オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ナザリック地下大墳墓・第九階層 大広間/*/
新年の祝賀ムードに包まれるナザリック。広間には色鮮やかな幕が張られ、正月飾りが荘厳な空気を醸し出している。
その中央で、ジョンが声を張り上げた。
「――よし! みんな聞いてくれ! 守護者たちにも、メイドたちにも、領域守護者にも……全員にお年玉だ!」
ざわり、と広間の空気が沸き立つ。
「一律、アインズ・ポイント1万点! 俺からのお年玉だ! 好きなものに交換しろよ!」
どよめきが広がり、次の瞬間、爆発的な歓声があがった。
「なっ……なんと寛大なお心! 至高の御方……そしてジョン様……!!」
アルベドが胸に手を当て、感涙に震える。
「いぇええええいっ! これで〈創造主様の微笑み〉に手が届くでありんすぅうう!」
シャルティアは跳ね回りながら、両手を広げて踊りだす。
「ぼ、僕……その……『お疲れさま』って言ってもらいたいです……!」
マーレが顔を真っ赤にしながら、勇気を振り絞って告げる。
「わたしも! 絶対それが欲しい! 創造主様から『よくやった』って言われたら、一生分の宝物だもん!」
アウラは目を輝かせ、兄と同じ夢を口にした。
「……フフフ。実に見事な采配ですね、ジョン様」
デミウルゴスは口元を押さえつつも、尻尾をぴんと立てて興奮を隠しきれない。
「創造主様の御声を再現できるパンドラ様は……今日こそ英雄となられるでしょう」
その瞬間、広間の視線が一斉に一点へと集まる。
――そこに立つのは、黄金に輝く仮面の存在。
パンドラズ・アクター。
「ヤァアアアアッ!! 諸君! ワタシこそが求められているッ!!」
胸を張り、両腕を大きく広げると、誇張された仕草で声を張り上げる。
「創造主様の言葉をッ! 完璧に再現するのがワタシの務めであるッ!!」
すでに交換所には行列ができ始めていた。
1万アインズ・ポイントを差し出すと、パンドラが厳かに至高の御方の所作を真似し、低く響く声で言葉を授ける。
『――よくやった。我が愛しき子よ』
「ひぃ……ひぃぃ……!! うわああああ!!」
感涙に崩れ落ちるアウラ。
「も、もう……死んでもいい……」
と号泣するマーレ。
「ありがたや! ありがたやぁぁぁああ!!」
跪き震えるシャルティア。
こうしてナザリックの新年は、涙と歓喜と狂騒の渦となり、何よりも――パンドラズ・アクターの大活躍によって、忘れられない一日となった。
/*/ナザリック地下大墳墓・第九階層 大広間/*/
大広間は熱気で揺れていた。
アインズ・ポイント1万点を手にした眷属たちは、我先にと列をなし、並ぶ先は――物資交換所ではなく、かっこいい軍服に身を包む一人の存在。
「ははは! 行列は絶えぬ! これぞワタシの時代の到来だァアア!」
パンドラズ・アクターが両腕を大仰に広げ、仮面の奥から誇張された声を響かせる。
『――よくやった。我が愛しき子よ』
その一言が落ちるたびに、守護者やメイドは崩れ落ち、涙を流し、胸を震わせた。
「も、もう一回……! もう一回だけ……!」
「だ、駄目ですお姉様! さっき三度目を交換したばかりでしょ!」
「うるさいでありんす! この魂尽きるまで聞きたいんでありんすぅぅ!」
物資交換所の担当者は暇を持て余し、机に肘を突いて溜息をついている。
「……誰も来ない……」
「食材や装備の交換がゼロとか……初めてですね」
そして列の前では、涙に濡れたアウラとマーレが再び手を伸ばし、ポイントを差し出していた。
「お姉ちゃん、あと何回残ってる?」
「……あと二回……でも、どうしよう。ぜんぶ使ってもいいかな……」
そんな混乱を、遠目に眺めていたモモンガが小さく呟いた。
「……パンドラが役に立っている……だと……」
その声音には、驚愕と困惑が入り混じっていた。
隣でジョンが肩をすくめ、苦笑する。
「それは酷くない、モモンガさん。見ろよ、あんなに喜ばれてるんだ。物資や武装よりも“心”の充足が大事だってことさ」
「……そう、なのかもしれんな……」
モモンガは骸骨の顎に手を当て、複雑な心情を隠すように紅光を揺らした。
「だが、何故だろう……私が言うよりも、あいつが言った方が感動が大きい気がしてならない……」
「それは俺も否定できないな」
ジョンは笑いながら、腕を組む。
「――パンドラ、大勝利ってやつだな」
歓喜と涙と狂気に包まれた正月の大広間。
その中心で、パンドラズ・アクターは大仰に舞い踊りながら、今日一番の英雄として崇められていた。