オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓・第6階層 闘技場 /*/
黒曜石の床を包むように魔法障壁が展開される。
ジョンは静かに目を閉じ、手のひらを胸に添えた。
「――〈自己変身〉」
魔力の奔流が肉体を満たし、骨と筋肉が軋む。
次の瞬間、光が弾け、そこに立つのは――レベル50の完全戦闘特化型ジョン。
全身を覆う気の鎧が、波紋のように空気を揺らす。
「さて……次はお前の番だ。出てこい、〈グレーター・ドッペルゲンガー〉」
黒い影が地面から湧き上がり、形を持ち始める。
影はうねりながらジョンの姿を完全に模倣し、同じ装束、同じ気配、同じ呼吸。
鏡のような存在が、にやりと笑った。
「対象確認。模倣完了。――始めるか」
「……ああ」
風が鳴った。
床石が砕けるほどの瞬発力で、二人のモンクがぶつかり合う。
打撃、回避、打撃、打撃――
拳と脚の音が連続して、雷鳴のように訓練区画を満たした。
ジョンは一瞬で〈流転掌〉の構えを取り、動作だけでスキルを発動。
それに重ねて、実際の〈流転掌〉スキルを上乗せする。
――二重発動。
ドッペルが受けた瞬間、衝撃波が空間を裂き、光壁に波紋が走る。
「っ……単純な力押しでは、俺には勝てないぞ!」
ドッペルが跳躍、空中で〈旋脚風輪〉を放つ。
ジョンはそれを見切り、掌底で衝撃波を逸らした。
「じゃあ、ちょっと遊んでやるよ――〈火球〉」
掌の前に赤い魔法陣が浮かび、小さな火球が放たれる。
だが、それはただの陽動ではない。
ジョンは直後に足を軸に回転し、気を渦に変える。
「〈ソニック・トルネード〉――融合起爆!」
火球が風刃に巻き込まれ、爆ぜる。
生まれたのは火炎旋風(フレイム・サイクロン)。
紅蓮の竜巻が訓練場を飲み込み、ドッペルの姿をかき消す。
爆風の中から現れた影は焦げた腕を押さえながら、笑った。
「なるほど……複合スキル。効率は悪いが、実戦なら脅威だ」
「効率は関係ない。生き残るのが目的だ」
ジョンは低く息を吐き、掌底を構えた。
気が収束し、重力を歪ませるほどの圧が生まれる。
――これは〈破山撃〉。
だが、動作はまだ「構え」に過ぎない。
ジョンはその動作をトリガーにして、スキルの"起点"を自在に移動させる。
「来いよ、俺」
「望むところだ」
二人の"ジョン"が再び激突。
光の閃きが連続し、衝撃波が訓練区画を揺らす。
それはもはや修行ではなく、同一存在の思考実験――自己模倣戦闘実験だった。
そして戦闘の最中、ジョンは静かに笑っていた。
自分を超えるために、自分と戦う。
それが、彼にとって何よりも楽しい時間だった。