オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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雑煮

 

 

/*/正月イベント・ナザリック厨房/*/

 

 

 冬の冷たい空気が厨房の扉から流れ込む中、ジョンは杵を握り、ルプスレギナが横で掛け声をかけている。

 

「よいしょっ! もっと腰を入れて、ルプー!」

「はいっ、ジョン様!」

 

 二人の手際に合わせ、餅はつきあがり、白く光る餅米が次第に弾力を帯びていく。杵の音がリズムを刻み、厨房内に楽しい活気が広がった。

 

 餅が一段落すると、ジョンは手早く餅を丸め、雑煮用の鍋に投じる。ルプスレギナはそれに合わせてだしを味見しながら、調味を整えていく。

 

「うん、この出汁、最高だな。ルプー、今日のは君の腕も光ってるぞ」

「ジョン様に褒められると照れます……でも、嬉しいです!」

 

 厨房のスタッフや料理長たちは、二人の作業を見守りながらも、自分たちの仕事を手を止めずにこなす。雑煮はすぐに鍋いっぱいに出来上がり、蒸気と香りが厨房いっぱいに広がった。

 

「さあ、皆に振舞うぞ」

 ジョンが鍋を抱え、厨房スタッフに配り始める。皿に盛られた餅と出汁、彩りの野菜がきれいに並ぶ。スタッフたちはそれぞれの皿を手に取り、頬をほころばせながら一口ずつ味わった。

 

「こ、これは……! まさかジョン様とルプスレギナ様の作った雑煮だとは……!」

 料理長が思わず目を見開く。

 

「ふふ、正月くらい、厨房も楽しもうってね」

 ルプスレギナが微笑み、ジョンもにっこりと頷いた。

 

 杵の音も、包丁の音も、鍋の湯気も、笑い声とともに、ナザリックの厨房を温かく染めていった。正月のひとときは、戦いや日常の緊張を忘れさせる、穏やかで幸福な時間だった。

 

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓・第九階層 モモンガの執務室 /*/

 

 

 蝋燭の光がゆらめき、静かな執務室に淡い影を落としていた。山のように積まれた報告書を読み進めるモモンガの前で、カツ、カツ、と控えめなノック音が響く。

 

「……入りたまえ」

 低く響く声に、扉が静かに開いた。現れたのは、両手に盆を持ったジョンと、その後ろに湯気立つ鍋を抱えたルプスレギナだった。

 

「よっ、モモンガさん。新年早々お仕事とは、相変わらずだな」

 ジョンが軽く笑いながら執務机に歩み寄る。ルプスレギナもにこにこと頭を下げる。

「ジョン様がどうしてもって言うので、厨房総出で作ったんですよ。雑煮です。お正月くらいは食べてほしいなって」

 

 モモンガの眼窩に宿る紅光がわずかに細まり、彼はゆっくりと視線を二人に向けた。

「……雑煮、か。懐かしい響きだな。まさかこの地でその名を聞くとは思わなかった」

 

 ジョンが盆を机に置き、湯気立つ椀を差し出す。

「なに、戦いも政務も大事だけど、こういうのも忘れちゃダメだろ。俺らの国だってまだまだ形作ってる最中だし、こういう文化ってやつは後から効いてくるんだぜ」

 

 ルプスレギナが笑みを浮かべ、そっと椀をモモンガの前に置く。

「モモンガ様、温かいうちにどうぞ。お味噌もだしも、厨房のみんなが心を込めて仕上げました」

 

 モモンガはしばし椀を見つめ、骨の指でそっと箸を取った。

「……ありがとう。そうだな。正月くらい、雑煮をいただくのも悪くない」

 

 指輪を付け替え、人化する。箸先で餅を軽く持ち上げると、ほのかな香りと湯気が立ち昇る。その匂いは、遠い昔にギルドの仲間たちと過ごした正月の記憶を呼び覚ましたかのようだった。

 

「……うむ、良い味だ」

 静かにそう呟くモモンガに、ジョンが笑みを浮かべて頷く。

「だろ? 正月くらい肩の力を抜こうぜ、モモンガさん」

 

 執務室に漂う湯気と香りは、ほんのひととき、ナザリックの空気を柔らかく染めた。

戦いの前夜であっても、忠義に囲まれていても──こうしたひとときが、確かに心を繋いでいた。

 

 

/*/ナザリック・大広間/*/

 

 

 正月の装飾で彩られた大広間に、ぺったん、ぺったんと杵の音が響いていた。

 ジョンとルプスレギナが力強く餅をつき、厨房スタッフが慌ただしく動いている。白く輝く蒸し米がつぶされ、ふっくらとした餅へと変わっていく。

 

「よし……雑煮は出来上がったな」

 ジョンが腕まくりしながら、蒸気の立つ鍋を覗き込む。

 

 そこへモモンガが入室。骸骨の顔が静かに光を帯び、空洞の眼窩から赤い光が淡く揺れていた。

「……ジョンさん、これは?」

「モモンガさんも餅つきやろうぜ! 雑煮は作ったからさ、お汁粉でもつくるかい?」

「お汁粉……?」

「甘味はアルベドたちに振舞うか! きっと喜ぶぞ」

 

 その言葉に、背後で聞いていたアルベドの瞳が輝いた。

「甘味……! 至高の御方が直々に杵を振るい、お作りになられたお汁粉を……! 最高にして至高の甘味! その御恵みを賜れるなど……!」

 既に興奮の極みに達し、羽扇で頬を隠しながら震えている。

 

 モモンガはわずかに骸骨の顎を動かし、逡巡の気配を漂わせたのち、静かに頷いた。

「……正月くらいは、良いでしょう」

 

 ジョンが笑みを浮かべ、杵を差し出す。

「よーし、モモンガさん。こうやってリズムを合わせて――いくぞ! せーの!」

「ぺったん!」

「こねて!」

「ぺったん!」

「よし、いい調子だ!」

 

 骸骨の両腕が大きな杵を振り下ろすたび、赤い光が眼窩で揺らめき、湯気とともに荘厳さすら漂わせる。だがその姿に守護者たちは胸を高鳴らせ、感極まって見守るばかりだった。

 

 やがて湯気の中、甘い香りとともに餅は丸められ、お汁粉が用意されていく。

 

 アルベド、シャルティア、アウラ、マーレ、ルプスレギナ……甘味の到来に目を輝かせ、至高の御方の手による餅を奪い合うように口に運ぶのだった。

 

 

/*/ナザリック・大広間/*/

 

 

 湯気立つお椀に盛られたお汁粉が、次々と守護者たちへ振舞われていく。

 甘く香ばしい匂いが広間を満たし、漆黒の骸骨――モモンガが自ら杵を振るった餅がとろりと伸びていた。

 

「……う、うまいっ!! 至高の御方の御手による餅……この甘味……これはまさに愛の証!!」

 アルベドは頬を紅潮させ、汁粉を啜るたびに体を震わせる。匙を握る手が震え、今にも気絶しそうなほど。

 

「ん……んまっ! 甘ぇえ! 甘ぇえでありんすぅう!! 血より甘ぇ、御身の愛情が染み渡る味でありんす!」

 シャルティアは両目を潤ませ、餅を吸い込みながら涙を流す。頬が餅で膨らみ、吸血鬼の威厳などどこへやら。

 

「お、おいしいです……! あ、あったかくて……甘くて……! 身体がぽかぽかしてきます!」

 マーレは夢中で頬張りながら、耳まで赤くなっている。目を丸くして幸せそうに餅を引き延ばした。

 

「わぁっ! びよーんって伸びる! しかも甘くて、ふわふわしてて……んん~っ、最高だね!」

 アウラは箸で餅を持ち上げては口に入れ、頬を緩ませながら子供のように喜んでいた。

 

「ジョン様ぁ! これヤバいっす! 甘いのに力が漲ってくるっす! ジョン様の手とモモンガ様の杵の合作……もう無敵のお汁粉っす!」

 ルプスレギナは尻尾をぱたぱたと振りながら、舌を出して熱々の餅をふーふー冷ましつつかき込む。

 

 守護者たちの熱狂的な反応に、骸骨の顔のモモンガはわずかに赤い光を揺らし――小さくため息をついた。

「……これは単なる正月の遊びなのだが」

「いやぁ、モモンガさん」ジョンが笑いながら箸を口にくわえる。「みんな、正月から最高に幸せってことだよ」

 

 広間は餅の甘い香りと、守護者たちの歓喜の声で満たされていた。

 

 

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