オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ 訓練後の雑談・イビルアイとジョン/*/
イビルアイは肩で息をつきながら、まだ興奮冷めやらぬ様子でジョンを見上げる。
「なあジョン様、あの隊長。実年齢、13前後って本当か?」
ジョンは冷静に頷く。
「そうだけど」
イビルアイの目が瞬間的に輝く。
「くっ……負けてられるか! 修行をつけてくれ!」
ジョンは少し困った顔をして言う。
「アンデッドが正攻法で強くなるのは、ちょっと難しいのでは……」
イビルアイは喉を詰まらせながら、必死に食い下がる。
「頼む! お願いします!」
ジョンは唇を一文字に結び、考え込むように空を見上げた。
「うーん……」
イビルアイは目を輝かせ、期待に胸を膨らませる。
「だめ、なのか……?」
ジョンは少し申し訳なさそうに答える。
「仮面してるとは言え、デザイン上ローティーンの女の子を叩きのめすのは、やはり気が引ける」
イビルアイの頬が赤くなる。目が大きく見開かれ、思わず小声で呟いた。
「お、女の子……」
ジョンは一瞬眉を上げる。イビルアイが自分を意識していることに気づき、ほのかに微笑む。
風が練習場を吹き抜け、二人の間に微妙な空気が漂う。イビルアイの心は、負けず嫌いと少しの動揺が入り混じったまま、新たな修行への期待で満ちていた。
/*/ ナザリック地下大墳墓第九階層・モモンガ執務室/*/
厚い羊皮紙の束と魔導書が整然と並ぶ執務室。赤黒い燭火が静かに揺れる中、ジョンは机の前で肘をつき、考え込むようにモモンガを見つめていた。
「モモンガさんに相談だ。と、言うわけで現地の吸血姫から“特訓をつけてほしい”って頼まれたんですが、なんかよい方法はありませんかね?」
モモンガは肩をすくめる。
「アンデッドが強くなれる方法があるなら、私がとっくに試してますよ」
「ですよねー……」ジョンは苦笑する。
モモンガの眼窩がわずかに揺れ、思案するように沈黙する。やがて口を開いた。
「あ、でも……」
ジョンは期待を込めて前のめりになる。
「なにか?」
モモンガは慎重に言葉を選びながら続ける。
「こないだモモンとして調査に行った沈黙都市ですが……死の螺旋の力が渦巻いていました。もしその吸血姫が成長の余地があるなら、ソウルイーターを倒して、沈黙都市の死の螺旋を横取りすれば、強くなるのではないでしょうか」
ジョンの瞳が一瞬輝いた。
「なるほど……やってみる価値はありそうですね」
机の上の魔導書や羊皮紙に目を落としながら、ジョンは沈黙都市と死の螺旋の可能性を思い描く。
モモンガはじっとジョンを見据え、静かに頷く。
「くれぐれも無謀は避けなさい。死の螺旋は甘くない」
ジョンは拳を軽く握り、決意を新たにした。
「わかりました、モモンガさん。吸血姫の成長も、ナザリックの教えも、無駄にはしません」
燭火が揺れる執務室に、二人の沈黙と決意が静かに響いた。
/*/エ・ランテル 黄金の輝き亭
机の上に置かれた魔導書に指を滑らせながら、ジョンはふと顔を上げた。
「と、言うわけでイビルアイ。沈黙都市に行ってみないか」
イビルアイは軽く首をかしげ、仮面越しに視線をジョンに向ける。
「使う者のいない死の螺旋の力を横取りすると言うわけか」
「そうだ。それに、死んだビーストマンたちの負のエネルギーも利用してやれば、成仏させることもできる」
ジョンの声には落ち着いた確信が宿る。単なる強化だけでなく、命を救う意味も含まれていた。
イビルアイの拳が小さく握られ、わずかに震える。
「良し、行こう!もちろん二人でだよな!」
ジョンは少し眉をひそめ、ためらいを見せる。
「……ううん、二人で大丈夫かな。なんか、ソウルイーターの方にも似た力がいるような感じがするけど……」
イビルアイは一瞬考え込み、すぐに決意を固めたように小さく頷く。
「それでも行く! 二人でなら、きっとなんとかなる」
ジョンは深く息を吸い、イビルアイを見つめ返す。
「……わかった。なら、二人で行こう。無理はさせないが、共に進むんだ」
二人の間に、言葉にしなくとも互いを信頼する静かな覚悟が生まれる。
赤い燭火が揺れる中、沈黙都市への旅路が、静かにその姿を見せ始めた。
ジョンとイビルアイが沈黙都市行きの準備を整え、廊下を歩いていると、影からガガーランがひょっこり顔を出した。
「お、デートか。良かったじゃねぇか。うちのちびさんをよろしくな」
イビルアイは仮面越しに顔をしかめ、頬をわずかに赤く染める。
「ち、違う! 任務だ、任務!」
ジョンは腕を組みながら、苦笑交じりに返す。
「……任務です。間違いなく任務です」
ガガーランはそれを聞くと、にやりと笑いながら肩をすくめた。
「ふーん、任務ねぇ。ま、頑張れよ。楽しんでこいよ」
イビルアイは小さく舌打ちをして、手にした魔導書を握り直す。
「……任務、任務だ!」
廊下に笑い声が残る中、二人は沈黙都市へ向かう足を速めるのだった。