オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ 漆黒聖典・隊長との訓練 /*/
広大な訓練場の砂埃が舞う中、ジョンは槍を手に構える漆黒聖典の隊長を見つめた。長く垂れた射干玉の髪が地面に届き、紅玉の瞳が光を反射する。中性的な容姿は一見すると冷静沈着そのものだが、その目つきには戦闘への鋭い洞察が宿っている。
「……その槍、強力だけど、1回しか効果使えないんだろ?」
ジョンが低く声をかける。
隊長は軽く微笑み、頷く。
「はい。相手諸共自分も槍も消えちまいます。扱いは難しいです」
ジョンは腕を組み、砂を踏みしめながら言った。
「使い勝手悪いよな。愛国心で鉄砲玉に育てた使い手に持たせるなら……ってところか」
隊長は微かに目を細めた。
「知っておりましたか」
「まーねー、有名な槍だから色々対策考えてたし。使わずに済むと良いな」
ジョンの口元に軽い笑みが浮かぶ。
静寂の中、槍を握る隊長の指先がわずかに光を帯びる。砂埃の向こうに、互いの呼吸と緊張が微かに交錯する。
ジョンは心の中で考えた――この槍を使うのは、最終手段の時だけにしよう、と。隊長の紅玉の瞳には冷徹さと同時に、鍛え抜かれた戦闘者の誇りが宿っていた。
砂塵の舞う訓練場に、二人の間だけ静かな覚悟が満ちていく。
/*/ 漆黒聖典・模擬戦開始 /*/
砂埃が舞う訓練場に、ジョンと隊長が向かい合う。隊長は確かに強い。紅玉の瞳は冷静に戦況を見極め、射干玉の長髪が揺れるたびに周囲の空気が微かに震える。しかし、ジョンの眼差しは冷静だ。
「ふむ……確かに強い。けど、格上との対戦経験は、アンティリーネくらいしかないようだな」
ジョンは小さく呟き、瞬時に間合いを詰める。
槍を振るう隊長の動きは鋭く、漆黒聖典の中では抜きんでている。しかし、ジョンは膨大なPvP経験を生かし、攻撃のパターン、間合い、呼吸の癖を瞬時に読み取る。
「ほら! これはどうだ!」
ジョンは瞬時に間合いを詰め、隊長の槍を掴むと力を込めて足を払った。とっさに槍を握った隊長の身体が反転し、背中から地面に叩きつけられ、隊長の動きは一瞬止まる。
呼吸を整えようとする間もなく、ジョンは詰め寄り、隊長の喉元に足先をのせた。動きは止まり、完全に詰みの状態。
ジョンは落ち着いた声で言った。
「槍が大事なものだから、咄嗟に掴んでしまったろ? それが敗因だ」
隊長は紅玉の瞳を見開き、一瞬言葉を失う。紅い瞳には悔しさと同時に、圧倒的な経験差の前での敗北を悟った色が宿る。
ジョンは足を下ろし、槍を隊長に返すと微笑む。
「格上との経験がもう少しあれば、ここまでにはならなかっただろうな。だが、今日はこれで十分だ」
隊長は苦笑を浮かべ、息を整えながら槍を握り直す。砂煙に揺れる長髪が光を反射し、戦いの余韻を静かに残していた。
こうして、ジョンの豊富なPvP経験と冷静な判断力が、漆黒聖典の隊長を完全に追い詰めた瞬間が幕を閉じた。
/*/ 漆黒聖典・模擬戦後の教示 /*/
砂煙が収まり、訓練場に静寂が戻る。ジョンは隊長の肩に軽く手を置き、紅玉の瞳を真っ直ぐ見据えた。
「魔法で姿を偽ってるが、実際は13、4ってところだろ」
ジョンは穏やかに続ける。
「お前が無理して戦わなくても、人間も含めた平和は守ってやる。だから、無理せず成長に合わせた身体作りをしろよ。その方が最終的に、最終的に強くなれる」
隊長は胸の奥で熱いものを感じ、震える声で応えた。
「……ありがとうございます。神獣様……」
ジョンは微笑み、槍をそっと返す。
「力を伸ばすのは一日にして成らず。焦るな、着実にだ」
隊長は深く頭を下げ、心からの礼を示す。その背後で、射干玉の長髪がゆらりと揺れ、紅玉の瞳に静かな決意が宿った。
「……はい、必ず。御言葉に従い、成長を重ねます」
その瞬間、訓練場にはただ静かな尊敬と信頼が満ち、戦いの余韻を包み込むように柔らかい光が差し込んだ。
慈悲深い神獣(ジョン)の教示は、単なる勝敗以上に、若き隊長の未来をも形作るものとなったのだった。