オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓 第七階層・研究工房 /*/
金属と魔力の匂いが混じる工房の奥、奇妙な光沢を放つ布地がずらりと並べられていた。
繊維状にした魔力樹脂──通称〈ポリマス繊維〉と、空間歪曲に耐える軽量素材〈アクフレ布〉。その二つを融合させた新素材が、ジョンの手によって試験台の上に置かれている。
「ふふふ……ついにできたぞ。軽くて丈夫で、伸縮自在。洗ってもすぐ乾く!」
ジョンが満足げに笑いながら指で布を弾くと、光が表面で波紋のように広がった。
その横で、腕を組んで眺めていたモモンガが首を傾げる。
「……それ、まさか防具か?」
「違う。学校の制服だ」
「は?」
「ナザリック式教育機関への採用を見据えて、だ。実験用に教師服と生徒服を試作した」
ジョンが指を鳴らすと、マネキンに纏わせた黒地のブレザーが浮かび上がった。艶のある深い紺に、金の縁取りが入った見事なデザイン。
「ほう……これは確かに高級感がありますね」
「だろ? 素材がいいからな。しかも、温度調整機能付きだ。夏は涼しく、冬は暖かい。……でも夏服と冬服はある」
モモンガは少し考えた後、顎に手を当てた。
「……で、聞くが。エロいですか、それ?」
「エロいだろう。学校ものは定番だ! 外せない!」
「何の定番ですか」
「この布のフィット感を見ろ。制服がこれなら、スカートも、シャツも完璧にラインを引き立てる。競泳水着だって作っちゃうぞ!」
ジョンの目が輝く。
「ペロロンチーノさんがいたら感涙ものだ! 十年後には夜のお店の定番オプションになるぞ!」
「ホントかなぁ……」
モモンガが呆れた声を漏らす。だが、その口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。
──十年後。
エ・ランテル市街の繁華街。魔導国直営の高級娯楽施設「ルクス・クラブ」。
ショーウィンドウに並ぶマネキンたちは、どれも艶やかな光を放つ〈アクフレ製スクールウェア〉を身にまとっていた。
滑らかな素材は魔力光を受けて虹色に輝き、観客の視線を釘付けにする。
「お客様、こちらが最新モデルの〈聖学院スタイル〉になります。伸縮率が三割向上しております」
「ふむ……実にけしからん。だが、良い」
紳士風の人狼が頷きながら、光沢のあるスカートの裾を観察している。
彼こそ、当時の実験責任者ジョンその人だった。
「十年待たなかったな……」
窓越しに街の明かりを見下ろしながら、ジョンは小さく呟いた。
「理想は、時に現実より早く来るものだ」
その背後で、ふわりと黒い影が現れる。
「……やはり本当に流行りましたね。モモンガさん、どうします? 次は体操服か、それとも……」
「……やめておけ、ジョン」
モモンガが頭を抱える。だがその声には、どこか懐かしい笑いが混じっていた。
こうして、〈ポリマス繊維〉と〈アクフレ布〉は防具でも服飾でもなく、
“文化”として魔導国に定着したのだった。