オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

182 / 394
うなぎ

 

 

/*/ カルネ・ダーシュ村・川辺 /*/

 

 

「ほらよ、ルプー。こっちにもう一匹いたぞ」

ジョンが腰まで水に浸かりながら、するりと網を持ち上げた。

中でのたうつ黒光りの長い影――太いウナギが二匹、ぎらりと水面に反射した。

 

「うわー、ぬるぬるっすね!」

川岸で待機していたルプスレギナが歓声を上げて駆け寄る。

彼女は犬耳をぴんと立てて覗き込み、尻尾をぶんぶんと振っている。

 

「ヌルいくらいでびびるなよ。こいつら、泥を吐かせてからが本番だ」

ジョンはにやりと笑い、桶に移したウナギへと川の水を注いだ。

しばらく泳がせ、泥を吐かせる。桶の中でウナギは暴れ、ぱしゃぱしゃと水飛沫が飛んだ。

 

「へぇー。これが、あの『うな重』ってやつになるんっすか?」

「そうだ。ちょっと手間かかるけど、出来上がりは絶品だぞ」

 

 

/*/ 調理小屋 /*/

 

 

夕暮れの火灯りが揺れる調理小屋。

ジョンは手際よくウナギを割き、串に打ち、炭火の上へと並べていく。

じゅわ、と脂が炭に落ち、香ばしい煙が立ちのぼる。

 

「うわっ! めっちゃ良い匂いする!」

ルプスレギナは鼻をひくひくさせ、目を輝かせた。

「香りだけでご飯三杯いけるっすよ!」

 

「飯はちゃんと炊いてある。ほら、こっちに」

蓋を開けると、湯気と共に立ちのぼる白米の甘い香り。

ルプスレギナは両手を合わせて「うひゃー」と声を上げる。

 

やがて、ジョンは秘伝のタレを刷毛で塗り始めた。

醤油と酒、砂糖とみりんを煮詰めた照りのあるタレ。

塗るたびに「じゅっ」と音を立て、皮がぱりりと焼き上がる。

 

「おおお……! 黄金色の照り照りっすね!」

「腹減ったろ。もうすぐだ」

 

 

/*/ うな重 /*/

 

 

炊きたてのご飯を器に盛り、その上に香ばしく焼き上がったウナギを豪快にのせる。

照り輝くタレが白米に染み込み、湯気と共に甘辛い香りが広がった。

ジョンはふたを閉めて少し蒸らし、そして差し出した。

 

「ほら、ルプー。これが本場仕込みのうな重だ」

 

「わーーーっ! いただきまーす!」

彼女は勢いよく箸を突っ込み、口にかき込んだ。

 

「……んっ!! なにこれ!? ふわっふわ! でも皮は香ばしくて、タレが甘じょっぱくて……あっ、米と一緒に食べると止まらないっす!」

ルプスレギナは頬を真っ赤にしながら、がつがつと食べ進める。

 

ジョンも口に運び、深いため息をついた。

「……うまいな。川で獲れたばかりのやつは格別だ」

 

「はぁぁ、幸せっす……。ジョン様、これ毎日でも食べたいっす!」

「毎日だと飽きるぞ。それに、手間もかかる。たまにだからいいんだ」

 

「むぅー……。でも、また獲りに行きましょうね!」

ルプスレギナは尻尾をふりふりさせながら、丼の底まできれいに平らげた。

 

「おかわりあるっす?」

「……最初から二人分以上焼いといて正解だったな」

 

二人は笑いながら、もう一度箸を伸ばした。

外では秋の虫の音が響き、川のせせらぎが静かに流れていた。

 

 

/*/

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。