オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
ナザリック地下大墳墓へ強制就職したクレマンティーヌの戦闘実験が一通り終わり、訓練もマンネリかも、と思い始めた頃だった。
クレマンティーヌの言うところの神獣様――ジョン・カルバインが、その変な全身鎧を持ってきたのは、まさにそのタイミングだった。
白と黄色を基調とした、身体にぴったりと密着する全身鎧。腹や背中は半透明で、下の肌が透けて見えるつくりになっている。柔らかな曲線と鋭いラインが混ざり合い、戦闘用としてだけでなく、視覚的にも強烈な印象を与えた。
正直に言えば、普段のビキニアーマーより恥ずかしい。いや、比べ物にならないほどに羞恥心を刺激するデザインだった。
「……これを、着ろって、言うのかぁ」
内心で遠い目をしているクレマンティーヌをよそに、ジョンの説明が続く。
「クレマンティーヌ。こいつの起動キーは、Croitzal ronzell gungnir zizzl。意味は〈人と死しても、戦士と生きる〉だ」
──嘘である。別に聖詠など唱えなくても、普通に装備すれば問題はない。しかし、わざわざ速攻早着替えの起動キーに設定したのだ。効果も派手だし、心理的にも高揚させる演出になっている。
ジョンは静かに、だが悪魔のように囁いた。
「使ってみろ。これは逸脱者への扉だ。開けば、お前を遥か高みへ連れて行ってくれる翼……番外席次とも互角の勝負ができるだろう。勝てるかどうかは……お前次第だ」
──それも嘘である。装備と素のレベル差を考えれば、良くて3対7(もちろん、クレマンティーヌが3である)と見積もっていた。
だが、こういうときに大切なのは気持ちだ。最初から負けると思って挑めば、どんな戦闘も勝てない。
勝てるかどうかは自分次第……と煽られれば、心は自然と燃え上がる。否、燃え上がらない戦闘者などいるはずがない。
ゴクリ、と喉が鳴る。微かに震える手が、全身鎧に触れる。
「……Croitzal ronzell gungnir zizzl」
声は震えていたが、勇気も滲む。聖詠のように呟くその言葉に、パワードスーツS型(通称:魔法少女タイプ)が反応する。
瞬間、光の奔流がクレマンティーヌを包み込み、服と鎧が一瞬にして入れ替わった。身体にぴったりと吸い付く鎧は、柔軟さと防御力を両立させ、彼女の動きを妨げない。
同時にジョンの声が轟く。
「今よりそなた、その血を我らに捧げよ!! 唯一アインズ・ウール・ゴウンを主とし、唯一我らにその忠誠を誓え!! その見返りとして我らが与えるは、最高最強の地位と装備と名誉と快楽!! 力と恐怖!!」
耳に響く大音声と、胸に湧き上がる鼓動。クレマンティーヌは恐らく生まれて初めて──強要でも調教でもなく──己の意志で頭を垂れた。
「……誓います。私の信仰を、至高の御方々へ捧げます」
その瞬間、クレマンティーヌの視界が一変した。鎧の半透明部分から光が漏れ、身体が宙に浮いたような感覚が広がる。力が漲り、世界のあらゆる音が鮮明になる。戦闘者としての本能が目覚め、心臓の鼓動が未来の勝利を予告するかのようだった。
──これから始まるのは、ただの訓練ではない。己の限界を超え、神獣と肩を並べるための戦いだ。
クレマンティーヌの瞳に決意が宿る。全身鎧を身に纏ったその姿は、かつての彼女とはまるで別人のように凛々しかった。