オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
バレアレ工房エ・ランテル支店の扉を押し開けると、淡い光に包まれた店内が広がった。棚には色とりどりのポーションや薬草、魔法道具が整然と並んでいる。
カウンターの向こうから、若い女性の店員が顔を上げた。
「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」
ペテルが手元のポーション瓶を差し出す。
「冒険で手に入れたポーションなんだけど……引き取ってもらえるか?」
女性、アルシェは眉をひそめ、軽く首を振った。
「え? 冒険で手に入れたポーション? ごめんなさい。製作者の分からないポーションは引き取れないんです」
ルクルットが小さくため息をつく。
「やっぱりね……無制限に持ち込めると思ったら大間違いか」
ニニャは慎重に瓶を揺らしながら、メモ用の紙に注意書きを書き写す。
「ラベルがないと、効果が分からない以上、安全面で受け付けられないんですね」
ダインは肩をすくめて、少しがっかりした表情でつぶやく。
「仕方ないである。安全が第一である!」
ペテルは小瓶をカバンにしまいながら、笑みを浮かべる。
「まあ……冒険での収穫は、自分たちで管理するしかないか」
アルシェは微笑みながら、棚の奥へと戻る。
「もし製作者が分かるポーションなら、いつでも引き取りますので!」
焚火や戦いの後の余韻はここでは消え、代わりに日常の些細な制約と、安全を守る規律が静かに空間を支配していた。
/*/
丘の上、夜の静寂を切り裂くように焚火が揺れていた。
漆黒の剣の四人は、洞窟で手に入れたポーションの確認を始める。
ペテルが小瓶を手に取り、指先で液を垂らすと、掌が一瞬熱くなった。
「うおっ!」
「あー、やっぱり雑だな、お前!」
ルクルットは短く笑いながらツッコミを入れる。ペテルは舌打ちしつつも、笑みを隠せない。
次にニニャが霊体化ポーションに挑戦。液を少量口に含むと、みるみる身体が透明になり、焚火の光を通して輪郭がぼんやりと見える。
「わわっ、見え……見えちゃう!」
ルクルットは大笑いしながら、「なんだよその幽霊みたいな姿!」
ペテルも笑いをこらえながら、「透明のニニャ……どこに居るか分からねぇ!」
ダインは冷静に、「落ち着くである!元に戻るまで待つである!」とアドバイス。
さらに、毒かもしれないポーションをペテルが舐めると、舌先が痺れて顔をしかめる。
「うっ……なんだこの味!」
ダインは指を振り、魔力で軽く解毒を施す。
「少しだけなら問題ないのである」
ルクルットは短弓を背に戻しながら、手元の小瓶を指で転がす。
「霊体化か……これ、潜入任務の予行演習に使えそうだな。俺が一足先に幽霊役か」
ニニャは透明のまま小さく唸る。「いや、私が幽霊役って言ってるんですけど!」
ダインは両腕を広げ、真面目な顔で注意する。
「量を誤ると危険である。使う前に必ず確認せよである!」
ペテルはふと、ポーションの色の違いを眺めながら考え込む。
「……この赤いのは回復じゃなさそうだな、火属性か何かか」
ルクルットは手を伸ばして瓶を転がす。「俺の氷矢と組み合わせれば面白いことになりそうだな」
ニニャは小さくため息。「短絡的すぎます……でも確かに面白そうではありますね」
そして夜は更け、焚火の周囲で笑い声と小さなハプニングが続く。
透明になったニニャが火の粉にびくっと反応したり、痺れたペテルが舌をぺろっと出したり、ルクルットが小瓶をこぼさぬようバランスを取りながら転がしたり、ダインが真面目に注意を繰り返す。
戦闘の疲れも吹き飛ぶほど、焚火の明かりの下で四人は、知恵と勇気、そしてちょっとした無茶を混ぜた実験を楽しんでいた。
その夜、漆黒の剣の冒険者たちは、戦いだけではなく、仲間との微笑ましい瞬間も記憶に刻むことになる。