オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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ここまできたら

 

 

/*/ 帝都アーウィンタール・帝城謁見前執務室 /*/

 

 

帝城の重厚な石扉の奥。高い天井の下、薄暗い執務室に淡い魔力の光が漂っていた。

 

ジョンは机の端に腰を下ろし、腕を組んで視線を上げた。

「ジル、ちょっと面白いことを考えたんだが、聞いてくれるか?」

 

ジルクニフは玉座からゆったりと視線を落とす。

「……また、何か無茶な提案を持ってきたな、ジョン」

その声は冷静で、微塵も慌てた様子はない。

 

ジョンはにやりと笑った。

「いやいや、今回は無茶じゃないんだ。鉄の騎士の制御系データの収集を兼ねて――闘技場で鉄の騎士同士を戦わせてみようって話さ」

 

ジルクニフは眉をわずかに動かし、興味なさそうに机の上に手を置いた。

「……鉄の騎士同士の戦いだと? 理由は?」

 

ジョンは手を広げ、身振りを交えながら説明する。

「そりゃあ、目の肥えた帝国民が巨大な鉄の騎士同士の戦いに興奮することは間違いなしだろう? さらに、乗り手の訓練になるし、制御系のデータも取れる。データ収集、実戦訓練、そして見世物――三鳥どころか四鳥くらいの効果だぜ」

 

ジルクニフは微かに唇を引き結び、視線をジョンに固定する。

「……あの鉄の騎士は、確かに興味深い兵器だ。だが、闘技場での試合とはいえ、無用の破壊は許さぬぞ」

 

ジョンは肩をすくめ、軽く笑った。

「心配は無用さ。鉄の騎士同士の戦いは模擬戦だ。互いに攻撃を抑制すれば、データも取れるし、壊れることもない。安全第一、でも面白さは保証付きってやつさ」

 

ジルクニフはしばらく沈黙した後、重々しく頷く。

「……わかった。ならば、君の計画に従え。ただし、結果報告は必ず私に直接だ」

 

ジョンの目が輝く。

「了解! ジル、これは絶対に面白くなるぞ。闘技場の観客も大興奮間違いなしだ!」

 

ジョンは立ち上がり、軽く肩を揺らしながら机の上の制御盤を指さした。

「例えばさ、鉄の騎士AとBを闘技場に投入して、ターンピックの角度やローラーダッシュの反応速度を全力で試すんだ。パイルバンカーやライフルも、模擬攻撃モードでデータ収集。破壊力は抑えつつ、リアルな戦闘挙動を測定できる」

 

ジルクニフは黙って聞き、わずかに眉を上げる。

「……模擬戦か。無駄に暴れるのではないな?」

 

「もちろんさ!」ジョンは両手を広げて強調した。

「制御系の補助を入れて、相手の反応や制御遅延も正確にデータ化。乗り手の訓練も兼ねられる。帝国の技術者が目を光らせて見ていても、驚きと感嘆の両方を得られる――一石三鳥ってやつだな」

 

ジルクニフは机に手を置き、少し視線を下げて考えるように沈黙した。

「……なるほど。確かに、データ収集と訓練、そして民心の掌握も兼ねるのか。君らしい発想だ」

 

ジョンはにやりと笑い、肩越しに皇帝を見た。

「データが揃ったら、次はもっと面白いことも考えてるんだ。ライフルの発射間隔やパイルバンカー角度の微調整で戦術の幅を広げる。もちろん、俺が乗って試すけど、危なげなくなれば乗り手が自由に操作できるようになる」

 

ジルクニフは目を細め、僅かに微笑したようにも見える。

「……よかろう。だが報告書は厳密にまとめよ。君の“面白いこと”に振り回されぬよう、私が確認する」

 

ジョンは手を腰に当て、軽く敬礼するようなポーズで返した。

「任せてくれ、ジル。安全で面白く、そして効率的――完璧にまとめてみせるさ!」

 

執務室の冷たい光の中、鉄の騎士たちの未来と、帝国民の熱狂が、ジョンの言葉の先に浮かび上がるようだった。

 

 

/*/ 帝都アーウィンタール・中央闘技場 /*/

 

 

巨大な闘技場の砂塵が舞う中、鉄の騎士AとBが対峙する。

ジョンは操縦席に腰を下ろし、制御盤の魔導回路を指でなぞりながら声を出した。

 

「よし、ローラーダッシュ、速度調整完了。ターンピック角度を微調整……A、前進!」

 

Aの鉄の騎士が砂煙を巻き上げて前進する。Bも対峙し、ゆっくりと反応を示す。

パイルバンカーが鋭く構えられ、六連装ライフルの魔法陣が淡く光った。

 

ジョンは笑みを浮かべ、ルプスレギナを横目に操作を続ける。

「ここで模擬攻撃。パイルバンカーは出力抑制モードだ。衝撃波は最小限に――」

 

杭が砂に打ち込まれ、衝撃でBの鉄の騎士がわずかに後退。

その瞬間、ジョンの制御盤がデータを吸い上げ、各部位の応答速度、回転角度、加速度を表示する。

 

観客席には帝国の技術官たちが招かれ、黙ってモニターを見つめていた。

ジルクニフは貴賓席から淡々と眺める。

「……想像以上に制御が滑らかだな。データ収集の効果は十分か」

 

ジョンはにやりと笑う。

「もちろんだ。各関節の応答、衝撃吸収、反転動作……すべて数値化済み。次はライフルの連射テストだ」

 

Bの鉄の騎士が前進を開始する。Aがローラーダッシュで素早く回避し、背部に装着された六連装ライフルの魔法陣が光る。

 

――ズドンッ! ――ズドンッ!

 

火球がBの胴体をかすめ、制御系のデータが即座に解析される。

ジョンはモニターに表示される各部位の応答曲線を見て、微笑した。

「完璧だ。制御遅延もほとんどなし。パイルバンカーと火球の連携も問題なし。次はAとBの正面衝突だ」

 

砂煙が舞い、鉄の騎士同士が衝突する。

金属が金属を叩く轟音、衝撃による地面の微振動――データが制御盤に吸い上げられる。

 

ジルクニフは小さく息を吐いた。

「……なるほど、君の計画通り、模擬戦で十分なデータが取れるな」

 

ジョンは笑みを広げ、操縦盤に指を走らせた。

「データ収集も兼ねてるし、乗り手の操作練習にもなる。安全第一で、でも迫力満点――まさに一石三鳥、いや四鳥だな!」

 

鉄の騎士の胸部紋章が淡く光り、闘技場の砂塵の中でその存在感を誇示していた。

ジョンのワクワク感と、ジルクニフの冷静な視線が交錯し、帝国と魔導国の未来に向けた新たな一歩が、静かに刻まれた瞬間だった。

 

 

/*/ 帝都アーウィンタール・中央闘技場 /*/

 

 

数週間にわたる模擬戦で、ジョンは鉄の騎士の機動データを徹底的に収集した。

関節の応答速度、ターンピックの角度補正、ローラーダッシュの加速特性――すべてのデータを解析し、帝国騎士でも操作できるレベルにまで制御系を安定させることに成功した。

 

「よし、これで帝国騎士でも操れるな」

ジョンは格納庫で笑みを浮かべ、ルプスレギナと共に改良点を確認する。

「次は観客も楽しめる本番だ。闘技場の新しいルールを考えよう」

 

新しい戦い方は三種類に分かれる。

 

ひとつはレギュラーゲーム。

剣と盾のみで戦うシンプルな戦闘。

騎士たちは鉄の騎士の重量感とローラーダッシュの挙動を体感しながら、剣技や盾防御を駆使して戦う。安全性を重視しつつも、観客が操作の熟練度や駆け引きを楽しめる設計だ。

 

次にリアルバトル。

大型ライフルとパイルバンカーを装備した鉄の騎士を用い、模擬攻撃制御は最低限に。

迫力ある火球の連射や杭の衝撃で、実戦さながらの緊張感と破壊感を観客に提供する。

「制御系も十分だし、これなら事故なく魅せられる」

ジョンは胸を張る。

 

さらに、3on3のチーム戦も企画される。

複数の鉄の騎士を一堂に集め、戦術的連携を試すモードだ。

敵の攻撃を分散させ、連携したパイルバンカー攻撃やライフル射撃で戦う戦術性が増す。

観客は単なる力比べだけでなく、戦略を見て楽しむことができる。

 

ジョンは操縦席に手を置き、わくわくした表情で皇帝ジルクニフを見上げる。

「ジル、これで闘技場はもっと面白くなるぞ。レギュラーゲームで技術を競い、リアルバトルで迫力を味わい、チーム戦で戦略を楽しむ――三段構えで観客も大満足間違いなしだ」

 

ジルクニフは玉座から静かに視線を落とす。

「……ふむ。君の鉄の騎士は、もはや単なる兵器ではなく、娯楽兼訓練機として完成したようだな」

 

ジョンはにやりと笑った。

「そうさ。帝国騎士も、鉄の騎士を操る楽しさに目覚めるだろう。もちろん、俺の制御系データがあれば安全第一でな」

 

鉄の騎士たちは格納庫で静かに立つ。だが闘技場に立つ日を夢見ているかのように、その装甲は淡く光を反射していた。

 

 

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