オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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第20+1話の遠吠えの影響

 

 

/*/ 諸国に響く叫び /*/

 

 

天を裂くかのごとき異形の咆哮が放たれた。

その声は山を越え、谷を渡り、大地を揺るがし、蒼穹にまで響き渡った。

 

まず、エ・ランテルの街――。

市場に並ぶ商人は声を詰まらせ、林檎を取り落とし、子供は母の裾にすがりついた。

冒険者たちは一斉に剣を抜き、目を見交わす。

「……いまのは、何だ?」

誰も答えを持たず、ただ石畳を震わせるような残響に怯えるばかりであった。

 

次に、帝都アーウィンタール。

軍楽隊の練習は中断され、兵士らは槍を取り落とす。

皇帝の広場には民衆が押し寄せ、神の怒りか、魔物の襲来かと口々に叫ぶ。

祭壇の僧は震える声で祈りを捧げ、広間の柱はざわめきに軋んだ。

 

さらに、法都においては。

学匠たちは講義をやめ、法廷の裁きは止まり、判決を待つ者もまた顔を蒼白にする。

「古き禁忌の鐘か、それとも終末の合図か……」と老神官は呟き、

法都の塔に掲げられた旗は、不吉な風に翻った。

 

そして王都。

貴族の館で舞を踊っていた楽団は一斉に手を止め、楽器を抱えたまま震えた。

夜会に集う貴婦人は叫びをあげ、馬車の車輪は石畳を乱して駆け去る。

兵舎の若き兵らは兜を抱えたまま膝をつき、

「これは戦の前触れにあらず、魔の災いだ」と互いに囁き合った。

 

人々は空を仰ぎ、恐怖に瞳を濁らせた。

叫びは一瞬にして彼らの心を打ち砕き、都市の秩序を乱した。

それは稲妻に似て走り抜ける恐怖であり、

また見えざる手で世界を撹乱する、神話の時代より語られる災厄のようであった。

 

かくして四つの都は同時に混乱に沈み、

人々は祈り、叫び、走り、そして震えた。

その夜を記す年代記の筆は、後にこう残すだろう――

 

「かの叫びは、時代を揺るがす前触れなり」と。

 

 

/*/ 四都の動揺と決断 /*/

 

 

エ・ランテルにおいては。

冒険者組合の長老は鐘を打ち鳴らし、各級の冒険者を集めた。

「いまこそ、街を守る時だ!」

剣士たちは恐怖を胸に押し込み、火を灯すランタンを掲げて集まった。

だが誰も、その咆哮の正体を知らぬまま、ただ不安を力に変えようとした。

 

帝都の皇帝ジルクニフは、玉座に深く腰掛け、群臣のざわめきを一喝した。

「狼狽えるな! これは敵の策かもしれぬ」

将軍らは直ちに兵を動員し、城壁を二重に固める。

大通りには鎧をまとった兵の列が並び、市民を制するように盾を掲げた。

皇帝は高らかに宣言する――「帝は揺るがぬ!」

だが、その背後の炎のように揺れる燭台の光は、皇帝の心の不安を映していた。

 

法都では、大神官と神官長たちが緊急の会議を開いた。

「これは審判の日の兆しかもしれぬ」

一人の若き神官は声を震わせる。

「古き文献に、天を裂く叫びと共に“境界の扉”が開くと記されております」

だが議場は意見で割れ、祈祷を強めるべきか、民衆を鎮めるべきかで紛糾する。

結局、鐘楼の鐘を打ち鳴らし、全市民に断食と祈りを命ずる布告が発された。

 

王都においては。

老王ランポッサ三世は白き鬚を撫でつつ、重臣を召し集めた。

「我が国に災いが及ぶ前に、真実を探れ」

騎士団は鎧を鳴らして出立し、魔術師団は水晶球を掲げて天空を占う。

王宮の礼拝堂では王子と王女が共に膝を折り、

「どうか我らに守護の御手を」と夜通し祈りを捧げた。

 

それぞれの都で、それぞれの権力者たちは、民を制し、兵を集め、祈りを高めた。

だが誰一人として、その叫びの正体を見極める術を持たなかった。

 

ただ一つ確かなのは――

この夜を境に、四都の歴史は大きく揺れ動き、

その記録は後世の年代記に「運命の転換点」と刻まれることとなる。

 

 

/*/ 余韻 /*/

 

 

翌日。

エ・ランテルの酒場の一角で、漆黒の剣の四人は卓を囲んでいた。

市場もまだ落ち着かず、人々は怯えたまま噂を口々にしている。

「なあ……昨日の、あの声」

ペテルが低く言えば、ニニャが頷いた。

「うん……獣の咆哮にも似ていたけど、どこか人の声にも聞こえた」

ルクルットは苦い顔でエールをあおる。

「正直、背筋が凍ったぜ。あれがもし魔物の仕業なら、俺たちにどうこうできる相手じゃない」

ダインは沈黙したまま、ただ拳を握りしめていた。

 

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