オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ エ・ランテル・中央広場の給水泉 昼下がり /*/
泉の水面が太陽にきらめく中、異様な光景が目に飛び込んできた。泉を囲むように立つのは、見慣れぬ商人たち――水壺を握り、市民を追い払う彼らの姿は、まるでリアルで悔しい思いをさせられたあの“グッズ転売屋”を思い出させた。
「……まただよ、ジョンさん。どうしてこういうのって、俺たちが手を出す前に占拠するんだ?」
「分かる……モモンガさん、リアルの限定グッズも、あっという間に転売屋に買い占められて買えなかったし……」ジョンの拳がぎゅっと握られる。
「俺たちの楽しみを独り占めにする連中、見逃せるか?」モモンガも冷たい目を向けた。
泉の前に立つ男たちは、市民を追い払いながら胸を張る。
「この水は私たちのものだ! 市場で高く売れるから正当に対価を払え!」
「水も商品です! 転売は商売の基本!」
ジョンは歯を食いしばる。
「転売屋死すべし。慈悲はない」
モモンガも声を揃えた。
「その理屈、グッズ買えなかった俺たちに通用しない」
闇が泉から湧き上がり、大地を震わせる。黒い霧が立ち込め、重厚な鎧をまとったデスナイトが姿を現した。その威圧感は、ジョンとモモンガの憤りを代弁するかのようだった。
「ちょ、待て! 俺たちはただ商売を……!」
「理屈は不要だ!」モモンガの声が冷たく響く。
「限定グッズ買えなかった俺たちの悔しさがわかるか? その怒り、ここで清算させてもらう!」ジョンが叫ぶ。
男たちは必死に言い訳する。
「でも俺たちは……誰だって儲けたいだろ!」
「市場原理だ! 正当な利益だ!」
「自己正当化もいい加減にしろ!」モモンガの怒りが一層黒く滲む。
剣が振るわれ、転売屋たちは一瞬で倒された。だが、黒い霧の力で彼らはゾンビとして蘇る。欲に引きずられ、呻き声だけを上げながらうろつく姿は、グッズを買えなかった悔しさを思い出させるようで、ジョンとモモンガは目を背けずに見つめた。
「これで終わり……だな」ジョンが深く息をつく。
「俺たちの悔しさも、これで少しは……」モモンガが低く呟く。
給水泉は再び静かに流れ、市民は安心して水を汲めるようになった。だが広場には、ゾンビ化した転売屋たちの呻きと、デスナイトたちの足跡だけが残る。
黒い霧が消えた後、住人たちは恐る恐る広場を訪れ、ゾンビの姿を指さして囁き合った。
「水を独り占めしようとする者は、ああなるのか……」
「カルバイン様と魔導王陛下が、街を守ってくれたんだな」
その噂は瞬く間に街全体に広がり、水売りを企てる者は誰一人として現れなくなった。子供たちはゾンビの姿を怖がりつつも戒めの象徴として指さし、大人たちも給水泉の前では互いに譲り合うようになった。ジョンとモモンガの怒りと、リアルで味わった悔しさが、街の秩序を強く守ったのである。
「リアルの悔しさ、少しは晴らせた気がするな」ジョンが小さく笑う。
「でも、もう二度と誰も水を独り占めできないように……」モモンガも頷いた。
夕暮れに染まる泉の水面が、静かにきらめいていた。こうして、エ・ランテルでは水売りが完全に消滅したのである。