オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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廻し受け

 

 

/*/ エ・ランテル・冒険者訓練場 /*/

 

 

炎が渦巻き、空気が熱で揺らぐ。

フレイムドラゴンの咆哮と共に、真紅の火柱が訓練場を襲う。

 

「よし、行くぞ!」

ジョンは両腕を構え、体幹を沈める。

 

彼の目的はただひとつ――火炎の息を「回し受け」で完全に防ぐこと。

単なる魔法防御ではなく、物理動作としての回し受けと、スキルで強化された回し受けを組み合わせる訓練だ。

 

火柱が迫る。

ジョンはスキルを発動――「回し受け補正」。

だが、彼はそれに頼らず、自分の体の動きで炎を受け流す。

両腕を円を描くように回し、火炎を渦に巻き込む。

 

「うっ……! 効く……でも、まだ体幹が足りない」

炎の勢いが増す。スキルの補正はあるが、ジョンは意識的に体の動きに頼り、スキルを“上乗せ効果”として使う。

腕を回す角度、手首の返し、体の回転速度――すべて計算し、炎の勢いを一点に集中させずに拡散させる。

 

火柱が通り過ぎる瞬間、熱風が肌を焼く。

だがジョンの体は動きを崩さず、完全に回し受けで防いでいた。

 

「……できたか?」

汗が額を伝う。

フレイムドラゴンが次の火炎を吐き出す。

今度はスキルを使わず、純粋に自分の体の動作だけで回し受けを試す。

 

腕を大きく回し、腰を沈め、体の回転で炎を散らす。

炎の塊が指先をかすめ、肌を炙るが、中心線は守られたまま。

「……完璧だ」

 

ジョンの胸に達成感が広がる。

スキルなしでも、体の動きだけでスキル使用時と同じ防御力を発揮できる。

そして、必要に応じてスキルを併用すれば、さらなる上乗せ効果も可能――

 

炎の渦が静まった訓練場で、ジョンは深く息をつき、手の熱を感じながら笑った。

「やっと……スキルに頼らずとも、火炎を完全に受け流せるようになったか」

 

フレイムドラゴンが低く唸る。

次の攻撃も想定できる。だが、ジョンの心は穏やかだった。

自分の動作とスキルを組み合わせ、最適化する――その境地に達したのだ。

 

彼の動作は、ただの防御ではなく、炎を制御し、逆に攻勢のチャンスに変える“回し受け”の極致となった。

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓 第6階層・闘技場 /*/

 

 

広大な闘技場の床は厚い石でできており、壁際には無数の武器や防具が整然と並ぶ。

照明魔法の光が冷たく反射し、二人の影が長く伸びる。

 

「今日の課題は単純だけど、極めるのは難しい。正拳突き、回し蹴り、貫き手、手刀、前蹴り――すべてスキルなしで完全に制御できるようになること。スキルはあくまで上乗せ用だ」

ジョンは深く息を吸い、体幹を沈める。

 

「承知シマシタ、カルバイン様。貴様ノ動作ヲ全テ受ケ止メ、対処シマス」

コキュートスは鎌状の刃を構え、冷たい声で唸る。

 

まず正拳突き。

ジョンは拳をまっすぐ前に突き出し、体幹と重心を完全に連動させる。

スキルなしでも力強く壁に衝撃が伝わる。

 

「良し……次は回し蹴りだ」

ジョンは脚を大きく振り上げ、腰の回転と足の軌道を正確に同期させる。

氷の標的に蹴りを当てる瞬間、スキルを軽く発動し威力を上乗せする。

衝撃で氷の彫像が粉砕された。

 

「カルバイン様、正確ニ決メラレマシタ」

「うん、いいぞ。次は貫き手だ」

ジョンは掌を前に押し出し、体全体の圧を一点に集中させる。

スキルなしでも十分通用する感覚を確かめた上で、必要に応じてスキルを上乗せする。

 

「……完璧デス、カルバイン様。動作ノ正確性、威力共ニ、問題ナシ」

コキュートスは鎌を構え直し、冷たく唸る。

 

手刀、前蹴りも同様に続く。

ジョンはスキルを使わずに自分の動作だけで正確な攻撃を放ち、必要に応じて瞬間的にスキルを重ねる。

スキルに頼らずとも、体幹と軌道を正確に制御することで、威力と速度を最大限に発揮できる。

 

「カルバイン様、己ノ動作デ完全ニ制御シ、スキルハ上乗セ専用トナリマシタ」

コキュートスの声は冷たく、しかし確かな評価が含まれていた。

 

ジョンは深呼吸し、汗をぬぐう。

「これで目標達成だ。スキルなしでも、全ての基本技を完璧に制御できる。必要な時だけ上乗せすればいい」

 

二人の影が闘技場に伸び、冷たい石床に金属音と衝撃のリズムが響き渡る。

闇の中、己の技術とスキルの最適化――それが真の戦闘力であることを、静かに証明した。

 

 

/*/

 

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