オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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農業会議と蜜蝋キャンドルと昼寝

「農地を小さくまとめよう」

 

リーダーの提案に相談役とエンリは首を傾げた。確かに今の人数では元の面積を耕作する事は出来ないが、あまり小さくしてしまうと来年以降の食料がなくなってしまう。二人の疑問にリーダー、ジョン・カルバインは答える。

 

「ダーシュ麦(大麦型、小麦型)が取り敢えず出来たんだ。収穫までの時間が3カ月と当初の予定より短いんだけど、一緒に品種改良した「かぶ」と「クローバー」と合わせて1年で四輪作法を1周できる。1年で4回収穫できるから、小さくても大丈夫」

 

分数が通じないエンリと相談役に対して、黒板にイメージ図を書いて説明するジョン。

 

「そう。これだけの面積で今まで同じだけ収穫できるから……忙しくなるけど…。少し余裕を持って広めで耕作して。空いた耕作地でエ・ランテルとかで売れる作物を作ろう」

「現金収入が出来るのは良いですね。ゴーレムやスケルトンをいつまでも無料でお借りしてるわけには行きませんし……」

 

警備をしてくれるジュゲムたちの装備も買いたいとエンリは言う。それを良い心がけだと笑顔で聞きながら、ジョンは続ける。

 

「森の方は俺たちもマーキングしてるから、そうそう危険な獣はよってこないと思うよ」

「マーキング?ですか……」

 

聞きなれない単語に首を傾げるエンリ。

 

「そ。木に爪跡を付けたり、おしっこで臭いを付けたりして、獣同士で「ここは俺の縄張りだから入ってくるな」ってするの」

「カルバイン様たちがやれば、危険な獣はよってこないですね!」

「まーね!」

 

エンリの賛辞にふふんと胸を張って答えるジョンであった。

 

 

/*/

 

 

トブの大森林は、森は、人間の領域ではなかった。

モンスターが跋扈し、危険な獣も多い森の中は狩人でも深くまでは入れず、以前は時期を見て危険を冒して薬草を取りに入るのが精一杯だった。それとて深くまで入れないので対した量は取れなかったのだが。

 

今は村に強大な守護神がついたこともあり、森の辺を今までになく活用できるようになった。

 

木を間伐し、地面に光が届くようにし、どんぐりが多く採れる地域にブタを放し飼いにした。間伐材は薪にし、どれを間伐すれば良いのかは引っ越してきたドライアードたちが教えてくれる。木に光が届き、土が良い状態を保っているかも彼女たちが教えてくれる。村人たちは彼女たちの世話を焼き、代わりに森の恵みを頂くのだ。

 

迷子の子供を彼女たちが見つけ、保護してくれたのも村人たちとの関係構築に役立った。

 

樹木故に……話が単調なのに長いのが唯一の欠点だろうか。唯一、ピニスンが話してくれるジョンとルプスレギナの大冒険(第三部参照)が子供たちに人気だった。

 

そんな彼女たちの守る森の木陰を使わせて貰い。今まで村では出来なかった養蜂も始める事が出来るようになった。

 

/*/

 

ミツバチの巣を確保する為に、チーム時王たちが小さなミツバチを巣まで追い掛け、ハチに襲われながら巣を掘り出して巣箱に入れてくれたものである。……時王たちのLv的にミツバチの針なんて刺さらないので、防護服無しでも危険はなかった。

 

遠心分離機がまだないので、巣ごと頂くコムハニーがメインだった。ハチの巣のかけらが口に残る独特の食感は好き嫌いが分かれるところであるが、エンリは気に入ったようだった。

 

そんなミツバチの巣をジョンは今、大きな鉄鍋で溶かしていた。

 

「ジョン様、何をしていらっしゃるですか?」

「ああ、ルプー。ディッピングって言ってな。糸の周りに蜜蝋をつけて、キャンドルにするんだ」

 

ひょこっとジョンの手元を覗きに来たルプスレギナへ楽しそうにジョンは答える。

蜜蝋蝋燭は煤や黒煙を発生させずに、ゆっくりと燃え、ほのかな甘い香りがする。温かなオレンジ色の炎は、食事の色をより美味しく見せてくれると言う。

ゆっくりと、繰り返し糸を浸し(ディッピング)ながら説明を続けるジョンだったが、好奇心にキラキラとしている金色の瞳に思わず穏やかな笑いが零れる。

 

「ルプー。お前もやってみるか?」

「やるっす!」

 

二人で、ゆっくりと、糸を繰り返し浸す姿が、その日はみられたと言う。

 

 

/*/ ナザリック時刻12:02

 

 

ナザリック地下大墳墓第九階層ロイヤルスート。モモンガの執務室では午前の執務を終えたモモンガが肩を回していた。この体に凝るような肉は無いが、なんとなく凝りがほぐれるような気がするのだ。

 

「……お肩をお揉みいたしましょうか?」

「いや、アルベドよ。それには及ばない」

 

揉むようなところないだろうと思いながら、モモンガはアルベドに気遣いは無用だと答える。今日の予定を思い起こし、間違いがないかアルベドへ確認する。

 

「この後の予定はどうなっていたかな?」

「はっ。15時よりコキュートスがリザードマン統治についての報告に参ります。18時にはエ・ランテルにて冒険者モモンとしての……」

「ふむ。少し時間が空くな……どうしたものかな」

 

飲食不要、睡眠不要の身体に加えて、ブラック企業で勤務を続けられる社畜根性で、どうしても空いた時間に何かしなければならないと考えてしまうモモンガだった。

 

「では、〈自己変身の指輪〉で人化して食事に致しますか?」

 

アルベドの提案を検討してみる。飲食不要の身ではあるが〈自己変身〉の魔法を使えば食事を楽しむ事も出来るが、時刻は既にお昼。急に自分が割り込んでは料理長も大変だろう。

 

「それはまた今度にしよう……アルベドは、食事は良いのか?」

「私は〈飲食不要の指輪(リング・オブ・サステナンス)〉を頂いておりますし……出来れば、その、食事はモモンガ様とご一緒に取りたいと思います」

 

その言葉にそう言えば主要なNPCには維持コスト低減の為に〈飲食不要の指輪(リング・オブ・サステナンス)〉を持たせていたなと思い出し、自分と食事を取りたいともじもじするアルベドを可愛いものを見るように眺める。もう一度、考え、精神作用無効を発動させながら、それを口にした。

 

「それでは……アルベド。お前が良ければ、膝を貸して貰えないだろうか」

「!!どうぞ!存分にお使い下さいませ!」

 

ぱっと大輪の花が咲いたように表情を綻ばせると、黒い羽根をパタパタと喜びに振りながら、ソファーに腰掛け膝を差し出すアルベドに苦笑しながら、モモンガは〈自己変身の指輪〉を嵌めると発動させた。

 

/*/

 

アルベドのふとももは柔らかく、温かく、それでいて、しっかりとした芯があった。その感触を後頭部に感じながら、モモンガはソファーに横たわっていた。以前の至高の晩餐会から、時折、アルベドに膝枕をして貰っていた。アルベドから強請る事も有れば、今日のようにモモンガから頼む事もあった。

 

「……昨夜はお眠りにならなかったのですか?」

「ん。少しばかり読書が捗ってしまってな」

「いけません。少しでもおやすみならないと、カルバイン様が心配なさりますよ」

 

〈自己変身の指輪〉で人化して眠れとは、ジョンに良く言われている事だが、ついつい支配者ロールの為の読書に精を出して眠る事を忘れてしまう。

 

「……そうだな。このまま、少し眠らせてくれ」

 

疲れなど無縁の身体になった筈だが、精神は疲れを感じるのか?それとも誰かの温もりが眠気を誘うのか?何れにせよ。モモンガの午後の時間は、静かに、穏やかに、流れていった。

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