オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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風車と水車

 

 

/*/ カルネ村・丘の上 /*/

 

 

ジョンは村の人々と協力して、丘の上に立派な風車小屋を建て上げた。

大きな羽根は陽光を浴びて白く輝き、石の基礎はがっしりとしている。

 

「……いい出来だ」

胸を張って言ったものの、羽根は沈黙したままだった。

 

「回らんな……」

 

村人たちは期待を込めて空を見上げるが、風は微動だにせず、空気はぴたりと止まっている。

子供が不思議そうに尋ねた。

 

「ジョンおじちゃん、どうして回らないの?」

「……風が、ないからな」

 

短く答えたが、声は寂しげだった。

せっかくの技術も、自然の力がなければ意味をなさない。

羽根は静かに空を切ることすらなく、ただ無言で立ち尽くしている。

 

ジョンは羽根の下に腰を下ろし、膝を抱えてぽつりとつぶやいた。

「動かない風車ほど……悲しいもんはねえな……」

 

それを見た村人のひとりが気を使って言う。

「雨水で石臼を回す仕組みにすればいいんじゃないですかね?」

別の者は「いや、魔導国にお願いして風を吹かせてもらえば……」と冗談を言うが、ジョンは曖昧に笑うだけだった。

 

風を待ち続ける羽根は、まるでジョン自身の胸の奥のわだかまりを映すように、ただじっと、空に向かって広げられたまま動かないのだった。

 

 

/*/ カルネ村・小川沿い /*/

 

 

ジョンは、風のない丘の風車小屋にしょんぼりしたまま、しばらく羽根を眺めていた。

だが、ふと下の方できらめく川面を見て、立ち上がる。

 

「……そうか。風が無いなら、水に頼ればいいじゃねえか」

 

彼はすぐに村人を呼び集め、次の工事を始めた。

川の流れをせき止めて導く水路を作り、その先に太い丸太を組み合わせた水車を据える。

やがて川水がごうごうと水路を駆け下り、水車の羽根を叩くと――

 

ゴウン……ゴウン……!

 

大きな音を立てて水車が回り始めた。

水の力は安定しており、止まることはない。

水車は規則正しく、力強く回り続け、小屋の中の臼を動かした。

 

「おおっ!」

「すごい、粉が挽けてる!」

 

村人たちが歓声を上げ、子供たちは目を輝かせて回転する水車を指差した。

 

ジョンはにやりと笑い、少し胸を張る。

「風は気まぐれだが、水は裏切らねえ。……こいつはいい相棒になりそうだな」

 

小川のほとりに新しく建った水車小屋。

水音とともに、粉を挽く臼の音が村に響き、カルネ村の暮らしをさらに豊かにしていった。

 

――

 

風車小屋は「動かない象徴」として丘に残り、

水車小屋は「生きた力」として川辺で回る。

 

この対比がジョンらしい、“試行錯誤の証”として村人たちの記憶に刻まれるのでした。

 

 

/*/ カルネ村・丘の上の風車小屋 /*/

 

 

風を待ち続けながら一度も動くことのなかった風車小屋。

その姿は寂しげだったが、やがて別の役目を与えられることとなった。

 

漆黒の剣がカルネ村に滞在した折――

仲間思いで本好きな魔法詠唱者、ニニャが小屋に目を留める。

 

「……羽根は回らないけれど、静かで落ち着いた建物だ。

 ここなら研究室にぴったりだね」

 

ジョンは頭をかきながら笑った。

「本当は粉挽きのために作ったんだが……使ってくれるなら本望だ」

 

こうして風車小屋の内部は改装され、臼の代わりに本棚が並べられた。

羊皮紙や魔法書、魔道具の部品が持ち込まれ、窓際には簡素な机。

回らぬ羽根はそのまま残されていたが、不思議と「見張りの塔」のように威厳を放っている。

 

夜になると、丘の上に灯る小さなランプの光。

それはニニャが熱心に魔法の理論を書き留めている証だった。

 

「動かない風車が……動かないからこそ、静かな学び舎になったわけか」

ジョンは丘を見上げて、しみじみと呟いた。

 

村人たちも次第にそこを「ニニャの小屋」と呼ぶようになり、

動かぬ風車小屋は新たに“知恵を育む場所”として息を吹き返したのであった。

 

 

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