オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
ナザリック地下大墳墓、第九階層(ロイヤルスイート)の一室。
天蓋付きの馬鹿でかい寝台。永続光を間接照明に使った柔らかい光。落ち着いた雰囲気だが、贅を凝らしたロイヤルスイートの内装。ここはギルドメンバーの居住区にある寝室であった。
汚れのない真っ白いシーツの上に赤い髪の女が横たわっていた。ルプスレギナだ。むき出しの脚は褐色で、すらりと伸びたその脚は吸いつくように滑らかな肌だ。
男であれば誰でも触れたいと思うその肌に今触れている者がいた。
ルプスレギナと同じ褐色の肌を惜しげもなくさらけ出した上半身は裸で、見事に割れた腹筋に分厚い大胸筋。そこから続くぶっとい上腕筋がリズミカルに動いていた。ジョン・カルバインである。
「――あぁ」
無意識に漏れたと思われる塗れたような声は、静かな寝室では酷く大きく聞こえた。
自分の声に羞恥を感じたのか。持ち上がった繊手がシーツを掴み、声を耐えるように握りしめられた。
その間もジョンの手はルプスレギナのつま先から始まり、ふくらはぎ、膝裏、ふとともの外側、内側、そして丸みを帯びた臀部へと登っていく。臀部の微妙な部分を押し広げ、ぐっと揉み上げる動きにルプスレギナの手にも力が入る。
「ん――そ、そこはぁ――」
ルプスレギナの口から漏れた声に「ああ、ここがいいんだな」とジョンはもう一度、クリっと手を動かす。
「ああぁ――ッ!」
再び声があがる。今度はおとがいをそらして押さえきれない声を吠えるように、その身を襲う快楽を吐き出すように、声を上げた。寝室にルプスレギナのあられもない声が響いた。
「――大分、凝ってるじゃないか。農作業は疲れただろう?」
「ああぁ……そこ、気持ち良いですぅ……」
好奇心から農作業を手伝い。普段、使わない筋肉を使って疲れた果てたルプスレギナへの労りのマッサージであった。
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モモンガの自室兼執務室は豪華絢爛な調度品の数々が置かれ、毎日メイドたちに磨かれている。真紅の絨毯が敷かれている広い室内は、以前と違いメイドたちやジョンが出入りする回数が増え、以前の静寂のベールは薄れていたが、同時にモモンガの寂しげな空気も薄れているとアルべドは思っていた。モモンガ不在でも、ここで仕事が出来る喜びを噛み締めながら、アルべドは目の前のルプスレギナへ語りかける。
「え?食堂っすか?」
思わずアルベドに聞き返すルプスレギナ。モモンガの執務室でアルベドが語った内容はこうだ。
最近、一般メイドの従業員食堂での食事の消費量が計算よりもかなり多く。至高の御方々が定められた収支バランスが狂っている。由々しき事態だ。
その原因の調査をルプスレギナへ任せる、と。
/*/ ナザリック時刻7:14
「ル、ルプスレギナさん!」
「驚かせないで下さいよ。もー」
突然真横からかけられた声にシクススたち3人のメイドは飛びあがって驚いた。
一瞬前まで誰もいなかった筈の場所に、眼を逸らしたほんのわずかな隙にルプルレギナが出現したのだ。足を組んで椅子に横座りし、テーブルにはご丁寧に自分の分の食事まで置いてある。
「心臓が口から飛び出るところでしたよ」
フォアイルに抱きつかれたままリュミエールが放心したように呟く。
「にっしっし。村で実験した甲斐があったっす」
テーブルに頬杖をつくルプスレギナは、物語に登場する猫のようにニヤニヤ笑いを浮かべる。意地の悪そうな笑い方だが、それが妙にチャーミングに見えると、シクススは戦闘メイドの笑顔に見惚れた。
「ホントにな」
もう一度、横合いからかけられた声に、今度はシクススたちだけではなくルプスレギナまでが飛びあがって驚いた。
「ジョン様!」
「カルバイン様!」
ドキドキの収まらない胸を両手で押さえ、ルプスレギナは声の主へ振り返った。そこには先ほどまで私室で朝食の世話をしていたジョンの姿があった。ナイフとフォークを持ち、ルプスレギナの3倍はある食事を前にしている。
「ルプーで練習した甲斐があったな」
「ひどいっすよー」
表情のわかり難い狼頭に悪戯っぽい表情をジョンは浮かべる。不敬かもしれないが、悪戯の成功した子犬ように邪気のない笑いだと、シクススは至高の御方の笑顔に見惚れた。
ジョンはかぶっていた完全不可知化の能力を持つ《姿隠しの兜》をテーブルに置くと、モグモグと気持良い食べっぷりで食事を再開する。
「なにしてるっすか?」
「ん?食事」
「……朝ご飯、足りなかったっすか」
ジョン専属で奉仕しているにも関わらず食事が足りないなどメイドの名折れとルプスレギナが問いかけるが、当の本人は深い事を考えていない。
「いや、一般メイドの食事風景を見てみたくて……ただ見てるだけだとお腹すくから、ついな」
「ジョン様、食いしん坊っすからねー」
ジョンの言葉にがっくりと肩を落とすルプスレギナだったが、周囲のメイドたちは至高の御方に友達距離感のルプスレギナにハラハラしっぱなしだ。
ジョンの出現に食事どころではなく従業員全員総立ちになる。ジョンが行儀悪くフォークを咥えたまま、手で座るように促す。それに従いメイドたちが着席していくと、人ごみの中から白いドレスに黒い翼の美女が現れた。その女性、アルべドはジョンの席へ近づきながら口を開いた。
「やはり、そうでしたか」
「アルベド?」
「アルベド様!」
守護者統括の姿に訝しげな声をあげるジョン。ルプスレギナとシクススたち一般メイドは再び驚きの声をあげる。
歩み寄ったアルベドは美しい眉を残念そうに八の字にしながら言葉を続ける。
「ルプスレギナを送り込めば姿を現して下さると思っておりました。いちいち完全不可知化まで使わないで下さいませ。モモンガ様の定められた美しい収支バランスが崩れてしまいます」
「普段の姿みてみたかったんだ……俺、そんなに食った?」
黙ってマスターソースの画面の写しを見せるアルベドだった。
「……思ったより食べてたな。わかった。俺のポケットマネーから出しとく。あ、それならオムレツ食べてみて良いか?」
完全不可知化つかってると男性使用人に頼めないから食べられなかったんだと、ジョンは笑った。