オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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未知なる世界を夢に求めて

 

 

/*/ナザリック地下大墳墓第9階層 モモンガの執務室/*/

 

 

朝。モモンガとジョンは、新聞代わりに報告書を読みながら、日課のルーティンをこなしていた。

 

「蒼の薔薇が、地下下水道の横穴探索の依頼を受けて、地下から夢幻郷に突入したようですか」モモンガが淡々と読み上げる。

 

ジョンは目を細め、報告書の内容を思い出しながら答える。

「夢幻郷……星が夢見る世界でしたっけ? ああ、タブラさんGMのゲームであったやつだな」

 

モモンガが続ける。

「この星も夢見る者が多いから、現実に存在してもおかしくない、と」

 

ジョンが少し笑って呟く。

「それにしても、ラキュースが本当に喜んでそうだな……“夢幻郷はホントにあったんだ!”って叫んでいそうだ」

 

モモンガも微笑む。

「仲間たちは呆れるでしょうね。無邪気すぎるのも考えものです」

 

ジョンが眉をひそめる。珈琲をテーブルに置く。

「蒼の薔薇たちは、食べたら戻れないかも、と疑って戻ってきたようです。慎重だな」

 

「でも、実際にはそんなことはなかったそうですよ」モモンガが答え、机上の報告書を揃える。

 

「探索できる範囲が一気に増えましたね」ジョンが微笑む。

「転移で直接行けないのは少し手間ですが……他の転移手段も試すべきでしょうね。私たちも一度潜って転移を試せるようにしなければ」モモンガが静かに提案する。

 

ジョンが冗談めかして付け加える。

「いやー、蒼の薔薇もイビルアイも真面目すぎるな。ラキュースみたいな無邪気さがあれば、もっと楽になるかもな」

 

モモンガは目を細めながらも微笑む。

「無邪気さは便利ですが、危険な世界では油断の元にもなりますから……程々にですね」

 

二人は書類を整理しながら、夢幻郷の存在と、それに伴う新たな任務の可能性に思いを馳せた。安堵と緊張、仲間たちの個性が交錯する朝のひととき――次の冒険への静かな伏線が、ここに刻まれていた。

 

 

/*/エ・ランテル・地下下水道・横穴/*/

 

 

ジョンとモモンガは、湿った空気と鉄の匂いの漂う地下下水道の横穴を下に進んでいた。途中、奇妙な気配が二人の耳に届く。

 

「ジョンさん、こいつら……アンデッドじゃないですよ。私の〈アンデッド感知〉に引っかからない」モモンガが注意深く呟く。

 

「俺の〈生命力感知〉には引っかかるな。生きてる……やつらか」ジョンが前を見据える。

 

突然、陰の中から数体のグールが現れ、二人に襲いかかる。素早く拳を構え、ジョンは間合いを取りつつも冷静に対処する。

 

「次の機会には何匹か調査用に捕まえましょう」モモンガが素早く状況を分析する。

 

「了解」ジョンは頷く。

 

進むにつれ、空間の感覚が微妙に変化する。

 

「ああ……なんか境界面がありますね」モモンガが空間を指差す。

 

「転移、上位転移、転移門、次元の移動……試してみましょうか」ジョンが提案する。

 

二人は順に試すが、境界面を越えられたのは「次元の移動」だけだった。

 

「興味深いですね……」モモンガが感嘆の声を漏らす。

 

ジョンは腕に光る装置を触れる。

「あ、モモンガさん。俺の“ヨグ=ソトースの腕輪”で転移門を試してみる。ヨグ=ソトースは世界の外側にいる、あらゆる次元、世界に通じてるって設定のアイテムだから……ひょっとして」

 

「なるほど、試す価値はありますね」モモンガがうなずく。

 

腕輪を起動すると、青白い光が二人を包み込む。

 

「転移門……転移、成功」ジョンの声と共に、空間は柔らかく歪み、二人は新たな領域へと足を踏み入れた。

 

 

/*/未知の次元空間/*/

 

 

青白い光が消えると、二人を包んでいた湿った地下水の匂いは消え、代わりに澄んだ空気と淡い光が広がる不思議な空間が現れた。足元には無数の浮遊する岩片や、微かに輝く水晶の柱が散らばっている。空間そのものが微妙に歪み、重力も通常とは異なる感覚だ。

 

「……ここは……」モモンガが息を呑む。「完全にこの世界とは別の次元ですね。〈アンデッド感知〉も〈生命力感知〉も、正常に作動しません」

 

ジョンは腕輪を確認しつつ、慎重に足を進める。「なるほど……ヨグ=ソトースの力で来られたとはいえ、感覚が狂うな。生き物の存在も把握しにくい。蒼の薔薇とは違うところに入り込んだな」

 

遠くで、かすかに動く影が見えた。

「誰かいる……いや、生命の概念すら我々とは違うのかもしれません」モモンガが眉を寄せる。

 

その瞬間、空間の奥から光の帯が伸び、微細な粒子が渦巻く。粒子はまるで意思を持つかのように二人の周囲を旋回し、形を変えながら小さな生物のように動き出した。

 

「……攻撃してくるのか?」ジョンが拳を構えるが、粒子たちは直接的には危害を加えず、感覚に微細な不安定さだけをもたらす。

 

「まるで、空間そのものが生きているようです……」モモンガが分析魔法を発動する。「ここでは通常の戦闘概念は通じませんね」

 

ジョンは腕輪を握り直す。「なら、探索重視だ。慎重に進む。何か境界の突破や次元の扉があるかもしれない」

 

二人は互いに距離を取りながらも、未知の次元空間を少しずつ進み始める。光の柱の合間を縫い、浮遊する岩片の間を跳び越え、まるで現実の物理法則とは別のルールの中を探索しているかのようだった。

 

「ここで何か発見できれば、エ・ランテルの地下下水道や世界の構造に関する重大な手がかりになりますね」モモンガが静かに言う。

 

「……ああ、油断はできない。だが、ワクワクするな」ジョンの目が光った。

 

その先、淡く輝く空間の奥に、不気味なほど静かな扉のようなものが現れる。次元の境界を示すそれは、まるで呼ばれるかのように微かな振動を放っていた。

 

「……行くか、モモンガさん」ジョンが剣を構えながら言う。

 

「ええ、慎重に、でも確実に」モモンガも身構える。

 

二人は次元の扉へと一歩踏み出した――

 

 

/*/次元の扉の先/*/

 

 

扉を越えると、空間はさらに異質な様相を呈していた。重力が一定でないため、足元の岩片はゆっくりと浮遊し、二人の動きに合わせて微かに回転する。空気には甘く、ほのかに金属のような匂いが混ざり、色彩は青と紫のグラデーションで満たされている。

 

「……これは……想像を絶する世界ですね」モモンガが感嘆する。「物理法則も時間の流れも、こちらの世界とは違う」

 

遠くに、異形の生物の群れが見えた。だが、彼らはアンデッドでもグールでもない。透明に近い体を持ち、光を吸収して漂う存在だ。生きているのか、それともただ空間の残像なのか――ジョンの〈生命力感知〉も反応しない。

 

「……逃げる必要はないか。だが、観察は慎重に」ジョンが剣を軽く構える。

 

一歩踏み出すと、浮遊する岩片の一つが微かに振動し、空間に共鳴する波紋を広げた。その波紋が辺りの粒子を振動させ、生物の群れは一斉に形を変え、渦のように動き出す。

 

「モモンガさん……空間そのものが意思を持っているみたいです」ジョンが言う。

 

「ええ、まるでこの世界は生きていて、私たちの存在を探っているようです」モモンガは冷静に観察する。

 

すると、不意に微細な光の柱が二人に向かって伸び、空間を裂くように回転する。ジョンは腕輪を握り直す。「この腕輪……ヨグ=ソトースの力を使えば、影響を最小限にできるかも」

 

腕輪を起動すると、二人の周囲に半透明の保護フィールドが展開され、光の柱や粒子の攻撃が直接当たることはなくなった。

 

「これで少し安全に探索できますね」モモンガがうなずく。「でも、ここで何かを得るなら、慎重に進まなければ」

 

二人は互いに目配せし、空間の中央にある巨大な光のオブジェクトを目指して歩き出す。それはまるで次元の核とも呼べる存在で、淡く脈打つ光が内部から漏れ、周囲の空間を歪ませていた。

 

「……あれが、この次元の中心か」ジョンの声は静かだが、瞳は鋭く光る。

 

「ここに到達できれば、世界の秘密に触れられるかもしれません」モモンガも決意を固める。

 

二人が光の核に近づくと、突如その内部から低く唸るような声が響き渡る――まるで、世界そのものが語りかけてくるかのように。

 

「……来たな……」ジョンは小さく呟き、剣を構え直した。

 

未知の異界で、二人の冒険はさらに深淵へと進んでいく――

 

 

/*/異界・光の核/*/

 

 

光の核に近づくにつれ、周囲の空間の歪みは増し、浮遊する岩片や粒子の動きが速くなる。二人の視界は幾重にも重なった層のようになり、距離感や方向感覚が狂い始める。

 

「……これは……圧倒的な存在感ですね」モモンガが声を潜める。「この光の核……ただの物体じゃない」

 

光の核の内部から、淡い声が響く。言葉ではなく、感覚で伝わる意思のようなものだ。

 

『……訪問者よ……よくぞここまで来た……』

 

ジョンは拳を握り直し、腕輪を光らせる。『……俺たちは侵略者ではない。情報を得るために来た』

 

光の核が微かに脈打つように光を揺らす。すると、核の中心から無数の光の触手が伸び、二人を包むように囲む。だが、攻撃的ではなく、問いかけるような意思を感じる。

 

『……あなた方の世界……知りたいのか……』

 

モモンガが観察装置を操作する。〈アンデッド感知〉〈生命力感知〉は依然として反応しないが、空間の微細な振動や光の変化から、意思体の意図を読み取ろうと試みる。

 

「……この存在、私たちの概念では“知性体”とも“生物”とも言い難い……でも、明確な意思を持っています」

 

ジョンは腕輪の力を使い、光の核に接触するように慎重に近づく。「なら、こちらから働きかけよう……」

 

触れると、意識が一瞬光の核の中に吸い込まれ、異界の知識や空間の構造、時間の流れの違いが直接頭に流れ込む感覚が走る。

 

『……学ぶ意志……理解する意志……認める……』

 

光の核の意思は、二人を試すように幾つかの問いを投げかける。答えることで、異界の力を部分的に貸与される可能性があるらしい。

 

「ジョンさん……試す価値がありますね」モモンガの声に興奮が混じる。

 

「……ああ、慎重に。だが、得られれば次元の秘密を知る大きな手がかりになる」

 

二人は互いに確認し合い、光の核が提示する問いに答え始める。すると、光の核は柔らかく脈打ち、周囲の粒子が渦を巻きながら新たな空間構造を作り出す。

 

『……理解の印……与えよう……』

 

光の核から放たれた光の波動が二人を包む。その瞬間、ジョンとモモンガは未知の知識と力を手に入れた感覚を得る――空間の移動、次元間の感覚、そして自分たちの世界の秘密に触れる鍵の一端。

 

「……やったか?」ジョンが息を吐く。

 

「はい……これで、我々の探索はさらに広がります」モモンガがうなずく。

 

だが、異界の中心に存在する光の核の意思は、二人を見送るように淡く揺れながら、まだ多くの謎を秘めたままだった――

 

二人の冒険は、次元を超えた知識と未知の危険が交錯するさらなる領域へと続く。

 

 

/*/異界探索・知覚の拡張/*/

 

 

ジョンとモモンガは光の核の力を最大限に引き出し、知覚の範囲を異次元へと拡張した。

 

「ジョンさん……見えますか?」モモンガの声がわずかに震える。

「……ああ……エ・ランテルの地下深くに、信じられない気配がある」ジョンの瞳が光る。

 

その気配は世界級――存在自体が空間と時間を歪めるほどの圧倒的な力だ。浮遊する光の粒子や渦巻く空間の中に、幾何学的な輝きを放つ輝くトラペゾヘドロンが現れる。角度を変えるたびに次元がねじれ、異界と現実世界を結ぶ架け橋のように振る舞っていた。

 

「……これは……夢幻郷とエ・ランテルの地下を繋ぐ、次元の結節点……」モモンガの言葉が続く。「このトラペゾヘドロンが、両方の世界の境界を維持しているんですね」

 

「なるほど……だから、あのグールのような存在も、通常のアンデッド感知や生命力感知では捕捉できなかったんだ」ジョンが拳を握り直す。「次元の境界が歪んでいるから、存在の法則そのものが変化している」

 

二人は互いに目配せし、慎重に前進する。光の核の力で周囲の粒子や空間の歪みを読み取りながら、トラペゾヘドロンの中心を目指す。

 

「もしあの中心に到達できれば……両世界の秘密や次元のルールの核心に触れられるかもしれません」モモンガが眼窩の炎を細めながら呟く。

 

「……気をつけろ。油断すれば、この異界ごと俺たちを押しつぶすかもしれない」ジョンが警告する。

 

光の粒子が渦巻き、空間は微細に震える。トラペゾヘドロンはまるで意思を持つかのように形を変え、二人を誘導するかのように光の通路を示した。

 

「……進むしかないですね」モモンガが覚悟を決める。

「ああ、未知の境界に踏み込むんだ……行くぞ」ジョンは拳を握り直し、腕輪の力を最大限に引き出した。

 

二人は、夢幻郷とエ・ランテルの地下を結ぶ、ねじれた次元の核心へ――輝くトラペゾヘドロンの中心へと足を踏み入れた。

 

 

/*/捻じれた次元の結節点/*/

 

 

捻じれた次元の中心――そこに、世界級(ワールド)アイテム「輝くトラペゾヘドロン」が浮かんでいた。光を放ち、周囲の空間を微細に歪めている。

 

ジョンがそっと手を伸ばす。「これ、持って帰っても大丈夫かな……」

モモンガも腕を構え、光の核の力と自分たちの世界級アイテムの加護を感じながら慎重に観察する。

 

二人がそれぞれ身に着けている世界級(ワールド)アイテムの加護のためか、歪んだ次元の力は二人に危害を加えない。互いに軽く息を整え、ジョンは輝くトラペゾヘドロンに触れた。

 

すると、外なる意思が働いているかのように、次元の結節点は安定したまま微動だにしない。トラペゾヘドロンは軽く振動し、内部から淡い脈動を放っている。

 

モモンガがジョンの顔を見上げる。「……無事ですね」

 

ジョンも微かに頷く。「ああ……次元の歪みも、俺たちには危害を加えなかった。これなら、持ち帰って調査できる」

 

二人は互いに目配せをする。次元の核心で得た成果を確認し、心に一区切りをつける。

 

「……いったん、戻りますか」モモンガが静かに提案する。

「ああ、安全に戻るのが先決だ」ジョンも同意する。

 

腕輪と光の核の力を駆使し、二人は慎重に捻じれた次元の結節点から離れ、元のエ・ランテルの地下へと帰還する準備を整えた。

 

 

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