オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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焚火を囲んで雑談

 

 

/*/ 旧王国北部・荒野の夜営地 /*/

 

 

焚き火のぱちぱちという音が、夜の静寂を刻んでいた。

赤く揺らめく火が、石を積んだ簡易かまどの中で踊り、その周囲に置かれた鍋からは肉と香草の混じった湯気が立ちのぼっている。

夜空は晴れ、無数の星が瞬いていた。人の灯りが消えた地だからこそ、星明かりは驚くほど濃い。

 

ペテルは腰を下ろし、スープを木の皿に分けながら言った。

「こうして獣狩りばっかしてると、ちょっとした贅沢が欲しくなるよな」

 

「贅沢って言っても、食い物は限られているのである」

ダインが笑いながら焚き火の枝を突く。

「アンデッド農地の作物は全部魔導国に納められてる。私たちの口には直接はなかなか入らない」

 

「でも、その代わりに賞金は悪くない」

ルクルットが小袋を取り出し、軽く振る。金貨の擦れる音が小気味よく響く。

「この半年でだいぶ貯まったし、そろそろ何か買わないか? 装備でも、便利道具でも」

 

ペテルが眉を上げた。

「便利道具、か。……魔法のテントなんかどうだ? 入ると中が広がってて、風も寒さも防げるっていう代物」

 

「いいな!」ルクルットの目が輝いた。「でも、けっこう高いよな。三百金貨くらいしたはず」

 

「そのぶん快適だ。寝袋に霜がつく夜を思えば安いもんだ」

 

ニニャがスプーンをくるくる回しながら口を開いた。

「私は“動く像の馬”が欲しいな。ポケットに入るサイズの像で、使う時だけ本物の馬になるやつ。

 荷物を運べるし、移動も楽だ。何より――馬小屋代がいらない」

 

ペテルが苦笑する。

「確かに、それは便利だな。

 俺たちの荷馬車、今や骨馬に引かせてるから見た目がちょっと怖いんだよな」

 

「子どもが見たら泣くのである」ダインが吹き出す。

「動く像なら、夜はポケットにしまえるし、獣に襲われても逃げられる。野営でいちばん怖いの、結局あいつらだから」

 

「そうそう」ルクルットが頷いた。

「この前だって、夜中にオーガベアが襲ってきてさ。テント吹き飛ばされて、寝巻きで逃げたの誰だっけ?」

 

ペテルは咳払いして、あらぬ方向を見た。

「……そういう話は焚き火の横でするな。縁起でもねえ」

 

笑いが弾け、鍋の中身がぐつぐつと泡を立てた。

ニニャがひと口味見をして、少し塩を足す。

 

「あと欲しいのは、“無限の水差し”ですね。

 一個でどんな任務も楽になる。風呂も作れるし、煮込みもいくらでもできる」

 

「それはいい」ダインが手を打つ。

「私は、水魔法そんなに得意じゃないから助かるのである。四人で一個ずつ持っとけば、飲料にも洗濯にも困らない」

 

「それと、通信の魔道具も欲しいっすね」ルクルットが指を立てる。

「伝言の魔法って不安定じゃないか。魔導国製の“共鳴石”とか、“風声のペンダント”とかなら数リーグ離れても会話できる」

 

「高いけどな」ペテルが苦い顔をする。

「だが、命のやり取りしてる俺たちにゃ必要かもな。連携が遅れたら死ぬ」

 

「それ言ったら、全部必要になりますよ」ニニャが笑う。

「でも、こうやって道具の話してる時がいちばん平和ですね」

 

焚き火が小さくはぜる。

風が丘の向こうから吹き抜け、草原の匂いを運んでくる。

遠くでは、夜目の効くアンデッドの斥候が静かに歩哨をしていた。

 

ペテルが湯気の立つスープをすすり、ほっと息をついた。

「……こういう夜が、ずっと続けばいいのにな」

 

ルクルットが肩をすくめる。

「続くさ、きっと。今までだって生き残って……全滅したこともあったなぁ」

 

「やめろ、そうやってフラグを立てるな」

ペテルが苦笑し、みんながまた笑った。

 

星空の下、漆黒の剣の四人は小さな焚き火を囲み、

未来の話で夜を埋めていった。

彼らの笑い声だけが、静かな荒野に柔らかく響いていた。

 

 

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