オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ カルネ・ダーシュ村・集会所の庭先 /*/
穏やかな陽射しの下、干し草の香りが漂う庭先。
木のテーブルには素朴な茶器と、焼きたての菓子が並んでいた。
エンリはぎこちない笑みを浮かべながら、カップを差し出す。
「えっと……あの、どうぞ。村で採れたハーブを使ってるんです」
「わぁ……いい香り。少し甘くて、なんだか落ち着きますね」
ニニャは両手でカップを抱えるようにして、嬉しそうに微笑んだ。
「冒険の途中で、こんなお茶を飲めるなんて……ちょっと特別な気がします」
「へぇ~、あんたら案外いい趣味してんじゃん」
椅子に足を投げ出して座っていたクレマンティーヌが、鼻を鳴らす。
「ま、アタシにはちょっと物足りないけどねぇ」
「えっ……そ、そうですか……」
エンリはおろおろしながらも笑顔を取り繕う。
ニニャはそんな空気を和ませようと、ぱっと顔を上げる。
「でも……村の皆さん、とても穏やかですね。最近は、襲撃とかないんですか?」
「ええ。あの……“守ってくれる方々”がいますから」
エンリは少し照れくさそうに答えた。
「ふふっ、なるほどねぇ」
クレマンティーヌはカップを弄びながら、にやりと笑う。
「村娘と、小娘と、アタシ。ずいぶん変わったお茶会じゃない」
「……そ、そうですけど」
ニニャは少し頬を赤らめて、でも真っ直ぐに笑った。
「でも、たまにはこういう時間もいいと思います」
エンリは胸を撫でおろし、焼き菓子を差し出した。
「よかったら、これもどうぞ。村で一番人気なんです」
「ふふん……どれどれ」
クレマンティーヌは一口かじり、目を細める。
「……まぁ、悪くないじゃん」
三人の茶会は、奇妙で、けれどどこか温かな空気の中で続いていった。
/*/ カルネ・ダーシュ村・昼下がり /*/
素朴な木の机に紅茶と手作りの焼き菓子が並べられ、窓から入る陽光が柔らかに照らす。
エンリ、ニニャ、クレマンティーヌが肩を寄せ合うようにして座っていた。
エンリは頬を少し赤くし、カップをいじりながら口を開く。
「……あの、ちょっと……二人に相談があって……。ンフィーレアのこと、なんだけど」
ニニャはぱちりと瞬きをし、少女らしい素直な笑顔を浮かべる。
「えっ? ンフィーレアさんの? ……えっと……仲良しなことなら、素敵だと思うけど……」
「う、うん……そうなんだけどね」
エンリはもじもじとしながら、俯いて言葉を探す。
「夜のこと……その……もっと、して欲しいなって……思うんだけど、なかなか自分から言い出せなくて……」
「~~~っ!?」
ニニャの顔が一瞬で真っ赤に染まり、両手でカップを隠すように持ち上げる。
「そ、そんな……! そ、そういうお話……お茶しながら……!」
クレマンティーヌはというと、身を乗り出して愉快そうに手を叩いた。
「ははっ、アンタ案外積極的じゃん! いいねぇ、村の英雄様が夜は乙女みたいに悩んでるとか、最高だわ」
「も、もうクレマンティーヌさんっ……!」
ニニャが情けない声を上げるが、クレマンティーヌはにやにやと続ける。
「で? どこまでして欲しいわけ? 毎晩ぎゅーっと抱きしめられたいとか、もっと激しくして欲しいとか?」
「ちょっ……や、やめてくださいっ!」
ニニャは両手で耳まで押さえ、今にも蒸気を吹きそうに俯き込む。
エンリは恥ずかしさに身を縮めつつも、意を決したように呟く。
「……ただ、その……もう少し……私を女として見てほしいっていうか……」
「ふふーん、可愛いじゃん。アンタも思ったこと言ってみな。案外向こうも待ってるかもよ?」
クレマンティーヌの言葉に、エンリは小さく頷いた。
ニニャは顔を隠したまま、か細い声で呟く。
「……みんな大人なんだなぁ……わ、私にはまだちょっと……恥ずかしすぎるよ……」
お茶の香りに混じって、少女たちの甘酸っぱい空気が部屋いっぱいに広がっていた。
クレマンティーヌはカップを置き、身を乗り出してにやにやと笑った。
「ほほぉ~、なるほどねぇ……なら、こうすりゃいいんだわ」
「えっ……な、なにを……?」
ニニャが慌てて視線を逸らす。
「まずはね、相手の目をちゃんと見て、『こうしてほしい』って言うのよ。あとは……んふふ、手を握るとか、肩に寄り添うとか……」
クレマンティーヌは片手を自分の胸元にあて、色っぽく言葉を伸ばす。
「ひゃっ……ひゃああっ……!」
ニニャはカップを思い切り胸に抱え、顔を真っ赤にして声を震わせる。
「そ、それだけじゃ……」
エンリは小さくうなずきながらも、言葉が続かない。
「ふふん、続きはね……その夜の雰囲気で、自然にやるのが大事よ」
クレマンティーヌは目を輝かせ、楽しげに声を落とす。
「ん~、抱きしめるタイミングとか、ちょっとした甘い言葉とか……うふふ、あとは二人の気持ち次第!」
「……あ、あの……に、に、ニニャ……」
エンリが小声で呼びかけると、ニニャはさらに赤くなって、肩をすくめたまま俯く。
「え、えっと……そ、そういうのは、まだ……恥ずかしいですぅ……」
「ははっ、いいじゃんいいじゃん、乙女の恥じらいは見てるだけで楽しいのよね」
クレマンティーヌは椅子に深く腰掛け、二人のやり取りを面白そうに見つめる。
「……でも、ちょっとはやってみても……いいかも……」
ニニャが小さな声で漏らすと、エンリはにっこり微笑み、手を差し伸べた。
「……うん、ありがとう、ニニャ」
「え、えぇ……」
赤面した少女と、照れる青年、そして笑いを堪えるクレマンティーヌ。
その庭先には、ほんのり甘く、くすぐったい空気が漂っていた。