オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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ミ=ゴとの遭遇

 

 

/*/ アゼルリシア山脈・放棄鉱山 /*/

 

 

風が断崖を駆け抜け、鉱山の入り口には長年放置された錆びた鉄扉が残っていた。

ジョンとモモンガは装備を整え、慎重に足を踏み入れる。

 

「ここか……以前の冒険者たちが行方不明になった鉱山は」

ジョンが低く呟く。

 

薄暗い坑道の奥、壁面にはかつて掘削された跡が残り、空気にはかすかな金属の匂いが漂う。

「……普通の鉱山なら、ここで鉱石を採掘するだけだが」

モモンガが目を細める。

 

奥へ進むと、突然、岩陰から小さな異形が現れた。体長150cmほど、一見甲殻類のような外見だが、3対の手足には鋭い鉤爪がついている。

そのうちの一対を使って歩行し、背中には宇宙空間を飛行できる羽をたたえている。

 

頭部は渦巻き状の模様に覆われ、多数の触角が動き、色を変えてまるで会話しているかのようだ。

光の加減によって微かに虹色に輝くその頭は、言葉ではなく色彩で情報を伝達しているらしい。

 

「……これは……」

ジョンが声をひそめる。触れることはできるが、写真に写らないという不思議な存在。地球の生物学では説明できない菌類に似た体組織を持ち、しかし構造は完全に異なる。

 

「冒険者たちがここで行方不明になったのも……納得だな」

モモンガが周囲を警戒しつつ、静かに杖を構える。

 

異形は羽を広げ、鉱山の天井をゆらりと漂う。大気圏内での飛行はまだ未熟らしく、宙を滑るように不安定に移動する。

触角が振動するたび、坑道内に奇妙な低音が響く。

 

「……これは外宇宙からの外来種、ミ=ゴ……か」

ジョンの目が光る。

「危険だ。相手は知性を持っており、触覚や羽で空間を把握している。無闇に近づけば――」

 

その時、背後の坑道からかすかな物音。

冒険者たちの行方不明は、偶然ではなく、このミ=ゴの縄張りと接触した結果であったのだろう。

 

ジョンとモモンガは互いにうなずき、慎重に距離を取りつつ進む。

「写真には写らない……観察だけでは不十分だな。直接接触は避けつつ、データ収集が最優先」

「了解……でも、この存在、生理的に理解できない……」

 

羽の動き、触角の色彩変化、そして鉤爪の機敏な動き――

鉱山の闇の中で、未知の知性が静かに二人を観察していた。

 

 

/*/ アゼルリシア山脈・放棄鉱山 /*/

 

 

ジョンは鉱山の奥で、黒光りする甲殻を持つミ=ゴを見据え、冷たく声を落とす。

「ここは魔導国の領地だ。勝手に採掘基地を作るな」

 

ミ=ゴの触角がわずかに振動し、頭部の色が変化する。

ゆらりと浮かぶ背中の羽をたたみ、低く唸るような声が坑道に響く。

その口調は人間の言葉に擬態されており、まったく違和感がない。

 

「貴国の鉱山を侵す意図はない。我々は鉱石資源の取引を望むのみだ」

ミ=ゴの色彩変化に伴い、言葉が明瞭に響く。ジョンは眉をひそめる。

 

「……貴様ら、人間を滅ぼすことは容易だろう?」

ジョンがさらに踏み込むと、ミ=ゴは静かに頷く。

「そうだ。しかし、我々はプライバシーを侵す者以外には無関心だ」

 

モモンガが小声で囁く。

「つまり、人間社会にスパイを潜ませ、監視している……ってことですか」

 

「その通りだ。スパイは本物の人間に擬態しており、言語や習慣に不慣れな素振りを見せることもあるが、違和感はない」

ジョンは鉱山の影に漂う静けさを感じ取り、慎重に視線を巡らせる。

 

ミ=ゴはさらに言葉を続ける。

「もし我々の存在が知られ、より多くの人間に公開されようとするならば、積極的に介入する。干渉を排除するのは合理的行動だ」

 

ジョンは背筋を伸ばし、冷ややかに応じる。

「勝手に人間を巻き込むな。こちらも必要ならば、力で介入する」

 

鉱山の闇の中で、異形と冒険者の間に緊張が張り詰める。

触角の動き、羽の揺れ、甲殻の光沢――ミ=ゴの存在は、理性と戦略に満ちた外宇宙の知性そのものだった。

 

「……さて、取引については、条件次第だな」

ジョンは手を胸に置き、冷静に交渉の態勢を整える。

ミ=ゴは静かに頷き、鉱石資源の取引と、互いの領域を尊重する取り決めを交わす準備を始めた。

 

外見は異形でも、理性と合理的判断を備えた彼ら――人間社会に密かに潜む監視者としての側面が、ここに明確に示された瞬間だった。

 

 

/*/ アゼルリシア山脈・放棄鉱山 /*/

 

 

鉱山の奥、ジョンとモモンガは、黒光りする甲殻を持つミ=ゴと対峙していた。

 

「ここでの取引条件を確認する」

ジョンが静かに声を落とす。

 

ミ=ゴは背中の羽を揺らし、頭部の色彩を変化させながら応答する。

「ナザリックは鉄、銅、金、銀、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトを提供する。代わりに、この大陸では入手困難な七色鉱を供給する」

 

ジョンは頷き、手を組む。

「わかった。ナザリックの資源を輸出し、七色鉱を輸入する形で取引する」

 

モモンガがふと眉をひそめる。

「そして、失踪した冒険者たちは……どう扱われる?」

 

ミ=ゴは触角を揺らし、低く唸るように答える。

「脳缶として保管されていた者たちは、身体を複製して変換する形で返還する。元の体とは異なるが、意識は保持され、動作も可能だ」

 

ジョンは腕を組み、冷静に確認する。

「つまり、脳缶化された冒険者の意識はそのままに、肉体を再構成して魔導国側に引き渡す、ということだな」

「その通り。再構成体は戦闘や作業も可能であり、精神的な影響も最小限に抑えられる」

ミ=ゴの合理的かつ冷静な判断は、まるで人間のように整然としていた。

 

取引内容は明確だ。

 

ナザリック → 鉄、銅、金、銀、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトその他レアメタル、レアアースを輸出

 

ミ=ゴ → 七色鉱を輸出、脳缶化された冒険者を複製・変換して返還

 

鉱山の闇に漂う異形の気配は緊張感を放ちながらも、合理的な契約に基づく秩序が支配していた。

ジョンとモモンガは互いに目を合わせ、慎重に交渉をまとめる。

 

――外宇宙の知性と、ナザリックの交易戦略が交わる瞬間。

冷徹で計算された取引は、両者にとって最も安全かつ効率的な方法だった。

 

 

/*/ エ・ランテル 復帰室 /*/

 

 

鉱山で複製・変換された冒険者たちが、エ・ランテルに戻される。

しかしその姿は以前とはまったく異なっていた。

 

「……な、なにこれ……」

元々中年の男性だった冒険者たちは、全員少女の姿になっていた。手足の細さ、体つきの変化、声の高さ――すべてが違う。目を見開き、戸惑いの声が漏れる。

 

モモンガが静かに状況を観察する。

「……これはミ=ゴによる複製体の変換だな」

 

複製された冒険者の一人が鏡をのぞき込み、声を震わせる。

「お、おれが……女の子に……?!」

「いや、どういうことだ……?」

驚きと混乱で部屋はざわつく。

 

その場に現れたミ=ゴは、触角を揺らし、低く説明する。

「捕獲した冒険者の潜在意識を解析した結果、求めている同種の姿に変換した。悪意はない。合理的判断による」

 

ジョンは眉をひそめる。

「……潜在意識に基づく、って……どういう意味だ?」

 

ミ=ゴは無表情のまま答える。

「我々には性的欲求はほとんど存在しない。故に、潜在意識における“性的に求める姿”と“自己認識の姿”の区別がつかなかった。その結果、冒険者たちの望む同種の姿を反映した」

 

冒険者たちは唖然とする。

「つまり……俺たちが潜在的に“欲しい”と思った姿が、そのまま現実になった……ってことか……」

「自分の認識と欲求が混ざって、女の子になったってことか……」

 

モモンガは冷静に言う。

「形状や性別が変わっても、戦闘能力や魔力制御には影響はない。訓練や任務もそのまま可能だ」

 

冒険者たちは困惑しつつも、剣を握り、魔法を詠唱する手を確かめ、身のこなしを調整する。

「……動く……動けるぞ……!」

「う、うん……戦える……」

 

ミ=ゴは背中の羽を微かに揺らし、無表情で観察を続ける。

「変換は合理的・安全な方法による。感情的な不快感は人間の心理次第であり、我々の判断に影響はない」

 

冒険者たちは新しい身体に慣れながら、エ・ランテルの訓練場や日常業務に復帰する。

戸惑いと驚きの中で、新たな自分として戦う冒険者たち――

外宇宙の知性、ミ=ゴによる合理的変換がもたらした、異形と理性の交錯の瞬間であった。

 

 

/*/ エ・ランテル 日常/*/

 

 

エ・ランテルに戻った冒険者たちは、少女の身体に戸惑いながらも日常生活に復帰していた。

「はぁ……やっぱりこの身体、慣れねぇ……」

元中年男性の冒険者・ハルトは鏡を見つめ、身体の細さや柔軟さに困惑する。しかし無意識に身体を動かしてみると、以前よりも動きが俊敏で、筋力も不自然なほどに増していることに気づく。

 

エルダーリッチが横から評価する。

「……身体性能が向上しているな。筋力、敏捷性、耐久力が平均以上に上がっている。冒険者ランクも自動的に上昇するだろう」

 

通りかかった後輩の男性冒険者に、ふとした仕草で微笑みかけてしまうハルト。

無意識に男性目線の行動をとるが、その俊敏な動きは新しい身体性能によってより魅力的に映る。

「……え、えっ……?」

後輩は赤面し、思わず告白。ハルトは慌てて手を振るが、身体性能の向上に伴う無意識の動きで、さらに状況が混乱する。

 

 

/*/ 訓練場・戦闘中/*/

 

 

戦闘演習では、身体性能向上の影響が顕著に現れる。

少女化したハルトは軽やかに敵を避け、反撃も素早く正確になっている。

「ちょっ……待て! 俺は……いや、私は……!」

無意識に身体を動かすたび、以前よりも戦闘効率が上がり、元男性の意識とのギャップに困惑しながらも、仲間から感嘆の声が上がる。

 

別の冒険者・ケインも、身体性能向上の効果で魔法の詠唱速度や範囲が伸び、戦闘中に無意識で女性らしい立ち回りをしてしまう。

「おいおい、そんな格好で前線に出るなよ!」

仲間から突っ込まれるが、動き自体は以前よりも優秀で、戦術的に有利になっていた。

 

 

/*/ 食堂/*/

 

 

食堂でも新しい身体の影響は顕著だ。

元男性たちは細身になった手足で皿や食器を扱うが、俊敏な動きで倒れた皿を瞬時に拾い上げる。

「おっと……あれ、箸が……!」

倒れた皿を拾おうとした拍子に隣の少女冒険者にぶつかるも、反射的に身をかわす。押し倒されるが反撃も素早く、日常でもドタバタしながら効率的に動ける。

 

モモンガは遠くから観察する。

「……身体性能の向上により、潜在能力が現実化したか。冒険者ランクの自動上昇も納得だ」

 

冒険者たちは困惑しつつも、新しい身体の性能を徐々に活かしていく。

戸惑いと驚きの中で、日常も戦闘も、以前よりも高度かつユーモラスなドタバタが続く。

エ・ランテルの街や訓練場では、新しい身体と潜在意識のギャップによる笑いと驚きが交錯する光景が日常化していた。

 

 

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