オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

141 / 394
権利が欲しいか義務を果たせ

 

 

/*/

 

 

エ・ランテルの冒険者組合。

朝から、重々しい扉の外には長蛇の列ができていた。

 

「……なんだ、この数は」

受付嬢の一人が思わずつぶやく。

 

広間に入ってきたのは、ひ弱そうな若者や、杖を突いた老人、さらには子連れの母親までいた。

誰も彼もが「冒険者になりたい」と口々に訴える。

 

「次の方、登録理由をお願いします」

「えっと、その……蘇生の条件に調度三十って聞きまして!それなら冒険者で鍛えるしかないかと!」

「私もです!筋肉をつければ死んでも蘇るんでしょう!?」

 

受付嬢は頭を抱える。

「……冒険者は筋肉教室じゃありません」

 

組合の奥から、熟練の冒険者たちが顔を覗かせる。

「おいおい……今まで冒険者を鼻で笑ってた連中まで押し寄せてきやがったな」

「そりゃそうだろ。一度きりの蘇生を手に入れるには鍛えるしかない、って広場で熱狂してたじゃねえか」

 

若者の一人が勢いよく拳を握りしめて叫んだ。

「俺は!絶対に調度三十を超えてみせる!ビーストマンだって越えてやる!」

「俺もだ!死んでも蘇るんだろ!?怖くない!」

 

その叫びに、組合の空気は一層ざわめいた。

だが、銀級以上の冒険者が冷たく言い放つ。

「甘いな。お前らが想像してるのは“蘇生後”の話だ。実際の戦いは、その前に命を賭けるんだ」

 

一瞬、広間に沈黙が落ちる。

だが次の瞬間、また新しい志願者が駆け込んできた。

 

「遅れたか!?俺も登録頼む!」

「今ならまだ間に合うんだろ!?」

 

受付嬢は深いため息をつき、登録用紙を机に積み上げる。

「……こんな調子が続いたら、冒険者組合は訓練場と化しますね」

 

その一言に、熟練冒険者も苦笑を漏らすしかなかった。

 

 

/*/ エ・ランテル 冒険者組合 朝 /*/

 

 

組合本部の扉が朝からひっきりなしに開閉していた。

「次の受付はこっちだ! 順番を守れ!」

「私は鍛え直したいんだ! 体力試験はどこで受けられる!?」

「蘇生してもらえるんだろ!? 俺は死ぬ気で挑戦する!」

 

組合のホールは、人でごった返し、怒号と期待の声が入り混じる混乱状態。

机はひっくり返され、臨時の申請用紙は瞬く間に山積みになり、書記係の職員は泣きそうな顔で羽根ペンを走らせていた。

 

「お、おい……これ、俺たちの手に負えねぇぞ……」

「もう限界だ! 元組合長を呼べ! アインザックを呼び戻せ!」

 

混乱のさなか、半ば伝説めいた名前を呼ばれ、急ぎ駆け付けたアインザック。

扉をくぐった瞬間、目に映った光景に絶句する。

 

「……なにがおこってる」

 

若手職員が血相を変えて説明する。

「ほ、保険と戸籍制度の発表のせいです! 一度きりの蘇生機会を得るために、みんな冒険者になれば鍛えられると……! 蘇生の条件を満たすために、町の連中が雪崩れ込んできて!」

 

アインザックは額に手を当て、大きくため息をついた。

「馬鹿な……そんな簡単に銀級になれるはずがないだろう」

 

だが、諦めるわけにはいかない。

今やエ・ランテルは魔導国の直轄都市。組合の混乱が都市全体に響くのは避けねばならなかった。

 

「……いいか、聞け!」

アインザックの一喝が混乱の空気を切り裂く。

 

「まずは俄かに運動と簡単な訓練を課せ! 見込みのある者は本格的な育成コースに叩き込め! だが、蘇生の条件を満たせるだけの生命力を鍛えるには年月がかかる。今日明日でどうにかなると思うな!」

 

場が一瞬静まり返る。

群衆の中には落胆する声もあれば、逆に闘志を燃やす声もあった。

 

「そ、それじゃあ……! 俺は今日からでも鍛えるぞ!」

「俺だって! 死んで終わりなんて御免だ!」

「子供を守れる父親になるんだ! 蘇生の資格を得られるまで絶対やめない!」

 

混乱は収まらない。だが、それはもはや絶望の騒ぎではなく、希望を叫ぶ熱狂だった。

 

アインザックはその光景に胸の奥で苦く笑う。

「……まるで戦争前の徴兵騒ぎだな。だが、これを導いたのは魔導国か……人を死と生の境で走らせるとは、実に恐ろしい」

 

 

/*/

 

 

――こうして冒険者組合は一夜にして「民衆鍛錬所」へと変貌を遂げ、エ・ランテルの日常は大きく揺れ動き始めていった。

 

 

/*/ エ・ランテル 冒険者組合臨時執務室 夜 /*/

 

 

乱雑に積まれた申請用紙の山。

かすれた声で部下に指示を飛ばしていたアインザックは、疲れ切った顔のまま椅子に沈み込む。

そこへ扉が開き、黒衣のジョンとアルベドが静かに入ってきた。

 

「……よう。遅くに悪いな」

ジョンが軽く手を上げると、アインザックは苦笑いで迎える。

 

「来てくれて助かる。いや、助からんか……正直、俺の手には負えん」

 

机を叩くようにして積まれた書類を示す。

 

「見ろ、この申請の山だ。冒険者希望者で押し寄せて、組合の廊下は朝から晩まで人間の波。『蘇生の条件を満たすために鍛えるんだ!』と叫ぶ若者ども、農民、商人……中には老婆まで押しかけてきやがる」

 

ジョンは肩をすくめ、アルベドは冷ややかな微笑を浮かべる。

 

「いいじゃないか、命を軽んじず、鍛える気概を持つ。悪いことじゃない」ジョンが言う。

 

「……気概があればな。だが現実は違う。筋肉痛で三日と持たず脱落する奴が大半だ。そもそも銀級相当の生命力――調度三十まで鍛えるなんざ、十年かけても達せるかどうか。なのに全員が『明日には蘇生可能になれる』と信じ込んでやがる」

 

アインザックは頭を掻きむしり、酒を欲しがるかのように乾いた喉を鳴らす。

 

「これは熱狂だ。まるで宗教の集団狂気だぞ。俺たちは冒険者組合じゃなく、神殿の神官にでもなった気分だ」

 

アルベドが楽しげに唇を弧にした。

「人心とはかくも容易く掌握できるもの。命を一度だけ救う、その約束で……皆、魔導国に縛られる」

 

「それが怖いんだ」アインザックは低く唸る。

「人の営みが、まるごとお前たちの掌の上にある……この熱狂が冷めたとき、俺たちはどうなる」

 

ジョンは少し考え込み、やがてぽつりと答えた。

「冷める心配はいらんさ。だって、死は誰にでも来る。だからこの熱狂は永遠に続く」

 

アインザックは顔をしかめた。

「……お前たちは、本当に恐ろしい支配者だ」

 

その呟きに、アルベドの黄金の瞳が愉悦を湛えて細められた。

 

 

/*/ エ・ランテル 冒険者組合臨時執務室 続き /*/

 

アインザックの愚痴を黙って聞いていたジョンが、ふっと笑みを浮かべた。

「……いい案がある」

 

「また怖ぇことを思いついた顔だな」アインザックが苦々しく言う。

 

ジョンは椅子に背を預け、指を組んで語り出した。

「基礎訓練課程を作ろう。――学校にしてしまえばいい。子供たちに読み書き計算などの基礎教育を与えつつ、同時に運動や訓練もさせて力をつけさせる。労働者の底辺全体を底上げできる」

 

「学校……だと?」アインザックが眉をひそめる。

 

「今までは人手を惜しんで子供を教育に行かせる親は少なかった。だが、蘇生の条件に必要な生命力を育てられるとなれば話は別だ。戸籍に登録したら魔導国民の義務として学校に通わせる。無償だ。さらに給食も出せば、親たちも文句は言わないだろう」

 

アインザックの口が半開きになった。

「……義務教育を、蘇生の条件と抱き合わせにするってのか?」

 

ジョンはあっさりとうなずいた。

「その通り。読み書き計算ができる労働者が増える。体力の底上げもされる。国家としては得しかない」

 

アルベドが艶やかに笑う。

「素晴らしいですわ。カルバイン様。義務と権利を巧みに結び付けることで、人々を強制ではなく自発的に従わせる。完全に魔導国に組み込まれることになるでしょう」

 

「教師はどうする?」アインザックが渋い顔で尋ねる。

 

ジョンは指先で机を軽く叩きながら言った。

「教師役にはエルダーリッチを派遣する。人間よりもはるかに正確で、眠らずに記録を取り続けられる。しかも不正を働かない。理想的な教師だろう」

 

「いやいやいや! 不死者を教師に!? 子供が泣き叫ぶぞ!」アインザックが頭を抱える。

 

「最初だけだよ。すぐに慣れるさ。子供は順応が早い。むしろ『不死者に教わった』っていう誇りを持つようになるだろう」

 

アインザックは絶句し、深いため息をついた。

「……本当に、お前たちは人を支配するのが上手すぎて恐ろしい」

 

アルベドが小さく笑った。

「恐ろしくとも、彼らは抗えません。死者蘇生という甘美な餌がある限り――」

 

ジョンは静かに頷いた。

「だからこそ、この制度は揺るがない」

 

部屋に沈黙が落ちる。

外の組合はまだ喧騒に包まれていたが、その夜、魔導国の未来を形づくる仕組みの原型が、静かに描かれ始めていた。

 

 

/*/ エ・ランテル 冒険者組合臨時執務室 /*/

 

 

アインザックはまだ信じられない顔で机を叩いた。

「だがよ……子供の教育だぞ? 普通は人間の教師を置くもんだろ!」

 

ジョンは首を振った。

「人間教師はダメだ。成長期の子供は、必ず誰かに憧れ、時に恋をする。教師に惚れる生徒が出れば授業の秩序が乱れる。あるいは、教師自身が人間なら誘惑に負けることもある」

 

アインザックは眉をひそめた。

「……確かに現場でそんな揉め事は多かったがよ」

 

アルベドが扇で口元を隠し、妖しく笑う。

「だからこそ、不死者なのです。感情に左右されず、恋愛沙汰にも巻き込まれず、ただ教育に徹する。完全無欠の教師」

 

ジョンは静かに続けた。

「エルダーリッチなら不変の存在だ。知識を正確に伝え、記録を取り、裏切らない。生徒たちもいずれ“尊敬すべき先生”として慣れる」

 

アインザックは額を押さえ、低く呻いた。

「……ますます人間の居場所がなくなっていくな……」

 

アルベドが微笑みながら囁く。

「逆でしょう。人間の子供たちは、不死者に導かれて正しく育つ。これほど幸運なことはありませんわ」

 

ジョンは力強く結んだ。

「人間教師は禁止だ。――学校は、未来を支える礎。私情を持ち込ませてはならない」

 

 

/*/ エ・ランテル 冒険者組合臨時執務室 /*/

 

 

アインザックは机に肘をつき、深いため息を吐いた。

「子供に不死者を教師? あまりにも人間味がなさすぎる……現場は混乱するだろうな」

 

ジョンはにやりと笑い、茶をすする。

「そんなに心配なら、カルネ・ダーシュ村の孤児院を見学に来いよ。結構うまくいってるぞ」

 

アインザックは眉をひそめる。

「孤児院? どんな教師を置いているんだ」

 

ジョンは軽く肩を竦め、わざとさらりと言った。

「犬頭のペストーニャと、快楽殺人鬼のクレマンティーヌだ」

 

室内に、一瞬凍り付くような沈黙が落ちた。

アルベドは目を細めて微笑むが、その笑みはどこか愉悦に満ちている。

「まあ……面白い取り合わせですこと」

 

アインザックは絶句した。

「お、お前正気か……!?」

 

ジョンはケラケラと笑い、カップを置いた。

「冗談半分だが、事実だ。だがな――子供たちは元気に学んでいる。ペストーニャは面倒見が良いし、クレマンティーヌは戦闘訓練の天才だ。結果さえ出せば、教師の素性なんてどうでもいい」

 

アインザックは頭を抱えるしかなかった。

「……魔導国の教育は、常識を逆さにしたところから始まるのか」

 

ジョンは笑みを浮かべ、まるで何でもないことのように言い放った。

「常識は死んだ。新しい世では、結果がすべてだ」

 

 

/*/ カルネ・ダーシュ村・孤児院 /*/

 

村の奥にある木造の建物の前で、アインザックは馬から降りた。

魔導国の庇護下にある孤児院。ここで本当に教育が行われているというのか……。

 

扉を開けた瞬間、子供たちの元気な声が飛び込んできた。

「はい、もう一回! もっと腰を落として! そう、それだ!」

 

広間では、金髪の女――クレマンティーヌが木刀を片手に立っていた。

彼女の顔には満面の笑み。子供たち相手だというのに、目は本気の戦士のそれだった。

「ほらほら! 死ぬ気で避けな! 遅いと木刀で叩かれるよ!」

 

ぱしん! と木刀が空を裂き、数人の子供が必死に転がって避ける。

だが泣き言は出ない。むしろ笑いながら立ち上がり、再び挑んでいった。

 

「……なんだ、これは」アインザックは思わず呟く。

 

奥から現れたのは、犬の頭を持つメイド服――ペストーニャ。

盆に給食を乗せ、鼻歌を歌いながら子供たちを呼んだ。

「さあ、授業の前に腹ごしらえですわん。今日は肉と野菜のシチューですよ……わん」

 

木刀を担いだクレマンティーヌが叫ぶ。

「ほら、飯の前に腕立て五十回! 腹が減ってるときにやると効くんだよ!」

 

「うわーっ!」と子供たちは文句を言いながらも地面に手をつき、必死に体を動かす。

やがて汗だくになった小さな顔が、シチューの香りに誘われて笑顔になる。

 

アインザックはその光景を呆然と見つめた。

確かに、教師は人間社会であれば受け入れがたい存在だ。

だが、子供たちの目は輝き、体は強くなり、学ぶ意欲に満ちている。

 

ペストーニャが穏やかな声で言った。

「彼らは孤児でしたが、今では家族のように支え合っています。わん。

 力を付け、知識を得て、未来を切り開く。……それが魔導国流の教育ですわん」

 

アインザックは額に手を当て、深く息を吐いた。

「……狂気と理想が同居してやがる。だが……結果は、確かに出ているな」

 

彼の脳裏にはジョンの言葉がよみがえる。

――常識は死んだ。新しい世では、結果がすべてだ。

 

その時、訓練を終えた子供たちが駆け寄ってきた。

「おじさん! 冒険者の話をしてよ!」

「魔物と戦ったことあるんだろ!」

 

小さな瞳に好奇心と期待が宿っている。

アインザックは思わず苦笑し、子供たちの頭を撫でた。

「……ああ、話してやるよ。だが、真似するなよ」

 

孤児院の空気は不思議な熱気に包まれていた。

狂気の中に確かに芽吹く、未来の力――。

アインザックは、ここに魔導国の底知れぬ強さを見たのだった。

 

 

/*/ エ・ランテル・魔導国政庁舎 夜 /*/

 

 

アインザックは執務室の扉を開けると、深くため息をついた。

机に書類を並べていたジョンが顔を上げ、目を細める。

 

「おかえり。で、カルネ・ダーシュ村の孤児院はどうだった?」

 

アインザックはしばらく言葉を探した。

「……正直に言おう。狂気と理想のごった煮だ。だが、結果は出ていた」

 

ジョンは口の端を吊り上げ、愉快そうに笑う。

「だろ? ペストーニャは優しい奴だし、クレマンティーヌはああ見えて鍛え方は一流だ。

 あいつらに任せりゃ、孤児だろうが何だろうが一人前に育つ」

 

アインザックは机に両手を置き、深々と身を乗り出した。

「だがジョンさん! 子供相手に木刀振り回して、転がして、泣かせて、それを飯で釣って……

 普通の国なら大問題だぞ!」

 

「ふふ、普通の国ならな」ジョンは肩をすくめた。

「でも、魔導国は常識を葬り去ったんだ。

 人間の教師を置いたら? 生徒が惚れる。派閥ができる。腐る。

 だったら不死者か狂人を教師にすりゃいい。余計な色恋も、情けもない」

 

アインザックは言葉を失った。

だが脳裏には、確かに目を輝かせて訓練に励む子供たちの姿が焼き付いている。

あの眼差しは、未来への希望そのものだった。

 

ジョンは机の上の地図を指で叩く。

「基礎教育と基礎訓練、給食つきの義務教育だ。

 子供たちを鍛え上げれば、底辺の労働力も、兵士も、冒険者も底上げできる。

 なにより――『一度の蘇生』を現実のものにするには、みんな強くならないといけない」

 

アインザックは額を押さえた。

「……お前さん、どこまで先を見てるんだ。

 俺は孤児院で未来の冒険者を見た気がする。だが、お前さんは国全体を見てやがる」

 

ジョンはわざとらしく笑って見せる。

「心配すんな。教育ってやつは、手を抜かずにやればどこだって形になるんだ。

 あとは教師の狂気を受け入れられるかどうかだけだ」

 

アインザックは椅子に腰を落とし、深く息を吐いた。

「……まったく。魔導国じゃ、人材育成まで狂気に満ちてるのか」

 

だがその声には、恐怖と同じくらい、確かな期待も混じっていた。

 

 

/*/ エ・ランテル・魔導国基礎教育校・教室 /*/

 

 

アインザックは広間に並ぶ机と椅子を眺め、眉をひそめた。

「学校ってのは……結局、どこまで教えるんだ?」

 

ジョンは壁に掲げられた世界地図と古文書を指差し、軽く肩をすくめる。

「四則演算と九九、読み書き……それから、600年前に人が滅びかけたところから6大神に救われ、八欲王に大陸が制覇されるまでの一連の歴史で良いだろ」

 

アインザックは目を丸くする。

「……え? そこまで教えるのか? いや、歴史の大筋くらいならまだしも、細かい流れまで覚えさせるのか?」

 

ジョンは微笑みながら答える。

「その程度なら基礎教育だ。子供たちは歴史の流れを知ることで、自分の立ち位置や国の仕組みを理解できる。……それ以上の知識を欲する者は魔術師組合の方に行けば良い」

 

アインザックは額に手を当て、ため息をついた。

「なるほど……国民としての基礎教育か。それは分かるが、子供たちの好奇心と探究心を抑えつけるような気もしないか?」

 

ジョンはにやりと笑う。

「好奇心は大事だ。だが、まずは生き延びる力をつけさせないと、好奇心も知識も役に立たない。蘇生一回の保証があっても、命を守るのは自分自身だ」

 

アインザックは一瞬、言葉を失った。

その眼差しの先には、目を輝かせて前を向く子供たちの姿があった。

「……そうか。なるほどな、ジョンさん……」

 

ジョンは机の上で指を鳴らし、子供たちを眺める。

「よし、では授業開始だ。四則演算と歴史から基礎を固めるぞ。ついでに体力も鍛えて、冒険者としての基礎も一緒に作る」

 

アインザックは苦笑しつつも、胸の奥に少しだけ安心を覚えた。

「……この国の教育、狂気じみてるが、案外うまくいくかもしれんな」

 

子供たちの声が教室に響き渡り、基礎教育の第一歩が始まった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。