緋弾のアリア〜化け犬武偵と百獣を統べる姫〜   作:愛宕夏音

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お久しぶりです。
忙しくてほとんど執筆出来ていなかったのでとりあえず書き貯めを投稿いたします。


銀色の毒使い現る

週明けの夕方、寮でゆっくりしているとキンジからいきなり電話がかかってきた。それを取ると随分と焦っているような声だった。

 

 

「峻稀!今すぐ羽田空港まで来てくれ!」

 

 

「は!?羽田?お前、今どこでなにやって━━」

 

 

「事情は後で説明する!とにかく急いでくれ、時間が無い!今夜7時のチャーター便だ!」

 

 

そう言うとキンジは電話を切ってしまった。ちくしょう、これじゃあ行くしかないじゃねぇかよ。声の質的にも結構大きな問題みたいだし。

 

 

「悪いリサ、飯先に食っててくれ!」

 

 

リサにそう叫ぶと一応の武装確認もそこそこに玄関から飛び出した。とにかく急げとのことだったので、周りに人がいないことを確認するとすぐさま変化(へんげ)して寮の屋上まで跳躍。そこから羽田まで飛び跳ねることにした。

 

 

 

 

空港の直前で変化(へんげ)を解き、キンジからのメールで送られてきた通りに羽田空港の第2ターミナルからチェックインは武偵手帳についた徽章で通り抜け、金属探知機なんてもちろんスルーしてゲートに飛び込む。

 

するとちょうどハッチを閉じつつあるANA600便・ボーイング737-350、ロンドン・ヒースロー空港行きに飛び込んだキンジに追いついた。

無理矢理一緒に機内に駆け込むとバタン、とハッチが閉ざされる。……ギリギリだったな。

 

 

「武偵だ!離陸を中止しろ!」

 

 

目を丸くして驚いている小柄なキャビンアテンダントにキンジが武偵手帳を突きつけて言う。

 

 

「お、お客様!?失礼ですがどういう━━」

 

 

……俺も聞きたいよ。多分ではあるが、イギリス行きの飛行機ということでなんとなく想像はつくんだけどな。クソッ。なんでまた俺が武偵殺しの事件(ヤマ)に関わらなくちゃいけないんだよ。

 

 

「説明してる暇はない!とにかくこの飛行機を止めるんだ!」

 

 

キンジの剣幕にビビりまくったキャビンアテンダントさんが2階へと駆けていくと、キンジは疲れたのか、両膝をついてしまった。

 

 

「……なぁおいキンジ、説明して━━」

 

 

━━くれよと言いかけた矢先に飛行機がグラリと揺れた。……動いてるのか!?

 

 

「だ、駄目でしたぁ……。規則で、こ、このフェーズでは管制官からの命令でしか離陸を止めることはできないって、機長が……」

 

 

2階から降りてきたキャビンアテンダントさんがガタガタ震えながら俺とキンジを交互に見る。……ていうか、俺には助けを求めるような顔をしてくる。そんな顔してもどうにもできませんよ。

 

 

「ば、バカヤロウ……ッ」

 

 

「ひっ!?う、撃たないでください……。ていうかあなた、本当に武偵なんですか?『止めろだなんて、どこからも連絡もらってないぞ!』って、機長に怒られちゃいましたよぉ」

 

 

外を見るともう機体は滑走路に入り始めていた。ここで止めると他の飛行機と滑走路上で衝突する可能性もある。

俺はキンジとキャビンアテンダントさんを宥める。

 

機体が上空に出た辺りで2人とも落ち着いてきたのでキンジと壁際に寄って事情を聞くことにした。

 

 

「……で、キンジ。これは武偵殺しを追いかけてってことなのか?」

 

 

小声で聞くと向こうも同じように合わせてきた。

 

 

「あ、ああ。多分ではあるがこの飛行機はいずれ武偵殺しにジャックされる。狙いはアリアだ。次はアイツ、殺されるだろうな」

 

 

どういう推理をしたかは知らないが、キンジは大体は正解にたどり着いたようだった。しかし、やはりこれは武偵殺し関連だったのか。それを聞いた俺は軽く舌打ちをしてから壁際を離れ、キャビンアテンダントさんに話しかける。

 

 

「……この機には神崎・H・アリアという客がいるはずだ。俺たちはそいつの友人なんでね。部屋まで案内してもらえませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このANA600便は普通の旅客機とは大幅に異なり、1階は広いバーに、2階の中央通路の左右に客室が広がる作りとなっている。……もちろん全て個室である。いわゆる座席というものが無く、全席個室で12部屋ある個室の全てにベッドやシャワー室を完備した超セレブ仕様。『空飛ぶリゾート』とか呼ばれていたのをニュースか何かで聞いたことがある。

 

 

「……き、キンジ!?━━と、峻稀も?」

 

 

明らかに俺だけ後付け感満載の反応をされたがまぁいい。とりあえずは合流できたようだな。

 

 

「……さすがはリアル貴族様だな。これのチケット、片道20万くらいするんだろ?」

 

 

そんなにすんのかよ……。さすがは『空飛ぶリゾート』だこと。

 

 

「━━断りもなく部屋に押しかけてくるなんて失礼よ!」

 

 

「お前にだけは言われたくねぇ」

 

 

ここは俺がきっちり言っておかないとな。新学期早々に俺たちの部屋に押しかけてきたのはコイツな訳だし。それを思い出したのか、アリアはうぐっと唸って黙る。

 

 

「……なんでついてきたのよ?」

 

 

「……この飛行機に武偵殺しが同乗している可能性が高い。……俺たちが来なかったらどうせお前は武偵殺しに勝てないからな」

 

 

「武偵殺しですって!?どういうことか説明しなさい!」

 

 

「……それはキンジに任せる」

 

 

俺はこの飛行機のどこに武偵殺しが潜んでいるのか考えなくちゃいけないからな。……とは言っても、アイツは変装も得意だったな。そうなると考えるだけ無駄かもしれんなぁ。

 

 

「……いいわ、話しなさい」

 

 

アリアの許可を得たキンジが話しだす。武偵殺しの起こしたと思われる過去の事件とこの前の2件、そして執拗に武偵殺しを追っていたアリアが知らなかった()()()()()()と今回の(まだ起きてはいないが)ハイジャックのそれぞれの共通点についてを。

 

やっぱりシージャックでのターゲットは殺されたと思っているようだったがまだ訂正しない方がいいかもしれない。今回の事件が解決したらゆっくり話そうと思う。

 

 

キンジが推理を話し終えるとちょうど突然機内放送が流れ始めた。

 

 

「━━お客様にお詫び申し上げます。当機は台風による乱気流を迂回するため、到着が30分ほど遅れることが予想されます━━」

 

 

確かにちょっと揺れてるな。まぁ、揺れ自体は大したことないのだけど。

 

しかし、ガガーン!ガガーン!と近くの雷雲から雷が聞こえてくる。さらに大きな雷の音が鳴り響くと……

 

 

「ひうぅっ!」

 

 

と、アリアがベッドの中に入ってしまった。……コイツ、雷が苦手だったのか。

 

 

機長が下手なのかは知らないが随分と揺れが大きくなって雷雲も近くに感じられる。

しかもアリアはアリアで雷にビビってキンジに言外に助けを求めているし。それにキンジも応えるものだからわりと退屈だ。

まぁ、どうせその内にハイジャックされるのだろうから今のうちに軽く銃の整備でもしておくか。

 

そう思った矢先

 

 

━━パン!パァン!━━

 

 

いきなり機内に銃声が鳴り響いた!俺の銃が暴発したわけでもアリアがキレて発砲したわけではない。機体の前方の方だ。

俺たちが部屋の外に出るとそこは12ある個室から出てきた客とキャビンアテンダントで老若男女が入り乱れて大混乱だった。

 

 

「キンジ!アリア!お前らは音の方へ行け!こっちは俺が収めるから!」

 

 

「わ、分かった!」

 

 

「任せたわ!」

 

 

キンジとアリアが銃声の方へ向かっていったので俺は武偵手帳をかざしながら騒ぎを収めようとする。

するとシュウウウウ!という音が聞こえて、ガスがこちらに流れてきた。

 

 

「キンジ!」

 

 

「早く部屋に戻れ!ドアを閉めろ!」

 

 

まだ廊下に残っていた数人を部屋に押し込み俺たちもアリアの部屋に戻る。すると、バチン!と機内の照明が消えたがすぐに赤い非常灯に切り替わった。

 

 

部屋に戻ると呼吸や手足の麻痺が無いか、目は見えるかなどを確認するが特に異常はない。どうやら無害なガスだったようだ。

 

 

するとそこにポンポンとベルト着用サインが注意音と共に訳の分からない点滅を始めた。

 

……これは、和文モールス?

 

アリアもそれに気付いたらしく、ボソッと呟いた。

それを聞いたキンジも解読を試みたようだ。

 

 

オイデ オイデ イ・ウー ハ テンゴク ダヨ

 

オイデ オイデ ワタシ ハ イッカイ ノ バー ニ イルヨ

 

 

「誘ってやがるな……」

 

 

「上等よ。風穴あけてやるわ」

 

 

 

 

 

 

 

1階のバーに降りると、はたしてそこにいたのはさっきのビビりのキャビンアテンダントさんだった。しかし服装が違う。彼女が着ていたのは武偵高の制服。それもヒラヒラのフリルだらけの甘ったるい改造制服だった。

 

 

「今回も綺麗に引っかかってくれやがりましたねぇ」

 

 

そう言いながら、ベリベリと顔に被っていた薄いマスクのような特殊メイクを自分から剥ぎだした。

 

その中から出てきたのは、

 

 

「━━理子!?」

 

 

Bon soir(こんばんは)

 

 

キンジが驚いている。仕方ないだろう。ついこの前までアホやっていた理子が実は自分たちを狙う爆弾魔で武偵殺しの正体だったのだから。

 

 

「よう、理子・峰・リュパン4世。この前はよくもまぁ人のこと対物ライフルでぶち抜こうとしてくれたな。しかもご丁寧に学校まで休んで俺から逃げやがって。けどもう逃がさねぇ。お礼参りだ、覚悟しろ」

 

 

懐から拳銃を抜きつつ俺は理子を睨む。

 

「くふふふ、やっぱりシュンちゃんも来ちゃうよねぇ。でもいいの?学園島には理子のお友達が来てるんだよ?リサがどうなっても知らないよ?」

 

 

「理子……お前、向こうじゃ一応友達だったからお仕置き程度で済まそうかと思ってたけど、分かってんのか?それは━━」

 

 

「━━でもシュンちゃんは理子に手が出せない」

 

 

そう言われて俺は黙ってしまう。そうだ、真偽はこの際関係無いのだ。リサが人質に取られた()()()()()()だけで俺は動けなくなってしまう。それを理子は知っていて、的確に突いてくる。

 

 

「だからそっちで大人しく見ててね。下手な動きしたら、分かってるよね?」

 

 

そう言って理子は憎たらしくもウインクを飛ばしてきた。リサ程じゃあないが、そこそこ可愛いのがまたイラッとくる。

 

 

「……分かったよ」

 

 

俺も拳銃を仕舞い、バーのカウンターの奥の方の椅子に腰掛ける。

 

 

「……ねぇアリア、おかしいと思わない?理子の名前は理子なのに、家の人間はみんな理子のことを『理子』って呼んでくれなかった。お母さまがつけてくれたこのかっわいい名前を。呼び方がおかしいんだよ」

 

 

それを見届けた理子はアリアたちに向き直って話し始める。

 

 

「おかしい……?」

 

 

アリアが呟く。

 

 

「4世。4世。4世。4世さまぁーって。どいつもこいつも使用人どもまで、理子をそう呼んでた。ひっどいよねぇ」

 

 

「それが、それがどうしたって言うのよ……、4世の何が悪いのよ!」

 

 

そこは譲れないとばかりにアリアもはっきりとそう言う。しかしそれを聞いた理子は目玉をひんむいて叫ぶ。

 

 

「━━悪いに決まってんだろ!あたしは数字か!あたしはただのDNAかよ!?あたしは理子だ!数字じゃない!どいつもこいつもよぉ!」

 

 

ブチギレた理子は俺たちじゃない他の奴に叫ぶ。かつて理子を『4世』と呼んできた奴らに向かって、怒っていた。

 

 

「だからあたしは勝つんだ!オルメス!お前を倒さないとあたしは一生『リュパンのひ孫』として扱われる。そんなのはゴメンだ!だからあたしはイ・ウーに入ってこの力を手に入れた!あたしはこの力でもぎ取るんだ!!━━あたしを!」

 

 

真剣な面持ちで理子の慟哭を聞いているアリアとは対照的にキンジは何がなんだか分からないといった雰囲気だ。

 

 

「待て、待ってくれ、お前は何を言っているんだ?━━オルメスってなんだ、イ・ウーって何だよ?武偵殺しは本当にお前の仕業だったのか?」

 

 

「……武偵殺し?ふん、あんなのプロローグを兼ねたお遊びだよ」

 

 

理子は今度はアリアをジロりと睨む。

 

 

「━━本命はオルメス4世、お前だよアリア」

 

 

理子のその鋭い、獣のような眼にキンジとアリアは怯む。

 

 

「100年前の曾お爺様同士の戦いは引き分けだった。つまり今オルメスを倒せばあたしは曾お爺様を超えたことを証明できる!キンジぃ……、お前もちゃんと役割を果たせよ?」

 

 

「……や、役割?」

 

 

「代々アリアの家系にはパートナーが存在していた。ソイツには相方の、お前から見たらアリアの力を引き出す役割が必要なんだよ」

 

 

見てるだけなのも暇なので会話に参加する。

 

 

「ついでに言えばオルメスってのは━━」

 

 

「━━そこまでだ」

 

 

理子に制止された俺は肩をすくめて黙る。

 

 

「そういう訳だ、とにかく曾お爺様と戦った初代のオルメスには優秀なパートナーがいたからな。条件を合わせるためにくっつけたんだよ」

 

 

「俺とアリアを、お前が……?」

 

 

「そっ」

 

 

クスリ、と学校でのアホな理子っぽく笑う。

 

 

「コレとシージャック以外の今までの武偵殺しの事件で分かりやすく電波を流してたのもそういうことだろ?」

 

 

やっぱり暇なので口を挟む。この程度なら別に喋っても構わないはずだ。

 

 

「そうそう。……でも1つ誤算があったとすれば、バスジャックまでやったのにキンジがアリアとくっつききらなかったのは計算外だったの。理子が()()()お兄さんの話を出すまで動かないのは意外だった」

 

 

「そういやいつの間にか時計がズレてたな。あれは結構リスキーだったんじゃないか?俺やリサが部屋の時計以外の方法で時間を確認したら危なかっただろ?」

 

 

「峻稀ぃ、そんなに暇なら彼の相手してあげなよぉ」

 

 

「……彼?」

 

 

俺が眉を寄せると2階に続く階段から誰か知らないが男が1人降りてきた。

 

 

「━━━━!」

 

 

その姿を見た俺は驚愕する。

白地に薄い紫の柄が入った着物に鉄の胸当て、腰まで届きそうな長い銀髪にその端整な顔をした額には細い三日月模様が刻まれ両頬にはそれぞれ2本の爪痕のような模様がある。

そしてなにより異質なのはその身に纏う雰囲気だ。明らかに人間のそれではない。俺には分かる。アレは絶対に人間じゃない。俺と同類の存在だ。

 

そしてソイツはキンジたちが向けた銃など気にする風でもなくスタスタと俺の方まで歩いてきた。

 

 

俺も立ち上がり変化(へんげ)する。アリアが驚いた顔をしているが気にしていられない。

鋭敏になった嗅覚が捉える妖怪と人間の血が混ざった匂い。するとソイツはバキバキと指の関節を鳴らすとまだ俺まで2メートル近く距離があるのにも関わらずその鋭い爪を振るってきた。

 

 

「━━━っ!」

 

 

突然襲ってきたライトグリーンの鞭のようなものを左腕で受ける。しかしそれは俺の防弾制服を溶かしやがった。

ジュウッ!という音がして熱を帯びた左腕を見ると軽く火傷のようになっていた。……毒使いってことか。

 

 

「……誰だお前」

 

 

俺の問いにフンと1つ鼻で笑うとソイツは口を開いた。

 

 

「貴様が『犬夜叉』というのなら私は『殺生丸』とでも名乗っておこう。これは私の祖父の名だ」

 

 

「なっ!?殺生丸………だと…?」

 

 

「くふふふ、アリアぁ、こっちもそろそろ始めよっか」

 

 

それを聞いて我に返ったアリアと理子が戦闘を開始するのが見えたがこっちはそれどころじゃない。コイツが本当に殺生丸の子孫だとしたら、本気で俺たちがやりあったらこの飛行機が落ちちまう。

 

 

「安心しろ。飛行機は落とすなと言われている。そうなる前に貴様を殺す」

 

 

「そうかよ……っ!」

 

 

「……リサ・アヴェ・デュ・アンク、か。貴様にはもったいない女だ」

 

 

「……は?」

 

 

唐突に出てきたリサの名前に気が抜ける。何を言っているんだ?コイツは。

しかしその隙を見逃さずに殺生丸は瞬間移動の如く高速で俺に接近、手刀で腹を突き刺そうとしてくる。

それを俺は後ろに下がりながら外側に弾く。なんだ今の動きは!?

 

 

「テメェ、リサをどうする気だ」

 

 

俺が睨みながら訊くと殺生丸はもう1度指を鳴らして答える。

 

 

 

 

 

「知れたこと。貴様を殺してリサ・アヴェ・デュ・アンクは私の女にする」

 

 

 




またしばらくは更新できないかもです。スミマセン。
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