先生(生徒)の異世界冒険記   作:氷冬流

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ぼくがそうするべきだと思っているからだ!!
   ーーーートリガー起動!!ーーーー

  by三雲 修


日常の崩壊

月曜日。それは人類の誰しもが思う一週間の中で最も憂鬱な日。金曜日が天国の始まりなら、月曜日は地獄の始まりと皆、考えるだろう。

それは南雲ハジメも例外ではない

 

しかしハジメの場合、学校が面倒くさいだけでなく学校の居心地がとある理由で悪いが故の憂鬱さが含まれているのだが

 

ハジメは、いつものように始業チャイムがなるギリギリに登校し、徹夜でふらつく体でなんとか踏ん張り教室の扉を開けた。

 

開けた瞬間、クラスの男子の大半から舌打ちやら睨みを頂戴する。女子からの視線もとてもじゃないが友好的な表情ではない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる

 

そんな奴らの中でも特に厄介なのがこいつらである。

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 一体何が面白いのかゲラゲラ汚い声で笑い出す男子生徒達。

 

声を掛けてきたのは檜山大介といい、毎日のようにハジメに絡んでいるグループの筆頭。近くで嘲笑っているのは斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の三人で、大体この四人が頻繁にハジメに絡む。

 

先に言っておくがハジメははオタクだ。しかしキモオタと罵られるほど身だしなみや言動が見苦しいという訳ではない。髪も綺麗に整えているし寝癖もない。積極性こそないものの協力性が無いというわけではない。大人しくはあるがコミュ障というわけでもない。単純に創作物、漫画や小説、ゲームや映画というものが好きなだけである

 

一般的にはオタクに対する風当たりは確かに強いが、本来なら嘲笑程度はあれど、ここまで敵愾心を持たれることはない。では、なぜ男子生徒全員が敵意や侮蔑をあらわにするのか。

 

その原因は彼女である

 

「おはよう!南雲君!今日もギリギリなんだね!!もう少し早く来ようよ。」

 

ニコニコ微笑みながら一人の女子生徒がハジメのもとへ歩み寄った。このクラス、いや学校でもハジメにフレンドリーに接してくれる数少ない例外であり、この事態の原因でもある。

 

 名を白崎香織という。学校では二大女神と称される男女問わず絶大な人気を誇る美少女だ。

 

 彼女はかなり面倒見が良く責任感も強いため学年問わずよく頼られる。しかもそれを彼女は嫌な顔しない。

 

 そんな香織はハジメをなぜかよく構う。徹夜のせいで居眠りの多いハジメは不真面目な生徒として思われており、その面倒見の良さからよくハジメを気にかけていると推測される。

 

 

 

 これでハジメが改善したり、イケメンならば構われるのが許容されるのかもしれないが、ハジメの顔は平々凡々のモブ顔であり「趣味の合間に人生」を座右の銘にしていることから、普段の態度の改善が見られないハジメが香織に構われることは同じ平々凡々の顔立ちをしている男子生徒には我慢ならないのだ。

 

「あ、ああ、おはよう白崎さん」

 

 香織の挨拶に返事をするハジメだが、いきなり周りからの視線の殺気が強くなるのを感じる。

 

 ハジメに挨拶を返されたのが嬉しいのか、嬉しそうな表情をする香織。『なんでそんな表情をするの!』と、ハジメは、さらに突き刺さる視線に冷や汗を流す。

 

 

 

 (なんで、そんなに構うんだよ……)

 

 

 

 ハジメは不思議でならなかった。 

 

 なぜ、学校一の美少女はこんなにも自分に構うのか。

 

 しかし、自分に恋愛感情を持っているとは露程にも思ってない。ハジメは自分が趣味のために色々切り捨てている自覚がある。顔も成績も運動神経も平凡だ。自分などよりいい男が彼女の周りにはいる。故に、なんで自分に構うのか不思議でならなかった。

 

 というか、この殺気を孕んだ視線にいい加減気づいてほしいと内心思っているのだが、口には出さない。そんなことを口に出した瞬間確実に体育館裏に強制連行だからだ。

 

 ハジメが、会話を切り上げるタイミングを計っていると、三人の男女が近寄ってきた。

 

 

 香織の親友である少女と幼馴染の人気者、そしてその人気者の親友達だった。

 

 八重樫雫、天之河光輝、坂上龍太郎である。三人はハジメに近寄った後、それぞれに言葉を口にする。

 

 「南雲くん、おはよう。今日も大変ね」

 

 「香織、また彼の世話を焼いているのか?全く、本当に香りは優しいな」

 

 「全くだぜ、そんなやる気ないやつに何言っても無駄だと思うんだけどなあ」

 

 上から雫、光輝、龍太郎である。

 

 唯一雫だけはハジメに挨拶をしているが、他二人はハジメに対して辛辣だ。だがハジメはそんなことは気にしないで三人に返事をする。

 

 「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。まあ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

すると天乃河は顔を顰めながら

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよだから…………)

ハジメは心の中で考える 

(甘えてなんてないよ…………)

 

ハジメとしては「甘えたことなんてないよ! むしろ放っておいてくれ!」と声を大にして反論したいのだが、そんなことをすれば強制連れションが実行されるだろう。光輝自身、思い込みが激しいところがあるので反論しても無駄であろうことも口を閉じさせる原因だ。

 

 そして〝直せ〟と言われても、ハジメは趣味を人生の中心に置くことに躊躇いがない。なにせ、父親はゲームクリエイターで母親は少女漫画家であり、将来に備えて父親の会社や母親の作業現場でバイトしているくらいなのだ。

 

 既にその技量は即戦力扱いを受けており、趣味中心の将来設計はばっちりである。ハジメとしては真面目に人生しているので誰になんと言われようと今の生活スタイルを変える必要性を感じなかった。香織がハジメを構わなければ、そもそも物静かな目立たない一生徒で終わるハズだったのである。

(大体、そんなこと言うなら天之河君からも白崎さんに言ってほしいんだけど)

 

「…………いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだ「何やってるんだ」ぐぇ!!」

「朝っぱらから、何偉そうに説教しているんだ。天之河」

 

「いきなり何をするんですか!!

               雪村先生!!」

 

いきなり天之河のことを叩いた彼の名前は雪村 流(ゆきむら ながれ)僕たちのクラスの副担任であり僕たちと同じ17歳であるのにも関わらず大学を飛び級で合格した天才だ

 

「何って朝っぱらからうるさく説教なんかしているからだろ。南雲が嫌がっているぞ」

 

「な!俺は南雲のことを思って言っているんですよ!!」

 

「その親切が南雲にとって迷惑になっているんだよ。いい加減気づけ天之河」

その言葉に対して馬鹿にされたと感じたのか反論しよう天之河が口を開いたその時、我らが女神は無自覚に爆弾を落とす。

 

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

 

ざわっと教室が騒がしくなる。男子達はハジメをギリッと歯を鳴らし呪い殺さんばかりに睨み、女子達は白崎さんを信じられないような表情で見ている

 

「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」

 

 どうやら光輝の中で香織の発言はハジメに気を遣ったと解釈されたようだ。完璧超人なのだが、そのせいか少々自分の正しさを疑わなさ過ぎるという欠点があり、そこが厄介なんだよなぁ~とハジメは現実逃避気味に教室の窓から青空を眺めた。

 

「……ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど……」

「悪気がないのが問題なんだよ」

雪村は頭を抱えながら大きくため息をつく

ハジメに至っては

「あはは……」と苦笑いしか出ていなかった

……………………………

………………………

…………………

……………

………

……

時は変わり昼休み

頭を伏せ、眠っているハジメに起こすために近づく黒い影が

「おい、起きろハジメ。昼休みだぞ」

 

「うんありがとう」

 

「当たり前だ。友達なんだからな」

 

そんな会話をしながらハジメは、突っ伏していた体を起こし、十秒でチャージできる定番のお昼をゴソゴソと取り出す。

 

 

――じゅるるる、きゅぽん! 

「ぷはっ!!うま」

「お前……よくそれで午後までもつな……」

「そう?結構持つもんだよ?」

「いや俺じゃ絶対に足りないな」

「じゃ僕はまた寝るよ」

ハジメはもう一眠りするかと机に突っ伏そうとした。

「ハジメ、逃げた方がいいと思うぞ」

「え?」

 

今日こそは逃がさないと言わんばかりに学校の女神が、ハジメにとっては悪魔が寄ってきた。

 

「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」

 

再び不穏な空気が教室を満たし始める中、ハジメは心の裡うちで悲鳴を上げる。

「ハジメは抵抗を試みる。」

 

「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」

 

 そう言って、ミイラのように中身を吸い取られたお昼のパッケージをヒラヒラと見せる。断るのも「何様だ!」と思われそうだが、お昼休憩の間ずっと針のむしろよりは幾分マシだ。

 

 しかし、その程度の抵抗など意味をなさないとばかり女神は追撃をかける。

 

「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」

 

(もう勘弁して下さい! 気づいて! 周りの空気に気づいて!)

「大丈夫だよ白崎、南雲には俺の弁当を分けるから」

その言葉を聞き安堵していると

「それじゃあ一緒に食べてもいい?」

その言葉を聞いて絶望していると

 

救世主が現れた。光輝達だ。

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

 

爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く光輝にキョトンとする香織。

 

「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」

 

 素で聞き返す香織に思わず流と雫「ブフッ」と吹き出した。流に至っては「ゲラゲラ」と爆笑している

 

「流!!いやすいません……流先生!!どうして笑っているんですか!?」

 

「いや別に呼び捨てでもいいぞ〜同世代なんだから」

 

 深い溜息を吐きながらハジメは内心で愚痴った。

 

(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな?)

 

その瞬間凍りついた

 

ハジメの目の前、光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学きかがく模様、ゲームでいう魔法陣のようなものが現れたからだ

 

その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

これはまずいと判断し、急いで指示を出す

雪村「急いでみんな!!教室の外へ!!」

愛子先生「皆! 教室から出て!」

しかし間に合わない

魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

その瞬間視界は白く塗り潰されそのまま意識を失った

 

 




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