オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓 第9層・モモンガの執務室 /*/
静謐な空気を切るように、ジョンが肩をすくめながら報告した。
「――というわけで、法国は俺の精液が欲しいんだと」
ペンを止めたモモンガの指先が小さく震えた。
「……ストレートに来ましたね」
「ええ、もう少しオブラートに包むかと思ったんですけどね。“人類再鍛造計画”とか言い出してて」
ジョンは苦笑混じりにため息を吐く。
机の横で報告を聞いていたアルベドが、ぱんっと両手を叩いて立ち上がった。
「――論外です!」
黄金の瞳が怒りに揺れる。
「至高の御方の尊い血を、外部の汚れた血に混ぜるなどっ!
それは神聖冒涜です! 絶対に許されません!」
ジョンは肩を竦めた。
「まぁ、普通そう言うよな。
生まれるのは人狼か、せいぜい半魔くらいだと思うけど」
モモンガが顎に手を当てる。
「……まさか“くれてやっても良い”などと考えているのですか?」
「うーん」ジョンは首をひねる。
「毎日無駄に垂れ流してるし、少しくらい有効活用されても構わないかなとは思ってる」
「言い方が最低です!」アルベドが机を叩いた。
「貴方は自分がどれほど特異な存在か分かっておられない!」
「いやぁ、言っても生殖機能はただの肉体の副産物だし」
「副産物!?」
モモンガは咳払いして、強引に会話を整える。
「……落ち着くのだアルベド。ジョンさん、仮にだが――法国が本当に“君の血統”を利用して強化人類を作ろうとした場合、
彼らはそれを“神の奇跡”と呼ぶでしょうね」
「そうだな。俺は神でもなんでもないけど、彼らにとってはそう見えるだろう」
「つまり、“偶像を得る”わけです。
信仰を得た法国は、やがて再び戦を起こす。
――その時、君の子孫を旗印にして」
ジョンは沈黙した。
やがて、深く息を吐く。
「……あー。やっぱ、やめとくか」
「当然です」アルベドが即答する。
「至高の御方の血をもって戦火を煽るなど、許しがたい!」
「でもまぁ、“利用される側”ってのも見てみたかったんだけどな」
「駄目です」
モモンガは、椅子の背にもたれながら小さく笑う。
「ジョンさん、君が生きているだけで、十分に人類は影響を受けていますよ」
ジョンは鼻で笑った。
「……それ、褒めてる?」
「ええ、皮肉と賞賛を半分ずつです」
一瞬、執務室に静寂が戻る。
だがその沈黙を破ったのは、アルベドの一言だった。
「――いっそ、法国をこちらで“管理繁殖”すれば良いのでは?」
「……物騒な提案をさらりと言うな」
「いや、言い出すと思ってた」
そして三人の間に、どこか諦めたような笑いが広がった。
ナザリックの日常は、今日もいつも通り、恐ろしく静かで、そして狂っていた。