんだ元が男だから忌避感があるのかもしれない。
「フォルテ。おはよう」
同室の子が声をかけてくる。
二回目の高校生活を迎えるというのにすごく新鮮。それも全寮制の高校。そしてすごくレベルが高い。更に全世界の女子たちが羨む有名校。素敵なパワードスーツについて専門的な授業を行うことでも有名。
「おはようっス、刀奈」
でもって前世の頃からちょっと知っている高校でもある。
全寮制でレベルが高くて女子校でパワードスーツ。そして同室の子の名前が刀奈。
はいはい、インフィニットストラトスインフィニットストラトス。
私が転生した世界はISの世界だったというオチ。
ISの世界に転生したと気がつくには少し時間がかかった。何せ、前世との違いを見つけることができなかったのだから。私の前世での学力がお世辞にもよくなかったことも原因だけどさ。馬鹿ではないけど、知識も洞察力もそこまで高くなかったのだ。すぐさま違和感に気がつけるなんて無理だ。
私がISの世界と認識できたのは、当たり前だが白騎士事件が起きたからだ。あれがISの初登場で、それからIS世界特融の女尊男卑の流れにシフトしていくって話だ。
実際に数年もすれば女性が社会的有利な世の中になっていた。
さすがに原作の説明にあるような男性を奴隷のように扱うような人権もへったくれもないことにはなっていないけど、一部の過激な女子がいるのは事実だ。
男は頼りない、と同性間での恋愛感情がかなり進んでいるところもあり、私の母親も父と別れて別の女性と再婚した。ちなみに家族仲は円満でよくしてもらっている。
ISの世界だと分かると、問題となるのは原作に介入するべきかどうか。
例えば私が男だったら一夏とは別のISを起動できる男でIS学園でラブコメできたかもしれないけど、残念なことに私は女だ。
女の場合だと一夏と恋仲になるとか、理解者に近い同年代ポジか、後はヒロインたちと友達になるとかかな。
まぁ、将来のことは置くとして、ISの世界に転生できたのだからタイトル名のISを装着して空を飛んでみたくなるのは悪いことではないはず。
原作介入するかどうかは後で考えればいいのでISの適性検査を受けることにした。
初めて触ったISは感動的だった。ISスーツのピッチリ感は慣れるまで時間かかりそうだけど、そんなことよりもISを装着できている方が重要。
検査の結果は適性値はAと高評価で、母たちと相談してISの道へと進むことになった。
ISの操縦は難しくも楽しかった。もう空を自由かつ高速で飛び回る感覚は癖になりそうだった。
それだけで十分なほどだけど、世の中それだけで終わるほど優しくない。
知識面での勉強。つまりは座学。
あの電話帳と間違えるくらいの厚みある参考書が私を苦しめてくる。
転生すればハイスペックになるかと思えば、知能レベルは前世からの持ち越しだったので勉強面は地獄でしかなかった。
救いはISの生みの親である篠ノ之束が日本語しか喋れない関係でIS関連の物が全て日本語だったことか。
参考書は日本語でしか書かれていないので、前世日本人だった私は周りと違って日本語の勉強からスタートにはならなかった。
しかし、日本語が分かるからと言って専門的な知識をスラスラ読み解いていけるわけもなく、脳がオーバーヒート待ったなしだった。
ISに乗れる爽快感を思い出しながら、なんとか座学を詰め込んだ時には成績優秀者として国家代表候補の一人になっていた。
そして勝ち取ったIS学園行きのチケット。原作の舞台に無事着陸することができたし、IS学園の敷地に足を踏み入れた時は感動でちょっとブルっと震えてしまった。
さて、原作に対してどう動くべきか考えていくべきか。
原作開始かどうかはニュース見てれば分かる。それも受験シーズンのめちゃくちゃ忙しい時期にニュース見てれば、ああ原作スタートするぞと分かっちゃうのだ。
そう、つまり全く世間様が騒がしくないない時期に入学した私は織斑一夏と同世代じゃなかったりする。
「ねえねえ。一緒にお昼食べましょうよ」
寮では同室でクラスも一緒だし席も隣と、どれだけくっついているんだと言いたいほどの距離感を維持している刀奈が引っ付いてくる。
更識刀奈。原作キャラの一人で後の生徒会長かつロシアの代表になる日本の対暗部用暗部とかいう強く聞こえる設定を盛られた少女だ。
同性から見ても羨ましいスタイルと人懐っこい笑みを浮かべたクラスで最も目立つ生徒、誰からも頼られるお姉さん的存在でもある。
しかし、原作と違って名前は刀奈だった。
原作であれば更識楯無と名乗っていたはずなのに、何故か本当の名前である刀奈を名乗る。もしかして、原作乖離起こっているとか。
そもそも私の存在が原作ぶち壊しているんじゃなかろうか。
「刀奈。重いっス、動き辛いっス、離れるっス」
「重くはないし、離れないわよ。フォルテが可愛らしいのが悪いのよ」
「……遠回しにチビって言いたいんスかねぇ」
「ネガティブに捉え過ぎ。可愛いは可愛いってことよ。まぁ、小さいのは否定しないけどね」
「別に小さくなりたくて小さくなったわけじゃないんスよ。両親ともに身長高いのになぁんで私はこんなにチビなんスかね」
「小柄は可愛さにつながるのよ。いいじゃない、ステータスよ」
「こっちにとっちゃあステータス異常っス」
刀奈が頭に手を乗っけてくるから払いのけてやる。それされると自分の小ささが染みてきて心が痛くなる。
「来年には妹さんが入学してくるんだから、そっち構い倒せばいいんスよ」
確か刀奈はシスコンだったはず。原作だと誤解を与えて一方的に嫌われている状態だったはずだけど。
「今目の前にいないじゃないの。それに私はフォルテが良いのよ。いやー、クラスも部屋も同じなんて日ごろの行いが良いからよね」
「ああ、そうっスねぇ」
早く原作始まらないかな。