オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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人狩りいこうぜ!

 

 

/*/ エ・ランテル・冒険者組合・応接室 /*/

 

 

ジョンは机に肘をつき、笑みを浮かべながらアインザックを見つめた。

「というわけでアインザック。冒険者たちを連れて、網持ってスラムに行くぞ」

 

アインザックは目を丸くして、口を開けたまま固まる。

「……?」

 

ジョンは肩をすくめ、平然と言った。

「一番、保護が必要で犯罪に使われてるのはスラムの子供だろ? 一人残らず捕まえて、学校の寮にぶち込んで丸洗いして綺麗な服を着せて、勉強と訓練を仕込んでやるんだよ」

 

アインザックは額に手を当て、絶望的なため息をつく。

「……まさか、ここまでやるとは思わなかった。俺が組合を仕切ってた頃とはえらい違いだ」

 

ジョンはにやりと笑い、腕を組む。

「スラムで育った子供たちの未来を変えるんだ。犯罪の温床を放置しておくより、強く賢く育てたほうが結果的に街も安全になる。冒険者としての基礎も身につけさせれば、一石二鳥だ」

 

アインザックは床を見つめ、呟く。

「……人間を丸洗いするように教育する、ってわけか……」

 

ジョンは片目を細め、楽しそうに笑う。

「丸洗いってのは比喩だ。文字通り洗うわけじゃないが、社会に適応できるように、生活の基礎から身体、心、知識まで一通り叩き込むってことだ」

 

アインザックはまだ半信半疑の表情だ。

「……う、うーむ。ま、まぁ、子供たちのためになるなら、俺も付き合うしかないか」

 

ジョンは満足げにうなずき、部屋の奥に並ぶ冒険者たちを振り向く。

「よし、みんな準備だ。スラム行きの時間だ!」

 

 

/*/

 

 

子供たちをスラムから救い、学校へ送り込む――エ・ランテルの新たな教育改革は、こうして現場から始まるのだった。

 

 

/*/ エ・ランテル・スラム街 /*/

 

 

夕暮れの薄明かりが、細い路地を淡く照らしていた。

瓦礫とゴミの匂いが立ち込め、子供たちの笑い声は混沌と入り混じる。

 

ジョンは軽く指を鳴らし、集まった冒険者たちを見渡す。

「よし、行くぞ。ここにいる子供たち、一人残らず保護する」

 

アインザックは網や袋を手に持ち、眉をひそめた。

「……本当にやるのか、これを?」

 

ジョンは肩をすくめて笑う。

「やる。スラムの子は一番、犯罪や悪習慣に巻き込まれやすい。今のうちに手を打たないと、将来もっと危険になるだけだ」

 

ルクルットとダインが路地を先導し、素早く子供たちの動きを封じる。

ルクルットは《フラウ・ボウ》を軽く構え、氷の矢で逃げ道を一時的に塞ぎ、ダインはグリズリーに変身して低く唸り、子供たちに恐怖心を与える。

 

子供たちは最初、泣き叫び、逃げ回ったが、ジョンやアインザックの落ち着いた声に次第に耳を傾ける。

「怖がらなくていい。今日は君たちのためだ」

 

ニニャが転移の杖で柔らかく場を整理し、子供たちを安全な範囲に導く。

「こちらへ来て。新しい家に連れて行くわ」

 

ペテルは炎を纏った剣で注意深く周囲を警戒しつつ、乱暴な大人たちや危険な場所から子供たちを守る。

 

やがて、スラムの狭い路地は静まり、子供たちは一列に並び、整然と学校の寮へ向かう準備が整った。

 

ジョンは微笑みながら網を片付ける。

「よし、成功だ。これで彼らも教育と訓練を受けられる。未来が変わる」

 

アインザックはため息をつきながら、子供たちの後ろ姿を見つめる。

「……こんな形で学校が始まるとはな……だが、確かに、これなら希望がある」

 

ニニャが小さく微笑み、子供たちの手を取りながら言う。

「さあ、今日から新しい生活だよ。勉強と訓練、楽しくやろうね」

 

/*/

 

こうして、スラム街の子供たちは冒険者たちに連れられ、学校の寮へと安全に運ばれた。

荒廃した街の片隅に、新しい未来の芽が静かに息づき始めたのだった。

 

 

/*/ エ・ランテル・基礎教育校・初授業 /*/

 

 

アインザックは教室の後ろに立ち、静かに教壇を見つめていた。

木製の机と椅子が整然と並び、窓から差し込む光が埃混じりの空気を淡く照らす。

スラムから救われた子供たちは、まだ服も肌もほこりまみれで、不安そうに教室を見回していた。

 

前に立つのは、白い髑髏の顔をしたエルダーリッチ。冷たくも威厳ある姿で、子供たちを見下ろす。

「恐れることはない。私は君たちの味方だ」

 

アインザックの目は鋭く動き、子供たちの緊張と恐怖、そして興味の微妙な変化を追う。

数名が席を離れ、騒ごうとする瞬間、エルダーリッチは〈対人束縛〉を発動し、動きを柔らかく制御する。

「今は集中する時間だ。手を動かすな、目をこちらに向けよ」

 

いたずら好きな子供たちが目をそらしたりくすくす笑ったりすると、〈対人魅了〉を用いて注意を授業内容へと誘導する。

魔力の微かな光が子供たちの心を柔らかく撫で、自然と黒板の算術問題に目が集まる。

 

アインザックは背筋を伸ばし、教室の空気を見渡す。

子供たちはまだぎこちなく手を挙げ、答えを口にすることにためらいがあるが、確実に集中し始めていた。

「……なるほど、これなら私が手を出さなくても、教室は機能するな」

彼は小さく頷き、机の角に手を置いて静かに観察を続ける。

 

エルダーリッチは黒板に数字や文字を書きながら、穏やかに、しかし明確に指示を出す。

「一つずつ覚えよ。急ぐ必要はない。焦らず確実に」

子供たちはその声に従い、鉛筆を握り、文字をなぞり、数を数え始める。

 

アインザックは息をつき、教室の静かな熱気を感じる。

初日はまだ試行段階だが、目の前の子供たちの表情には希望と学ぶ意欲が確かに見えた。

「……この力、正しく育てれば未来を変えられる」

彼は小さく呟き、エルダーリッチの指導を静かに見守る。

 

教室には笑い声も、驚きの声も、少しの戸惑いも混ざっている。

しかしアインザックには確信があった。

子供たちの中に、未来の銀級冒険者としての芽は確かに芽生え始めている――と。

 

 

/*/ エ・ランテル・基礎教育校・数か月後 /*/

 

 

 

アインザックは教室の後ろに立ち、静かに子供たちの様子を観察していた。

机に向かう姿勢、鉛筆を握る手の力加減、息を整えながら問題に挑む表情――初日のぎこちなさは影も形もなく、今では生き生きと学ぶ姿が広がっていた。

 

黒板の前で教鞭を握るエルダーリッチは、白い髑髏の顔に微かな光を宿し、魔力の波で子供たちの注意力を均等に保つ。

〈対人束縛〉や〈対人魅了〉は、必要に応じて軽く働くのみで、今ではほとんど子供たちが自ら集中するようになっていた。

 

窓の外では風がそよぎ、埃混じりの光が教室に差し込む。子供たちは算術や読み書きの課題に没頭し、時折「できた!」という声があがる。

アインザックはその声に耳を傾け、無言で微かに頷く。

「……自分の力で学ぶようになったか」

 

数名の子供は黒板の前に立ち、互いに答え合わせをする。間違えれば悔しそうな表情を見せ、正解すれば歓声を上げる。

その熱気に包まれながらも、教室には秩序が保たれていた。

 

エルダーリッチは、子供たちが疲れ始めると柔らかく声をかける。

「休憩だ。水を飲み、深呼吸せよ」

その瞬間、子供たちは自然に手を止め、席で息を整える。

 

アインザックは教室を一周し、子供たちのノートをちらりと覗く。

計算式の正確さや文字の丁寧さだけでなく、疑問を持った跡や、自分なりの工夫の形跡が見える。

「……思ったより、ずっと順調だな」

 

彼は静かに教室の片隅に立ち、子供たちの努力と成長を見守った。

初めてこの場所に来た日、恐怖で固まっていた子供たちは、今では自ら学び、互いに教え合うまでに成長していた。

「……このまま進めば、銀級への芽も確実に育つ」

 

アインザックは教室の空気を吸い込み、微かな安堵と共に思った。

――ここからが、本当の教育の始まりだ。

 

 

/*/ エ・ランテル・基礎教育校・戦闘訓練授業 /*/

 

 

アインザックは校庭の端に立ち、整列する子供たちを見下ろす。

初めての戦闘訓練――といっても、ここでは武器は木製の模擬剣や簡易の弓矢のみ。安全は確保されているが、基本動作や反応速度、判断力を鍛えるのが目的だ。

 

エルダーリッチは黒衣をひるがえし、冷たい声で指示を飛ばす。

「動作を正確に、判断を迅速に。敵は常に変化する。想定外に怯えるな」

 

子供たちは初めはぎこちなく剣を振り、盾を構える。

数名は弓を手にして矢を放つが、命中率は低い。しかし、エルダーリッチは〈対人魅了〉を軽く用いて注意力を集中させ、〈対人束縛〉でフォームを正す。

「今の構えでは防御できぬ。腰を落とせ、膝を曲げよ」

 

アインザックは微かに眉をひそめながらも、子供たちの成長を確認する。

最初は恐怖で目を逸らしていた者も、今では互いに距離を取り、相手の動きを観察しながら戦う。

 

「よし、次は連携だ!」エルダーリッチが声を張る。

子供たちは二人組、三人組で動きを合わせ、模擬の攻撃と防御を繰り返す。

倒れる者もいれば、攻撃を避け成功する者もいる。歓声と悔しさの混じった声が校庭に響く。

 

アインザックは教官の側で静かに観察する。

「初めての訓練にしては、ずいぶんと集中しているな……」

一人、また一人と子供たちが息を切らしながらも立ち上がる姿を見て、彼は微かに唇を引き締める。

――この子たちも、やがて銀級冒険者の土台を築く。確かに芽は育っている。

 

訓練の最後、エルダーリッチは杖を掲げ、空間に柔らかな魔力を流す。

「休息だ。疲れを無視するな。体力と精神力の回復は同じくらい重要だ」

子供たちは水を飲み、互いに笑顔を交わす。まだ未熟だが、確実に成長している手応えがアインザックの胸に伝わる。

 

アインザックは教室や校庭を俯瞰しながら、思わず呟いた。

「……これなら、蘇生の価値に見合う力をつけられる。私の目論見通りだな」

 

校庭の風に混じる子供たちの声は、未来への希望と努力の証だった。

アインザックは視線を遠くに泳がせ、次の訓練日を静かに楽しみにしていた。

 

 

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