オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
2015.10.19 18:00頃 誤字修正 実を結ぶなかったが→実を結ばなかったが
その日、ジョンは第六階層の闘技場に仰向けに倒れて大きく息をついていた。
仮想世界である以上、本来そこまで疲れるものではないのだが、自分に出来る限界まで集中し続けたPVPは、思った以上に体力を消耗させたようだった。
「うーん、覚えてはいるけど戦闘中には思い出せないようですね」
ひっくり返ったジョンに困ったような声がかけられる。
アインズ・ウール・ゴウンの諸葛孔明の異名を持つ、ぷにっと萌えの異形のアバターがジョンを覗き込む。
「焦りは失敗の種であり、冷静な論理思考こそ常に必要なもの。心を鎮め、視野を広く、考えに囚われることなく、回転させるべきではありますが……。ジョンくんは集中力はあるのに思考が追いつかない? 集中し過ぎて一つの事しか考えられないと言った感じでしょうか」
ぷにっと萌えには、ジョンの頭では相手の初動を読むだけでリソースが尽きてしまうと言う事が、今一つ理解できないようだ。
珍しく困っているぷにっと萌えに代わり、先日、ワールドディザスターとなったウルベルトが、今までジョンと戦闘訓練と言う名のPVPを行っていたワールドチャンピオン”純銀の聖騎士”たっち・みーに、ジョンの動きの感想を聞く。
「たっち、直接やりあった感じはどうだ?」
「……一つ一つの動きは反復練習で身に着いてる。攻撃に対する受け、回避も的確です。けれど、数手先を読んで攻撃の組み立てが出来ていない。だから、フェイントを掛けるまでもなく、こちらの意図した流れに乗ってしまい最終的に詰んでいます」
悪い点を指摘する為だろうか。
いつもより歯切れ悪く、けれど対戦で自分が感じた点をきちんと話すたっち・みー。
とっさの判断力が…それよりも素直すぎる性格が…でも、私達は別に効率だけを考えてゲームをしてるわけじゃないんですから。
如何すれば良いか話し合うギルメンだったが、本人の能力によるところが大きい為、結局は勝敗だけが全てではないと落ち着こうとしていた。だが。
「たっち。たかがゲームだけど、それを決めるのはお前じゃないぜ? ……ジョン、お前はどうなんだ? たかがゲームに、お前は
「俺も強くなりたい」
上体を起こし、真っ直ぐにウルベルトを見つめるジョンの視線に、最強の悪の魔法使いを名乗る男は笑った様だった。
「じゃあ、先ずは認めろ。お前は弱い。頭も弱くて、俺やたっちのように数十手先を考えて戦えない」
「ウルベルトさん!」
だから、とウルベルトは制止の声も振り切って言葉を続けた。
1.大志を抱け。
2.目標達成の為の努力を怠るな。
3.失敗しても気にするな。
4.常に組織で行動しろ。
5.どんな時でも笑っていろ。
「これを常に考えろ。1は別に大きな目標じゃない。今回なら、たっちに右ストレートを当てるで良い」
「ああ、そう言う事か。そうだね、ジョンくん。たっちさんに右ストレートを当てるには防御を掻い潜るか、たっちさんが防御も回避も出来ない体勢にすれば良い。……ここまでは良いかな?」
ウルベルトの五か条に
つまり、どう考えるかの思考回路が出来ていないから、反復練習で考える回路を頭に造る。造る為に常に考えろ。一発の攻撃を当てる為に、どう動き、どう避けられたら、次はどうするのかを予め考えておけ。無数に考えておけば、それの何れかを使える場合もあるだろうと言う力業。
ぷにっと萌えに遅れて、それに気づいたたっち・みーが後を引き継ぐ。
「剣と盾を持った私に右ストレートを当てたいなら、振り下ろした腕が邪魔で盾が使えない位置に回避しつつ、自分は攻撃できる位置に移動する。私からすると何処に避けられると困るのかを最初に考えるんだ」
「戦闘とは他人がやられて嫌な事を、相手が動かなくなるまでやり続けるものだよ」
二人の言葉にジョンが頷くと、今度はたっち・みーが剣と盾を持っている側からすると、どうされると嫌なのかを動きを交えてジョンに説明し始める。
どう動き、どう回避して、そこに持っていくのかを話し合い。もう一度、その動きをなぞって組み手を行う。組み手ではあるが、今度は最後にジョンの拳がたっち・みーの鎧に届いた。
「あ、当たった」
やっと当たった拳を感慨深げに嬉しそうに見つめる人狼を微笑ましく眺めるぷにっと萌えとたっち・みー。
口の悪い自称最強の悪の魔法使いは、やれやれと肩をすくめて言った。
「後は常に考える癖をつける事だな。普段の生活、仕事で相手が何を考えているのか、何をされると嫌なのか。ジョンは覚えが悪いけど、何万回もやれば、パターンも増えて無意識に出来るようになるだろう……多分な」
ウルベルトさんは教え方が上手いですね。
教師に向いてるんじゃないですか?
誰があんなものになるかッ!!
その日からジョンは相手が何を思って戦っているのか想像しながら戦うようになった。
努力が芽吹き、実を結ばなかったが、それでもジョンは仲間の教えを真摯に愚直に守り通した。
数年を経て、それはようやく実を結んだ。
勝率1割を切っていたPVPは2割を超え、最終的には3割に届こうか言うまでになっていた。
彼は