オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ カルネ・ダーシュ村・川辺 /*/
「ほらよ、ルプー。こっちにもう一匹いたぞ」
ジョンが腰まで水に浸かりながら、するりと網を持ち上げた。
中でのたうつ黒光りの長い影――太いウナギが二匹、ぎらりと水面に反射した。
「うわー、ぬるぬるっすね!」
川岸で待機していたルプスレギナが歓声を上げて駆け寄る。
彼女は犬耳をぴんと立てて覗き込み、尻尾をぶんぶんと振っている。
「ヌルいくらいでびびるなよ。こいつら、泥を吐かせてからが本番だ」
ジョンはにやりと笑い、桶に移したウナギへと川の水を注いだ。
しばらく泳がせ、泥を吐かせる。桶の中でウナギは暴れ、ぱしゃぱしゃと水飛沫が飛んだ。
「へぇー。これが、あの『うな重』ってやつになるんっすか?」
「そうだ。ちょっと手間かかるけど、出来上がりは絶品だぞ」
/*/ 調理小屋 /*/
夕暮れの火灯りが揺れる調理小屋。
ジョンは手際よくウナギを割き、串に打ち、炭火の上へと並べていく。
じゅわ、と脂が炭に落ち、香ばしい煙が立ちのぼる。
「うわっ! めっちゃ良い匂いする!」
ルプスレギナは鼻をひくひくさせ、目を輝かせた。
「香りだけでご飯三杯いけるっすよ!」
「飯はちゃんと炊いてある。ほら、こっちに」
蓋を開けると、湯気と共に立ちのぼる白米の甘い香り。
ルプスレギナは両手を合わせて「うひゃー」と声を上げる。
やがて、ジョンは秘伝のタレを刷毛で塗り始めた。
醤油と酒、砂糖とみりんを煮詰めた照りのあるタレ。
塗るたびに「じゅっ」と音を立て、皮がぱりりと焼き上がる。
「おおお……! 黄金色の照り照りっすね!」
「腹減ったろ。もうすぐだ」
/*/ うな重 /*/
炊きたてのご飯を器に盛り、その上に香ばしく焼き上がったウナギを豪快にのせる。
照り輝くタレが白米に染み込み、湯気と共に甘辛い香りが広がった。
ジョンはふたを閉めて少し蒸らし、そして差し出した。
「ほら、ルプー。これが本場仕込みのうな重だ」
「わーーーっ! いただきまーす!」
彼女は勢いよく箸を突っ込み、口にかき込んだ。
「……んっ!! なにこれ!? ふわっふわ! でも皮は香ばしくて、タレが甘じょっぱくて……あっ、米と一緒に食べると止まらないっす!」
ルプスレギナは頬を真っ赤にしながら、がつがつと食べ進める。
ジョンも口に運び、深いため息をついた。
「……うまいな。川で獲れたばかりのやつは格別だ」
「はぁぁ、幸せっす……。ジョン様、これ毎日でも食べたいっす!」
「毎日だと飽きるぞ。それに、手間もかかる。たまにだからいいんだ」
「むぅー……。でも、また獲りに行きましょうね!」
ルプスレギナは尻尾をふりふりさせながら、丼の底まできれいに平らげた。
「おかわりあるっす?」
「……最初から二人分以上焼いといて正解だったな」
二人は笑いながら、もう一度箸を伸ばした。
外では秋の虫の音が響き、川のせせらぎが静かに流れていた。
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