オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ミャウルディア王国への襲撃/*/
カッツェ平原を覆う暗黒の雲は、まるで意志を持つかのように渦巻き、古の風が草原を裂く。天空から降り立ったのは、八欲王――世界の法則をねじ曲げ、秘宝を奪い尽くしたかつての覇者。その生き残りは、時を経て変貌したエルフの王として再び現れた。
王の瞳は深淵のように冷たく、万物を貪る欲望が渦巻く。軍勢は影のように静かに進み、折れ塔群の影を踏み越え、ミャウルディア王国の丘陵に迫った。
塔の上に立つミリヤは、猫の耳を微かに動かし、風に乗って運ばれる不吉な気配を嗅ぎ取った。しかし、小さき己にできることはほとんどない。
八欲王の軍勢は、天空都市から遠く離れたこの地を「弱者の楽園」と見なした。ミャウルディア王国の神秘的アイテムを略奪し、転移者の利益を阻む存在を一掃する――その意思は冷酷に、秩序をねじ曲げる破壊の旋律として降り注ぐ。
七つの塔は次々に崩れ、黒い煙が天を焦がす。中央ホールの天井は轟音とともに砕け、訓練場の魔力結界はひび割れる。地下迷宮の罠や結界も次々と無力化され、瓦礫の間からかすかな光が揺れる。
だが都市は、ただ破壊されるだけではなかった。壁や塔はねじれ、影が蠢き、時間の流れは局所的に歪む。破片の瓦礫が瞬間的に元の形に戻ったかと思うと、また砕け散り、都市そのものが呼吸するかのように膨張と収縮を繰り返す。
影の裂け目からは、見知らぬ形の幻影が浮かび上がり、空間の歪みに沿って奇怪な軌跡を描く。存在するはずのない声が風に乗り、瓦礫の間から無数の目が光を帯びてこちらを覗くかのようだ。
ミャウルディア王国の住人たちは逃げ惑い、ケット・シーの最後の生き残りであるミリヤは、秘術により自身を転移させるしかなかった。都市の奥深くに残された神秘は、八欲王の破壊の手をもってしても消え去ることはなかった。
八欲王の襲撃は、単なる戦争ではなく、時空をも歪める衝撃であり、存在の根幹を揺るがす災厄。折れ塔群や中央ホールに刻まれた生命の痕跡はすべて闇に覆われ、ミャウルディア王国は廃墟と化した。
だが伝説は消え去らない。ミリヤの生存、そして地下迷宮に眠る未発見の神秘は、未来の冒険者たちに謎と危険を残す――まるで世界そのものが、かつてここにあった小さな王国の存在を忘れさせまいとするかのように。
/*/カッツェ平原の呪われし伝承/*/
かつてミャウルディア王国があったその地は、八欲王の襲撃によって跡形もなく消え去った。だが大地は、王国の滅亡と生き残れなかった民の怨念を吸い込み、荒れ狂う魂の渦となって眠ることはなかった。
王国の丘陵や折れ塔の跡地には、かつての光景の残影が歪み、闇に沈む瓦礫の間から不自然な影が蠢く。風が吹くたび、草原のざわめきの中に、かすかな呻き声や足音が混じる――生きているものではない存在の声である。
人はこの地を、やがてカッツェ平原と呼ぶようになった。平原の名は、もはや王国の栄光ではなく、忘れ去られた怨念と死の螺旋を秘めた呪われた土地として伝わる。
土地を踏みしめる者の足元からは、時折、無数の目を持つ影が浮かび上がる。昼であろうと夜であろうと、死者の魂が渦巻き、かつての王国の悲痛な叫びを微かに伝えるのである。
冒険者たちは語る。あの平原に足を踏み入れた者は、時として正気を失い、迷宮のように変貌する大地の罠に絡め取られると――
ミャウルディア王国の怨念は、死の螺旋とともに大地そのものに宿り、永久に生者を拒むのである。
カッツェ平原は今も生きている。王国の消えた跡地に潜むアンデッドの群れ、歪んだ塔の残骸、そして土地に染み込んだ神秘の力が、訪れる者すべてに「滅びた王国の記憶」を刻みつける――世界の片隅に、忘れられぬ恐怖を留めるために。