オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/カルネ・ダーシュ村・戦士たちの午後/*/
カルネ・ダーシュ村の広場は、午前の柔らかい日差しに照らされていた。石畳の隙間からは小さな草が顔を覗かせ、風に揺れるたびにかすかな緑のざわめきが聞こえる。村人たちは遠巻きに見守りながら、戦士たちの談笑に耳を傾けていた。
ペテルは石畳の上で片足を少し前に出し、真剣な顔でブレインに問いかける。「ブレインさんなら、ヘジンマールさんに勝てますか?」
ブレインは肩をすくめ、首をかしげた。瞳は少し遠くを見つめるように動く。
「お互いの手が届く距離でヨーイドンなら、勝てるだろう。だが普通に戦ったら無理だな」
「ええ!?」ペテルの声が思わず高くなる。驚きとともに目が大きく見開かれた。
ブレインは手を広げ、広場を軽く指差す。「俺の神域の外からドラゴン・ブレスを連発されたら、勝ち目なんてない。あれは逃げようがないんだ」
ペテルは頭をかきながら、心の中で戦況を想像している。氷が飛び交い、巨大な翼が風を巻き起こす。考えるだけで、体中の血が沸騰しそうだ。
「じゃ、クレマンティーヌさんは?」ペテルの声に少し希望を込める。
クレマンティーヌは肩をすくめ、口元に笑みを浮かべた。「洞窟みたいな閉じた場所なら勝てるだろうけど、開けた野外じゃ無理だよー。空からドラゴン・ブレスを連発されたら、避けられないもん」
彼女の言葉に、ペテルはしばし固まった。視線は広場の向こうの空を見上げ、もし本当に巨大なドラゴンが頭上を舞ったらどうなるのかを想像する。心臓が跳ねるように早くなる。
ブレインは微かに笑い、ペテルの表情を見て肩を揺らした。「最強種族だからな、ドラゴンは。人間や俺たちの力なんて、焼き石に水ってところだ」
ペテルは苦笑いしつつも、少し羨望の入り混じった目で二人を見る。「やっぱり、ドラゴンって強いんですね……」
クレマンティーヌは肩を軽く回し、少し冗談めかして言う。「まあ、だから面白いんだけどねー。こうやって戦う前に戦力差を話すのも悪くないでしょ?」
ペテルはふと考え込み、ジョンのことを思い出した。「師匠ならどうしますか?」
その声に、ジョンはいつもの飄々とした表情で答えた。「走って追いかけて、ジャンプしてしこたま殴る」
ペテルは思わず目を丸くし、顔に赤みを帯びさせる。「ひどい……」
広場には、かすかな風と小鳥のさえずりが戻る。ペテルはゆっくり息を吐き、頭の中でドラゴンの炎や翼を追いながらも、仲間と共に笑い合う時間の心地よさに気づく。戦闘の緊張と、日常の温もりが交差する瞬間だった。
「じゃあ、僕もいつか、ちょっとでも勝てるようになりたいな」とペテルは小声で呟く。
ブレインは軽く頷き、クレマンティーヌもにこりと笑う。「その意気だ、ペテル。努力次第で何とかなるかもしれないぞ」
空に漂う雲がゆっくり形を変え、広場の日差しはさらに柔らかくなる。ペテルは小さな決意を胸に、仲間たちと共に今日の時間を楽しむのだった。